神「転生特典は?」俺「ハーレムで!」 作:モテたい男
旧校舎の裏側で睨み合う伊月と奈阿、そして教会の戦士達。
奈阿は憤っていた。アーシアの優しさを知っている。知っている上で、アーシアは優しすぎると評価する。
きっと差し伸べられた手がどれだけ罪にまみれていようとその手を受け取るだろう。そんなアーシアを、選りによって罪深い存在などと、アーシアにその罪とやらを押し付けた神並みに気に入らない。
もちろんアーシアとて、敵対する勢力の者を癒やすという行為をした。しかし今まで聖女として癒してきた数に対し、たった一度であろうに。だと言うのに神の意志に逆らった大罪人などと、ならばアーシアだけでなく神器を造った神にも疑問を抱くべきであろうに………。
「さあ覚悟しなさい!主を侮辱した罪、償ってもらうわ!」
「黙れ小娘。妾とて、アーシアを侮辱され、イラついておるのだ」
聖剣を掲げ叫ぶイリナに対して奈阿も毒の霧を噴出する。伊月を転生させた暇つぶしが大好きな規格外な神により完全に再現された常世の神、あるいは常世の蟲が自身の力の半分を与え、誰にも傷つけられないように与えられた酸性の毒がジュワジュワ音を立て溶ける。
「っ!それがあなたの神器ね、負けないんだから!」
イリナはそう言って突っ込んでくる。
(………ふむ)
基礎はしっかりしている。身体能力も素と聖剣の恩恵が合わさりたいしたものだ。並の悪魔なら相性も上乗せされ十分相手取れる。まあ、並の相手ならだが。
奈阿は人間を超える身体能力を持つ蟲狩複数と相対しながら周りを気遣える程の戦闘能力を有する。例え神の生み出した模造品であろうとそれは健在。
イリナの足下を溶かし体勢を崩した腕を取り放り投げる。空中で体勢を立て直そうとするイリナだが全身を毒の霧が覆う。
ジリジリと焼け付くような痛みが肌を走り喉に異物でも混じったかのように呼吸がしづらくなる。
「殺しはせぬ。アーシアを侮辱され怒り、殺したとあってはアーシアが悲しむ。お主如きのためにアーシアを悲しませてたまるものか」
「────っ!」
つまりは手加減しながら十分勝てると言外に言われイリナは表情を険しくして立ち上がる。教会の戦士として、ずっと鍛えてきたのだ。上級の悪魔や堕天使ならいざ知らず、人間に負けるわけには行かない。
「せやぁぁ!」
「………心意気だけでは勝てぬよ。が、心意気は買ってやろう『死爪』」
奈阿が指を一本立てるとその指の爪が黒く染まる。いな、黒い霧が爪の形を取り伸びる。
毒の爪は一瞬の拮抗もなく触れた場所を溶かし、聖剣を真っ二つに変えた。
「今回は核は壊れておらぬぞ………多分」
奈阿は終わったか。俺も負けてられないな。バギィィン!と音を立て砕けた刀を放り捨て新たな刀を複製する。
しかし厄介だな。力任せのパワーバカ、テクニックはないに等しいが聖剣の能力が破壊力増加と、脳筋のアイツにぴったりだ。
「先程から現れる刀………これといった力は感じないな。
「そう思うか?なら、俺も少し本気を出すとしよう」
「ほざけ!」
無防備に迫ってくるゼノヴィアを見て俺はふぅ、と息を吐く。
「月島流───」
俺の中には様々な知識がある。光言衆、インキュベーター、自動人形、シロガネなどの組織から、中国拳法の知識、剣術の知識。
知識があるから使いこなせるなんてはずがなく、会得に苦労した。今から使うのは苦労した甲斐があった技──
「富嶽鉄槌割り!」
ズドン!と衝撃が大気を揺らし土煙が舞い上がる。俺の足下には円形に叩き潰したような独特な斬撃痕が残り、ゼノヴィアはその衝撃からか、持っていた剣を落としていた。
剣は深く突き刺さってしまっているが折れた様子はない。良かった良かった。これ以上壊したらまた何を言われるか。
奈阿の方も今回は核が無事だし直せるだろ。
「…………私の、負けだ」
「潔いね」
「奥の手はあるさ。が、それはコカビエルに取っておきたいのでな」
「…………そうか」
決着は付いたと判断したのかグレモリーが結界を解く。するとアーシアが紫藤の下まで駆けていき赤くなった肌を癒していく。
「………我々は、彼女を責めたんだがな」
「アーシアに取ってそれは命を助けない理由にならないんだろ」
「そうか……」
ゼノヴィアがふっと笑ったその時、塀を飛び越え何かが降ってきた。北斗だ。片手に何か持ってる。
「………!」
鼻をひくひく動かしながらキョロキョロ辺りを見回し俺に気づくと駆け寄ってくる。ちなみに持ってたのはボロボロのおっさんだ。北斗に引き摺られ顔面を地面に擦りながらうめき声一つ上げていない。
「伊月、カラス。伊月の敵、
「カラス?」
堕天使の呼び方だな。北斗は堕天使なんかと敵対すると、しばらく問答無用で敵認定する。前に堕天使どもぶっ殺しに行ったばかりらしいし、まだ敵扱いだったのだろう。そんな時に北斗の前に現れるなんて不幸な奴。
と、哀れんでいたら堕天使のおっさんがカッ!と目を見開き北斗に向かって槍を放つ。受け止めた北斗だがその隙におっさんは上空に飛ぶ。
「くそ!クソが、やってくれたなぁ!油断した、しかしここは先程と違い室内ではない。もはやお前に勝機はないぞ!」
堕天使のおっさんはそう言って光の槍を大量に生み出す。それを見てグレモリー達が表情を険しくしているが、どうした?
「死ね!」
大量に放たれた光の槍を見て北斗は片手を前に突き出す。そして──
「邪魔」
手を凪ぐと同時に放たれた呪力が光の槍を飲み込み消し去る。
北斗には俺が造った人外達を含めた108人分の
モデルがどんな存在かは知らんが少なくともモデルより強くなっているだろうな。
「お前、鬱陶しい。さっさと死ね」
「な!?」
北斗は一瞬でおっさんの背後に移動すると十枚の翼全てを引きちぎる。ブチブチ音を立て背中から剥がれていく翼。手羽先食いたくなってきたな。
「勝ち。誉めて」
「よしよし、北斗、あんまり力を込めるな、俺が死ぬから………」
ぎゅーっと抱きついてくる北斗に力を込めないように頼み頭を撫でる。そして翼を引きちぎられた痛みで気絶したのか地面に転がるおっさんを指さす。
「ところでこのおっさん、どうする?」
「…………それ、今回の主犯であるコカビエルなんだが…………」