「うう……」
「ん?」
紫が呻き声を上げた。
傷は治せても俺の能力では痛みは消せない。
しかも折れた骨は付けることは出来るが、ずれた状態を治すには手で動かすしかなかった。
腕を掴みながら紫は呻いていた。
「藍…橙…」
呻きながら寝言のように以前の狐と猫の妖怪の名を呼ぶ。
藍と橙はしばらくここにいたようで、俺も会った時に名前を聞いておいた。
当の二人は俺や他の連中が無事だと知って安堵し、永遠亭から帰っていった。
(悪い夢でも見てんのか。そういや藍達が無事かすらこいつは知らないのか。夢の中で何かあっ……)
「!藍!?橙!?」
俺の考え事はその叫びで消された。
「やっと起きたか。藍と橙なら無事だ。そもそも俺はあいつらに運ばれたからな。」
言った通り俺は二人に運ばれた。
その言葉に平静を取り戻した紫は、長く寝た者が最初に口にすること確定の言葉を言った。
「……二人が無事ならいいわ。私はどれぐらい寝てたの?大天狗は?」
大天狗がどうなったか、実は俺も知らない。
ここに運ばれてから俺が起きるまでの間に、俺より先に起きた大天狗は山に帰ったらしい。
礼をしたいから山に来てほしいと俺への伝言を永琳に残して。
「大天狗は問題無い。お前が寝てる間に騒動は起きてないからな。」
「そう……」
「ついでに言えばお前は来てからまる二日眠っていた。とっくに霊夢達は帰ったよ。」
言葉の通り俺が紫達を治したのは昼にも関わらず、既に今は夜だった。
紫に話す筈の内容を先に永琳に話していたことで、暇ではなかったが、永琳がいなかったら寝てたな。
「そんなに寝てたの?………私の怪我は?」
「治した。そのことも含めてこれから少し話がある。」
いままでの自分の考察や天智のこと、とにかく話す予定だったことは全て話した。
紫はどんどん考えるような顔つきになってゆき、一言だけ残して去っていった。
「私の方で調べてみるわ。貴方も永遠亭で働きながら少しでも調べておいて。」
「分かった。何か分かったら来てくれ。」
自分が原因である可能性がある以上、協力は惜しまないつもりだ。
しかしいつ来るか分からない敵に、悠長に構えていることも出来ない。
なので出来る限り天智の能力を使いこなせるよう永琳の患者の中で、怪我人は俺に任せてもらった。
患者には悪いが、成功すれば永琳より早く治せる。
だから実験台にしてもあまり怒らないでもらいたい。
結局今日一日は紫と話した後、怪我人の治療を行っただけで終わった。
深夜皆が寝静まったころに、俺は竹林を歩いていた。
能力を回復だけに使っていても仕方ないと思い、攻撃にも使えるよう練習しに来た。
元の二つの能力も、ある程度は使えるがまだ甘い。
それぞれの能力の使い道を考察しながら、まずは大天狗のときの鎌鼬を使ってみることにした。
スペルは使えるが、能力は無我夢中だった。
スペルに関してはもともと天智の物なので、俺が使えると思わなくても使えるらしい。
「今更だけど髪白くなるのか。面倒くせえな。」
月明かりに照らされ、少し輝いた後ろ髪を見て、俺は今更ながらに気付いた。
『こんな夜中に練習する必要あるか?昼に紫にでも頼みゃいいじゃねえか。』
天智に言われたが、既にそれは思いついていた。
しかし……
『病み上がりに働かせるのは心が傷むと。別に平気だろ。あいつなら。』
心を読み、考えていたことを先に言われた。
「………別にこの竹林を切っても問題ない。とにかく力は使わせてもらうぞ。」
『明日の仕事に関わらないぐらいでやめとけよ~』
強いイメージをするため、刀を作り出した。
「せやぁ!」
そのまま横凪ぎに刀を振り、衝撃波のような鎌鼬を大量に飛ばし、目の前の竹林を切り伏せた。
次の回でとりあえず永遠亭は終わります。まあ番外編みたいなものですし、文字数少ないのは仕方ないということで。では。