Fate/Beast Rapture   作:rassyu

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や っ ち ま っ た ぜ ☆



プロローグ

プロローグ

 

 ―――塩素配列 ヒトゲノムと確認

 ―――霊器属性 善性・中立と確認

 

 ―――塩素配列 ヒトゲノム 高位悪性情報と確認

 ―――霊器属性 善性・中立 不明

 

 危険存在の侵入を確認。第一種警戒体制を発rrrrエラー発生 システムへの攻撃を確認 システムダウンします。

再起動致します。異常無し。

 

 ―――塩素配列 ヒトゲノムと確認

 ―――霊器属性 善性・中立と確認

 

 ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。

 ここは人理継続保証機関 カルデア。

 

 指紋認証 声帯認証 遺伝子認証 クリア。

 魔術回路の測定……完了しました。

 

 登録名と一致します。

 二名を霊長類の一員である事を認めます。

 

 はじめまして。

 お二人は本日、最後の来館者です。

 どうぞ、善き時間をお過ごしください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォウ……?キュウ……キュウ?」

 

 ……ん? 近くで鳴き声がする。

 だが、どの動物とも異なる声だ。

 

「フォウ!フー、フォーウ!」

 

 ……今、頬を舐められたような……

 

「…………………………あの。朝でも夜でもありませんから、起きて下さい、お二人共」

 

 もしや自分のことを言っているのだろうか?

 睡魔の誘惑を振り払い、瞳を開くとそこには見知らぬ空間が広がっていた。

 声の聞こえた方向を見てみれば、薄桃色……光加減によっては銀色にも見える髪を持つ少女がいた。

 まだぼんやりとした頭で自らが置かれた状況を探っていると、自分の隣から声が聞こえてくる。

 

「君は……?」

 

 隣に意識を向けると、自分と同じ東洋風の黒髪の少年が困惑した表情で少女に質問していた。

 

「いきなり難しい質問なので、返答に困ります。名乗るほどのものではない―――とか?」

 

 そんなに難しい質問だろうかと内心首をかしげる。

 素直に名前を答えれば良いだけの気がするのだが。

 

「いえ、名前はあるんです。名前はあるのです、ちゃんと。でも、あまり口にする機会が無かったので……印象的な自己紹介が出来ないというか……」

 

 ふむ、印象的な自己紹介を考えていたのか。

 自分も職業柄、初対面の印象というものを大事にしている。分からない話じゃない。

 少し思考に沈んでいると、隣の少年が質問を重ねている。

 

「じゃあ、ここは……?」

 

「はい。それは簡単な質問です。大変助かります。ここは中央管理室に向かう通路です。より大雑把に言うと、カルデア正面ゲート前、です」

 

 ……カルデア?

 その単語を契機に、自分の目的、今ここに至る経緯が徐々に思い出されてきた。

 

「……コホン。どうあれ、質問よろしいでしょうか、先輩方」

 

「えーと、何かな?」

 

 何だろうか?

 

「お休みのようでしたが、通路で眠る理由が、ちょっと。硬い床でないと眠れない性質なのですか?」

 

 どうやら自分達はここで眠っていたらしい……。

 民族的には畳で寝る方が落ち着く。

 

「ジャパニーズカーペットですね。噂には聞いていました。なるほど……なるほど」

 

そこまで感心するようなことだろうか? それに自分は諸事情で幼少期はベッドで過ごすことが多かった。

 

「フォウ!キュー、キャーウ!」

 

「……失念していました。貴方の紹介がまだでしたね、フォウさん。こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です」

 

 先ほど自分達の顔を舐めていたらしい動物が紹介される。

 ところで特権生物とは何なのだろうか?

 

「わたしはフォウさんにここまで誘導され、お休み中の先輩方を発見したんです」

 

「フォウ。ンキュ、フォーウ!」

 

「……またどこかに行ってしまいました。あのように、特に法則性もなく散歩しています」

 

 自己紹介が終わったと同時に何処かへと走り去ってしまった。

 人語を介しているように見えるし、かなり知性の高い生物のようだ。

 

「……不思議な生き物だね」

 

 隣の少年も自分と同じ感想を持っていたらしい。

 

「はい。私以外には余り近寄らないのですが、先輩は気に入られたようです」

 

 どうやら彼は気に入られたらしい。

 しかし先程、あの生物は自分を不思議そうな表情で見ていたような気がしたのだが……あれは一体?

 ……動物のことなので確かなことはわからないが。

 

「おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウのお世話係の誕生です」

 

「あ、ありがとう……?」

 

 彼も困惑しているらしい。

 ……あら?向こうから誰かがやって来る。

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。駄目だぞ、断りもなしで移動するのはよくないと……」

 

 ぼさぼさ赤みがかかった髪に、モスグリーンのタキシードとシルクハットが特徴的ないかにも紳士といった雰囲気の男性だ。

 

「おっと、先客がいたんだな。君は……そうか、今日から配属された新人さんだね。私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。君の名前は……?」

 

 レフ氏は対面早々に彼に自己紹介を始めた。

 ……もしや自分のことが見えていないのだろうか?

 それとも彼はそれほど重要度の高い人物なのだろうか?

 

「ど、どうも、俺は藤丸立香です」

 

「ふむ、藤村立香君と。招集された48人の適性者、その最後の一人という訳か。ようこそカルデアへ。歓迎するよ」

 

 腕に付けている端末のような物で何かを調べている。おそらく彼についてだろう。

 

「ありがとうございます」

 

「一般公募のようだけど、訓練期間はどれくらいだい?一年?半年?それとも最短の三ヶ月?」

 

「いや、訓練はしていません」

 

「ほう?という事は全くの素人なのかな?ああ……そう言えば、数合わせに採用した一般枠があるんだっけ。君はその一人だったのか。申し訳ない。配慮に欠けた質問だった。けど一般枠だからって悲観しないでほしい。今回のミッションには君たち全員が必要なんだ。魔術の名門から38人、才能ある一般人から10人……何とか、48人のマスター候補を集められた。これは喜ばしい事だ。この2015年において霊子(りょうし)ダイブが可能な適性者全てをカルデアに集められたのだから」

 

 ……なるほど。彼は適正者だったのか。それなら確かに自分などよりも重要な人物に違いない

 

「わからない事があったら私やマシュに遠慮なく声をかけて……おや?」

 

 何が不思議なのか少女……マシュというらしい……へと視線を向け、レフ氏は尋ねる

 

「そう言えば、彼らと何を話していたんだいマシュ?らしくないじゃないか。以前から面識があったとか?」

 

「いえ、先輩方とは初対面です。この区画で熟睡していらしたので、つい」

 

「熟睡していた……?彼らが、此処で?」

 

 レフ氏は訝しげな表情を浮かべるが、直ぐに納得したのか自分達に尋ねてくる。

 

「ああ、さては入館時にシミュレートを受けたね?霊子ダイブは慣れていないと脳にくる。シミュレート後、表層意識が覚醒しないままゲートから開放され、ここまで歩いてきたんだろう。一種の夢遊状態だ。君達が倒れた所で、丁度マシュが声をかけたのさ。見たところ異常はないが、万が一という事もある。医務室まで送ってあげたいところなんだが……」

 

 そこで一旦言葉を切って、彼に視線を向ける。

 

「すまないね、もう少し我慢してくれ。直所長の説明会が始まる。君も急いで出席しないと」

 

「所長……?それに説明会……?」

 

 彼は隣で何が何だかという表情をしている。

 

「所長は所長さ。ここカルデアの責任者にして、特務作戦(ミッション)の司令官だよ。君は一般公募で来た新人だけど、もしかしてパンフレットしか見ていない?」

 

「そのようですね。所長のプロフィールは一般公開されていませんから。先輩と所長に接点はありません。アニムスフィアの名に敬意を表すのは、百年以上の家系の魔術師だけです」

 

「そうだね。ま、所長を知っていようが知らなかろうがマスターとしての仕事に影響はないし、問題ないな。だが些細な事で目を付けられるのも良くない。今後、君が平穏な職場を望むなら急ぎたまえ。五分後に中央管制室で所長の説明会がある。君たち新人(ニューエイジ)への、ちょっとしたパフォーマンスだ」、

 

 五分後ということはもうすぐだ。レフ氏の言う通り急がなければならないだろう。

 

「レフ教授。私も説明会への参加が許されるでしょうか?」

 

「うん?まあ、隅っこで立ってるぐらいなら大目に見てもらえるだろうけど……なんでだい?」

 

「先輩を管制室まで案内するべきだと思ったのです。途中でまた熟睡される可能性があります」

 

「……君を一人にすると所長に叱られるからなぁ……。結果的に私も同席する、という事か。まあ、マシュがそうしたいなら好きにしなさい。君もそれで良いかい?他に質問が無ければ管制室に向かうけど、今の内に訊いておく事はある?」

 

 自分は特にないので黙っている。というより聞かれているのは自分ではなく彼なのだろう。

 

「質問はありませんが……気になったことが」

 

「良いとも。なんでも聞いてくれたまえ」

 

「なんで俺を先輩と呼ぶんですか、この子」

 

 確かにそれは少し気になっていた。最初、二人は面識があるのかと考えていたがそうでもないようだ。

 

「…………………………」

 

「ああ、気にしないで。彼女にとって、君ぐらいの年頃の人間は皆先輩なんだ。でも、はっきりと口にするのは珍しいな。いや、もしかして初めてかな。私も不思議になってきたな。ねえマシュ。なんだって彼が先輩なんだい?」

 

「理由……ですか?先輩は、今まで出会ってきた人の中で一番人間らしいです」

 

「ふむ。それは、つまり?」

 

「全く脅威を感じません。ですので、敵対する理由が皆無です」

 

「なるほど、それは重要だ!カルデアにいる人間は一癖も二癖もあるからね!」

 

 ……ふむ。ここも中々に色々な種類の人間模様のようだ。流石は前の部署の大元といったところか。

 

「私もマシュの意見には賛成だな。藤丸君とはいい関係が築けそうだ!」

 

「……レフ教授が気に入るという事は、所長が一番嫌うタイプの人間という事ですね。………………あの。このままトイレに篭って説明会をボイコットする、というのはどうでしょうか?」

 

「それじゃあますます所長に目を付けられる。ここは運を天に任せて出たとこ勝負だ。さて、質問はもういいかね?それなら急ぐとしよう」

 

「あ、あと一つだけ!」

 

「何かね?」

 

 そう言うと彼はレフ氏にではなく自分に視線を向ける。顔が少し赤いような気がするがどうしたのだろうか?

 

「あの、その、()()()()についてまだ何も知らなくて……」

 

 彼の一言で二人はカルデアの二人はあっ!といった表情になる。

 ……そういえば確かに彼の話題ばかりで自分のことについては何も聞かれなかったし、話してもいなかった。

 

「そ、そうでした。先輩にばかり気を取られていて……ご、ごめんなさい!」

 

「申し訳ない、私としたことが()()にとんだ失礼を……。言い訳にもならないが、私もミッション当日ということで緊張していたようだ」

 

 二人は真摯に謝罪してくる。でも、これは仕方のないことだろう。彼はマスター適正者……今回のミッションの要なのだから。どうしても自分よりも優先度は高くなってしまう。

 

「いえ、こちらこそ今まで名乗らずにいた無作法をお許し下さい。ですので、自己紹介をさせていただいても?」

 

 先程も述べたが、やはり初対面というのは重要だろう。そこで働くとあらば尚更に。

 

「海洋油田基地セラフィックスから転属になりました。セラピストの()()()()()()と申します。以後お見知りおきを」




そうです。この作品の主人公は殺生院キアラです!
始まりはゴールデンウィークに開催されたCCCイベでした。
最初はいつも通りのコラボイベかと思っていたが、まさかの本編!
元々、EXTRAシリーズが一番好きな作者のテンションは鰻登り。
そして、予想はしていたが、ラスボスは殺生院キアラ!しかも人類悪(ビースト)!!
魔神柱案件どころか、七章、終章に匹敵するレベルだとは夢にも思わなかった。
しかも、それで終わりではなく、まさかの殺生院キアラ(アルターエゴ)のプレイアブル化!彼女が仲間になる日が来ようとは……。
そして、竹箒日記でのCCCイベの補足。FGO世界の彼女は正真正銘の聖女であり、どこかの赤マントを彷彿とさせる彼女の在り方に作者は完全に魅了されてしまった。そんな彼女もゼパなんとかのせいでCCCキアラ諸共無かったことにされてしまった。CCCでの彼女見た上でのFGO世界の彼女に起きた奇跡、それが悲劇的な最期になってしまった。どうしても彼女を救いたいと思った。そして、セラフィックスではなくカルデアに彼女がいたのならばまた違った結末になったのだろうかと考え、この作品を執筆することになりました。
初めて小説を書く初心者のくせに初っ端からこれを書くのか? リアルが忙しいのに大丈夫か? といった様々な問題があったわけですが、溢れ出る衝動は抑えきれませんでした。
初心者の拙い文章ですが、生暖かい目で末永く見守って頂ければ幸いです。それとまだリアルの方で忙しく始まったばかりなのに不定期の更新となってしまうことをお詫びいたします。

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