小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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天才と名乗った先輩と、女神と呼ばれた後輩が
不知火との出会いを語る


そして暴走した結有は一体どうなる。


※スピンオフと整合性の取れない部分を直しました


湊ちゃん艦隊とアンドリュー見参(後編)

「不知火さんは、少将のことが好きなんですよ!この鈍感!もう見てられません!」

「ちょっと……結有ちゃん?」

 

ドンッとテーブルを叩いて立ち上がった結有。

 

「い、いや、何故怒「少将はそこに座っててください!不知火さんを連れてきます!!!」

龍の言葉を遮って、出ていく結有。

13階級上の人間に、もはや滅茶苦茶である。

「お、おい……行ってしまった……」

 

取り残される湊と龍。

「あのー、アンドリュー先輩。不知火さんとはどのような経緯で?」

「うむ……高梨艦隊が解散して、それぞれの任地に分かれた。私はその時は、病気が快癒して、職務に復帰した頃で、呉鎮守府には、天城と不知火が配属されていた」

湊は立ち上がり、会議室に置いてあるコーヒーマシンを動かして、コーヒーを淹れる。

コーヒーカップに()()

「どうぞ、先輩」

「うむ。君は、コーヒーは()()じゃなかったのかね?」

ふと気づいて、後輩に問いかけると、その小さな後輩は、

「嫌いですよ。でも今日は、コーヒーも悪くないな、って気分です」

うふふ、と笑い、一つ席を開けて座る。

「そこで出会ったのが不知火だ。口癖は『不知火に何か落ち度でも?』」

懐かしそうに語りながら、コーヒーを口にする龍。

「不知火は、高梨元帥の戦死(喪失)を一番悲しんでいて、前線に出られる状態じゃなかった。私は病気という爆弾を抱えて、まだ前線では戦えなかった。自慢じゃないが、私は天才だから、事務処理の方も自信があってね、二年ほど、呉鎮守府の後方勤務担当課長・中佐を、不知火はその補佐官をやっていた」

ドヤ顔をしながら語る龍に、笑みを浮かべながら、

「どうせ私は、偏りの著しい()()()卒業生ですよ」

と毒を吐く。

「私は正直、君ほど()()()()()()が欲しかったよ。私なぞ――器用貧乏さ。話を戻そうか。そんな日々が続いたある日、私達は、とある泊地へ赴任した。私と、不知火と、あとは高天原と」

コーヒーから立ち上る湯気を眺めながら、懐かしそうな顔をする龍を、湊は眺めていた。

 

「いやあ、酷いものだった。その泊地司令官武藤廉也という准将は、酷い男だった。片桐とは()()()()()()()()

忌々しげに吐き捨てる龍に、湊は首をかしげる。

「逆?」

「艦娘を大事にしすぎるあまり、本来の役目をさせようとしない、()()()だ」

「……いい人過ぎて、現実を見れなかったんですね」

()()は、いくらでも犠牲にするのにな……」

「……えっ?」

「この泊地の戦果は、全て()()()()()()()()()()()()()()()()だったそうだよ」

「海兵旅団……」

その言葉を口にした湊は、はっとした。

「待ってください。何の為の艦娘なんですか!?」

「我々の仕事は、味方を()()()()殺し、敵を()()()殺させる、因果な仕事だ。特に()()()()()()()()()は」

龍が言いたいことは、痛いほどわかる。誰も死なずに勝てる(いくさ)なら、誰だってやりたい。

「死にゆく人間達を見るだけしかできなかった艦娘達は、()()()()に侵されていた」

龍は、わかるかね?と言いたげに、後輩の顔を見る。

後輩は、真顔になって口を開く。

「リモース。良心の呵責に押し潰されて、戦えなくなった」

「正解だ、優秀なる我が後輩」

コーヒーカップを置いて、ふっと笑うと真顔に戻り、後輩を見る。

「君が、第13泊地を立て直すのに奔走したように、私もこの泊地の立て直しをすることとなった」

 

―――――――――

 

君は優しいから、この泊地の立て直しには信頼を勝ち得てから当たったと思うが、

私は全く逆の方法を行った。

 

ショック療法だ。

 

とにかく出撃を命じた。一隻旗艦にして、随伴艦として、不知火にエスコートさせて、とにかく無理やり出撃させた。

艤装に備わってる『旗艦の保護』という能力を、最大限()()した形になるな。

泣き喚こうが、とにかく出撃させた。

……私は、泊地の嫌われ者となったよ。クソ中佐呼ばわりさ。

でもね、私は……()()()()()()()()()()()()()()のは、不知火だったんだ。

強制的にケッコンカッコカリを……司令官のプロトコルを武藤から奪い取って、不知火に無理やりした。

不知火からも当然嫌われてしまったよ。二年間で得た信頼を、私自らがぶち壊したんだ。

武藤は、高天原が軟禁した。私が泊地を乗っ取った形になったな。

とにかく、二隻の出撃を繰り返した。戦えなくなったら入渠させ、次の艦娘を叩き出す。

不知火が被弾したら、高速修復材をぶっかけて、出撃させる。

 

 

 

………私が艦娘達に憎まれれば憎まれるほど、艦娘達は強くなった。

真っ先に私の真意に気づいたのは、不知火だった。

不知火は、臆病になってたんだ、喪うことに。

エスコートすることによって、守り抜く強さを思い出してもらいたかった。

「ありがとうございます」

私に一言だけ。

その後、不知火は訓練の鬼になった。まさに、高梨提督の魂が乗り移ったように。

泣こうが喚こうが、艦娘達を引き摺り出し、戦場に連れて行く。

着実に艦娘達は強くなっていった。

ここまでで、二年半ほど掛かってしまった。

 

そして私は、その強くなった艦娘達「だけ」で、姫の出没する海域に送った。

当然、艦娘達は嫌がったが、強制命令で送り込んだ。

 

―――――――――

 

「結果は大勝利。私の計画は完璧だった」

偉そうに語る龍に、湊は複雑な顔を浮かべる。

「全く、先輩は……そうやって、自分から嫌われる癖、良くないですよ」

「天才を理解出来ない凡人に、理解してもらわずともよい」

その言葉に、大きな溜め息を吐く後輩()

 

 

―――――――――

 

結局、私の真意は、艦娘達にバレてしまったよ。

私が、艦娘達に、戦う誇りを取り戻してもらいたかった、とね。

私は、二年半の戦果と姫撃破の功績により、大佐を経由し、准将になった。

その頃には、高天原は、とある目的で、横須賀に異動になっていた。

今でも忘れない。比叡に瑞鶴、阿賀野に、朧に曙、天津風……今頃は、呉鎮守府の分艦隊として、活躍しているだろうな……

その頃、三笠元帥率いるハワイ遠征連合艦隊が結成された。私も、出撃の準備を急いでいた。

せっかく育った、艦娘達の晴れ舞台だ、

腹が()()痛かったが、それこそ、海兵旅団から譲ってもらったモルヒネで乗り切ろうとした。

 

 

―――――――――

 

「出撃の準備の最中だった。私は、意識を失った。後から聞いた話によると、虫垂炎を放置して腹膜炎を起こし、()()()()だったそうだ」

「………」

唖然としている湊に、龍は、

「なにマヌケな顔をしているのかね?」

と問いかけると、不機嫌な顔になる湊。

「アンドリュー先輩。私は、常々貴方が()鹿()だと思っていましたが、()()()()()鹿()()とは思いませんでした」

「……反論のしようが無いのが残念だ。その言葉を、不知火にも言われた」

 

 

―――――――――

結局、私の艦隊は、不参戦が決定した。

私の艦娘達には、申し訳ないことをしたよ。

手術が終わり、入院している中、ハワイの決戦は終結した。

……艦娘達の多大な犠牲と、大きなものを引き換えに。

 

 

「終わりましたね……一つの大戦が」

私の病床で、りんごを剥きながら語る不知火に、私は、

「まだ、戦後の処理が残っている。それに、深海棲艦は、自然災害として残るだろう。私は此の度、横須賀鎮守府主席監察官の内示を貰っている。不知火、()()()()()()()()()()()。私は、君以上に信頼出来る者を知らない。君には、前線から遠ざけてしまうのを承知で、無理をお願いするが……」

その時、彼女は()()()()で承諾してくれた。

 

―――――――――

 

「…………」

「何かね?後輩」

「アンドリュー先輩。私は、常々貴方が()()だと思っていましたが、()()()()()()()とは思いませんでした」

湊は、大きな溜め息を吐いた。

「……そのようだな」

「そういうことです、先輩。私は、各務原二等兵が戻り次第、()()せねばなりませんので、失礼しますね」

「……君は、どうなんだ?」

その言葉に、ふっと目を伏せてから、寂しそうな笑みを浮かべた。

「私、男運ないんですよ。大好きだった同期は、親友に取られてしまいました。馬鹿で鈍感だけど、不器用で誠実な尊敬できる先輩も取られてしまいました。なーんてね、う・そです。私には、可愛い娘達が居ますから、それで十分です」

ふふっと笑うと、立ち上がる。

それと同時に、勢い良く扉が開かれると、結有が飛び込んでくる。不知火と共に。

「提督―!!!不知火さんを連れてきました!!!」

「な、何が起こってるんです!?緊急事態って何ですか!?」

事態が理解できない不知火に、湊は、

「さて、各務原二等兵。これからお説教ですよ」

いたずらっぽく笑いながら、結有と共に部屋を後にして、扉を閉める。

 

 

 

司令官執務室に辿り着くと、

「結有ちゃん、グッジョブ!」

と悪戯っぽい笑顔とともに、指を突き出す。

「ですよね?」

釣られて、笑顔になる結有。

「でも、上官に対する非礼の件は、始末書ですね。任官前なら、ギリセーフだったんですが」

「はぁ~い……」

しょぼんとなりながら、答える結有に、

「アンドリュー先輩、馬鹿で、鈍感で、不器用で、悪ぶって……ふふっ」

可笑しそうに笑うと、

「私には、可愛い艦娘達がいっぱいいるから幸せです。それに可愛い従卒も」

そう言って、結有に抱きついて見上げる。

「わわっ」

いきなりのことで、狼狽する結有から離れると、

「結有、お茶にしましょう」

「それじゃあ、急いで淹れてきますね!」

びしっと敬礼をして、部屋を出て行く結有を見送ると、司令官デスクの椅子に腰掛けて、

引き出しにある、小さな小箱を取り出すと蓋を開ける。そこにはシンプルなペアリング。

ケッコンカッコカリの証である。

「ケッコンカッコカリか……私は――――」

ふうっと、溜め息を吐くと、蓋を閉め、引き出しに戻す。

「決断力に欠けるのは、私もですね……ねぇ?」

部屋に鎮座している、いなづまちゃん人形に、視線をやりながら、語りかける。

 

 

ちなみに、不知火と龍は、第一艦隊の艦娘達に、祝福と共に盛大にからかわれて、真っ赤になったのはその夕方の話で。

 

その様子を見た湊は、

「よし、覚悟は決めました」

と、小さく呟いた。

 

 

 

 

ちなみに、翌日からの不知火の教練が、心なしか更に厳しくなったのは、気のせいではない筈である。

 




アンドリュー先輩は超絶最低クソ野郎なのは明らか。

次回は湊ちゃん大暴走の回です。

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