プルフォウ・ストーリー2 月に降り立つ少女たち   作:ガチャM

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「プルフォウ・ストーリー2 ~月に降り立つ少女たち~」

舞台はUC0088年のアクシズ。ネオ・ジオン親衛隊のプルフォウを中心としたプルシリーズたちのストーリーです。

文、挿絵:ガチャM
設定協力:かにばさみ

※Pixivにも投稿しています。


第29回「空にいる妹」

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『危ないから、すぐにモビルスーツを降下させなさい! 降りなきゃ駄目! 墜落して大怪我するわよ!』

 

 ネオ・ジオンのパイロットであり、いまは歌手ファンネリア・ファンネルとして活動しているプルエイトは、大声で叫びたい衝動を我慢しながら、テレパシーを使うように意識の中で妹プルナインを叱った。

 

 心配のあまり、つい叱り過ぎてしまった。

 星空の海のような、光る宇宙のようなふわふわした仮想空間で、妹はしょげて涙を浮かべている。

 

【挿絵表示】

 

 意識下で会話できるなんて、まるでエスパーみたいだと思うかもしれない。事実ニュータイプや強化人間同士は、感応波と呼ばれる特殊な脳波でミノフスキー粒子を微細に振動させて、遠くの相手と交信することができるのだ。

 脳波を飛ばせる便利な粒子が、都合よく浮いていることに疑問を持つ人も多いだろう。しかし発見から二十年余、ミノフスキー粒子は電力発電や船舶の浮力、エレカのフィールドモーターなどに広く応用されていて、文字通りあらゆる場所に存在している。

 つまり、自分たちは超高性能な小型コミュニケーターを常に携帯しているのに等しいのだ。『人間とは考える葦である』と言ったのは旧世紀の偉人パスカルだが、『ニュータイプとは感応波を発信する人間』なのである。

 

 いけない。そんなニュータイプの説明などしている場合ではなかった。早くナインを、なんとかしてモビルスーツから降ろさないと!

 控え室で待っていたはずの妹がモビルスーツに乗っているなんて、中間イベントが分からないから物事がまるでつながらない。まさかモビルスーツがそこらへんに転がってるわけが……。

 

「えっ、置いてあったモビルスーツの入口が開いてたから乗った!?」

 

 信じられない。本当に転がっていたなんて!

 

「だとしても、誰も乗ってないからって勝手に乗っちゃだめよ! それ泥棒でしょ!!」

 

 いまの時代にアムロ・レイでもないっ。

 地球連邦軍の伝説的なエースパイロットであるアムロ・レイ大尉は、八年前、母艦に搬送中だった試作モビルスーツに勝手に搭乗して戦果を挙げたことで、モビルスーツ・パイロットとしてのキャリアを開始したのだ。そして、第一次ジオン独立戦争終結までに、実に150機近くの撃墜スコアを叩き出してしまった。

 私はその話はかなり盛られていると考えている。だって民間人が軍用機に勝手に乗れば射殺されるだろうし、落ちていたマニュアルをさっと読んでモビルスーツを操縦したなんてあり得ない。強化人間として産まれた自分だってモビルスーツを乗りこなすまで三日はかかったのだから。そんな話、映画シナリオとしても没にされるだろう。

 『連邦の白い悪魔』のストーリーは多分にプロパガンダ的なので、おそらくアムロ大尉は元々士官候補生だったのではないか。地球連邦軍広報部が、我々ジオンの英雄、シャア・アズナブル大佐の伝説に対抗しようと考えてシナリオを描いたのだと考えれば納得もいく。

 

 また話が脱線した。焦っていると雑多な思考が頭に浮かんできてしまう。

 

「とにかく降りて!」

『嫌なの! あの人たちを止めないと、人が死んじゃうから!』

 

 ナインが、普段のおっとりした性格には似つかわしくない大きな声で言った。

 

「あの人たちって何なの? あなた、まともにモビルスーツ操縦できないじゃない!」

『ちゃんと練習したから大丈夫なの!』

「嘘おっしゃい。遊んでばかりだったでしょ!」

 

 妹は自分をMSパイロットだと思ってるかもしれないけれど、はっきり言って彼女の操縦技術はほぼ素人に近い。この前の戦闘シミュレーションでも早々に撃墜されてしまったし、練習したところで急に上手くなるとは思えなかった。

 

 そう考えたら妹に感応波で伝わってしまって、彼女が頬を膨らませたのを知覚した。

 心を覗いてわかったのだが、妹は『とても悪い』地球連邦軍のモビルスーツを捕まえるつもりで、自分もモビルスーツに乗り込んだらしかった。ネオ・ジオン親衛隊としての責任感は嬉しい。でも、ここは平和なジオン共和国だということをわかってない。地球連邦軍はアクシズの敵だとしても、ここで戦闘をするわけにはいかないのだ。ビル街での爆発で妹は戦闘が始まったのだと勘違いしたに違いない。

 

「どうしたの?」

「えっ?」

 

 脳内での会話に集中していたら、自分を抱き抱えているマネージャーのティモが不思議そうに見ていることに気がついた。

 

「誰かと話してる? モビルスーツの操縦がどうとかって」

 

 しまった……。意識下だけで会話するつもりが口に出していた。

 意識下で会話できると言っても、独り言を言っていればただのおかしな人なので、普段人前で能力は使わないし、たとえ使っても声を出さないように注意しているのに。

 興奮しているときに言葉を意識下に収めて話すのはかなり集中力を必要とするから、今みたいに失敗してしまうのだ。下手な会話で、自分と妹がネオ・ジオンのパイロットだと知られてしまうのだけは避けなければ。

 

「モビルスーツに興味あるの? だったら、今度一緒に……」

「あ、興味があるわけじゃないの!」

「なんだ、残念だな」

「ごめんなさいね」

 

 駄目だ。このままでは、妹を助けるきっかけが掴めない。自分一人で解決するのは無理そうだから、マネージャーにも協力してもらわなければ。

 肝心なところを言わずに、上手く嘘を交えて状況を説明すればいい。

 

「あ、あのね。実は、妹が。マリーがモビルスーツに乗ってしまっているのよ」

「えっ!? 嘘だろ」

「本当よ! こんなときに冗談で言うもんですか!」

「な、なんで乗ってることがわかったの」

 

 そう思うのは当然だから、理由をうまく話さないといけない。まさかニュータイプ能力で感知したとは言えないし。

 

「偶然、イヤホンに妹の声が聞こえてきたから分かったのよ」

 

 耳にはめている高性能イヤホンを押さえながら言った。ステージでは演奏を聴くために装着しているのだから、嘘ではない。

 

「そんなことが? ミノフスキー粒子の影響とかで混線したのかな」

「たぶん、そうよ! 偶然に周波数が同じだったみたい。そういえばコンサート中にも軍の通信が聞こえた気がするわ」

「でも、そのおかげで分かったんだから良かった。マリーちゃんに、早くコクピットから降りるように言わないと」

 

 ティモは少し呆れたように言った。まだ深刻な事態だとは思っていないのだ。

 

「降りられないの! モビルスーツで空を飛んでるんだから!」

「ば、ばかな!?」

「たぶん自動操縦なのよ。適当にボタン押しちゃったに違いないわ!」

「なんてことだ。なんで、そんなことを」

 

 その話し方が、まるで妹を非難するように聞こえたので腹が立ってしまう。

 

「ねえ、だいたいあなたがマリーの面倒みてくれたはずじゃなかったの?」

「あ、そ、そうだったかな」

「いい加減ね! そう言ったじゃない!」

 

 興奮して怒鳴ったら、胸がはだけそうになったから慌てて服を抑えた。

 こんな格好じゃなかったら彼を叩いているところだ。

 

「ご、ごめん。少し会場を見てくるって言ったから、その……」

「言い訳はよしてよ! マリーはまだ幼児なの。しっかりみてなきゃダメなの!」

「マリーちゃんって何歳なの」

「え?」

 

 改めて言われてみると困ってしまった。自分たち姉妹はアクシズの研究施設で産まれた強化人間(クローン・ニュータイプ)だから年齢に差はない。一番上のお姉さんが十歳だったから、自分も妹もおそらく十歳くらいなはずなのだ。

 でもアイドルとしての自分は、アイドル戦略的な意味で十三歳と偽っていて、その理由はあまり幼いと人気がでないからだが、精神的にもそのつもりなのである。

 ナインは性格的にも幼いし、9(ナイン)だから九歳にしときましょ。

 

「九歳よ」

「そうだったのか。君がしっかりしてるから、同じように考えてしまった」

「おだてても許さないわよ。とにかく、早く警察か軍に連絡して妹を助けて!」

「わかった。事務所を通して共和国の守備隊に連絡してもらうよ。事務所は軍と仕事もしたことがあるから、話はつくはずさ」

「なんて言うの?」

「うちの事務所の子が、モビルスーツに間違えて乗ってしまったって」

「信じてくれるかしら? 冗談だと思われない?」

「ここは正直に言うしかないよ」

「そうね、お願い!」

 ティモは頷くと、すぐにコミュニケーターで事務所に連絡し始めた。要領よく伝えてくれているので、正しく状況が通じてくれることを祈った。

 心配なのは、共和国軍が助けに来てくれるまでに妹が墜落してしまわないかということだ。彼女は1Gの重力下でモビルスーツを飛ばしたことすらない。

 

『ああ、早く、早く』

 

 パイロットとしてのプルエイトだったら、すぐモビルスーツに乗ってすとか連れ戻しにいくのに。いまの自分の立場に無力さを感じ、焦燥感で爆発しそうだった。ただ待っているのは辛いし落ち着かない。

 

『共和国軍の練度は高くないと聞いてるわ。緊急発進(スクランブル)に手間取るんじゃないかしら……。えっ、なに!?』

 

 そのとき突然脳に電気が走り、高周波のような音が聴こえた。ニュータイプ能力は遠隔会話だけでなく、外界の事象も感じとれるのである。

 あらゆる領域に存在するミノフスキー粒子を知覚して、周囲十キロ四方の俯瞰映像が脳裏に浮かんだ。

 物理世界は素粒子から構成されており、自然界の四つの力を司るミノフスキー粒子は世界のマッピングを可能にする。

 妹はすでに感じとっていたのかもしれない。あからさまではないが、敵意を発しているパイロットがいる! おそらくは地球連邦軍のモビルスーツ。一機、いや二機か!

 

 『まずいわよ、これは。なんで連邦軍が!』

 

 状況はさらに悪化してしまった。

 ジオン共和国は、一年戦争後に地球連邦政府と平和協定を結んでいるので自治権を有しているが、敗戦国なので地球連邦軍が治安部隊として駐留している。街中でモビルワーカーがジオン公国を賞賛しながら暴れていれば、地球連邦軍が怒り心頭で飛んできてもおかしくはなかった。

 

「あれは連邦軍のモビルスーツよ!」

 

 二機のモビルスーツが高速で接近し、ほどなくして目視できる距離になった。自分は視力が良いから、かなり遠くからでも目視できてしまう。

 ライフルとシールドで武装した濃紺の機体が、熱核複合サイクルエンジンの轟音を響かせながら飛行していた。頭部や肩、コクピット周りの細部ディティールから判断すると、機種はRGM-79Q《ジム・クゥエル》に違いなかった。

 

【挿絵表示】

 

《ジム・クゥエル》とは、ジム・タイプの高性能型RGM-79N《ジム・カスタム》をベースに、対人用センサーを追加するなどの改修を施して、コロニー内作戦用として製造されたモデルのこと。

 その威圧的な濃紺の機体色は、叛乱によって連邦軍の掌握を企てた特殊部隊ティターンズの部隊カラーだ。

 唾棄するような叛乱部隊の色だから、地球連邦軍では禁忌に近い色になっているはずなのだが、このサイド3駐留部隊では未だ塗り直されていない。おそらく心理的効果を狙って、予算不足を名目としてわざとそのままにされているというのが専らの噂だった。

 標準武装は、90mmケースレス弾を使用するジム・ライフル。

 ケースレス弾とは、普通は発射された弾頭から分離して銃本体から排出される薬莢を、まるごと固めた火薬に置き換えることで、内部で燃え尽きるようにした弾丸のこと。

 銃から巨大な金属の塊である薬莢が排出されないので、市街地で発射しても民間人への被害を防ぐことができるのだ。

 でも、そんな工夫をしたところで、人が大勢いる場所で巨大な人型マシーンを運用すれば、巻き込まれて死傷者がでることは必至だ。人間を踏み潰さないために対人センサーを搭載しても、狭い場所ではたいして役には立たない。暴動の鎮圧にモビルスーツを使おうとすること自体が傲慢なのである。

 

 だから、ナインはみんなを守るためにモビルスーツに乗りこんだのだ。その殊勝な正義感は褒めてあげたいけれど、モビルワーカーの仲間と思われたら妹は攻撃されてしまう!

《ジム・クゥエル》はあっと言う間に近づいてきて、暴れているモビルワーカーを制圧するために降下シークエンスに入った。

 

「ティモ、モビルスーツが降りてくるわ!」

「僕にも見えた。暴れてる奴を押さえるつもりなんだ」

「地球連邦軍にも連絡して! 妹を間違えて撃たないように言って!」

「駐留部隊に? あのモビルスーツは暴れてる奴を取り押さえようとしてるだけだよ」

「マリーは、こっちにまっすぐ飛んで来てるのよ! このままだとテロリストと間違えられるわ!」

「本当に!? 飛行進路を変えるように言うんだ!」

「呼びかけても返事がないのよ。聞こえてないのかも。それに、進路を変える方法なんてマリーにわかるわけないでしょ!」

「いったいどうすれば……。君に何か考えはないのか?」

「……」

 

 頭を回転させる。

 地球連邦駐留軍はこのサイド3に進駐しているが、だからといって別に敵対しているわけではない。あくまで治安維持のためであり、ジオン共和国とは良い関係を築いているはずなのだ。駐留軍のトップだって、就任中に問題を起こしてキャリアを傷つけたくはないはず。

 

「……あるわ。事務所がコネを持ってる、影響力がある政治家に状況を伝えるのよ。連邦駐留軍の司令官に注意してもらうの!」

「なるほど政治家か。わかった、やってみるよ。君に直接伝えてもらった方がいいかもしれない」

「必要ならすぐ替わるから、言って!」

 

 よし、あとはジムが暴れるモビルワーカーを取り押さえるのに手間取ってくれれば時間がかせげる。駐留部隊だから二線級で、たいした腕ではないはず……。

 だが、その考えは甘かった。

 驚くべきことに、先導していた《ジム・クゥエル》は高空から加速して降下すると、逆噴射で一気に減速し、バーニアを巧みに吹かして姿勢制御を行い、空中でモビルワーカーを蹴り倒したのだ。そして着地するや否や、ワーカーの片腕を後ろにひねり上げて折ると、あっという間に制圧してしまった。

 

【挿絵表示】

 

 速い! なんて操縦テクニック!

 プルツーお姉様みたいなエースパイロットを見慣れてる自分が、モビルスーツの動きで驚かされるとは。

 あんな風にモビルスーツに格闘家のような洗練された動作をさせるには、高度な技術が必要だ。あの隊長機と思しき機体を操るパイロットは相当の手練れに違いない。間違いなくエースパイロット級だ。あんなパイロットが駐留部隊にいるなんて。

 

『ナイン、いますぐモビルスーツを降下させなさい! 人がいないところに降ろして停止させて!』

 

 必死に呼びかけても妹から返事はない。まさか墜落したかと焦ったが、感覚を頼りに探すと、ようやくナインが乗るモビルスーツを知覚できた。機体はピンク色の《ハイザック》? 飛びかたはフラフラしていて安定しない。いまにも墜落しそうな感じだ。

 意識下でも、心配でとても見ていられないので目を開くと、ティモが自分を見ているのが分かった。

 一瞬不安に駆られたが、彼の表情が明るかったことに安堵する。

 

「いま事務所から連絡があったよ。共和国軍は状況を理解して対応してくれる。悪戯した子供を叱って捕まえてくれるってさ」

「ほんとに?」

「もちろん、社長にも懇意にしてる議員に連絡してくれって伝えたよ」

「良かったっ!」

 

 安心したら、少し涙が出てきてしまった。

 

「ありがと、対応してくれて。妹が迷惑かけてごめんなさい」

「いや、当たり前のことをしただけさ。僕の責任でもあるし。政治家先生の出番はないだろうから、後で社長に謝らないとな。説明が下手なんだよな、僕は」

「そんなことない。あなた、けっこう頼りになったわよ」

 

 そう言ったら、彼が真面目な顔になったので驚いてしまった。

 

「な、なによ。褒めてあげたのに。怒ってるの?」

「怒ってないよ。お俺は、君を……」

 

 きゃあーっ、そんな。ありえない!

 瞬間、彼の気持ちをはっきりと知ってしまったのだ。

 まあ、なんとなく分かってはいたけれど。

 こういうとき、他人の心がわかるというのは最悪だ。だって、先の先までわかってしまうから。あらかじめドラマのシチュエーションを理解して演じる役者みたいなのだ。

 だからと言って客観的に冷静でいられるわけではない。彼のためらいのない感情におされて、自然と身体が固くなってしまう。

 

 「……」

 

 ティモは思いつめたような顔を一気に近づけてきた。

 

「こんなときに冗談はよして。キスシーンの相手役のつもりなの? そんな場面を演じる予定はないんだから、あなた一人でやってなさいっ」

 

 と、からかってみても彼は真顔だ。

 

「僕は、何度も演じたことがあるんだ」

 

 うわっ。

 気取ったセリフに寒気がした。

 

「コンサート始まる前の言葉、本気にしたのね? まって、服を押さえてるから拒否できないじゃないの!」

 

 唇の距離が半分から四分の一になるまでの彼の加速は、まるで赤い彗星並みの速さだった。自分は狙撃が専門で、白兵戦で攻撃を防御するのは苦手なのだ。だからなのか、反射的に顔を背けようとしても顔が動かない。

 まさか、ニュータイプの共感能力のせいで彼の思考を受け入れてしまった? 油断したところを精神に入り込まれたのか。あるいは彼にもニュータイプの素養があったりして。

 心臓がやたらと鼓動しているのを感じる。このままでは、彼とちょっとしたラブシーンを演じてしまうことになってしまうっ。

 実のところ、ドラマでも恋愛場面なんてまともに演じたことはなかったし、たいていは関係が進展する前に邪魔が入る展開だった。もっと大人向けの恋愛ドラマにも出演したいなと思ってはいたが、なにも身内で実践しなくても。

 彼にうぶな小娘だと思われるのも悔しいし、ままよ、このままいくしかっ。

 

【挿絵表示】

 

 でも、あと僅か0.2秒で二人の顔が重なり合おうとしたとき、遥か上空の光景をみて反射的に悲鳴を上げてしまった。

 

「きゃあ~っ! やめて!」

 

 ギョッとしてティモが顔を離し、周囲の人間が一斉に顔をこちらに向けた。

 

「妹を撃たないで!」

 

 まるで他人の声かと思うほどの大きな悲鳴が、自分の喉から上がった。

 

 モビルワーカーを制圧していた二機の《ジム・クゥエル》が、妹がいる空に向かってバーニアスラスターを全開にして上昇していく。巨大な人型から発散されるのは明らかな敵意だ。

 

 

眼前の絶望的な光景を、プルエイトはただ叫びながら見ることしか出来なかった。

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