ではでは~
(何故あんな記憶を見せた?何故俺はあんなことをした?何故……何故……?)
疑問しか浮かばない。
俺には何も分からない。
忘れていた記憶を知れた。
失ったものを知った。
それはあまりにも大きく、あまりにも、残酷な現実だ。
親を殺した。
兄弟を殺した。
親友を殺した。
俺に取り付いた何者かが、皆を殺した。
でも嗤っていたのは、他でもない、俺自身だ。
(俺は、一体何者なんだ……?)
自分が分からない。
壊してきた俺に、何を守る資格がある?
(自分を、知りたい……)
俺の心の声は、静かに消えていった。
鮮血が噴き出た。
腹に穴が開いた。
目の前まで爪が迫っている。
(それがどうした?)
迫ってくる獣を、殴りつける。
その殴打は、獣を地面に埋め込んだ。
何が起きたかを理解出来ず、もう一度迫ってくる。
それをもう一度殴りつける。
方向的に紅魔館を貫通する。
「どうした?何故動けるのか気になるのか?」
やはり困惑の表情を浮かべる。
腹は開いたまま。
血は流れたまま。
そんな相手から攻撃を受け続ける。
何故死なないか。
何故動けるか。
困惑の理由はそんなところだろう。
「この程度で倒れるのは人間ぐらいだぜ?」
俺は正確には人間ではない。
琴羽と入れ替わった。
琴羽の能力は使えないが、人を超えた能力を使える。
腹に穴が開いた程度なら痛みにもならない。
『グルルルゥゥゥゥゥ!』
「獣らしい声じゃないか。」
警戒して距離を取る。
「はは!距離を取ったところで…無駄なんだよ!」
離れる獣に、攻撃を仕掛ける。
地面より突き抜けた針は、その腕を貫いた。
『ガアアアアアァァァァ!』
「痛えか?痛えよなぁ!もっと鳴けよ!獣らしくなぁ!」
針は出現を続ける。
地面から、何もない空から、その針は獣に向かって迫り続ける。
俊敏な動きで避け続ける獣は、こっちに攻撃を仕掛ける暇もない。
「避けんのはうめぇみたいだな。なら、これならどうだ?」
針に代わって黒炎が現れた。
獣を囲って焼き続ける。
『アアアアアアァァァァァァァァァァ!』
黒炎を纏った針は、獣を貫く。
貫き、焼き、引き裂き、溶かす。
この炎の特性は、溶解と焼却。
獣を嬲って殺し続ける。
その行いに笑いが止まらない。
数千年ぶりの外。
数千年ぶりの解放。
(この感覚だ…!もっとだ……もっと嬲ってやる………!」
いつの間にか妖力の結界は消えていた。
フランの張っていた結界が消えた。
妖力が完全に消え切ったわけではないから、フランが死んでいるわけでも、意識を失ったわけでもない。
ただ結界は消えた。
なら、私たちが行かないわけにはいかない。
「咲夜、行くわよ。」
私は従者にそう言った。
「はい。お嬢様。」
「当然私も行きますよ!」
その言葉を、従者たちは快く頷いてくれた。
「私も行くわ。こあも行くわよ。」
「もちろんです!パチュリー様!」
従者に続いて親友も来てくれるようだ。
急いで行かなければ。
「はははははは!」
着いた私たちは、その目を疑った。
あの人のことしか考えてないような少年が、既に倒れているフランに向かって手を振り下ろし続けている。
見たことのない能力で。
見たこともない顔で。
その手を止めるつもりはないようだ。
その状態のままこちらを見た。
「あ?ああ。お前ぇらこいつの家族だったか?今更来たのか。まあいいか。とにかく今は………暴れてぇ!」
その手をこちらに向けてきた。
黒い炎が迫る。
咄嗟にパチェが水の盾を張ってくれたおかげで、炎は防ぐことが出来たが、貫通して針が飛んできた。
「パチェ!」
「レミィ!彼を止めなさい!」
あんな能力は見たことがない。
彼の使う能力は創造と付与。
どう応用してもあんな使い方は出来ない。
「レミィ!」
「!咲夜!拘束を!」
咲夜が時間を止めて拘束すれば、動きを止めることは出来る。
しかし……
「すみません、お嬢様……能力が…効きません!」
「な__!」
咲夜の能力が効かない相手は、今まで見たことがない。
「よそ見してる暇があるのかぁ!?」」
針が飛んでくる。
「くっ!」
避け続けるが、数が多い。
上から下から飛んでくる。
これを続けても、いずれ倒される。
(もう、耐えているだけでは時間の問題だ…………)
皆を守るために、戦うしかない。
「パチェ!攻撃しなさい!殺す気でかからなきゃ殺されるわよ!」
後ろで咲夜を守り続けるパチェに、そう伝えた。
「…………いいのね?レミィ。」
「………ええ。」
「…水符『プリンセスウンディネ』。」
水色の弾幕が、大量に放たれる。
「……やればできるじゃないか。もっと抵抗しろよ?黒炎!」
その全てが燃やされる。
「!そんな…仮にも水のスペルなのよ……?」
「スピア・ザ・グングニル!」
その炎をなんとか弾く。
「ここからは私が相手になるわ。これ以上、彼も、フランも、傷つかせない!琴羽を返せ外道!」
私にしては感情的になってしまった。
でも、これ以上彼の声で、姿で、こんな酷いことはさせない。
私の思いは、戦いの中に生きながら、行いへと変わっていった。
真っ白な空間、音のない空間、見覚えがある。
『琴羽、目を覚ませ。』
(誰だ?俺を呼ぶのは、一体誰なんだ?)
その声の主を、俺は聞き覚えがありながら、思い出すことが出来なかった。
特に説明もないし、終わります。では。