同時に駆け出した俺達は、最初こそ能力を使用していなかったが、俺は風による派生の能力で速さを増加し、その勢いで殴りつけることによりパワーも上げた状態まで能力を使っていた。
そして美鈴は、気を乗せた力の使い方をし、殺気や闘気といったものを可視化出来るレベルで纏っていた。
その打ち合いが、約五分近くも続いていた。
人間を超えた速度で放つ俺の殴打も、地を抉るほどの威力の蹴りも、美鈴は全てを捌ききっていた。
逆に美鈴から放たれる同レベルの攻撃を俺も捌いていた。
だが力は互角でも技術の差は歴然。
俺は徐々に押されていた。
お互い弾幕もスペルも一度も使っていない。
この状態では使うことも出来ない。
なんとか隙を作ろうにも簡単にはさせてくれない。
(やっぱ格闘技じゃ相手にならねえな。それなら……!)
俺は放とうとしていた右足に、一瞬だけ魔力を強く込める。
「……?」
その蹴りを受けた美鈴は疑問に思ったことだろう。
守りを固めた状態であったというのに、地を抉るほどの衝撃は美鈴を抜け、俺の足は美鈴の側頭部側にあった。
「これで…どうだ!」
格闘技では敵わないことは分かっていた。
だからこそ、使ったことのない脚の動かし方をした。
一瞬だけ脚の軌道を膨らませ、後方から頭部を狙う。
フェイントである。
風を爪先に纏った状態で後方に脚を回し、纏った風を放出する。
止まった状態でこの動かし方をしても、膝裏が首に当たる程度だろう。
だが美鈴は走っている。
一瞬だけでも音速に近い速さの蹴りは、止まらずこちらに近ずく美鈴の頭部に丁度到達する。
その速さの蹴りに美鈴ほどの格闘家でも反応出来るわけもなく、その蹴りは激突した。
「が…!?」
だが美鈴はその程度で倒れるわけがない。
俺は右足を地面に着けると同時に勢いのまま左足を振り抜いた。
「そんなもの……!」
頭部へのダメージはかなりのはずだが、美鈴も妖怪、速さだけに特化した蹴りの威力ではよろめかせるのが限界だった。
振り抜いた左足は美鈴の右手に阻まれ、その衝撃は完全に受け流された。
(予想通りだ!)
俺はさらに先の攻撃を作っていた。
右足に魔力を込めた直後、俺は左足にも魔力を込めていた。
右足には風によるスピードアップ。
そして左足にはいつでも発動出来る鎌の能力。
それと同時に込められた麻痺毒。
一瞬の隙を作らなければこの程度の攻撃はまず当たらない。
だからこそこの左足にのみかけてここまで攻撃を繋げた。
想定通り鎌となった足は美鈴の右手を裂き、それと同時に少しだが、麻痺毒も放出された。
正確に言えば自身に付与する能力である以上、麻痺毒を他に回すには自身の体の一部でも相手に送る必要がある。
体の一部を送るため、俺の左足は一部無くなっていた。
だがそこまでの動きを作り、少しだが毒が自分に回るリスクを背負ってでも、実行したのは、それほどに美鈴は手強いからだ。
恐らくこの程度の麻痺毒では動きを鈍らせるのが限界。
右手から体全体に毒は回らないだろう。
だがこれ以上の攻撃は美鈴には届かない。
仕方なく距離をとり、左足を治した。
美鈴はこれ以上の攻撃を警戒してか、ほぼ同時に後退していた。
「……!?」
体の異変に気付いた美鈴は、麻痺と気付いたのか、左手で右手を殴った。
衝撃を与え、痺れを取る。
近接戦闘経験があればその手法はすぐに思い付く。
だがこの痺れは取れない。
衝撃が強すぎたため起こる振動による痺れではなく、毒による痺れだったからだ。
右手は使えないと判断した美鈴は、片腕が使えない状態で俺とやりあうのはまずいと考え、最初のスペルを発動した。
「虹符『彩虹の風鈴』(さいこうのふうりん)!」
虹色の弾幕が円形に張り巡らされる。
「嘘だろ……?」
その数は視界を埋め尽くさんばかりの量だった。
スペルなだけに一つ一つの密度も濃い。
「仕方ない……解放『付与術消去』!」
風が俺の周囲から無数に飛び出た。
その風は、美鈴が展開した弾幕の結界を消していく。
スペルの枚数は三枚。
これで互いに残りは二枚。
だが使う気もなければ使わせる気もない。
弾幕に穴が空き、美鈴までの道が出来ると同時に駆け出した。
足に能力を集中させ、駆けたその脚は、十メートル近く離れた美鈴まで、一秒も経たずに到達していた。
そして振りかぶった右手には、槌の能力、肘には風を纏っていた。
同じ威力の殴打を地面にやれば、軽い地割れでさえ引き起こせるだろう。
美鈴は自分のスペルが消されていくことに動揺したのか、または気付いてなかったのか、力の放出を止めなかった。
近距離まで近づいた俺にようやく気付き、片手だが防御の姿勢を取った。
だがこの殴打はいままでのそれとは違う。
当然美鈴も片手で防ぎ切れるわけもなく、壁と平行に吹き飛んだ。
「かは…!」
美鈴は起き上がらない。
美鈴の意識は既になくなっていた。
「そこまで!咲夜、美鈴の怪我の具合を見なさい。」
「はい。」
美鈴が起き上がらなかったことにより、勝者は俺に決まったようだ。
咲夜は美鈴の方に走っていく。
「貴方、以前よりも強くなった?それとも能力の使い方を学んだのかしら?」
「両方だろ。以前よりも力の総量が増えて、さらに使わなかった能力の使い方をした。」
「それだけで自分の足の一部を切るなんて、普通の人間には無理ね。」
「そうでもしなきゃ勝てないなら、どんな奴でもするだろ。」
「…変な人間ね。」
「人間や他の妖怪と暮らしてる奴に言われたくねえな。」
レミリアと談笑していると、治療が終わったのか咲夜が近づいて来た。
「ん?終わったのか?」
「ええ。美鈴も妖怪だから、問題ないでしょう。」
戦闘前に霊夢や魔理沙と同じ話し方でいいって言って以来、咲夜の話し方は砕けた感じになった。
(……それでもタメ口でないのは本当に意味が分からない。)
「…ん?問題ないって治療してないのか!?」
「…?ええ、必要ないので。」
聞くと美鈴はいつも門番の仕事をさぼっているものだから、ナイフを刺して起こしているのだが、その傷はものの数分で治ってるらしい。
……妖怪の治癒力は恐ろしい。
「それで琴羽?これからどうするの?」
「遊ぼ!」
「……フランがこう言ってるし、付き合うことにするよ。」
見ると遊びたそうにこちらを見ていた。
「……お願い。フラン、弾幕ごっこは止めてね。」
「うん!お兄様、行こ!」
「夕食の時間に呼びに行きますので、そのつもりで。」
「うん!分かった!」
「悪い…」
「謝る必要はないわ。」
「…サンキュ。」
フランに手を引かれてその場を後にした。
話の作り方によっては永遠亭みたいに何日表記になってしまう……。この調子で行くとこれから先出てくる広い場所も何日表記になっていく…。そんなことを考えながら書いていた私でごさいました。では。