「あー遠い。この山高いから飛べねえんだよなぁ。いっそ木ぃ倒してくか?」
気がたっていた俺は、そんな野蛮なことを考えながら歩いていた。
ニトリと別れた後しばらくは飛んでいたが、どれだけ飛んでも木しか見えない。
仕方がないので歩いて下山することにしたが、やはり知ってる道に出られない。
そこから川が高いところにあったことが分かる。
ひたすらに歩くしか出来ないので、そのうち出られると諦めた。
しかし長い間歩いていたので、さすがに疲れてきた。
気がたっていたのはそれが原因だろう。
(まあ怒っても仕方ないし、とにかく歩こう。)
「魔力ねえから山は歩くしかないし…せめて木がなけりゃなぁ。」
愚痴を言いながら歩いていたら、大穴が広がっていた。
「なんだこれ?なんで山にこんなものが?」
素直に気になってしまった。
(いやいやこんなこと考えてる暇無いだろ。とっとと帰ろう。)
そう思い再び歩き始めた矢先…
ガサッ
?
なんだ?と思い音のした方を見た。
音の正体を確かめた俺は少し疑問に思った。
何故か小学生位の少女が真っ昼間から爆睡している。
普通なら驚くところなのだろうが、この世界だとこれ以上によっぽど驚くことがある。
さすがに耐性が出来ていた。
「おーい起きろー。」
………全く起きない。
放っておいても別にいいんだが、妖怪に襲われればこの位の子供ではすぐに喰われるだろう。
(仕方ない。)
それはまずいと思った俺は、とりあえず人里に連れていこうと思い、その少女を背負った。
はたから見たら完全に誘拐だ。
あらぬ疑いを掛けられないように気を付けなければ。
と、人里に着いた時の言い訳を考えていたら、周囲の草むらから笑い声が聞こえてきた。
「ひひひ、久々の人間の匂いだぁ。」
「とっとと喰おうぜ!」
「どっちから喰う?」
数は七体。
この数ならいける。
前は狂って意識を失ったが、今ならもう大丈夫だ。
俺はそう思い、背負っていた少女を下に置いた。
「喰われてたまるかよ!」
俺は能力によって目の前に居る妖怪の懐に入り込み、刀で腹を裂いた。
「ガアアア!」
「!いつの間に…!」
次いで横に居るもう一体をトンカチの力を付加して殴り飛ばした。
槌では体が保たない。
しかしトンカチ程度なら充分に耐えられる。
下等妖怪ならこれだけでも充分な威力だ。
「てめぇ!」
予想通り後方から鉤爪がとんできた。
殴りながら回転し、その勢いで襲ってきた奴を切り裂いた。
残るは四体。
居る場所は全員少し離れている。
(今なら逃げられる。)
俺は少女の方に走った。
「死ねぇ!」
「お前がなぁ!」
襲ってきた奴に刀を振り下ろした。
「その程度でやられるか!」
刀を捕まれ砕かれた。
と同時に、能力により走る速度を上げた。
一瞬の内に少女の所に走り着き少女を抱えて跳んだ。
幸いここは木が多いい。
太い枝の一つに飛び乗り、そこからクナイを投げつけた。
上手くは飛ばせなかったが牽制にはなった。
そう判断し、隣の木に飛び乗るのを繰り返し、逃げた。
「はあ、はあ、ここまで来れば安全だろう。」
能力を使っても疲労は変わらないので、俺はかなり疲弊していた。
「くそ!たかが下等妖怪に…!」
過去喧嘩での負けがなかった俺としては、憤りを感じずにはいられない。
(そんなこと考えてても意味ないな。)
とりあえずは無事だったことを喜ぼう。
しかし川から真っ直ぐ歩いてきた以上、逃げたことによって全く別の場所に来た今、道が全く分からない。
ここからまた真っ直ぐ行き始めたら夜までに帰れそうにない。
(てかもう夜だな。さて、どうしたもんか。)
「んん…」
「?ああ起きたのか。大丈夫か?」
どうやら連れてきた少女が起きたようだ。
どこか分からないと言うように辺りを見ている。
「あれ?なんでこんなところにいるの?」
「お前でかい穴の横で寝てたんだよ。妖怪に襲われるとお前みたいな子供はすぐ喰われると思って人里連れてこうとしたらそのタイミングで襲われてな。」
「そーなの?また無意識で外に来ちゃったんだ。」
「無意識?無意識でこんなとこ来たのか?」
「うん。私の能力なんだ。」
「能力?てことはお前妖怪か?」
「うん。」
「ならここの道分かるか?道に迷ってしばらくさまよってたんだよ。分かるなら教えてくれないか?」
「んーそれならあそこに神社あるしそこで一晩泊まらしてもらお!」
「神社?……ああ、あれのことか。泊めてもらうのは悪いが神社には行くか。もう夜だし、急いで帰らないとまずい。」
「私も行くー。」
「お前は帰らないのか?」
「別に明日帰れば良いもん。」
「そうか。なら早く行こう。また襲われたら堪ったもんじゃねぇ。」
「あ、待ってー。」
結局里に帰れず、神社に行った。
「ん?こんな時間に参拝客か?」
こんな時間に来たのは悪かったと思うが一体なにをしているんだ?
目の前にはこいし(行く途中聞いた)と同じ位の子供を叩く女性がいた。
「いや、道に迷ってな。こいしから神社があると聞いて来たんだ。」
「こいし?居るのかい?」
「は?いやここに居る……あれ?どこいった?」
あ、なんか女性の踏んでる子供の横に居る。
「あんたの踏んでる子供の横に居るぞ。」
「え?あ、本当だ。全くこいし、いつの間にか居たらびっくりするからやめてくれ。」
「はぁーとにかく迷ったんだ。出来れば人里の道を教えてくれないか?」
「そうか。迷うとは災難だったな。だが今日は遅いし帰るのは危険だ。なので今日は泊まっていくといい。」
「いいのか?迷惑じゃないか?」
「いやいや人が多いのは良いことだよ。こいしも泊まっていくかい?」
「うん!」
「なら神社に入ろう。諏訪子、この件は後でまた話すからな。」
「悪いな。お言葉に甘えさせてもらうよ。」
「ああ。ゆっくりしていきな。私は八坂神奈子よろしくな。」
「俺は宮代琴羽。今日は頼むよ。」
結局一晩世話になることになった。
ありがとうございました。気が向いたら友達に主人公の立ち絵書いてもらうかもしれません。期待はしないで下さい。では。