「こちらが妹様のお部屋です。……ないとは思いますが、もし妹様が弾幕ごっこがしたいと申されても断るようお願いします。」
「ああ分かった。案内ありがと。」
「では。」
フランドールの部屋が分からず迷っていたら、仕事中の咲夜を発見、案内を頼み現在に至る。
やはりこの館は広く、道が全く覚えられない。
挨拶に行くだけだったのだが、毎回こう迷うようなら能力を使おうと、たった今決めた。
軽くノックをしただけで反応が返ってきた。
よほど暇だったのか、はたまた寂しかったのか、ノックしてから数秒と立たないうちに扉は開かれた。
「誰~?」
「お前がフランドールか?」
レミリアの容姿から予想はしてたが、やはり子供だった。
「?そうだよ?でもフランドールなんて呼ぶ人初めてー!皆フランっていうから。」
「なら俺もフランって呼んでいいか?フランドールって言いにくいんだよな。」
「うん!よろしくね!」
知らない相手でも無邪気に話せるのは子供のいいところだとも思うが、やはり危険とも思える。
まあ他人の家のことなど知ったことじゃない。
特に注意するでもなく、他と同じように説明した。
「ふ~ん、じゃあ別にここで働くわけじゃないんだね。」
心底残念そうに言うのは、やはり相手してくれる人がいなくて暇なのだろう。
「でもここにいる間だけでも遊べるならいいや!ねえ何して遊ぶ?」
無邪気にそう言うフランだがこれはつまり………
「今から遊ぶのか?」
つまりそういうことだ。
今から遊ぼうとしていた。
(挨拶に来ただけだったんだがなぁ。……まあまだ朝だし昼ぐらいまでなら遊んでやってもいいか。)
子供が好きだったから、こうも遊びたがっている子供を見るとつい甘くなってしまった。
(俺も甘くなったな。向こうじゃ絶対にあり得なかったのに。)
と元の世界で暮らしていた日を懐かしく思った。
まあそもそも喧嘩ばかりしている俺に近づくのが子供だけだったからだが。
「昼までな。」
「やったー!じゃあ何して遊ぶ?」
「お前がやりたいことなんか言えよ。レミリアからはフランがしたいことに付き合ってやれって言われたからな。」
「ん~じゃあ弾幕ご…」
「それ以外な。」
言われることは分かっていて、冗談のつもりで言っていたようだ。
それから一時間ぐらいが経過し、時間は十二時になっていた。
「妹様、昼食の準備が……琴羽様もいらしてましたか。では、食堂へ参りましょう。」
「ああ分かった。…様呼びやめてくれ。」
「ふふ、分かりました。では先に食堂に行ってますので、お二人とも後程。」
「うん!お兄様、行こ!」
何故かフランにはお兄様と呼ばれていた。
子供は目上の人全てを兄、姉と呼ぶようだとこの世界で思った。(こいし)
「琴羽特訓はどうしたの?」
レミリアに聞かれたが、午後からやることにしていたので問題はなかった。
「すまん。勝手だったが午後からやることにしてた。美鈴も悪いんだがそれでいいか?」
「私は構いませんよ。それなら午後に倒れるまで教え込んであげますよ?」
「頼むから俺が保つレベルにしてくれ。まずはもう一回戦うから、そのつもりでいろよ。」
「私のリベンジ戦ですね!今度こそ負けませんよ~。」
「俺だって負けてたまるかよ。これでも負けず嫌いなんだ。次も勝ってやるよ。」
偽りない本心を言い合って、やる気の証明にはなったようだ。
「お願いだから壁壊したりしないでね。」
レミリアからの切実な願いだった。
「ルールは以前と同じでいいですか?」
美鈴は前と同じルールで戦って勝ちたいらしい。
ハンデがあったとはいえ負けたことは相当悔しかったらしい。
だがそのルールで戦うのは、俺が納得できなかった。
食事の時に言った通り、俺の性格も負けず嫌いだった。
だから俺が提案したルールは……
「悪いがルール変更だ。今回はそっちにも本気で戦ってもらう。」
以前の戦闘は、能力が弱く、弾幕も使えない俺を殺さないため美鈴は力をかなり制限されていた。
能力が禁止なら、弾幕を張ることでさえ禁止されていた。
だが今なら能力の多岐にわたる使い方、弾幕の使用法、大天狗との戦い以来会得した様々なスペル、そのどれもが俺の力になっている。
たとえその一部は見られてはいけないものだとしても、美鈴と戦う分には十分だ。
天智の能力はそれほど強力なものだ。
弾幕も大天狗レベルの相手に対抗できるほどの数と密度を作れるようにした。
それを考えての提案だが、そのことを欠片も知らない美鈴は、やはり納得出来ないらしい。
「私に殺されたいんですか?知り合いを殺すのはさすがの私でも辛いのですが?それに貴方を鍛えろと言われた以上殺すわけにもいかないんですよ?」
予想通り俺を殺すことを心配していたようだ。
『力の断片でも見せてやりゃそんな文句言わねんじゃねえか?』
天智の言うことはもっともだったが、そんな必要はなかった。
「ああそう言ってんだよ。殺す気で戦え。死んだら死んだで俺はそこまでの人間だったってだけだ。」
挑発、それが一番手っ取り早い方法だった。
俺を殺せと言うだけでも妖怪なら反応する。
だが自我を完全に制御する美鈴のように人間と共存する妖怪は、その程度では少しの反応もしない。
『………!!!』
そこでダメ押しの一手、『殺気』の放出を行った。
気を操ることは能力を制御するための精神修行のようなものでは基礎だ。
武術を主な戦法として使う美鈴は当然それを感じることぐらいは出来る。
その殺気を美鈴は感じ取ったらしく、十分な挑発にはなったようだ。
この場にいるのは美鈴、レミリア、咲夜、フランの四人だが、フランを除いた三人はこの殺気を見たことにより、美鈴と戦うことを認めたらしい。
「美鈴。本気でやりなさい。これは当主からの命令よ。」
「……はい。お嬢様。私も加減をするつもりはありません。武人として、ここまで魅せてくれる方に加減することは侮辱です。琴羽さん、本当にいいんですね?」
「構わないさ。俺もお前を殺すつもりでいかせてもらう。」
「……さすがにどちらかが死にそうになるほどの怪我を負いましたら、私が参入させていただきます。」
「お願い咲夜。私たちは日陰にいるわ。傘を持つ必要はないから、いつでも割り込めるように準備しておきなさい。フラン来なさい。」
「うん!二人とも頑張ってね!」
「はい、妹様。」
「ああ。これ終わったらまた遊んでやるからな。」
「では、二人とも準備はよろしいですか?」
「はい!」
「いつでも。」
「では……始め!」
咲夜の合図とともに、俺も美鈴も走り出した。
あーーー時間がない!誰か僕に時間を恵んでください。と友達にも同じこと言ったら「せめて形のあるものにしろよ。」って笑いながら言われました。しかも別の友達には「嫌だよ俺も欲しいし。」って言われました。時間がないのは皆同じなんですね。では。