『手伝ってやろうか?』
その声には聞き覚えなどない。
しかし頭に残る声だった。
意識が遠のく。
そんな中聞こえた声。
いったい誰だと考える暇もない。
死の間際の幻聴、そう考えるしかなかった。
俺の意識が完全に途絶える。
それでもその声は俺の中で鳴り続ける。
目の前にフランの姿はない。
いるのは一人の少年だけ。
下卑た笑みを浮かべ目の前に立っている。
以前にもこんなことがあった。
天智の時もこんな世界だった。
何もない空間に、たった一人で立っていた。
しかし天智とは何もかもが違った。
真っ暗な空間、何もないと思われたところを目を凝らして見てみれば、大量の骸が散乱しており、少年が立っていたのはその中心。
そしてその少年の姿は俺の姿であるというにも関わらず、黒髪の黒眼。
天智とは真逆だった。
『よお。久しぶりだなあ琴羽。』
その声は見た目通り、俺と同じ声だった。
そこだけは天智と同じだった。
「久しぶり?俺はお前と会った記憶なんてないぞ?」
『ああそうだな。会ったことはない。でも話したことはあるぜ十日前ぐらいにな。』
十日前に話したことがある。
こいつはそう言った。
十日前は正確には分からないが、紅魔館で初めて美鈴と戦った時だ。
その時を思い出してみた。
『『自分で壊したくせになにを言っているんだ?』』
(あれはこいつの言葉だったのか?)
『当たりだ。天智が言ったとでも思っていたか?』
天智と同じように、こいつも俺の考えてることは分かるらしい。
『あの言葉の意味、分かるか?』
こいつはそう言った。
おそらく俺が何をしたのか、それを思い出したかということだろう。
『はぁぁ……思い出せもしないなんて、見込み違いかねぇ?』
「……俺は何をしたんだ?お前は知ってるんだろ?」
『ああ知ってるさ当然だろ。天智と同じだ。俺もお前の中にずっといたんだからな。』
天智は俺の中にいた。
今もこの会話をどこかで聞いてるのかもしれない。
その天智からは、今までこんな奴のことを聞いたことがない。
『知らなかったんじゃない。知りながら教えなかったんだよ。俺たちはお前が力をつけて初めて姿を現せる。』
こいつの説明は何とも適当なものだった。
要約してしまえば、互いのことを俺に教えること、能力を使った直接的な行動、俺が望まない行い、互いの世界への干渉、それらを禁止すること。
さらに俺の精神が耐えられるようになること。
体が大きな力に耐えられるようになること。
これらの条件全てを守ったうえでなら、俺に姿を現すことは可能。
さらに精神世界の主導権は俺以外に与えられている。
そして認知された後なら、能力による手助けや俺以外の者にも知られること、それらのようにある程度の自由が認められる。
それらのような契約をこいつらは行っていた。
天智やこいつが姿を現したのはそれらが達成されたから。
現に天智の能力に俺は耐えている。
それだけでもこいつの言葉は真実だという証明になる。
『……以上が条件だ。納得できるか?』
「…………まあ嘘を言う必要もないからな。信用しよう。でも気になることもある。」
『何故自分の体に自分以外の二人の魂が存在するか、か?』
その通りだった。
『俺も知らねえ。天智は頭いいから分かるかもしれねえが、俺は頭を使うのは苦手でな。天智にでも聞け。』
口調から分かる通り馬鹿だった。
これ以上こいつから聞けることはないと諦め、会話を切った。
『長々と話したが最初の問いに答えろよ。』
この世界も天智の世界と同じように、外とは時間の流れが違うはず。
時間を気にする必要はないが、確かに長々と話しすぎた。
最初の問いとはおそらく、『手伝ってやろうか?』この言葉だろう。
「手伝うってのはフランを止めることか?」
聞く必要もない当然のことだった。
当然その回答は適当なものになる。
『それ以外に何がある?』
俺はこいつに頼りたくなかった。
こいつからは殺気しか感じなかった。
慣れてないものなら失神してもおかしくない。
そんな殺気を常に纏っている。
フランを殺すことはあっても、助けることはしないだろう。
『ああその通りさ。俺はただ暴れてえんだよ。お前の体使って溜まった魔力を放出してえんだよ。』
予想通り危険だ。
「フランを殺そうとしてるお前に、簡単に体を貸すと思うか?」
当然そんなつもりはない。
殺させて堪るものか。
『ま、当然の反応だな。』
当然分かっていたようだ。
『だから少しだけ記憶を戻してやるよ。』
脈絡のないその言葉は俺にとってはこいつとの会話の中で、最も欲しかったものだ。
『この記憶はお前の罪だ。この記憶は少なからずお前を壊す。壊れたお前の代わりに、俺がお前になってやるよ。』
記憶は欲しい。
しかしその記憶は俺を壊す。
フランも助けられずに、俺は壊れる。
俺の中に確実な恐怖が表れた。
「……………………」
逃げるように後ずさる。
『諦めな。お前には断罪が必要なんだ。永遠とも思える時間の中で苦しめ。自分の行いに懺悔しながら、俺のために………壊れな!』
その言葉を区切りに、そいつは俺の前から姿を消した。
同時に俺の頭に、処理できない量の情報が流れ込んだ。
もしかしたら主人公の能力の進化はここで終わってたかもしれない。天智とこの人だけでも『天と地を操る程度の能力』にもできたです。しかし最初の主人公の能力でその手は使えなくなりました。まあ狙ってやったことなんで予定の変更とかありませんでしたけどね。この辺から僕がどういう能力を主人公に与えたいか分かる人もいるんじゃないでしょうか?そして分かってしまえばチート過ぎる能力と思うでしょう。勘違いしないでほしいのはいくら能力が強くなろうと琴羽は人間なのでそこまで強くなれません。能力チートでも絶対に戦いに勝てるとは思わないでください。では。