三人への説明を終えて、俺、レミリア、咲夜、美鈴、霊夢、魔理沙の六人は門前に移動していた。
「説明した通りのルールでよろしくね美鈴。」
「分かってますよ咲夜さん。でも…たとえ相手が人間でも、加減は出来ませんしする気もありません。」
「こっちこそ分かってるわ。貴方の性格ぐらいはね。」
二人の会話を遠巻きに眺めていたが、互いのことを知っているような会話は、まさに家族の会話のようだった。
(家族…か。俺もああなれたのか?)
『自分で壊したくせになにを言っているんだ?』
「!?」
急に声が聞こえた。
自分と全く同じような声が。
(自分で……壊した?)
一人で考え事をしていたら、声をかけられた。
「琴羽ーそろそろ始めるわよー」
「!あ、ああ分かった。」
霊夢の声で現実に引き戻された。
(そうだ、今はこっちに集中しよう。)
「琴羽さん私も負けたくないので、全力で行かせてもらいます。」
「ああ、こっちも本気で行かせてもらう。」
………
「始め!」
レミリアの掛け声で戦いは始まった。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
始まったはいいが、美鈴の殺気が強いために無闇に動けない。
動けば死ぬ、それが素人ながらに分かってしまう。
しかし、動かなければ終わらない。
(なら……)
俺は今の脚力で出来る全力で走りだした。
向こうも同じ考えだったようで、ほぼ同時に走りだしていた。
(明らかに向こうの方が早い。なら……ここだ!)
俺は能力を使って脚力を上げ、突進した。
美鈴はそんな行動をすると読んでいなかったようで少し驚いていた。
しかしその程度の読み違い、戦闘慣れしている美鈴からすれば問題無かったようだ。
少しの遅れもなく防御体制をとった。
能力で強化したとはいえ、防がれては威力が出ない。
「甘いですよ、琴羽さん。」
その言葉の直後、腹に激痛が来た。
「がっ!?あ…」
カウンターのようだ。
さらに追い打ちで横腹を蹴り飛ばされた。
「ぐっ!?さ…せるかぁ!」
ただ蹴り飛ばされるだけでなく、蹴ってきた脚を全力で肘打ちした。
蹴り飛ばされて平原に伏す形になった。
「脚を打ちましたか。いい反応と判断ですね。でもその程度では痛みにもなりませんよ。」
「ぐっうう……」
腹の痛みが大きく、立つだけでも一苦労だった。
「どうしました?その程度なのですか?それなら…これで終わりです!」
走る足音が聞こえた。
(この状況を打破する方法はある。だが読まれれば終わる。どうする……)
自分の状態からやらなければ負けることを理解した。
「出来ればやりたくないが……」
「はああぁぁぁ!」
美鈴の攻撃を避け、勢いに任せて蹴りを放った。
「くっ!?」
もうそんな余力は無いと読んでた美鈴は、後退してこちらへの警戒を強めた。
その隙を逃さず、追いながら俺は言った。
一枚の紙を持って。
(あれは…スペルカード!まずい!)
「幻符 『影槌拳』(えいついけん)!」
ドオオン!
高威力の殴打が美鈴に繰り出された。
「くっ!?(こんな威力の技をまだ……)」
「遅い!」
再び力任せに蹴りを放った。
「そんなもの…もう効きませんよ!」
美鈴はその蹴りを防ごうとし、片腕を脚に向けもう片方の腕を構えた。
(ここだ!)
美鈴が防いだ蹴りは美鈴の体をすり抜け、代わりに美鈴の腹に激痛が来た。
「がっ!?なぁ!?」
何者か、いや俺に殴られた美鈴は、耐えられずに吹き飛び、門にぶつかった。
「がっ!?…く、何…が…?」
あの様子だと、もう美鈴は起き上がれなそうだ。
「はぁはぁ…成功して良かったぜ。美鈴の場合読まれた可能性があったからな…痛っ!?がはっげほ!」
血を吐いて伏した俺を見て、霊夢が駆け寄った。
「琴羽!どうしたのよ!」
(もう意識が…)
薄れていく意識の中で、霊夢の声が聞こえた。
それと同時にレミリアの引き分けの声と、咲夜への治療の指示を出す声も聞こえた。
(よっ…しゃ…)
心の中で軽く喜んだ直後、俺は完全に意識を失った。
「んん…ん?ここは……永遠亭?」
起き上がって周りを見渡すと、見覚えのある部屋にいた。
とにかく誰かいないか探すことにした。
「ん?あっ起きたんですね!待ってて下さい!すぐに皆さんお呼びしますので!」
「あ、おい鈴仙……」
走っていってしまった。
「皆さんって……あいつらいんのかよ。」
まだ体が痛むので、ベッドに戻ることにした。
「ふぅ…初めて使うと疲労がやべえな。あんま使わないようにするか。」
一人言を呟いていると、急に襖が開いた。
「琴羽!」
急に霊夢が飛び付いてきた。
「うお!?霊夢落ち着け!とにかく離れろ!」
「あ!ご、ごめんなさい。」
「琴羽~怪我は平気か~?」
魔理沙の気の抜けた声が部屋に響いた。
「ああ。さすが永琳だよ。」
「それよりあの時に何をしたかを聞かせて欲しいのだけど?私達、半分はそのために来たんだから。」
続いてレミリアと咲夜も来た。
「レミリア達もいたのか。あの時…スペルカードのことか。」
「あ、それ私も聞きたかったぜ。」
「私も。」
全員あのスペルカードがどうゆうものか聞きたいようだ。
「あれ作った方がいいって言ったのは紫だよ。能力の特性を封じ込めたカードを、つまりスペルカードを作っとけってな。もちろんスペルは自分で作ったが。」
「紫が?でも何で…」
「戦闘になった時にあったら便利だからだそうだ。他にも二枚作ってる。まあ使う時に見せてやるよ。」
「それよりあのスペカの能力教えろよ~」
魔理沙が急かすのでとりあえず説明を始めた。
「あのスペルは完全に俺の能力で行われてるんだ。本来の使い方なら最初の打撃は無い。」
「本来の使い方?」
「ああ、あれは自分のホログラムを投影、戦わせて相手の死角から槌の力で殴り付けるんだ。硬い妖怪でも相当なダメージになるだろ。」
「なるほどね。美鈴にも伝えておくから今度また手合わせお願いするわ。まあお見舞いも済んだし、私達は帰るわ。夜も遅いからもう寝た方がいいわよ。お大事に。」
最後に咲夜がお辞儀をして二人は部屋から出ていった。
「レミリアも言ってたけど、もう夜だし二人も泊まっていけば?永琳ならそんぐらい許してくれんだろ。」
「分かったわ。おやすみなさい。」
「お休みだぜ。」
「ああ。」
二人が出ていくのを確認して俺は布団に倒れた。
琴羽達が永遠亭に居るとき一人の少女は笑っていた。
「ふふふ、準備は出来たわ。琴羽……自分の大切な物に壊されたとき、自分の大切な物が壊されたときに貴方はどんな感情を抱くのかしら?ふふふ、あははは!」
狂人にも似た笑い声で……
さて、予定通り一章は終わりです。琴羽のスペカはほかにもあります。いつか出ますよ…次の回も。休みの日に書けば娯楽の時間を生け贄に書けそうです。……では。