『…琴羽、そろそろ起きろ。』
天智の声が頭に響いた。
(眠いんだよ寝かせてくれ。)
面倒だから考えるだけで言葉には出さなかった。
『お前俺に話しかける必要ないからって会話方法を簡略化すんな。とにかく起きろ。話しがある。頭働かせろ。あと声に出せ。』
「分かったよ起きるようるせえな。まあ紫達の治療必要ならしなきゃいけないし、あまり寝てても永琳に悪いからな。どんぐらい寝てた?」
『分かればいいんだよ。あと言っとくが昨日からずっと寝てたからな?永琳と会話してからも二時間寝てたぞ。眠いとか言ってんじゃねえ。』
どうやらまる一日寝てたようだ。
「はぁ、それで?話ってのはなんなんだ?」
俺は一つ溜め息を吐いて天智から話を聞くことにした。
『話は二つ。一つは霊夢や魔理沙、つまり永琳や鈴仙以外に能力のことは話さない方がいいっていうこと。まあこれに関してはお前でも理由は分かるだろ?つことで説明無しで二つ目だ。大天狗との戦いを少し思い出してもらうぞ。あいつはお前を狙って攻撃をしてきたな?』
天智の言うとおり大天狗は俺を狙っていた。
いいや、俺が戦いに参加してから俺しか眼中になかった。
おかげで狐と猫を助けられたが、不可解な点ではある。
『悪いが俺にも予測しか出来ん。ただもしかしたら……お前の元の世界の知り合いか何かがお前を殺そうと大天狗を仕向けてきたのかもしれん。』
天智はつまり、この世界の存在以外で、さらには俺への憎しみの念を持っている者が、俺と俺の周りの奴らを襲ったということだ。
そしてこれからも襲ってくるということだ。
「幻想郷の住人が俺を狙う必要がない。だが狙われてるのは俺だ。ならそこまで考えることは子供にも出来る。それでもただ一つ分からない。」
『俺もだ。狙いがお前でかつ大天狗と同レベルの奴が駒としているのなら、お前が寝ている間に殺せばよかっただけだ。』
天智は知識の共有はしてくれるからありがたい。
天智の言うことを簡単にするならば、俺が寝てる間に殺せばよかっただろ?ということだ。
『何らかの原因、もしくは俺の存在が攻撃をしてこない原因の可能性はある。さらに言えば大天狗の力はもともとの力をはるかに越えていた。』
「?どういうことだ?大天狗が強くなってたってことか?」
『ああ。正確に言うなら妖力の量があいつの体に合わないレベルだった。』
「…確かに妖力の量は異常だったが、それなら俺は勝てないんじゃないか?たとえ正気に戻すため近づくだけでも無理だろ。」
大天狗の妖力は紫や野良の下等妖怪よりも強かった。
さらに腕力や脚力も普通じゃなかった。
『ならその力を大天狗が扱いきれてなかったらどうだ?能力を使わない身体能力だけで戦っていたとしたら?』
「身体能力だけで…?」
俺は思考を巡らせた。
『生物の行動は考える頭がなくなれば、体が覚えている動きを行う。能力も同様だ。そこから考えられる敵の能力は、いったいなんだろうな?』
その天智の言葉から、敵の能力に関してを考えるよう頭を切り替えた。
その中にあった可能性は、敵の能力が俺が考えていたよりも恐ろしいものであり、また使うのが難しい能力だということだった。
『その可能性以外に存在するならそれはもっと恐ろしいとおもうぜ?』
考えていたことが天智にはばればれだったようだ。
「つまりそれ以外の可能性はないと?」
『調べる必要はある。紫に話すしかないだろ。俺の存在はどうせばれる。運が悪けりゃ霊夢達にもな。なら俺に関しては戦うことは出来ないとでも言えば問題ない。』
話して問題があるのは、天智が戦えるということ。
その力が強すぎれば、当然幻想郷の敵として天智が疑われる可能性があること。
それは俺がそう考えられるのと同じことだった。
天智が使うのは神力。
当然力は強い。
そう思われることは当然のことだった。
(口止めくらいはしといた方がいいな。)
「……分かった。話しすぎたな。これからも襲われる可能性があるなら紫達の治療は急いだ方がいい。とにかく今話した内容を紫に伝えよう。」
話しを切り上げて紫達のいる部屋へ向かった。
「この部屋か?」
「はい。紫様と霊夢さんはここです。他の人達も隣の部屋にいます。」
永琳に聞き忘れて部屋の場所が分からないから、偶然部屋を通りかかった鈴仙に案内をしてもらっていた。
病院だけあって、患者が寝る部屋はなかなか多かった。
しかしそこまで広いわけでもないから、特に迷うことはない。(ただし外は例外)
「サンキュ鈴仙。」
「いえ仕事を手伝ってくれるんですからこれくらいいいですよ。正直私の仕事なくなって休みができて嬉しいですし。何かあったら呼んでください。では。」
患者に接するような態度で俺と会話をする。
確かに患者ではあったが、一応従業員だし患者扱いは出来ればやめてほしい。
……いや、従業員だと永琳の実験台か。
何でここ仕事場に選んだんだ。
とはいえ紫達の部屋には着いたわけで、部屋に入って天智を呼んだ。
「天智、俺はお前の能力どうやって使えばいいんだ?」
『お前自身の能力を使うときと同じやり方すりゃいいだけだ。まあ使う力は神力だから、発する力の種類は変えた方がいい。そうそう、お前が能力を同時に使えるのは二つだ。既に三つあるが同時には使えない。体が保たないからな。覚えとけ。』
「分かった。とにかく紫達の治療に力は貸してもらうぞ。」
『こっちこそ分かってるさ。力の加減は上手くやれよ。』
言われた通り回復の力を使おうとした。
瞬間、髪の色が薄い茶髪から真っ白の白髪に変わった。
俺は気付かずにそのまま力を使っていた。
戦い始めてから力の変動、傷の付きかた、気配の探知、あらゆることが成長していた俺は、一目見ただけでどこに傷があるかや傷の深さを把握出来た。
『まあ自分が怪我ばっかするからだけどな。』
天智が皮肉を込めて言った。
しかし無視して調べ始めた。
(全身に切り傷、他を庇ったのか?左腕に左足は折れてる……右足に関しては一部が無い。普通なら死んでるだろこれ。妖怪なら平気か。)
紫こそとてつもない傷の量だったが、さすがに使う力が神力だっただけに傷は急激に治っていった。
通常妖怪に神力は毒だが、紫や大天狗のような強大な妖怪はあらゆる点において通常とは異なる性質を持つ。
そのうちの一つは弱点である神力の感覚変化、他にも通常妖怪は人間に知覚されないが、知覚されるようになるなどいろいろあるらしい。
霊夢は紫程傷は深くなく、傷の治りは早かった。
「ふぅ。思ったより力使った感じがしねえな。お前神力の量多くねえか?」
『当たり前だろ。たかが霊力と一緒にすんな。疲労無いなら次行くぞ。』
「分かってる。」
それからは他の奴らの治療を行い、疲労で寝る可能性考えてたことを馬鹿に思いながら、説明のため紫が起きるのを待った。
今言うこと特にありません。では。