「ううん……ここは……?」
どうやらあの後、意識を失ってから運び込まれたらしい。
(あいつがいつ目を覚ますか分からない。紫を呼ぼう。)
またいつあれと戦うことになるか分からない状態で、普通の生活をするのはまずい。
また周りの人達を傷付けてしまう可能性がある。
そう思った俺は、紫を頼ることにした。
紅魔館の面々には申し訳ないが、早く出ていくのが得策だ。
またここに来たときに礼はすればいい。
俺は急いで紅魔館の外に向かった。
玄関に着いたとき、既に紫はいた。
まだ呼んでもいないのに。
しかも隙間があるってことは門を通らず無断で入ったということだ。
「……何で紫がここにいるんだ?」
「吸血鬼の妹さん、無事のようね。」
紫は唐突にそう言ったフランが暴走したことは紅魔館メンバーしか知らないはずなのに。
(まあ紫なら知っててもおかしくないな。)
と勝手に納得した俺は、紫に何故レミリア達を手伝わなかったかを聞くことにした。
「紫?フランが暴れたのを知ってたなら、何で手伝わなかった?お前の能力ならもっと早くどうにか出来ただろ?」
「……ごめんなさい。霊夢や魔理沙を行かせないようにしたのも私よ。理由なのだけど……貴方の中の存在を警戒していたわ。」
「俺の中の存在?」
(天智やあいつのことか?)
「その力は危険過ぎる。けれどその力のことは私と永琳しか知らない。だから、貴方に選択肢を作っていたの。」
「選択肢?」
考えるような顔をしてから、紫は深刻な顔をして言った。
「一つ、その力を完全に制御出来るまで、この世界から脱界すること。二つ力を失ってただの人間として暮らすこと。そして三つ目………幻想郷の敵として……その命を、落とすこと。」
どれを選ぼうが地獄だった。
だが、丁度よかった。
元々紫に頼もうとしてたことは、紫の選択肢の一つ目だ。
「他の二つは貴方次第。だけど最初の一つは、貴方の家も用意してあるわ。」
「ふ、別の世界にほっぽり出してはいさようならってことか?」
「この世界を守るには、必要なことなのよ。」
「その世界……俺の元居た世界か?」
「!………よく分かったわね。」
「分かったわけじゃない。元の世界じゃないとどうにもならないだけだ。違う世界なら特定させてもらってた。」
「………そうね。向こうでは貴方のことは行方不明になっている。それが戻ってきた。そういうことになるわ。学校にも行かなければいけない。貴方は能力も使えなければこの世界よりも自由がない。向こうにいる間、精神を蝕まれ続ける。そんな生き地獄を、選びたいの?」
「…………‥……」
紫は心配してくれている。
深刻に考えてくれているということは、どれも俺が苦しむことを分かっている証拠だ。
紫なら、向こうの世界を俺が壊す可能性も考えているだろう。
それでもこの選択しか出ないのは、それ以上の手が、ないからだ。
(なら、逆らう必要も従わない理由もないな。)
「紫。」
「………それでも、いいのね?」
「ああ。」
それ以外の選択肢は俺にもない。
「霊夢や魔理沙、他の娘達も寂しがるわよ?」
「ああ。」
分かっている。
元々俺はこの世界の人間じゃない。
この世界が元の姿に戻るだけだ。
「最悪周りを巻き込んで死ぬのよ?」
「ああ。」
そんなこと、俺が絶対に許さない。
「覚悟は…もう出来てるのね?」
覚悟なんて大層なものはいらない。
俺はただ……
「帰るだけだ。」
「そう……ある程度私も貴方に封印を施すわ。貴方のそれは私のレベルじゃ完全に封印することなんて到底できない。それを分かって行って。」
「ああ。分かってる。」
「…………出発は夜。それまでに、準備はしておいて。」
「なら夜まで俺は家にいるよ。元の世界に俺が戻った後、皆には伝えてくれ。」
「ええ。」
紫との会話を終えて、俺は家へと走った。
あまりその場に居たくなかったからだ。
「……ただいま。」
また、誰ともなく呟いた。
元の世界から持ってきたものなんて財布程度だった。
「天智、能力を抑えることは出来るか?」
『出来るぜ。お前の身体能力はどうにもならないけどな。」
「そうか。能力だけ抑えてくれ。」
『分かった。……なあ琴羽?」
「なんだよ。」
『本当に良かったのか?』
……こいつは今更何を考えているのだろうか。
そう思いながらも、天智も俺自身。
危惧していることはおそらく同じだろう。
「いいんだよ。敵は紫が抑えてくれる。」
『そうか。………それがお前の選んだ未来なんだな。』
「………………」
「琴羽、そろそろ行くわよ。」
「………ああ。」
準備回は文字数が少なくなる。仕方ないことではあるんですが増やせない。次回から章を変えます。今回の回は無理矢理新しく作った物なんで下手になってても気にしないでください。では。