小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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とうとう、デート当日
張り切る湊ちゃん。

そして、背後で進行する謎のプロジェクト




湊ちゃんのケッコン大作戦(後編)

月曜日当日。

「服よし、お化粧よし、指輪よし、荷物よし、チケットよし」

部屋で、スーツケースを開けて荷物を再確認している湊に、結有が部屋のドアの前で声をかける。

「湊さーん、長門さんが車回してくれましたよ―」

「はーい!」

若草色のカーディガンに白黒ボーダーのトップス、チュールスカートという格好である。

チュールスカートは加賀プレゼントで、カーディガンもおろしたての、赤城プレゼントのものだ。

それに、スイセンのデザインのピアス――響からのプレゼント――

そして、シンプルなパンプス――レディこと暁からのプレゼント――を履いて、

官舎を出て、扉に鍵をかける。

「それじゃあ、各務原二等兵。大村()()()()()のお世話をお願いします」

「はいっ」

 

官舎を出ると、つばの広めのフェルトハットにベージュのワンピース、

黒のハイソックスにブーツの格好をした電。

「お待たせしました。電、とっても可愛いですよ」

「ありがとうございますなのです」

電も、密かに結有が手回しをした暁、雷、響の手によって、おめかしをされていたのだ。

スポーツカーの横に、いつもの格好にタクシー運転手風の帽子、サングラスの長門が立っていた。

当然ながら、これも結有の根回しである。

「それじゃあ、ヘリポートまで安全運転で送らせてもらおう。お客様」

「「お願いします」なのです」

「いってらっしゃい!」

車に乗って走っていく湊達に、手を振る結有は、

当事者以外のLINEに、「今、出発しました!」と連絡。

 

お互いの想いを知っている残留組は、鳳翔を巻き込み、

第二の作戦の、仕上げに取り掛かろうとしていた。

 

 

 

「わぁ、海が綺麗なのです」

「空から見る海は初めてですもんね」

ヘリコプターは、青ヶ島ヘリポートを飛び立って、東京ヘリポートまでフライトする予定である。

眼下に、船が航行していくのが見える。

「こういうきれいな海を、貴方達が守ってくれたんですよ」

湊は、海を眺めている電の頭を、優しく撫でた。

 

東京ヘリポートに着いたら、

タクシーで都心に向かい、早速予約したランチのお店に向かった。

こちらは、幕僚監部勤務の同期にリサーチしてもらったお店だが、まさか彼女も、艦娘と行くとは思っていないだろう。

「お昼は、このお店ですねー」

手を繋いで、お店まで向かう湊に、

「まるでデートみたいですね」

と笑顔で告げると、そうですよ?と流し目の笑顔で答える湊。

その笑顔に一瞬ドキリとするも、必死に平静になる電。

この笑顔にヤられたら陥落なのです……と心で念じながら。

 

その後二人は、都内でおおよそデートといえるような、お買い物をしたり、

お揃いのネックレスを買ったり、日が暮れるまで、楽しいひと時を過ごした。

 

 

そして、運命の東京スカイツリーへ向かった。

荷物をホテルにこっそり託し、二人は車を降りた。

日の暮れた東京スカイツリーは、街の明かりが煌めいていい景色だった。

その一番上の天望回廊。ソラカラポイントまで、夜景を眺めながら、手を繋いで歩いた湊。

楽しそうに、目をキラキラさせて、夜景を眺めている電。

「電……」

「はい?」

振り向いた電に、真剣な表情になる湊。

「貴方と出会って、もう一年半くらい経ちましたね」

「……長いようで、短いものなのです」

その真面目な顔に、ちょっと不思議そうな顔で、首を傾げながら答える電。

「今日は、貴方にお願いがあって、連れてきました……」

「……」

「好きです!結婚してください!」

「………はい?」

 

遡った時がようやく戻った。

 

「私っ、ケッコンカッコカリを誰にしようかずっと考えてきました。やっぱり、そばにいて、共に笑い、泣いて、頑張ってきた貴方に、貴方にこそ受け取ってもらいたいと思って……」

必死過ぎる、その告白に、電は笑いが堪え切れずに、お腹を抱えて笑い始める。

その姿を見て、湊はぺたんと座り込んだ。

涙がじんわりと浮かんで……

「う、うわあああん!!」

泣き出した……

「え?え?湊さん、ちょ、どうしたのですか!?」

慌てふためく電。

「だってぇ……告白、失敗しちゃったぁ……」

「あー……湊さん?」

泣いている湊の頬に、電はキスをした。

「ふぇ……?」

驚いて泣き止んで、涙目で電を見る湊。

「……まだ、答えを言っていないのです。湊さんは、しっかり者で、どこか抜けていて。電は放っておけないのです」

そう言うと、頭を優しく撫でる。

「……電は……わたしは、湊さん、貴方のことが大好きです。()()()()()()()、艦娘としても」

「え……それじゃあ……」

電の顔をじっと見つめる湊の顎を持ち上げて……

「こういうことです」

それだけ言って、湊の唇に己の唇を重ねた……

「んっ……」

時間が止まったかのような、長い、長い口吻の後、離れてから、湊の涙をそっとハンカチで拭う。

「さ、立ってください。湊さん、夜はまだこれからなのです」

手を差し出した電に、顔を赤らめて笑顔になった湊が立ち上がった。

 

「湊さん」

「なんですかー?」

スカイツリーを降りながら、手を繋いで歩く二人。

「いなづまちゃん人形、あれ、もう要りませんよね?」

「ふぇ?」

突然の言葉に、変な声で返す。

「寝る時は、電をだっこして寝れば良いのです。あの子は電の代理なのです」

そう、耳元で囁く電に、湊は顔を赤らめながら、疑問を口にする。

「う、うん……もしかして……嫉妬してた?」

「もちろん。常々あの場所は、電が奪うんだと思っていたのです」

ふんすと、姉譲りの鼻息を出しながら答える電に、湊はありがとう、と笑っていた。

 

結有と一生懸命選んだレストランで、奥のテーブルに案内されると、ウェイターから、

『旧横須賀鎮守府第13泊地艦隊艦娘with湊ちゃん艦隊幕僚一同様』より、シャンパンとケーキの差し入れが入っていたことを告げられる。

予約したコースよりも、()()()()()になっていて……

「こ、これは……」

「知らぬは、当事者ばかりなり、なのですね」

「旧13泊地、と殊更に強調するということは……」

呟いた湊に、ウエイトレスが、シャンパンを持ってやってきた。その姿は、湊は忘れる筈もなかった。

「清霜!?」

そう、旧第13泊地艦隊第2艦隊所属の元艦娘、清霜だった。今はこのレストランで働いている。

「はい、そういうことです。今は霜月清美、と名乗っています。結有さんとはちょっとした知り合いで……」

二人にシャンパンを注ぎながら、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「これは、退役した子達も快く乗ってくれた、お二人へのブライダル・プレゼントです」

「………私……」

言葉が、詰まって出てこない。

「ありがとうございます、なのです」

代わりに電が続けると、清霜―清美―は笑顔で一礼し、ごゆっくり、と去っていく。

「私……こんなに幸せなこと、ないです……」

嬉し涙を浮かべながら電の顔を見る。電は優しい笑顔で返す。

「司令官……湊さん……湊ちゃんが頑張ったから、今の『湊ちゃん艦隊』があるんです。電とケッコンするんです」

「……ありがとう、私の恩人であり、私の―――」

 

最愛の人……

 

 

 

 

―――――――

そのころ、青ヶ島泊地。居酒屋鳳翔では、二人の女が飲んだくれていた。

「どーせ結局、私だけが一人もんよ、ケッ。何が悲しくて、()()()()()()()をお膳立てしなきゃなんないのよ?そりゃ、湊に大事な(ひと)が出来たのは嬉しいわよ。でも寂しいのよ!」

最初っから、飛ばしまくってたペースの智子が毒を吐く。()()()()()()()はどこに行ったのか。

「まあまあ、いい男見つかるって」

隣りにいるのは参謀長の奈緒。

「うっせー! あんたねー。恵一郎を狙ってたのは、あんたや、湊だけじゃないっつーの」

「あはは……」

くだを巻く智子に、奈緒も鳳翔も、苦笑いを浮かべる。その目の先には久保田萬寿――天龍から湊へのプレゼント――

「おかーさん、あれ、あの久保田出して」

「あれは、湊さんの……」

出せと要求する智子に、苦笑いの鳳翔。何故か、女将さんではなく、お母さん呼ばわりだ。

「問題ない、始末書は私が書く、かーちゃん、構わん、出したれ」

こっちも、酒が回ってるのか、それに乗っかる奈緒。

「はあ、私は知りませんよ?」

溜め息を吐きながら出しておいて、二人に背を向けて、ペロッと舌を出す鳳翔。

事前に湊が、二人に――主に智子に――飲ませてくださいと、頼んでおいて、わざとらしく見えるところに出していたのだ。もちろん天龍も、鳳翔経由で了解して……

「あのよー、各務原大尉とかどうよ?」

「いやよ、もうオッサンじゃない。結有のお母さんですよとか、無理無理」

なお、()()()()、座敷席で陸戦隊と飲んでいて、()()()()()()()()()を浮かべている。

「じゃあ、その隣の若いのは?」

「軍人なら私、最低でも大尉よ、大尉」

「そっかー……あれは?横須賀に配属した、元海兵旅団のナントカ中佐」

「戦死しそうだからヤダ。早くも未亡人とか嫌よ」

「そっかそっかー……」

かくして、久保田萬寿は、湊が一滴も飲むことなく、二人に飲み干されてしまいました。

なお、二人の酔っぱらいは、長門がそれぞれ背負って帰ったそうな。

ちなみに、恵奈ちゃんは今頃、大好きな暁とお部屋で寝てるだろう……電のベッドに、智子から一日中愚痴を聞かされて、疲れ切った結有が寝ている。

 

―――――――

 

二人はほろ酔い気分で、予約したホテルに入り、チェックインした。

いつものように、愛用の万年筆――電からのプレゼントの木軸のものだ――を取り出してケースを見ると、

筆記体でMy Admiralと刻まれてることを思い出す。

「……ふふっ」

笑いながら、万年筆――こちらにもMinato Takanashiと筆記体で刻まれている――で宿泊表にサインをすると、再び大事にケースにしまい、持っていたハンドバッグに仕舞う。

「さ、行きましょう、電」

「はい」

コンシェルジュの案内で、客室に向かった。

 

案内された先は、()()()()スイートで……

「こ、これは………あの、予約したの、普通のスイート……」

「先日、安藤龍・不知火様より、差額を負担するので、ロイヤルスイートに変更するように、とご指示がございました」

「………」

「湊さんは愛されキャラなのです」

楽しそうに笑いながら、ソファーに座る電をみて、コンシェルジュは一礼して立ち去る。

「そうなんでしょうかね?」

隣りに座ると、ハンドバッグから指輪の箱を取り出す。

「……()()()()だけど、いいのですか?」

電は、無理やり片桐とケッコンカッコカリをされていた。片桐が逮捕された際、破棄されたが……

「そんなのは、関係ありません、貴方とケッコンしたいんです。ペアリングタイプのものをお願いしました」

ケッコンカッコカリには、シングルタイプ――艦娘だけのもの――とペアリングタイプが有り、

()()()()()と決めた提督は、このタイプのものが支給されるのだ。もちろん、その後のジュウコンカッコカリには規制はないが……

 

湊は、電の左手をそっと取り、指輪を薬指に填める。

指輪は、電の指のサイズに収まり、電の姿が光に包まれる。

その光が収まると、ちょっぴりだけ大人びた彼女の姿になる。片桐とのケッコンカッコカリの破棄で()()()()()()()霊子が解き放たれたのだ。

「……湊、私も貴方に…」

「……はい」

電も、湊の左手をそっと取ると、薬指に填める。

指輪は、湊の指のサイズに収まり、指輪が輝いて………電は湊の霊子の増大を感じていた……

「これは、お互いにケッコンカッコカリ、なのですね?」

艦娘の血を引いた湊と、艦娘である電は、互いに見合わせて笑って、

「ここからは、大人のキスなのです」

「んんぅ………」

そういって、湊を押し倒しながら唇を重ねた。

 

 

 

――――――

 

「ゆうべはおたのしみでしたね?」

翌朝、二人でルームサービスのモーニングを楽しみ、部屋に戻って、チェックアウトの準備をしていたところにかかってきた、恵奈からの電話がそれであり、

その言葉を聞いた瞬間、湊は真っ赤になってぶっ倒れた。

「ちょ!湊!ええと……はいもしもし、誰なのです?」

電話を取って耳に当てた頃には、暁が電話を変わっていた。

「ご、ごめんなさい、電。恵奈ちゃん、奈緒参謀長から変な入れ知恵されてたみたいで、あとで説教しておくわ。二人の時間を邪魔したら悪いから切るわ、じゃあね」

「え、ちょ、あ……切られたのです」

真っ赤でぶっ倒れたままの湊を、ゆさゆさ揺らしながら起こす。

「う……ううん……」

真っ赤の顔のまま起き上がると、電は笑顔を向ける。

「さ、湊。帰りのヘリの時間に間に合わなくなるから、支度するのですよ」

「はーい」

湊は、ふにゃっとした笑顔に戻ると、再び帰り支度を始めた。

 

 

 

――――――

お昼を、清霜の働いてるレストランで食べてから、お土産を買って、東京ヘリポートから青ヶ島に戻った頃には夕方になっていた。

青ヶ島ヘリポートには、スポーツカーと長門が待っていた。

何故か、タキシードに白手袋姿。

「高梨湊様、電様、どうぞ」

ハイヤー風に扉を開けると、二人は、何か企んでるな、と思いながら後部座席に乗る。

「それでは、安全運転で、居酒屋鳳翔まで参ります」

「はい、お願いします」

 

居酒屋鳳翔に向かう途中、軍港で、知らない娘達が哨戒しているのが、少し気になったが、

なんだろうと思いながら、窓を眺めている湊。

 

居酒屋鳳翔に着くと、『本日貸し切り』という張り紙が貼られており、

中に入ると、店内が飾り付けられていた。

「おめでとうございまーす!」

と全員から声をかけられ、店内を見回す二人。

Happy Weddingと書かれた店内まではまだ良い、艦娘全員と幕僚達が揃ってるのも、軍港警備はどうするんだ、というのもさておいて良い。

そこに、天城と三笠。未来に、安藤と不知火がいることに、一瞬思考が硬直した。

「おー、驚いてる驚いてる」

そんな湊を見て、面白そうに笑っている、今回の計画の主犯である奈緒。前日あんだけ飲んでも元気いっぱいだ。

「後輩よ。本日の祝宴の為に、我が配下達に警備を頼んだのだ。ちなみに、私も有給休暇だ」

「私も有給休暇よ。幕僚監部に消化しろって言われてたし。金剛に、司令長官代行押し付けてヘリで来たわ」

そう偉そうに言う龍に、未来が続けてから、不知火が、

「龍が立て直した、泊地の娘達です。呉鎮守府の規模縮小で()()()だったので、()()横須賀鎮守府に呼び寄せて、()()()()湊ちゃん艦隊に配属させることにしました。

 山本の爺様の了解も、大垣長官の承認も済んでいます。彼女等からの、これからお世話になる提督へのケッコン祝いで、本日の哨戒、軍港警備は彼女等が担当します。私の()()()です。実力は疑いありません」

「お嬢様、おめでとうございます。天城は嬉しゅうございます」

と泣き出す天城。

 

「いやあ……」

「知らぬは、当事者ばかりなり、なのです」

ふふっと、二人で笑うと、主役の席に腰掛ける。

 

ケッコンパーティーは大盛り上がりだった。

間宮特製のウエディングケーキ――龍はその輸送担当という重責も担っていた――のケーキカットや、

チューしろ、チュー!との酔っぱらい(主に奈緒と智子)の要求で何度もキスしたり。

「無作法な娘ですが、宜しくご指導お願いします」

と三笠に頼まれて電が慌てたり。

「おねえちゃん達は『ふーふのいとなみ』をしたんですか?」

恵奈に訊かれて、湊が気絶しそうになったり――今日は暁は、グッジョブと親指を出していた――

「本日より、僕各務原結有軍属二等兵は湊提督、電副官お二人に、従卒としてお仕えいたします!」

と改めて敬礼されたり、暁型姉妹より、『二日で作って持ってきて!』と無茶な注文でオーダーされた、

湊と電が手を繋いでハートマークが間にある「みなとちゃんいなづまちゃんラブラブ人形」をプレゼントされたり、

未来からは、

「霊子が跳ね上がってるわね。()()()()でダブルケッコンカッコカリだったのね。今なら()()、起動できたかもね」

としみじみ言われたり……

「いや、今更原子力潜水艦娘になっても……」

と苦笑いして答えた湊ではあるが、それも悪くなかったかな?と密かに思ったり。

 

途中、加賀赤城(一航戦)に二階に拉致されて、ウェディングドレスに着替えさせられたり。

 

……

その祝宴は、夜遅くまで続いた。

 

 

――――――

 

翌朝……

二人の眠るベッドルームには、その場で現像された、ウェディングドレス姿でキスしている写真と、略してラブラブ人形が飾られている。

「ん……」

先に目が冷めたのは電。もそもそとベッドから出ると、湊も目を覚まして起き上がる。

「ん……おはよ、電」

「おはようなのです、湊」

 

二人の左薬指には銀色の指輪が輝いていた……

 

 

 

 

 

――――――

おまけ

 

「いい加減、恵奈には性教育をするべきだわ」

との、加賀の提案で、小学低学年向けの性教育を、加賀と赤城と鳳翔の主導でやることになってから、(母親は()()()()()()から除外したらしい)

恵奈の「ふーふのいとなみ」発言は、パタリと止むことになった。

そして、三人部屋になった暁型駆逐艦の部屋には、龍の提案で、結有が入寮することになった。

 

 




加賀「ところで、恵奈は大きくなったら誰と結婚したいの?」
恵奈「暁おねーちゃん!」
加賀「お、おう」
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