「せいっ!」
掛け声とともに放たれた蹴りは、綺麗な曲線を描いて俺に飛んでくる。
「ふっ!」
その蹴りを俺は難なく躱し、逆に鞭のようにしならせた俺の足が、目の前にいる門番へと放たれる。
ここまでの状態から分かる通り、戦闘中だ。
防御が間に合わずに、その蹴りは後頭部を蹴り飛ばした。
ここに来て一週間。
戦ってはフランの相手をし、暇なときは妖精メイドの手伝いか図書館で読書。
深夜は敵に関する分析。
ただ休むだけでも時間がない。
そもそもがここに来た理由は美鈴に格闘技を教わることが目的だった。
今はもう美鈴の型の動きは盗み切った。
もともとこうゆうことは出来るようで、今や美鈴の動きは完璧と言っていいほど把握していた。
美鈴曰く、格闘技の才はかなりあるようで、もはや美鈴から教わることはなく、あとは自己鍛錬次第とまで言われた。
こうなるともう俺はここにいる理由はない。
だが何故まだこうして紅魔館に留まっているかというと、パチュリーの本を読みたかったからだ。
この一週間霊夢や魔理沙も来ることがあり、幸か不幸か、俺は二人が来ている時だけは会えなかった。
来てたことを後から言われるだけで一度も会うことはなかった。
まあ二回しか来ていないのだが。
魔理沙はパチュリーの本を盗むらしく、俺が読みたい本を盗まれるのも困るのでここに留まって読み漁っている。
居候である以上、住人に付き合うのは当然。
結局美鈴と戦う日課は変わらない。
「う………」
「お前の攻撃は型にはまりすぎなんだよ。もっと臨機応変に行動しろ。例えばさっきの蹴りは受け止めるんじゃなくて受け流せばいい。」
既に二十になる戦果において、当然敗北を続けた奴は自分を倒した相手に教えを乞うわけで、いつの間にか美鈴と俺の立場は完全に逆転していた。
「咄嗟の判断でそんなこと出来ませんよ……受け流すなんて普通なら高等な技術なんですよ……?」
「知るか俺に出来ることぐらいやれ。」
「そんな…横暴です……」
そんなやり取りをしていると、大抵フランがいつの間にか来ている。
どうせ来ているだろうと思って、門を見たが、珍しくフランの姿はなかった。
(久々に図書館でゆっくりできるか?)
そう思って美鈴に今日はここまでにしようと伝えて図書館に向かった。
「琴羽さんお茶を入れますけど、琴葉さんもいりますか?」
小悪魔が聞いてくる。
図書館で過ごしていると、飛び回ってる姿くらいしか見ない小悪魔は、パチュリーに紅茶を入れるときだけは作業を止める。
その時についでに俺の分も入れてくれる。
当然断る理由もないし、喉も乾いたから「ああ、頼む。」とだけ言って本に目を戻す。
余談だが読み終えた本をしまう時についでに他の本もしまっている。
ここの本は外の世界にない情報が多かった。
それは俺の知的好奇心を揺さぶり、現実から引き離していく。
当然時間など分からない。
ここで過ごすと、自然と夜になっている。
現実に引き戻されるのは、決まって夕食の時間か入浴の時間だけだ。
今日もそれは例外ではなく、咲夜から俺達は三人呼び出された。
食堂に着いた俺は疑問に思うことが一つあった。
フランの姿がない。
いつもなら誰よりも先に食堂に着いている筈のフランの姿が、だ。
嫌な予感がした。
『琴羽、あまり不安にさせたくなかったが、朝から奇妙な霊力を感じる。』
突然放たれた天智の言葉は、確信ともとれるほどの不安さを醸し出していた。
「琴羽さん?どうかしたんですか?」
小悪魔無邪気に言ってくる。
『琴羽。急がないとフランがまずい……!』
何故そのことを早く言わなかった、なんていう言葉は出なかった。
何故かは分かっていたから。
聞く必要も聞く時間もなかったから。
天智が言った直後に俺は駆け出していた。
後ろから静止の声も聞こえたが、気にせず走った。
ほんの少し行った所で咲夜に捕まったが、俺の切羽詰まった顔を見てただ事じゃないと判断したようだった。
手を緩め、それ以降追ってくることはなかった。
フランの部屋に着いた。
思い出すと来たのは二度目だったと考えることもなく、すぐに扉を開けた。
部屋に入って最初に目に入った光景は、バラバラになったぬいぐるみの残骸、ボロボロになったベッド、中心に蹲っている………フラン。
嫌な予感に限って当たってしまう。
「フラン……?」
「お…兄…さ…ま…?」
途切れ途切れに聞こえてくるその声は弱弱しく、フランが弱ってることを確認するには十分だった。
敵に何かされた。
俺も天智も当然そう考えた。
そしてその思考は、二つの可能性を生み出した。
「待ってろフラン!すぐに治してやる!」
一つは敵が俺の知り合いから殺そうと考え、襲った。
二つは大天狗と同じ……暴走。
俺は大天狗の時と同じように、解放のスペルを使おうとした。
その俺を、天智が静止した。
『琴羽!無理だ!俺の力が届く範囲を超えてる!急いで逃げろ!』
「でも……!」
「逃……げて…」
「!」
フランは弱弱しい声で逃げろと言った。
弱っていたのは力を押さえつけているから。
フランからはその体に収まり切れない量の妖力が滲み出ていた。
俺を追ってレミリア達が着いたときにはもう遅かった。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!」
滲み出ていた妖力は、周囲を覆うほどの邪気となった。
皆さん!ほとんどの作品に出るベタ展開が次回ですよ!原因は他とは違っても十分ベタ!そんな次回です。投稿は明日です。これは前書きとは逆で宣言です。では。