やはり俺が殺し屋になるのはまちがっている。   作:(ひなあられ)

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第2話 人とは悩みを抱える生き物である。

「ん、ここは…どこだ…?」

 

俺は気がつくと周りが真っ白に囲まれた何も無い空間に立ち尽くしていた。

意識はある…が身体が軽くなったような感覚。ふわふわと空中に浮いてるような不思議な感覚。

 

そんな時、聞いたことがあるような声が少しずつ少しずつと聞こえてきた。

 

「お兄ちゃん…」

「ん?…こ、小町か!?」

「今までありがとう。じゃあね…」

「え、ちょっと小町!どこ行くんだよ!」

「行こうか小町。」

「行きましょう。小町」

「え、親父!母ちゃん!!」

 

すると小町と両親は遠くに向かって歩いていき段々と消えていった。そんな姿を俺は見ているだけで体が動かずに立ち尽くしたまま小町達の背後姿を見ることしか出来なかった…。

 

「置いてかないでくれよ…俺を置いてどこ行くんだよ!!待ってくれーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!!」ガバッ

 

はぁ…はぁ…夢か。夢となると大抵何となくとでしか覚えてないが、ごく偶に鮮明に覚えている夢がある。その中でも嬉しいことがあった夢、悲しいことがあった夢は…特に。

って、そんなことはどうでもいい。あんな夢を見たからか変な汗かいてるし…軽くシャワー浴びてこよ。

 

 

そして俺は、シャワーを浴び終え制服に着替えて適当にパンを一枚ほうばりながら玄関を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばいやばいやばい」

 

やばい、とにかくやばい。何がやばいって時間がやばいのだ。いつも通りの時間でいつも通りのスピードで歩いていたつもりだったのだが、一つミスが生じていた。いや、ミスというより勘違いをしていたのだ。

それは、いつも通りの時間に出ていなかったこと。朝にシャワーを浴びることは今までにあまり無かったわけで…。もう過去の自分を殴ってやりたい。出来れば遅刻0にしたかったのだが…このままのペースだとギリギリ間に合うか遅刻かどっちか。

そんな状況の中、俺はパンを口にくわえたまま全力ダッシュで学校に向かっている。パンを口にくわえたまま。

 

 

「そろそろか…」

 

学校の姿が見え、あとは曲がり角を曲がるだけとなった。その曲がり角を曲がって真っ直ぐに30mほど行ったら学校がある。このペースだとギリギリ間に合うぐらいなのでこれ以上急ぐつもりはない。間に合えばいいのだ。間に合えば。

と、思いながら曲がり角を曲がった瞬間。

 

ドンッ!!

 

こ、この衝撃はま、まさか…。

 

「す、すみません!お怪我はないですか?」

 

まさかのまさかだった。まさかこんなときに少女漫画などで王道である『遅刻する食パン少女』が曲がり角で男の子とぶつかり、一目惚れし、何とか遅刻せずに間に合い学校に行くとその男の子が転入生でそっから恋が始まる、というラブコメ展開である。

ま、俺の場合は『遅刻する食パンぼっち少年』が曲がり角で女の子とぶつかった…ということになるが。

 

「俺は大丈夫だ。こちらこそすまん、怪我はないか?」

「いえ、大丈夫です。すみませんでした」

「お、おう」

 

礼儀正しく深々とお辞儀をして、落としたものと思われるスマホを拾い上げその女の子は学校に向かって走っていった。というか、あのショートヘアの子どっかで見たような顔な気がする。どこでだっけ?

て、そんなこと考えてる場合じゃない。俺はポケットからスマホを取り出し時間を確かめるため電源をつけた……終わりだ。完全に遅刻。もういいか。歩きで行こ。

 

「あ、パン…落としちった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、遅刻した言い訳を聞こうか」

「いや、だから登校中におばぁちゃんを助けてて…」

 

案の定、遅刻したせいで担任の松島先生に捕まり、見てわかる通り遅刻の理由を問いただされている。

 

「ほう。そうかそうか寝坊したのか。」

「いやだから何度も言っているように困っているおばぁちゃんを助けようと…」

「次その言い訳を言ったら君だけアップの走りを3倍に増やすぞ」

「それだけはご勘弁を。」

 

3kmの3倍って…きついきつい。吐くわ。いろんなものが口から滝のように出てくるわ。

 

「はぁ…ったく。君ってやつは…まぁいい。遅刻は遅刻だ。今後こういた事が無いように。いいな?」

「わ、わかりました」

 

ペナルティーが無いのはいいのだが、出来れば遅刻はしたくなかったんだけどなぁ…。すると、田野畑が話しかけてきた。

 

「お?八幡、進級から3週間でもう遅刻したんだ~」

「うるせぇ…そもそもあれだ。遅刻が悪っていう認識が間違いなんだよ。」

「……というと?」

「ほら、警察は事件があった時に初めて動くし、ヒーローは遅れてやってくるのが定席だろ?」

 

と話を始めると田野畑は呆れた顔をする。何だよ…何か文句があるのかよ。遅刻は逆説的に言って正義なんだぞ。

 

「分かった分かった。八幡の言いたい事は分かったから」

「うぜぇ…」

「ほらもう1時限目始まるよ。早く運動着に着替えないと、1時限目武術の訓練なんだから」

 

くっ…こいつにバカにされる日がくるとは…。

1時限目は訓練か、急がないとまた松島先生になんて言われるか分からんからな。

 

 

 

 

「よし、じゃあ今日はナイフ術を教える。まずは二人組になれ」

 

と、松島先生が生徒らに指揮を執りそれに『はいっ!』と生徒達が息の合った返事を返した。

 

周りは「今日は俺とやろー」や「今日は私とやらない?」などの声が聞こえる中、俺ら…田野畑と俺はすぐに2人組を組む。だって他の人達なんかに話しかけられないんだもん。

 

「みんなナイフを持て!安心しろ、まだ本物ではない。玩具のナイフだ。サクッと…な」

 

そりゃいきなり本物のナイフ持たせる訳がねぇよな。まだみんな人を殺すということに少なからずは恐怖感を持っているはずだし。

すると先生はナイフ術の訓練内容の説明を始めた。

 

「まずは基礎から身につけるぞ。八方向からそのナイフを振る練習だ。一方向3回ずつそれを3セットやれ」

 

何とも基礎的すぎてびっくりしたがこの基礎的な動きにも殺し屋、暗殺者になるため取得しなければいけない。1mmでも0.01秒でも無駄な動き、時間を犯したら…危険な世界を俺らは目指しているのだ。

 

「無駄な動きが命を落としかねない。一つ一つの動きに集中をしろ!」

 

『はいっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時限目が終わり、2、3、4時限目も終わって昼休み。

勿論のこと俺はベストブレイスで昼飯を食べている。やっぱ1人っていいな。心地よい風も独り占め出来るのだ。

そんな中、校舎裏のほうで何か声が聞こえる。男子の声と女子の声。なんだろうか…女子の声が聞いたことあるような声でどうしてもその声の正体に興味が湧き購買で買ったパンをほうばりながらその声の元へと近づいていった。

 

「あ、あのさ…俺、俺!君のことが好きだ!俺と付き合ってください!!」

 

出来れば見たくない場面、現場TOP5に入るところを目撃してしまった。というより、あの告られている女子、今日の朝ぶつかった子じゃないか?

 

「えっ……と、あの…その…ご、ごめんなさい!」

「あ、え、ちょっと待って…」

 

あ、断られた。ドンマイだな。まじドンマイ。

すると女子がこちらに向かって歩いてきている……まずくね?まずいよね?どうしよ…逃げ場がない。いや、待てよ。別に隠れようとしなくても俺空気だから隠れる必要0だ。

よし、ここで空気になる。俺は空気俺は空気俺は空気。

 

「あの…そこで何してるんですか?」

 

バレた。空気になっていたのにバレた。まさかこの女子、俺のステルスを無効化にする能力を持っているのでは?…なんだよその能力。ないな。ないない。

 

「いや別に何もしてないぞ?何も見てないし、見てない」

「えっ…見てたんですか!?うぅ…できればあんなとこ見られたくなかったんだけどなぁ…」

「あ、いや違くて…」

 

って、何言ってんの俺!?なに自ら自白してんだよ。俺馬鹿だろ。

はぁ…仕方ない。この場面で嘘を付くのもあれなので正直に言おう。

 

「あのな?たまたまここで昼飯食ってたらたまたま声が聞こえてきてたまたま見てみたらこうなったわけで…俺は何も悪くない。社会が悪いんだよ」

「いや何言ってるんですか。比企谷くん」

「そう。すべて社会が悪いん…って、何で俺の名前知ってんだよ」

 

え、何この子。怖い。まさかあなたストーカー?だとしたら通報しようかしら。っていかんこのネタはいかん。

それにしても本当になぜ俺の名を知っているのだろうか。確かに顔は見たことあるような気がするがこの子の名前知らないし。なんなら同じクラスの人達の名前も知らないまである。ん?田野畑?そんな奴は知らん。

 

「え、いや同じクラスじゃないですか!」

「…マジですか?」

「うん。大マジです。」

「なんか…すまんな。」

 

同じクラスだったとは…。てか、そうしたらなんで俺に対してちょっと敬語を使っているのだろうか…。ま、あんまり深く聞かないでおこう。

 

「いえ。わたしのこと知らないんじゃ名前言わないとですね。わたしは一関鳴子。よろしくです!」

「一関か。一関…よし、覚えた。よろしくな」

「下の名前で呼んでもいいですよ?」

「いや呼ばん。それは断固拒否する」

「そこまで言われると…ちょっとへこむ…」

 

そう言うと一関は本当に沈んだ顔をした。え、ちょ、可愛い。って違う違う。

 

「んじゃ…よろしくな。一関」

「ま、仕方ないですね。改めてよろしくお願いしますね!」

「お、おう。」

 

ここで俺は一つ、一関に聞きたいことがあった。

 

「なぁ、なんで告白断ったんだ?」

「あ、それはですね…最近多いんですよ。ああいうの。少し困るんですよねぇ…」

 

彼女やら彼氏やら2年のこの時期になると誰でもいいから欲しがる奴が増える。彼女、彼氏がいれば凄いという意味がわからない考え方をしている奴がいるからか、一関などの可愛い人やイケメンな人に告白して成功すれば自分のステータス的なものが上がるという感覚なのだろう。

ま、本気で好きで告白した奴もいるのだろうがな。

 

「それは…大変だな」

「確かに大変なんですよね…へへっ」

 

この一関が抱える悩みは俺に関係がない。先ほど知り合ったばっかのクラスメートなのだ。俺は一関の性格も知らなければ一関も俺の性格を分かっていないはずだ。それに自分のことは自分でやる。当たり前のことなんだ。

 

「そんなことより、そろそろチャイムなりそうですから教室に戻りましょうよ!」

「ん、あぁ、もうそんな時間か。さっさと戻るか」

「一緒に行きましょー!」

「嫌だ。断る。俺はもう先に行く」

「えー、ちょっと待ってくださーい!比企谷くーん!」

 

 

───────────────────

 

一方、その頃の理事長室では。

 

「どうです?様子は」

「今のところは何も問題ない。しかし、十分注意しておけ」

「承知致しました。」

 

監視カメラの映像に映る一人の少年と一人の少女。この少年には十分注意をおかなくてはならない。

 

 

 

 

厳重注意リストNo.1。比企谷八幡。

 

 

 

 

君はここで消しておかなければ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

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