現状を説明すると、俺は今巨大な穴の中を永遠とまで思える程の間落下し続けていた。
(地面が見えない…。こんなに深かったのか。)
などと考えていると、ようやく地面が見えるところまで来たようだ。
地面が見えるやいなや、すぐさま能力による停止を行った。
「やっと着いたー。何でこんな深いとこに住んでんだよ。」
誰に言うでもなく呟いた言葉は、知らない声によって否定された。
「深いってそんなにここは深くないぞ?」
「?誰だ?」
声の主を視認した俺は、ここに住む者達の種族をある程度把握した。
いや正確に言えば予想が当たったとでも言うべきだろう。
角が生え、見上げるほどの巨体は、まさしく鬼の姿だ。
「勇儀だー!久しぶりー!」
こいしの知り合いだったようで、駆け足ですり寄っていった。
「こいし?今までどこにいたんだい。さとりが探してたよ。」
どうやらこいしは心配いらないと思ってたようだが姉は相当心配したらしい。
「今から帰るところ~。勇儀も行こ!」
「まあいいけど、その前にそこの人間は何だい?」
こいしの行動はいつも通りらしい。
半分無視している。
「皆に差し入れー!」
ぺし!という小さい音が出る程度の力で、こいしの頭を叩いた。
その程度だが、「痛て。」と軽く声を出した。
「勇儀だったか?今のはこいしの冗談で俺はお前らの食料になるつもりは断じて無い。説明はするからとりあえず話は聞いてくれ。」
鬼は人喰い妖怪の中でも強力だ。
向こうの世界でも鬼は人間に恐れられていた。
そんな妖怪なら食料と聞いて襲ってきてもおかしくない。
「さすがに分かってるよ。とりあえず人間がここにいる理由を聞かせてもらおうか。」
どうやら地上の常識は地下の奴らもあるようだ。
俺は安心して事情を説明することにした。
「分かった。ある程度は省くが、いいな?」
「別にいいさ。」
今までの出来事をある程度説明し終えたところで、勇儀が口を開いた。
「事情は分かったよ。だけど人間のあんたがよくこの穴の中に来れたね。能力があるのかい?」
「…武器を作るのと道具の能力を自身に付加する能力だ。空を飛んだのは後者の方だ。」
「空を飛べる道具なんて地上にはあるのかい?」
「いや地上には存在しない。さっき俺のことは完全に省いたが俺の説明もいるか?俺の知る情報に興味があるならだが…」
「あんたが必要と思うくらいの説明だけで十分だよ。」
「そうだな。簡単に言えば俺は外来人なんだ。外の世界の道具も俺は使えて更に言えば神話の道具も使える。飛行は神話の道具で行っている。まあ説明はこんぐらいだな。つか必要なかったな。」
「外来人だったのかい。でも便利な能力を持ってるねぇ。」
「あんま便利でもねえよ。加減に失敗したら壊れるしな。まあその話はもういいや。とりあえず地霊殿に向かおう。こいしの家なんだろ?」
「それもそうだね。こいし、行くよ。」
「分かったー!」
―道中
「なあ勇儀、周りの奴ら睨んでないか?」
「ああ、鬼も所詮は人喰い妖怪だからね。睨んでるんじゃなくて歓迎してるんだよ。……食料として。」
「そうか、食料か。勇儀、少し待っててくれないか?人間が食料じゃないってことを教えてやる。」
人間を食料と見てる姿勢がむかついた。
「人間のあんたじゃ鬼には勝てないよ。」
「殴り合いの喧嘩ならそう簡単には負けねえよ。」
「……せいぜい頑張りな。言っておくけどどっちか死にそうになったら何を言われようが割り込むからな。」
喋り方から予想はしてたが、勇儀は鬼の中でも上の奴らしい。
十数人の鬼を相手する自信はあるらしい。
「お兄ちゃん頑張れー!」
「よう人間の兄ちゃん。何だ?俺らに喧嘩でも振りに来たのか?」
ガハハハハハ!
複数の鬼が同時に笑った。
複数人で一人を襲う。
向こうの世界でも何度も見た光景だ。
だからこそ言える。
負けることがないと。
「ああそうだ。人間がお前らよりも弱いのが当たり前だと思うんじゃねえぞ。」
「いい度胸じゃねえか。気に入ったぜ。」
鬼の一人が前に出てきた。
「ならこの数相手に勝つ自信があるってことか。」
「一対一なんてまどろっこしいこと言わなくてむしろ良かったぜ。全員まとめてかかって来やがれ!」
――二十分後
「ガ!?」
どさ、
今ので最後だったらしい。
俺は疲労で座り込んだ。
「お疲れ。まさか本当にあいつら倒すとはね。」
「いや、さすがに、疲れた。」
数は十数人。
それを一人で相手したんだ。
疲労が溜まってもおかしくはないだろう。
それ以上にあの数相手(しかも鬼)に勝ったこと自体人間でなら奇跡と言えるだろう。
「大丈夫?お兄ちゃん。」
「疲れただけだから大丈夫だ。」
息を整え、こいしにそう言った。
「とりあえず早く地霊殿に行かないか?早めに行かなきゃ今日中に人里に帰れないしな。」
「じゃあ早く行こうか。」
――地霊殿
まず俺の目には、死体を滑車に乗せる猫耳の変人が映った。
「………」
「…この光景を見たら驚いても仕方ないよ。」
「驚いたわけじゃないが、変人とは思ったよ。」
「初対面で変人呼ばわりとは随分と失礼な人間だね。」
いつの間にか近づいていた猫又?と思われる妖怪につっこまれた。
「失礼で悪かったな。俺の性格なんだ。それよりお前は誰だ?」
「あたいかい?あたいは火焔猫燐。勘違いされやすいけどあたいは火車だよ。貴方は?」
「宮代琴羽だ。こいしを送りにきた。 」
「!こいし様が居るんですか!?」
急に胸ぐらを捕まれた。
「お、落ち着け!」
「燐、少し落ち着きな。 」
「は!すみません!こいし様が居ると聞いて…」
「いや、別にいい。」
どうやら心配してたのは姉だけじゃなかったらしい。
「お燐ー!」
「こいし様!良かったです。何事もなく。人間、ありがとう。」
「…どういたしまして。ついでに人間呼びもやめてくれ。」
「名前知らないんだから仕方ないじゃないかい。」
「さっき説明しただろ。宮代琴羽だ。呼び方は何でもいい。とにかくこいしは送ったからな。俺はもう帰るよ。」
「それなら私も帰るよ。」
「いやこいし様を送ってくれたお礼をしたいし少し寄ってかないかい?迷惑でなければだけど…」
「そうだよ!お姉ちゃんのとこ行こ!」
「そうだな…まあ幻想郷の奴らに挨拶周りもしてたし、折角だから寄ってくよ。」
「じゃあ私もついでだし寄ってくよ。」
「やったぁ!じゃあ早く行こ!」
「さとり様、こいし様が帰って来ました。」
「そうですか。入って下さい。」
「失礼します。」
二人のいかにも主従関係に見える会話を終え、部屋に入った。
(…予想はしてたがやっぱり子供か。)
「こちらも貴方がそう考えるのは予想してましたよ。」
心を読まれた?
さとり…なるほど。
「俺の心を読むってことは名前通りお前は覚り妖怪か。」
「正解です。私の能力は心を読む程度の能力。まあこの能力のせいで私は嫌われてますけどね。」
「そんなことないですよさとり様!私達はさとり様のこと大好きです!」
「ふふ、ありがとうお燐。」
「…仲良いのは良いと思うが、それを他人に見せるのはどうかと思うぞ。」
「確かにそうですね。すみません。。」
「とにかく挨拶も済んだし俺の用はもう済んだ。もう帰るよ。あと、礼なら人里への道を教えてくれ。」
「そんなことでいいのですか?」
「ああ、もともと道に迷ってさまよった結果ここに居るんだ。それだけで十分だ。」
「そうですか。しかしそろそろお昼ですし、良ければ食べて行きませんか?」
確かに少し腹も減ったな。
「なら、お言葉に甘えるとするよ。」
「じゃ早速作って来ますね。」
「あ、お燐、ついでにお空を呼んで来て。」
「分かりましたー。」
燐は部屋を出ていった。
「では、少し待ってて下さい。」
「ああ。」
―食事中
「お兄ちゃんこれも美味しいよ!」
「あ、ああそうだな。」
そこまで大食いなわけでもないのに、こいしに進められるままに食っていたから、さすがに満腹だった。
「こいし、琴羽さんも困ってるようだから食べてほしいのは分かるけど、もう止めておきなさい。」
「はーい。」
(助かったよさとり。)
と心の中で礼をしておいた。
「じゃあそろそろ行くな。飯ありがとな。」
「道案内はお燐に任せるわね。」
「分かりましたさとり様。では琴羽さん、行きましょう。」
「ああ。」
食事を済ませ、地霊殿を出た。
「お、やっと見つけた!おーい!こっちにいたぞー!」
出た瞬間鬼の声が聞こえた。
一人の鬼が他の鬼を呼んだことによって複数の鬼が集まってきた。
「よし!連れてくぞー!飲みに行きますが姐さんもどうですか!」
「おお!いいじゃないかい!」
おい、まさか…
「よし行くぞー!」
有無を言わさず複数の鬼たちに連れていかれた。
ありがとうございました。琴羽いつになったら帰るんでしょうね。次は霊夢側書きますね。では。