隙間を抜けて最初に映ったのは、風の斬撃(おそらく鎌鼬だろう。)だった。
その斬撃は天狗達の体を次々と裂いていく。
その中で、狐と猫の妖怪が避け続けていた。
『ルオオオオオオォォォォオオオ!!』
斬撃を放っていた者は、雄叫びを上げ避け続ける二人に飛びかかった。
(まずい!)
と思い俺も同時に飛びかかった。
その巨漢は狐の妖怪を切り裂こうと手を上げた。
「藍様!避けて下さい!」
猫が声をかけるも遅く、腕から血が噴き出した。
ただし、その直前に狐を突飛ばした俺の腕から。
「ぐっ!吹き飛べ!」
痛みに耐えながら蹴り飛ばした。
「あ、貴方は…?」
「悪いが自己紹介は後だ!構えろ!」
「!そうですね。見たところ貴方は近接攻撃が得意そうですね。後ろから弾幕で援護しますので近距離で攻撃して下さい。橙!行きますよ!式神『橙』」
「分かりました!藍様!化猫『橙』!」
「じゃあ俺も突っ込むか。」
二人のスペルと同時に弾幕が出現した。
直後に俺も能力で走った。
『オオオオォォォォォォ!』
だが俺達の攻撃が届く寸前、雄叫びを上げた巨漢からとてつもない竜巻が起こった。
周りの天狗は全滅し、近くにいた俺は吹き飛ばされ、二人の弾幕はかき消された。
「がっ!?な…なんだ?」
吹き飛ばされた俺は木に激突し、二人も離れていた筈なのに吹き飛ばされていた。
「そんな…まだ…こんな力が…大天狗の妖力は底なしとでもいうのか…!」
(大天狗?この山は天狗のものだろ?なら治めてるのは大天狗じゃないのか?)
「そんなことどうでもいい…狐!猫連れて早くどっか行け!誰でもいい!助けを連れてこい!」
「そんな…貴方はどうする気ですか!」
「俺は……!?」
答える前に鎌鼬が俺に向けて放たれた。
「糞が…!」
大きい力には大きい力を。
俺のスペルの一つは、無理をすればかなりの威力(下手をすれば魔理沙のマスパ以上の威力の)を出せるものがある。
しかし霊夢や紫が壊せないような竜巻を壊す威力はだせない。
そう理解した俺は別の攻撃法を考えた。
大天狗の攻撃は狐と猫には行かず俺だけに集中していた。
(狙いは俺なのか…?なら…!)
「狐!狙いは俺だ!時間は稼ぐ!早く行け!」
俺は狐と猫のいる逆側へ回り込み、鎌鼬を避け続けた。
渋ってはいたようだが、狐と猫の姿は消え、もういなくなっていることが確認された。
スペルを使わず攻撃を当てられないか試したが、俺の放つ銃弾や投げナイフは弾かれ、相手の弾として飛んできた。
(反射の能力か?これじゃ撃っても反されるのがおちか。避け続ける…いや…)
俺は奴の攻撃の弱点を突くため、スペルを変換した。
それと同時に新たなスペル作った。
(威力は下がるがこれしかない!)
「魔壁『翻る大地』(ひるがえるだいち)、魔砲『大地巡る剣砲』(だいちめぐるけんほう)!」
地形を利用した新たなスペルは、ぱっと思い付いた程度のものとしては強力だった。
『ガアアアアアアァァァァ!』
地面が捲られ盾となり、大天狗の地面からは大剣が飛び出ていた。
そこらの妖怪なら確実に倒せる一撃だった。
「これでどうだ…?」
あの雄叫びからして、明らかにダメージにはなっていた筈だ。
ただ一つの誤算を除き、狙い通りの攻撃になった。
だがその誤算は大きすぎた。
その竜巻の能力だった。
地面から突き出た剣は砕かれ、鎌鼬は壁を破壊した。
(!なっ!?嘘だろ!?)
砕かれた壁の破片を避け、飛び続ける鎌鼬も避け続け、相手の能力解析を行った。
しかし、明らかになったのは自分の能力では、勝ち目がないということだけだった。
自分の最大火力の攻撃を砕かれ、弾幕やナイフさえも弾かれ、時間稼ぎさえも出来るか分からない。
「ぐっ!?こんな…ときに…!」
全身から血が噴きでる。
能力の対価だった。
動きが止まった一瞬の隙に、鎌鼬が放たれる。
「しま――!」
防御も間に合わず、腕が裂かれる。
続けて脚、腹と次々に裂かれた。
「がっ!ああ、あ…」
倒れこみ、激痛によって薄れる意識の中、歩み寄る大天狗の足音だけが鮮明に聞こえる。
頭を掴まれ、後ろの木に押さえつけられる。
「ガアアアアアア!」
そのままとてつもない握力で頭を握られる。
大天狗が纏っている風は俺を裂き続け、体中がぼろぼろになる。
(こんな簡単に死ぬのかよ……約束も守れねえのかよ……こいつ倒せなきゃ傷付く人が…大勢…出るのに…仕事も…こなせねえのかよ…)
『生きて…!』
過去に親友から言われた言葉を、いま思い出した。
「!……死ねない…まだ…死んでたまるか…」
ぼろぼろの腕を無理矢理動かし、対価などお構い無しに能力を使った。
だがどれだけ力もうがほどくことは出来ず、自分を掴む腕の力が強くなるばかりだった。
(どうすりゃいいんだよ…俺の力はこの程度なのかよ…狐………頼む…倒してくれ…)
「せめて…こんぐらいはしてやる…!」
能力で大天狗が纏っている風を消した。
だがそれで魔力は完全に尽きてしまった。
脱力し、腕は下がり、抵抗の力ももう残っていなかった。
意識は薄れ、視界には何もなくなった。
周りが白くなり、死んだはずの親友達の姿が見えた。
それと共に遊ぶ過去の自分、血の繋がらない家族、そして霊夢や魔理沙、幻想郷の人達。
(これが走馬灯ってやつか?そうか…俺はやっと、お前らの所に…)
『本当にそれでいいのか?』
目の前の景色が消え、一人の少年が立っていた。
橙の様呼びは読み方しゃまです。書きづらいんですよ。しゃまの方がいろんな作品で多い喋り方ですし。どうでもいいですかそうですかそうですよね。そういえばタグにチート能力を付けた理由はそのうち分かります。では。