東方独団記   作:十六夜凜

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やばいです。図書館だけで一話分使ってしまいました。しかも前の話から結構時間空けてしまって申し訳ない限りです。これじゃ忘れられてしまいます。と理解していても早く出来ない悲しみが。………ではでは~。


第二十七話 動かない大図書館

「………………」

『………………』

初めてここの図書館に来た俺、ないし天智の二人は目の前に広がる異様な光景に絶句していた。

数えきれないほどの本。

それはただの図書館というには大きすぎる。

(十八…十九…二十………まだあるな…)

俺が数えたのは本の数ではない。

その本が入る棚の数を数えていた。

壁にはびっしりと本棚が置かれ、棚一つ分を空けて四つずつ。

数は十や二十では収まらない。

(パチュリーって奴はこれ全部読んだのか?)

本を読み初めると、その本を読み終えるまでは新しい本を読もうと思えない。

話が気になってその気が起きないのだ。

それは俺も同じで様々な本を同時に読もうとは思わない。

もしその考えと同じ考えを持つなら、全て読んでることになる。

『信じられねえな。』

「……」

天智と同じで俺もそう思った。

呆けて突っ立っている間に、どこにいたのか羽を生やした女性が近くまで来ていた。

「あの…どうかしたんですか…?」

「………」

『おい。』

(…悪い。)

近くまで人?が寄ってきていたことに気付いてはいたが、俺はここの本をどれだけ読めるかを考えていて、無視する形になってしまっていた。

天智に言われとにかく声を返すことにした。

「悪い。少しボーとしてた。ここにパチュリーって奴はいるか?」

「あ、パチュリー様に御用でしたか。でしたら一番奥にいますよ。」

(奥………あれか。遠いな。」

能力で視力を上げ(双眼鏡)本棚の隙間から最奥を確認した。

本が積み上げられた机があるだけだったが、おそらく居るのだろう。

とにかく向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

積み上げられた本を避け、横から机の逆側を確認した。

「こあ?丁度いいわ。ここの本片しておいて……?貴方は?」

こあとは入り口にいた女性のことだろう。

とにかくここに来た時のことを説明した。

「なるほど。人間でよくここに来ようと思ったわね。」

「いや一度以前に来てるんだが……とにかく暫くはここにいるから少し挨拶にな。」

「そう。まだ聞いてなかったけど貴方の名前は?」

「宮代琴羽だ。」

「!琴羽?……そう貴方が……」

「?」

「貴方に渡すものがあるから、少し付いてきて。」

「?ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付いて行って着いた場所は、この館の一室だった。

「ここに置いといたから、少し待ってて。」

完璧に物置だった。

ただし年季の入った本や瓶、フラスコ。明らかにパチュリーという魔法使い専用の物置だった。

「あったわ。これよ。」

それは形こそただの箱にしか見えないが、俺にとっては見覚えのあるものだった。

「!?どこでそれを!?」

その箱は俺の居た孤児院の子供たちが全員持っていた唯一形のある繋がりだった。

何故かは知らないが、孤児院に来たばかりのころに俺たちは全員これを渡された。

親代わりの二人からはお守りと言われ、またこの箱はどう頑張ろうが開けることが出来なかった。

その箱はもう俺の手元にはなかった。

ここに来た時から、理由は分からないが手元から消えた。

箱があった場所には箱に付いていたチェーンのみが残っていた。

その箱はとても小さかったが、紋様が刻まれており、見間違うことはあり得なかった。

「紫からの預かり物よ。それの魔力の制御を頼まれたの。終わってから貴方が来たら渡すように言われてたから渡しとくわ。」

「魔力制御……?」

「…まさか知らずに持っていたの?あれ程の魔力の塊を?」

「は……?魔力?」

「…本当に知らなかったのね。あれの中身はおよそ人間に持たせていいとは言えない程の力の塊よ。それもご丁寧に石のようなものに形作った物にしてね。あんな物持っていたら普通の人間なんて耐えられないはずだけど……」

自分では開けられなかった箱の中身がそんなものだったということが知れた喜びと、なぜそんなものを皆に持たせていたのかという疑問が頭の中で浮かんだ。

魔力の塊というものがどうゆう意味なのか。

この世界に来なければ知ることも出来なかっただろう。

魔力の持たない人間がそれを持てばどうなるか。

答えは簡単だ。

魔力は人間の脳が作り出す情報によって使用出来る。

つまり魔力を自覚することで使用が可能になる。

たとえ魔力を元より持っていたとしても、自覚しないうちにそんなものを持っていれば、脳が耐えられずに壊れてしまう。

そこから分かることは、この箱を渡した者による明確な殺人予告に近い。

それを理解した俺は、何故という言葉しか出てこなかった。

「……何を考えているか分かるしその気持ちも分かるわ。でも何故かなんて知ったところで意味はないのだから、その感情は忘れたほうがいいわ。」

(忘れろ?あれだけ優しくしてくれた人たちがしたことを気にするな?)

不可能だった。

大好きだった二人が自分を、皆を殺そうとしていた。

その事実を忘れる。

その事実から目を背ける。

(出来るわけがない………!)

「………?」

「………それは貰ってくよ。でも一つだけ頼む。もうこんなこと頼んでも意味がないのは分かってる。だけど頼む。もうこれについては詮索しないでくれ。」

この箱に付いてこれ以上調べられたくなかった。

いや、俺が知りたくなかった。

「………分かったわ。」

その意を汲んでか、パチュリーはその頼みを承諾してくれた。

それからはこの図書館を利用していいか、紫から頼まれたことはそれだけかなど、軽い世間話をして図書館を後にした。

 

 

 




急遽追加した話によって美鈴の出演時間が延びそうです。というか別のところでやろうとしてたことを予定を変えてここにした結果です。しかし断片を見せるといったパチュリーの役目、断片じゃなかったですね。もうパチュリーに話に関係する役目はありません。話の都合上仕方ありません。まあ別に出番なくなるわけじゃないんでご理解いただけると幸いです。では。

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