小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

12 / 73
ちびっこ達のお泊まり会です。




恵奈と第六駆逐隊のお泊まり会

湊達が東京から戻って来て、数日が経った。

 

第1艦隊の長門隊(長門・赤城・北上)が、今夜の哨戒担当で軍港に詰めている。

そんな夕飯が終わった、1920(ヒトキュウニイマル)の艦娘・女子食堂。

 

「それじゃあ、私は飲んでくるから」

夕飯を食べ終えた加賀が立ち上がり、食堂を後にする。

 

残ったのは、電と雷、それに暁と響。

「とりあえず、部屋に戻るのです」

という電の言葉に立ち上がる面々。駆逐艦部屋は四人部屋で、

皆同じ部屋なのだ。

そんな中、がらがら、と食堂の扉が開かれる。

「あ、暁おねーちゃん、いたー」

にへらっと笑った五才児、大村恵奈があかつきちゃん人形を抱っこして、パジャマにおっきなリュック姿で現れた。

「恵奈ちゃん、どうしたの?パパとママは?」

真っ先に恵奈に駆け寄り、頭を撫でる暁に、

「あのねー、パパとママ今から『ふーふのいとなみ』するから、ママに湊お姉ちゃんに預かってもらいなさい、って言われてねー、そしたらね、お姉ちゃんお留守だったの」

その言葉に、ばっと全員が時計を見る。1925(ヒトキュウ二イゴー)――午後7時25分――

「今からするのか?早過ぎるだろう」

ぼそっと響が呟くが、全員が同じ思いだっただろう。

「あの。司令官は、今夜夜間司令部当直なのです」

司令部の士官は、急な夜襲に備えて、一人は夜勤をしているのだが、今日は湊の日なのだ。

もちろん、セットで結有も自主的に夜勤である。

「奈緒参謀長ェ……」

雷がわなわなと肩を震わせる。

「とりあえず、湊司令官には、こっちで預かるってメール入れとくわ」

「わーい♪」

暁の言葉に、小躍りしてあかつきちゃん人形と喜ぶ恵奈の姿に、一同は微笑みを浮かべた。

 

 

 

宿舎の暁達の部屋。

駆逐艦部屋は、10畳の部屋に、二段ベッドが壁際に二つ付けられており、ベッドの両サイドには、各々の机が用意されている。

ベッドの間には、皆でお金を出し合って買った絨毯に、折りたたみの丸い卓袱台が置いてある。

いつもは、四人でトランプしたり、ボードゲームしたり、お茶会したりしている。

「お菓子はね~、いっぱい持ってきたよ―」

部屋につくなりリュックを開けると、中にはおやつ類がぎっしり詰まってる。

「ほらー、たくさん~♪」

どさどさーっとリュックを逆さまにすると、いっぱい出てくるおやつの数々。

「こんなにたくさん、どうしたのよ?」

腰に手を当てている雷に、恵奈はにへらっと笑ったまま、

「あのねー、ママからお小遣い貰ったのー」

そう言うと、リュックのポケットにある、おサイフを取り出す。

それをひょいっと手に取ると、雷は中身を確認する。

「五千円札と……千円札二枚と……小銭……ちょっと!五歳に持たせて良い金額じゃないわよ」

「あとねー、お部屋の机に、お髭の生えてないおじさんのお札(一万円札)が二枚入ってて、ママが鍵掛けときなさい、って」

「諭吉さんか……」

無邪気に語る恵奈に、響がぼそっと呟き、電が頭を押さえて、

「……明日、湊司令官に報告しておくのです……」

と、ちょっと疲れたように言う。

「恵奈ちゃん」

暁が、恵奈に視線を合わせて、呼びかける。

「お金は、パパとママが一生懸命働いて稼いだお金なのよ」(多分、アレ(ナンバーズ)のお金だろうけど……)

「うん」

「だから、ちゃんと食べる分だけ、買うのよ。いっぱい買ったら、食べ切れないでしょ?」

「うん」

「今日は特別ね。お姉ちゃん達と一緒に食べましょ」

頭を撫でながら諭すように言うと、恵奈は元気よく、

「はーい!」

と答える。

それを、ベッドに腰掛けながら眺めていた響は、

雷がお母さんで、暁はお姉さんだな、等と思っていた。

 

「あっがりー!」

「やられたのです!」

二枚持っている電から、カードを一枚引いてから、自分の持ってるカードと一緒にテーブルに置いた。

ハートのエースとスペードのエース。引かれた電は、持ってるカードを裏返す。ジョーカーだ。

恵奈は、ババ抜きはそんなに強くない。でも、何故か、最後の二人になると、鬼のような強さを発揮する。

お見通しなんだよね―、と言いたいくらいに。

「さて、お風呂に行きましょう」

「おっふろー!おっふろー!」

トランプやお菓子を片付けながら言う雷に、嬉しそうに喜ぶ恵奈。

「恵奈、お片付け手伝って」

「はーい!」

暁の言葉に、片付けの手伝いを始める。

 

 

艦娘宿舎大浴場。

ガラガラガラ……

勢い良く扉を開けると、加賀が髪を洗い終わったところだった。

「あら、恵奈。どうしたの?ママは?」

そう問いかけてから、後ろの四人の表情を見て、ある程度察するも、

「あ、かがお姉ちゃんこんばんはー。パパとママは『ふーふのいとなみ』してるのー!」

と元気よく答える。

予想していたが、あんまりな回答に、加賀も頭を押さえる。

「まったくあの夫婦は……」

そうしている間に、恵奈はちょこんと椅子に座って、シャンプーをつけて、ワシャワシャ洗い始める。

恵奈は、身体的にも精神的にも、小学一年生くらいと言っても不思議でないくらい、成熟している。

きちんと自分で、頭も身体も洗えるし、聞き分けがいい子である。

各々が体を洗って、ちゃんとシャワーで泡を洗い流すと、皆でお湯に浸かる。

湯船は深いから、恵奈は暁に抱っこしてもらってる。

「ふぃー……」

恵奈が、気持ち良さそうに声を漏らす。

 

ガラガラ……

扉が開くと、結有も入ってくる。

流石に、結有はタオルで身体を隠しながら。

「結有おねーちゃん、こんばんはー!」

お風呂場に響く声で挨拶をする恵奈に、結有も笑顔で返す。

「あれ、ママはどうしたの?」

その質問に、加賀を始め五名が横に首を振るが、もう遅い。

「パパとママは『ふーふのいとなみ』してるのー!」

その言葉に、思春期の結有は、顔が真っ赤になる。

「そ、それって……」

「えっとねえ、せっ…もがもが」

恵奈が無邪気に答える前に、抱っこしていた暁が口を押さえる。

「恵奈ちゃん、その言葉は人前では駄目。OK?」

そう言ってから、手を離すと、恵奈は「はーい」と答える。

結有は、顔を真赤にしながら体を洗って、頭を洗って、お湯で流して湯船に入る。

入ったところで、恵奈が、

「結有おねーちゃん、ママがお姉ちゃんのこと『むっちりぼでぃ』って言ってたよ」

「んなっ!?」

あまりのことに、お湯に入ろうとしたところで固まる結有。

大きな溜め息を吐く加賀。

やれやれと、肩を竦める響。

「あの馬鹿参謀長……」と、肩を震わせる雷。

「まあまあ」と、雷を宥める電。

「恵奈、お年頃のお姉さんは、気にするところだから、言っちゃ駄目よ」

と、恵奈を諭す暁に、ようやく硬直が解ける結有。湯船に沈むが、顔は赤いままだ。

「結有おねえちゃん、ごめんなさい」

駄目なことをしちゃったと、ちょっとしゅんとなった恵奈の前まで来ると、笑顔で頭を撫でる。

「うん、ちゃんとごめんなさい出来て、えらいね」

「えへへー」

恵奈に笑顔が戻ると、ちょっと離れた加賀の横に移動する結有。

 

 

「いい子よね、恵奈」

「そうですね」

恵奈と愉快な第六駆逐隊の子達が戯れてる姿を眺めている、加賀と結有。

「ところで、結有は彼氏とかいないの?」

「んー、僕は今のところいないですねー。 小中と女子校だったし、今の分校は中学生居ないし」

「…………」

箱入りすぎるだろう、どんだけ男から遠ざけたいんだ……と加賀は思いながら、

「それに、お父さん『彼氏なんか連れてきたら私がぶっ飛ばす』なんて言ってるんだ」

「………」

「彼氏にするなら、白兵戦でお父さんより強い奴を連れてきなさい、ってさ」

「………」

横須賀鎮守府有数の、白兵戦技の達人である、()()()()()()()()()()()って……

それこそ、元海兵旅団くらいしか居ないんじゃあ………

という想像を、首を振って追い払う。

「きっと、いい人が現れるわよ……貴方も、湊提督も」

加賀は、遠い目をして、呟くように答えた。

 

「さあ、お風呂から出るわよ!」

「はーい!」

暁の号令で、恵奈が元気よく立ち上がり、暁は手を引いて、恵奈を連れて行く。

その後に三人が続く。

 

部屋に戻ると、恵奈はうつらうつらし始める。

「今日は誰と寝る?」

「暁お姉ちゃん~」

ぎゅーっと抱きつきながら答える恵奈に、一同はやっぱり、と笑う。

暁が添い寝をして、頭を撫でている恵奈が眠るのを電達が覗き込んで、恵奈が寝息を立て出した時に、

「さあ、私達も寝ましょう」

とそれぞれのベッドに潜って、電が明かりを消した。

「おやすみなさい」

 

数分後、五つの寝息が部屋に満ちた……

 

 

 

 

翌朝、奈緒は、多方面からお叱りを貰ったのは、言うまでもない。

 

 




正直恵奈ちゃんの将来が心配です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。