不知火との出会いを語る
そして暴走した結有は一体どうなる。
※スピンオフと整合性の取れない部分を直しました
「不知火さんは、少将のことが好きなんですよ!この鈍感!もう見てられません!」
「ちょっと……結有ちゃん?」
ドンッとテーブルを叩いて立ち上がった結有。
「い、いや、何故怒「少将はそこに座っててください!不知火さんを連れてきます!!!」
龍の言葉を遮って、出ていく結有。
13階級上の人間に、もはや滅茶苦茶である。
「お、おい……行ってしまった……」
取り残される湊と龍。
「あのー、アンドリュー先輩。不知火さんとはどのような経緯で?」
「うむ……高梨艦隊が解散して、それぞれの任地に分かれた。私はその時は、病気が快癒して、職務に復帰した頃で、呉鎮守府には、天城と不知火が配属されていた」
湊は立ち上がり、会議室に置いてあるコーヒーマシンを動かして、コーヒーを淹れる。
コーヒーカップに
「どうぞ、先輩」
「うむ。君は、コーヒーは
ふと気づいて、後輩に問いかけると、その小さな後輩は、
「嫌いですよ。でも今日は、コーヒーも悪くないな、って気分です」
うふふ、と笑い、一つ席を開けて座る。
「そこで出会ったのが不知火だ。口癖は『不知火に何か落ち度でも?』」
懐かしそうに語りながら、コーヒーを口にする龍。
「不知火は、高梨元帥の
ドヤ顔をしながら語る龍に、笑みを浮かべながら、
「どうせ私は、偏りの著しい
と毒を吐く。
「私は正直、君ほど
コーヒーから立ち上る湯気を眺めながら、懐かしそうな顔をする龍を、湊は眺めていた。
「いやあ、酷いものだった。その泊地司令官武藤廉也という准将は、酷い男だった。片桐とは
忌々しげに吐き捨てる龍に、湊は首をかしげる。
「逆?」
「艦娘を大事にしすぎるあまり、本来の役目をさせようとしない、
「……いい人過ぎて、現実を見れなかったんですね」
「
「……えっ?」
「この泊地の戦果は、全て
「海兵旅団……」
その言葉を口にした湊は、はっとした。
「待ってください。何の為の艦娘なんですか!?」
「我々の仕事は、味方を
龍が言いたいことは、痛いほどわかる。誰も死なずに勝てる
「死にゆく人間達を見るだけしかできなかった艦娘達は、
龍は、わかるかね?と言いたげに、後輩の顔を見る。
後輩は、真顔になって口を開く。
「リモース。良心の呵責に押し潰されて、戦えなくなった」
「正解だ、優秀なる我が後輩」
コーヒーカップを置いて、ふっと笑うと真顔に戻り、後輩を見る。
「君が、第13泊地を立て直すのに奔走したように、私もこの泊地の立て直しをすることとなった」
―――――――――
君は優しいから、この泊地の立て直しには信頼を勝ち得てから当たったと思うが、
私は全く逆の方法を行った。
ショック療法だ。
とにかく出撃を命じた。一隻旗艦にして、随伴艦として、不知火にエスコートさせて、とにかく無理やり出撃させた。
艤装に備わってる『旗艦の保護』という能力を、最大限
泣き喚こうが、とにかく出撃させた。
……私は、泊地の嫌われ者となったよ。クソ中佐呼ばわりさ。
でもね、私は……
強制的にケッコンカッコカリを……司令官のプロトコルを武藤から奪い取って、不知火に無理やりした。
不知火からも当然嫌われてしまったよ。二年間で得た信頼を、私自らがぶち壊したんだ。
武藤は、高天原が軟禁した。私が泊地を乗っ取った形になったな。
とにかく、二隻の出撃を繰り返した。戦えなくなったら入渠させ、次の艦娘を叩き出す。
不知火が被弾したら、高速修復材をぶっかけて、出撃させる。
………私が艦娘達に憎まれれば憎まれるほど、艦娘達は強くなった。
真っ先に私の真意に気づいたのは、不知火だった。
不知火は、臆病になってたんだ、喪うことに。
エスコートすることによって、守り抜く強さを思い出してもらいたかった。
「ありがとうございます」
私に一言だけ。
その後、不知火は訓練の鬼になった。まさに、高梨提督の魂が乗り移ったように。
泣こうが喚こうが、艦娘達を引き摺り出し、戦場に連れて行く。
着実に艦娘達は強くなっていった。
ここまでで、二年半ほど掛かってしまった。
そして私は、その強くなった艦娘達「だけ」で、姫の出没する海域に送った。
当然、艦娘達は嫌がったが、強制命令で送り込んだ。
―――――――――
「結果は大勝利。私の計画は完璧だった」
偉そうに語る龍に、湊は複雑な顔を浮かべる。
「全く、先輩は……そうやって、自分から嫌われる癖、良くないですよ」
「天才を理解出来ない凡人に、理解してもらわずともよい」
その言葉に、大きな溜め息を吐く
―――――――――
結局、私の真意は、艦娘達にバレてしまったよ。
私が、艦娘達に、戦う誇りを取り戻してもらいたかった、とね。
私は、二年半の戦果と姫撃破の功績により、大佐を経由し、准将になった。
その頃には、高天原は、とある目的で、横須賀に異動になっていた。
今でも忘れない。比叡に瑞鶴、阿賀野に、朧に曙、天津風……今頃は、呉鎮守府の分艦隊として、活躍しているだろうな……
その頃、三笠元帥率いるハワイ遠征連合艦隊が結成された。私も、出撃の準備を急いでいた。
せっかく育った、艦娘達の晴れ舞台だ、
腹が
―――――――――
「出撃の準備の最中だった。私は、意識を失った。後から聞いた話によると、虫垂炎を放置して腹膜炎を起こし、
「………」
唖然としている湊に、龍は、
「なにマヌケな顔をしているのかね?」
と問いかけると、不機嫌な顔になる湊。
「アンドリュー先輩。私は、常々貴方が
「……反論のしようが無いのが残念だ。その言葉を、不知火にも言われた」
―――――――――
結局、私の艦隊は、不参戦が決定した。
私の艦娘達には、申し訳ないことをしたよ。
手術が終わり、入院している中、ハワイの決戦は終結した。
……艦娘達の多大な犠牲と、大きなものを引き換えに。
「終わりましたね……一つの大戦が」
私の病床で、りんごを剥きながら語る不知火に、私は、
「まだ、戦後の処理が残っている。それに、深海棲艦は、自然災害として残るだろう。私は此の度、横須賀鎮守府主席監察官の内示を貰っている。不知火、
その時、彼女は
―――――――――
「…………」
「何かね?後輩」
「アンドリュー先輩。私は、常々貴方が
湊は、大きな溜め息を吐いた。
「……そのようだな」
「そういうことです、先輩。私は、各務原二等兵が戻り次第、
「……君は、どうなんだ?」
その言葉に、ふっと目を伏せてから、寂しそうな笑みを浮かべた。
「私、男運ないんですよ。大好きだった同期は、親友に取られてしまいました。馬鹿で鈍感だけど、不器用で誠実な尊敬できる先輩も取られてしまいました。なーんてね、う・そです。私には、可愛い娘達が居ますから、それで十分です」
ふふっと笑うと、立ち上がる。
それと同時に、勢い良く扉が開かれると、結有が飛び込んでくる。不知火と共に。
「提督―!!!不知火さんを連れてきました!!!」
「な、何が起こってるんです!?緊急事態って何ですか!?」
事態が理解できない不知火に、湊は、
「さて、各務原二等兵。これからお説教ですよ」
いたずらっぽく笑いながら、結有と共に部屋を後にして、扉を閉める。
司令官執務室に辿り着くと、
「結有ちゃん、グッジョブ!」
と悪戯っぽい笑顔とともに、指を突き出す。
「ですよね?」
釣られて、笑顔になる結有。
「でも、上官に対する非礼の件は、始末書ですね。任官前なら、ギリセーフだったんですが」
「はぁ~い……」
しょぼんとなりながら、答える結有に、
「アンドリュー先輩、馬鹿で、鈍感で、不器用で、悪ぶって……ふふっ」
可笑しそうに笑うと、
「私には、可愛い艦娘達がいっぱいいるから幸せです。それに可愛い従卒も」
そう言って、結有に抱きついて見上げる。
「わわっ」
いきなりのことで、狼狽する結有から離れると、
「結有、お茶にしましょう」
「それじゃあ、急いで淹れてきますね!」
びしっと敬礼をして、部屋を出て行く結有を見送ると、司令官デスクの椅子に腰掛けて、
引き出しにある、小さな小箱を取り出すと蓋を開ける。そこにはシンプルなペアリング。
ケッコンカッコカリの証である。
「ケッコンカッコカリか……私は――――」
ふうっと、溜め息を吐くと、蓋を閉め、引き出しに戻す。
「決断力に欠けるのは、私もですね……ねぇ?」
部屋に鎮座している、いなづまちゃん人形に、視線をやりながら、語りかける。
ちなみに、不知火と龍は、第一艦隊の艦娘達に、祝福と共に盛大にからかわれて、真っ赤になったのはその夕方の話で。
その様子を見た湊は、
「よし、覚悟は決めました」
と、小さく呟いた。
ちなみに、翌日からの不知火の教練が、心なしか更に厳しくなったのは、気のせいではない筈である。
アンドリュー先輩は超絶最低クソ野郎なのは明らか。
次回は湊ちゃん大暴走の回です。