今回も小さな小さなの『内地にて』のリメイク部分もあります。
今回も結有のオートガードが…!
未来達は、横須賀鎮守府近くの、本日泊まるホテルにチェックインし、
―――湊の分は結有が代わりにチェックインした―――
未来が今夜の宿泊代は自腹よ、自腹。と言いながら……
荷物を置く為に部屋に着いたら、広いスイートルームだった。
クイーンサイズのベッドが二つ。
恐らくは、湊の争奪戦が繰り広げられるだろう。
未来達も、隣の部屋に消えていった。
自腹とはいいながら、二人共ちょっとしたサプライズで、防衛省の用意するホテルを断ったようで……
未来は将官礼服、結有は礼服が支給されてないので、未来の案で白露型制服に着替えた。
金剛はウキウキしながら、結有達は湊の隣を誰にするか談合しながら、横須賀鎮守府に向かって歩いて行く。
結論はベッドをずらして四人で寝る、ということになったが……
「戦争はんたーい!艦娘はいらなーい!」
「人権を守れ―、戦争主義者矢部総理は辞めろ―!」
鎮守府正門前では、
「またデスか……」
金剛は、さっきのウキウキに水を差されて、不満顔になる。
「未来司令長官、アレはなんなの?」
雷が指をさすと、未来はどう説明しようか考える。一瞬
「あれはですね、
やんわりと説明する電に、雷は不機嫌さを露わにする。
「何よ!私達艦娘が深海棲艦から海を守ってきたんじゃないのよ。私達居なかったらどうするつもりよ!?ちょっと文句いってくる!」
鼻息をふんすと荒げて、デモ隊に向かおうとする雷の手を、未来が掴む。
「やめなさい。
「でも!」
「いたぞ!艦娘だ!」
デモ隊が、こちらに向かってくる。
「行きましょう。金剛」
「わかったのデース!」
金剛は電を、未来は雷の手を引いて、鎮守府の方に走り去っていく。
結有は一歩遅れて、デモ隊に囲まれてしまった。
「結有!」
「大丈夫、滅多なことはしないわ。あとは警務隊に任せましょう」
そう言うと、未来達はゲートを通っていく。
「お前も、艦娘か!」
一人の男に詰め寄られるが、背筋を伸ばし、まっすぐ相手を見据える結有。
「僕は、横須賀鎮守府外郭独立艦隊司令官、高梨湊准将の従卒の、各務原結有といいます」
その名前に、数名がざわついた。
「高梨湊……おお『不敗の女神様』か!」
「俺のお袋と親父は、『不敗の女神様』に助けてもらったんだ!」
「私の姪もよ!当時は『名古屋に舞い降りた女神』とも言われてたわ」
名古屋の惨事から、民間人100万人を救った
デモ隊は、攻撃の雰囲気が少し和らいでいった。
「しかし、軍も酷いよな、あの英雄を最前線の僻地に飛ばすなんて」
「んだんだ」
結有は、これはチャンス、と考えた。
「えー、皆さん。『不敗の女神様』高梨准将は、いつもこう言っておられます。
民主国家の軍隊の存在意義は、常に『国民の生命と財産を守るために在る』と。
未だに、深海棲艦は災害として存在します。その為に、艦娘が頑張ってます。
主張を曲げろ、とは言いません。艦娘達の頑張りもわかってください。
お願いします」
頭を下げる結有。
このデモ隊は、まだ話のわかる部類で幸いした。
この後、警務隊の誘導で今日のデモを打ち切ることにした。
「何よあいつ等、か弱い女の子を取り囲んで」
「そうデース!警務隊にとっちめてもらえば良いデース!」
「
あの、バックリバーブローからの一本背負いを見ている電は、
むしろ、ボッコボコにしてる姿が想像できる。
そんな中結有は、涼しい顔をして、後からやってきた。
「いやー、怖かったぁ」
「大丈夫?怪我してない?」
「怪我
その雷電姉妹の問いかけに、軽く笑って、
「ううん、
と答えると、未来が軽く笑った。
「さすがは『不敗の女神の一番弟子』ね」
「えっ?」
「なんでもないわ。ちょっと皆、聞きなさい。
この国の軍隊は、30年くらい前は、
静かに語り始める未来に、結有が頷く。
「歴史の教科書に書いてありました」
「当時の日本国憲法第九条には、こう書いてあったわ。
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
スラスラと条文を語る未来に、雷は首を傾げる。
「どゆこと?」
「要するに、戦争はしては駄目。武力を持っては駄目。その為に、軍隊を作っては駄目。ということよ」
「でも、自衛隊って軍隊じゃなかったの?」
その質問に、未来は一つ吐息を吐いてから続ける。
「憲法の解釈よ。
その言葉に、さらに雷は憤る。
「なによ、その自衛隊に守られてるくせに!」
その言葉には答えられない未来の代わりに、結有が口を開く。
「この国は言論の自由があるから、何を言っても、主張しても良いんだ」
その言葉に、未来は結有の背中をぽんと叩く。
「実際問題、私達は、名古屋の失態や、片桐のようなブラック泊地の存在を防げなかった。
ハワイ決戦での核使用問題。実際私達は、非難を免れ得ぬ立場だし、それはそれで、受け止めねばならないわ」
「でも……」
悔しそうな顔をする雷の頭を、未来は優しく撫でた。
「士官学校の前身、防衛大学校の最初の卒業式で、
『君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることもなく、自衛隊を終わるかもしれない。
きっと非難と叱咤ばかりの一生かもしれない。 ご苦労だと思う。
しかし、自衛隊が
災害派遣の時とか、
言葉を変えれば、
「……」
三人の艦娘と結有は、その言葉に聞き入っていた。
その言葉に、別の声が続いた。
「今も昔も、軍隊というのは、国家における最強の武力集団です。
国家の危急というのは、外国からの攻撃やテロだけじゃありません。
深海棲艦の攻撃や、台風や地震などの救助活動。並大抵のことじゃ救えませんよね?
だからこそ、きちんと組織されて強大な力を持つ集団が必要なのですよ。だから――」
一同が振り向くと、将官礼服を身に着けた湊、元帥礼服――退役したといえ、軍行事には着用を義務付けられている――を身に着けた三笠が立っていた。
一同が敬礼すると、三笠は手を上げて直らせる。
「雷、電、金剛。自分達を誇りに思いなさい。あなた達は、皆の幸せを守っているのよ。
たとえ日陰者と呼ばれたとしても、深海棲艦と戦ってくれるあなた達のおかげで、輸入に頼ってるこの国も干上がらずに済んだ。
退役したとはいえ、私も及ばずながら、あなた達に報いられるよう努力するわ」
湊が続ける。
「私にとって、艦娘は大事な友人であり家族ですから。皆さんを最大限生きて帰すのは、私の責任だと思ってます」
「私もよ」
その言葉に、艦娘三人は心が熱くなる気がした。
この人達がいるから戦えると、再確認できた。
「さ、そろそろ行きましょう」
そうして、式典会場に向かっている時だった。
「おお、『不敗の女神様』ではないか」
そう声をかけてきた、細身の男がいた。横には、一人の駆逐艦娘が控えている。
「
湊は、ちょっと苦笑いで答える。
アンドリューこと安藤龍。湊のニ年先輩で、今は准将。
運良く、虫垂炎放置の腹膜炎で倒れたため、ハワイの決戦に参加しておらず、降格を免れていた。
「さあ。今度こそ、私の方が艦娘運用が上だということを証明してくれる。さあ、シミュレーションを……ん?」
手をわきわきさせながら湊に近づく、ジリジリと下がる湊。
ポンと、肩に手を置こうとして……その間に割って入った結有の胸を掴んでいた……
違った感触に、二・三回モミモミする龍。
「……きゃあああああああああ!!!!!」
耳をつんざく叫びとともに、龍の心臓めがけて結有のハートブレイク掌底が……
パァンッ!
その龍を下がらせ、間に割って入った駆逐艦不知火が、掌底で受け止めていた。
周囲には、何かが弾けるような音が響いて、結有が我に返る。
「龍准将の非礼はお詫びしますが、准将への暴行はこの不知火が許しません」
「あ、僕………申し訳ありません」
「い、いや、私が悪かった。しかし、意外と大き……ゴフッ」
不知火の肘が入って、咳き込む龍。
「相変わらずで安心したぞ、龍」
「これは、元帥閣下!お久しゅうございます」
直立不動で敬礼をする龍。そして、未来達に向き直ると、三笠は一歩横に退いた。
「では、改めて自己紹介しよう。小官は、横須賀鎮守府主席監察官として着任した、安藤龍准将だ」
「同監察補佐艦として着任しました、駆逐艦不知火、軍階級は少佐。以後宜しくお願いします」
湊達も自己紹介を改めて行うと、龍が、
「不敗の女神様もとうとう将官とは、心から祝福するよ、おめでとう」
そう手を差し出すと、湊も握手で応じる。
「……なかなか手ごわい従卒兼護衛官もいるようだし、お手柔らかに頼む」
「はい。いずれお相手します」
結有をちらりと見ながら、ちょっと冷や汗を垂らす龍に、結有は恐縮しっぱなしだ。
そんな結有に「艦娘だと思ってたら……この娘、出来る……」と思っている不知火。
それを、ニコニコと微笑ましげに見守る湊だった。
「ところで、ぬいぬいは何で艦隊から外れたのデース?」
「ぬいぬいはやめてください。龍准将の在るところ、この不知火ありです」
少し照れながら答える不知火にあー、と全員は察した。……
「はっはっは。不知火の補佐は、落ち度なくいつも助けられてるからな」
そう笑う
前回では最低クソ野郎だった龍は
こっちでは最低変態野郎として救われました。
龍「いやあ、あの胸のもみ心地(チュガーン)ごぶぁっ!!」
不知火「……」
龍「不知火よ、なぜ怒っているのだ」
不知火「不知火のならいくらでも……(ボソ」
龍「?」
不知火「な、なんでもありません」