「これか……?」
幼女と別れ向かった先には、確かに巨大な扉が一つあった。
一人で開けられるとも思えない程に巨大な扉が。
(…迷ってられないか……)
「槌」
能力で一時的に腕力を高め、思い切り扉を殴った。
予想通り硬く、壊すどころか動きもしない。
仕方なく開ける仕掛けがないか探そうと扉に近づくと、あれだけ強く殴った扉がひとりでに開いた。
(何だこれ?…まあいいか。)
俺は考えるのを放棄した。
進めば進む程わけが分からなくなる。
ある時は怨霊の誘い。
またある時は鬼の啖呵。
様々な情景に移り変わる道の先は、ドス黒い闇。
ゴールなどないかのように続く道を、それでも確かに進めていた。
誰もいない道を。
何もない道を。
俺は遂に渡り切った。
そこに人はいない。
強さを求める鬼や魂。
弱きは居らず強者のみ。
それはもはや人ではなく、全てが鬼と呼べん程。
闇の中にあったのは、修羅と呼ばれる武士ども。
『修羅道』
闘いのみのその世界は、血に塗れた俺の世界。
修羅を抜けたその先に、やはり人間はいはしない。
獣や虫が溢れ出で、飲み込まんとする邪念のみ。
悪行を成した者が墜ち、果てる姿は畜生と化す。
『畜生道』
その世界は醜い心の行き着く先。
醜い心を持つ俺の墜ちる世界。
餓える者の集まりを、もはや誰も咎めない。
食の全てを奪われ、満ちることのない腹の内。
その全てが罰であり、その姿はもはや人ではない。
『餓鬼道』
決して満たない腹を持つ俺は、この世界にて餓え続ける定めにある。
大悪を成した罪人は、その身全てを引き裂かれる。
人を殺し、外道と成った者に救いはなく、永遠に続く苦しみに壊れゆく。
その世の主の言葉一つで、その苦しみは永遠に。
『地獄道』
数々の友を殺した俺は外道としてこの世界に墜ちる。
たった一度の善行にて、救いを得られる一つの世。
他に救いは一つもなく、この世界のみが清きもの。
『天道』
たった数度人を救った俺は、この世界に昇ることを許された。
欲に塗れた者が集い、最も醜い人の世。
禁じられた全てを行い、軽い裁きの在る世界。
鬼以上に醜く、天の者程美しい。
『人間道』
全てが行き着くその先に、帰る道すら存在する。
俺の全てが存在し、俺の全てが消えていった。
今の俺が在る世界。
六つの世界を見て、俺は自分の力を理解した。
天智に獄羅、家族を殺した存在も、全て。
堺が何を求めここに来たのか。
あの子供が言っていたことも。
「………」
『やっと理解しやがったか。遅いにも程があるな。』
(……煩い。)
『手前が逃げ続けた事実と向かい合えよ。家族を殺したのは……お前だろ?』
(黙れよ……)
『獄羅が言う通りだ。向かい合うのは重要だ。』
(お前もか……)
『俺が言ってるのは家族についてじゃない。』
『俺だってそうだぜ?向かい合えってのは家族のことだけじゃねえ。』
『能力とだ。』
『俺達と向き合え。』
『堺を連れて帰るんだろ?』
(……)
『力を使うのに必要なのは理解。強くなるには記憶が必要だ。正確には経験がな。』
『手前には俺達がいる。お前の記憶から出来た存在がな。』
『俺達の消滅をもってお前は完成する。』
『他の四道も俺達に続く。』
『手前の選択だ。とっとと決めろ。お前が望む終わりをな。』
(……決まってる。)
「お前達も堺も、連れて帰る。それが俺の選択だ。」
『……くくっ今になって孤独に恐怖を得たか?今まで全部邪魔としか思ってなかったくせによ。』
「そうだな。孤独は怖い。お前達がいれば、俺は一人にならない。」
『偽物の俺達でか?』
「……今のお前達は本物だ。今までの全てが虚像だったなら、今から始めればいい。」
『霊夢達や元の世界の奴らか?』
「もちろん堺もだ。もう子供の強がりは終わりだ。行くぞ。」
俺は駆けた。
堺の元へ……
『天智、俺達にはなかったな。』
『そうだな。』
『俺達もあいつなのに、全く違う存在に見えるよ。』
『……成長してるってことだろ。』
獄羅と天智が区別つかない。自分でも思うので気にしない方がいいでしょう。一応獄羅の方が言葉多いからそのつもりで。では。