すいません使徒違いです・使徒とAKUMA 作:GAIAGUL
「へぅ…」
私は帰ってきた合図を絶叫した後、溜息を吐いた。
いつも大声を出している私にしても今回のは別格。めっちゃのど痛いわー。軽く後悔。
しかし私は心地よい満足感に包まれていた。
私の人生における最大の価値観は満足。この程度軽い許容範囲である。
一仕事終えた感じがパナイ。風呂はいって牛乳一気飲みして爆睡したい。
私がこの後の満足方を詮索し計画を練っていると、
「ウルセェェエエ!!」
私の目の前にいるいまだに柱だか機械だか生物だかよくわからん謎存在である門番がイキナリ叫び出しやがった。
なんだ?私の満足を邪魔する気かこの顔だけ野郎。
面白いやつだ気に入った。殺すのは最後にしてやる。
いやこいつの場合は壊すのかな?
「毎度毎度何なんだよお前!帰って来ると変な事しやがって!ストレス溜まるわ!おかげでこっちは定期的にブツブツがアゴに出来るんだよ!」
凄い形相で罵ってきやがるなこいつ。つーかブツブツ!?やっぱ生物なのか?
心の中の感想とツッコミで私の動きが一瞬止まる。
だがここまで言われて何もしないと監視用ゴーレムで見ている連中に舐められる。
それは私の人生満足プランの足枷に成るだろう。それはマズイ!
ここは一気に畳み掛ける!
前屈みになりながら挑発的な笑みを浮かべ門番に語り掛ける。
「何だなんだイキナリ文句ばっか言い出しやがって?つーかお前私が前帰ってきたときも同じようなこと言ってなかったか?同じ事言うために似たような表現ばっか使いやがってトークショーの司会にでもなるつもりかすっこんでろ」
よし、これで私の面子は保たれた。特に門番が悪いわけではないがメチャクチャに罵ってしまった。スマナイ(棒)私の満足の礎となってくれ。
ンゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
とか心の中で門番に十字を切っていると門が開いた。
……今更ながら何で帰ってきたんだっけ?ああ、クロス元帥からの手紙を渡しに来たんだった。
やっぱ酔ってんなー私。いつもよりテンション高めだし数分前まで分かっていた事忘れてるし。
流石にウイスキー大瓶一気飲みからのバク転50m選手権(実際はもっとある)はまずかったな。酔いの周りが半端ない。
手に持ったウイスキー空瓶と手紙が邪魔だな…リーバー辺りに押し付けるか。となるとまとめといた方が楽だな渡す手間が一度で済むし。
…あれ?この手紙リーバー宛てだったっけ?だったな!うん!(※違いますコムイ宛てです)
そうと分かればすぐ行動!なんか形の整っていた筈の手紙と空き瓶が曲がって見えるが問題ない。空き瓶に手紙を突っ込み栓をする。
これを後はリーバーに渡すだけだな。
…ゴォォン
重低音を響かせ門が完全に開く。門番がなんか言ってるけど気にしない。
…やはり私は酔ってるようだ。垂直に建ってるはずの本部が曲がって見える。
今日は風呂入ったらそのまま溺れそうだな。名残惜しいが直で布団入って寝ようそうしよう。
そう決めた私は本部の門をくぐり部屋を目指す。
バク転で。
☆
門番の横をバク転しながら通り抜けてきた渚には出迎えが待っていた
あからさまに嫌そうな顔をする科学班班長リーバー(26)
本来彼には科学班の運命とも呼べる残業地獄があるはずなのだが
◆
『俺たちは大丈夫ですって班長!(さっさと行けこの野郎)』
『そうそう。久しぶりの帰宅を出迎えてやってください!(残業は嫌だが渚の相手をするのはもっと嫌だ!)』
『なにか話したい事とかあるんじゃないですか?(ただでさえ疲れてんのにこれ以上疲労を重ねてたまるか!)』
『それに見た感じ酔っ払ってるみたいですし部屋まで連れて行ってあげたらどうです?(酔った渚に絡まれるなんて冗談じゃねぇ!生贄はあんただけで十分だ)』
(本音の見え隠れする)部下たちのありがたいお言葉に送り出されてしまったのだ。
『お前等…(後で覚えてろよ)』
『彼女は今酔っているみたいだから部屋まで誘導してあげてくれリーバー君』
『室長…わかりました(あんたが最初だ)』
◆
「…あいつ等…」
言葉にならない呪詛を紡ぐリーバーの前にある階段から声が聞こえてきた。どうやらもう本部には入っているようである。
…ハァーハァーハァーハァーハァーー!
聞こえてきた高笑いが自分を嘲るものに聴こえる。
「…酔ってるな、アイツ」
回転しながら教団の階段を駆け上がる渚の顔が紅潮している様が見える。
アルコールを摂取してバク転するなど正気の沙汰では無い。絶対吐く。
こいつは初めて会った時から全く変わっていなかった。
思えば教団に殆ど帰って来てないとはいえ4年になるのか…
クロス元帥の弟子と言って急に現れ何故か消えた。
気まぐれに帰ってきたと思えば波乱を巻き起こし唐突に姿を消す。
そしてしばらく帰って来ない。
連絡なんて殆ど入れられたことがない。
しかし帰ってきたときには決まって莫大な成果を持ってくる。
16歳から
しかし挙げている成果の量が同じく4年間行方知れずのクロス元帥とは違いバカのように多いために上も拘束するにできない奴。
そして考えている事が殆どわからない残念な美人。
リーバーはそんな印象を彼女に抱いていた。
そこまで考えているといつの間にかバク転を辞めてこちらに走って向かって来ていた。
まぁ久しぶりの再開なんだ、挨拶ぐらいはまともにしてやろう。
「ピチピチ20歳の渚シト元帥☆ただいま帰還しましたゼェェーーット!」
とっくに分かっている事を叫びつついい笑顔で俺の方に走って来る渚。
だが、一体なぜ右腕を後ろに向けている?
何かを振りかぶっている様にしか見えないのは俺の気のせいだよな!?
「受け取れリーバー!新しいお荷物よ〜〜〜!!」
最後の部分の発音がなんか変に感じたが今はどうでもいい。
やっぱなんか投げつけるつもりかこの野郎!さっきまで持っていた酒瓶じゃねぇだろうな⁉流石にあれが当たれば俺もただじゃあ済まないーーーーーーーッ!!!
「酒瓶(とその中の手紙)をリーバーの頭にシュゥゥゥーッ!」
ガシャァァァァァン
☆
渚シト
普段から相手をするのが疲れる彼女は酔ったとき面倒臭さが数倍に跳ね上がる。
リーバーを生贄に捧げた科学班の連中(コムイ含む)は残業などそっちのけで様子を伺っていた。
「班長どうなると思う?絡まれたら」
「キレんじゃねぇ?」
「その後だよ、キレるのはほぼ確定でしょ?」
「アイツ前にしてキレない奴って教団に居るか?」
各々勝手な推測を建てつつも映像から目は離さない。自分たちが生贄に捧げつつも科学班の班長、リーダーのことはやっぱり心配……………というわけでなく、見世物を見にきている気分だった。
「またバク転してるぞ」
「荷物持ったままでよく出来るな」
「何で吐かないんだ?」
完全に見世物だった。
「あら、皆集まって休憩?」
男だらけの科学班に清涼剤の如く涼やかな声が割り込んできた。
リナリー・リー
教団少数の女性。室長コムイ・リーの妹にしてイノセンス『
「リナリー!」
真っ先に反応したのは兄のコムイ、 空になったコーヒーカップを持ち体ごとグルッと振り向く。
「兄さんも居たのね…コーヒーいれて来る?」
「ありがとうリナリー、お願いするよ」
「「俺たちのもお願いしまーす」」
兄妹の会話の後、続けて科学班の野郎どもの声も続く。
手慣れた手つきで人数分コーヒーを注いできたリナリーは立体映像に気付く。
「皆何か観てるの?教団の内部みたいだけど」
「……ああ!彼女が帰ってきてたんで皆で見守ってたんだよ」
一瞬口を噤み思考し話題に触れるコムイ。愛しの妹に悪影響が有るか考えたのだ。
一応リナリーと渚は面識は有るのだが、久しぶりとはいえ彼女(渚)の変人ぶりからしてみるとこのような反応はおかしくはない。
「彼女?」
リナリーが聞く
「渚シト元帥だよ。一年振りだね」
「……ええっ!渚先輩が!?もしかしてさっきの声って!?」
聞こえていたか。
ちなみにリナリーが先輩と言ったが、これは渚が呼ばせているのだ。
リナリーは側に有る机の上にコーヒーを置き、そのコーヒーを取ろうと近づいてきた科学班の連中の隙間を縫うようにして映像が見える位置まで近づく、そしてその後を続くコムイ。
「リーバー班長が迎えに行ってるんだよ」
そう伝えるとその映像を見始めるリナリー、何故かその表情が少しずつ険しくなっていく。
コーヒーを取った科学班が視線を映像に戻すと、
ガシャァァァァァン
丁度リーバーの頭で大瓶が割れる場面だった。
「「「「リィィーバァァーサァァーーーンッ!!!!!」」」」