途中まではイイハナシダナーなのに。
やっぱり貧乏くじ体質の結有ちゃん。
皆揃ったところで、やけにテンションの高い湊が、
「はーい!ちゅうも~く!」
と声を上げてから、
「それじゃあ、今日は無礼講で~~す!もう、バーベキューの間は階級とかナシで行きましょー!各務原
彼女にしては、大きな声でコップを高く上げる湊。
「かんぱーい!」
その声と共に、あちこちのバーベキューコンロから美味しそうな匂いが立ち上ってくる。
恵奈ちゃんは、暁と一緒に美味しく食べている。
「おいしーね、しもふりまつざかぎゅー」
「そうね、さすがは
その声に「え゛?」と湊が声を上げて、自分のスマホを見て、
予想以上に費用がかかっている。想定費用の三倍は超えている……
明日、領収書とにらめっこして、経費申請出来るものと、自腹切るものとを判断せねば……と、湊は肩を落とした。
そんな湊に、電がポンと背中を叩く
「湊、こうなったら飲むしかないのです」
「うん……飲むしかないね……」
どこかの、イタリアに帰っていった艦娘みたいな言葉で慰めて、二人仲良くお酒を飲み始めた。
お肉も食べながら。
端っこのコンロでは、空母三人娘が、黙々と食べている。どれだけ食べるつもりだろう……
そこに、戦艦トリオも参戦して食べ始める。
戦艦なりたい娘、元艦娘の清霜も参戦して、早々とギブアップした。
暁と電以外の駆逐艦娘達と天龍は、天津風たちの語る、悪の(?)秘密結社『MRE同好会』なる組織について聞いている。
「安藤龍ってクソ提督は、本当に
「でも、本当は、私達のことを考えてくれる、
「目的に向かって真っ直ぐな人だった。孤高で、自分にも妥協を許さない人だった」
曙が語り、天津風がフォローして、朧が締める。
雷にとっては、
吹雪がふと口にした「考えるな、感じろ、それは月を目指すもの。指ばかり見ては栄光は摑めない」
という言葉に、旧室戸艦隊メンバーは驚いた顔をした。嘗て安藤が口にした言葉、ブルース・リーのセリフだ。
それを見た天龍は、くつくつ笑う。「コイツは、艦隊一の努力家でなぁ。考えて、感じて、目的を見つめて、真っ直ぐ走るやつなんだよ」
べた褒めされた吹雪は、照れているが、曙達は、安藤の言う「既に理解しているヤツ」だ、と感じていた。
余談だが、不知火はMRE同好会加入後は、7勤0休で
安藤も当然ながら7勤0休だった。やはりブラックな泊地だった。
阿賀野は、陸戦隊の面々に、ビールを注いで回っている。
「はぁーい、どうぞー♪」
「お、ありがとう」
本人曰く、イケメン揃いで楽しいそうだ。
そんな中、結有と裕二は埠頭に腰掛けていた。
「はい、父さんビール」
「ありがとう」
ビールを注ぐと、瓶を横に置く結有。
「ねえ―――もし、僕が、彼氏出来ましたって、連れてきたらどうする?」
敢えてこの質問をぶつけた。
「そうだね―――結有が、真剣に選んで、この人と一生を共に過ごしたい、そういう人と一緒に来るなら――」
その先を、敢えて語らず、ビールを飲み干す。
「父さん……」
「結有、これは大事なことだから、しっかり覚えておきなさい。
結有は、高校進学を選ばず、軍の中で生きると決めた。湊さんのもとで守ってもらえるのは、長くてあと三年だ。
階級で言えばあと二階級。上等兵、兵長。18になれば、自動的に伍長で下士官だ。
今後、艦娘本部の発言権は、今まで以上に少なくなり、今の艦隊のように、恣意的な配属は、厳しくなるだろう。
軍の中のいろいろな部署を経験して、自分の適性を見つけてほしい」
今まで、語り合ったことがない話だ。軍属になる時も「ああいいよ」で済んでいた話だった。
「結有、今までは、お父さんが側で護ってやれたけど、これからは、すぐには飛んでこられない。
もしかしたら、軍大学の先は北海道や、九州の配属になるかもしれない。私は元々普通科――歩兵の出身だ。
テロや、深海棲艦の急襲、海外派遣、災害救助に於いては命を落とすことも考えられる。
だから、これからは、君の人生は君が、見て、感じたことを大事にして、考えて、責任を持って、行動しなさい」
ふっと笑った裕二は、結有の頭を撫でた。
「うん、僕、頑張るよ……!」
同じく笑った結有に、裕二は海を見る。
「幸いこの艦隊には、君にとって優秀な先生がいっぱいいる。
湊さんは、戦術の専門家だ。あくまで、司令官の資質も持つ参謀タイプで。敗けない戦いの専門家だ。
恵一郎くんは、組織調整の専門家だ。なんというか、色んな人の立場を考えて、皆がwin-winになることを考える人だ。性格もね。
奈緒さんは多少問題児だが、どこに置いても水準点を熟す人だ。恵一郎くんと違う意味で、みんなをアゲてくれる人。
高天原さんはそうだね、客観的に見て、客観的に動く天才だ。自分の主観を信じない。そこにある現実を、ありのままに分析して判断する人。
書類作成や諜報の専門家だ。そして冷徹な厳しさの中で、ちょっぴり優しさを見せる人。
そして吹雪くん。彼女は「努力する意味と目的」を熟知している。彼女と同じ部署にいるなら、彼女を手本にすると良い。
電くんには、補佐とは何ぞや?ということを学べると思う」
ふぅ、と軽く溜め息を吐いた裕二は、ぽんと、前を向いたまま、結有の頭を撫でる。
「やっぱり僕は心配なんだよ、大事な大事な、僕のたった一人の可愛い娘。でも、結有、結有には結有の人生がある。精一杯、生きなさい」
「うんっ!」
そう結有が答えると、裕二は立ち上がり、結有に手を差し伸べる。
それを見上げた結有は、その手を引いて立ち上がる。
――――頑張ってね、僕も応援しているよ。
誰かの声が聞こえ、結有は海を見る……
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもない」
振り返った結有は、優しい笑みを浮かべていた。明かりに、時雨の髪飾りが照らされて、綺麗に輝いて……
―――――――
【カオス注意】
―――――――
ここまでは、楽しい飲み会だった。此処から先がカオスである。
野外という開放的な空間と、無礼講という言葉で、皆、色んな意味で飲み過ぎていた。
準備に疲れた鳳翔(オードブルの他にも、清霜仕入れの野菜とかを一生懸命切ってた)は、早めに引き上げていった。実にいい判断だった。
駆逐艦娘達は、恵奈と一緒に、早めに寝に帰ってしまった。
「恵奈はもう寝る時間!」
という、
ただし、電以外。
電は、レーダーに反応があった為、「
阿賀野と陸戦隊員は、盛り上がり過ぎて、風紀担当の各務原少佐に説教を食らっている。
なんというか、女子が部屋に潜り込んできて、騒ぎ過ぎて、先生に叱られる、男子修学旅行生のごとくである。
説教の後、寝るべ?ということになり、官舎に引き上げていく。
裕二は、疲れたから寝るよ、と
天龍と長門と清霜は、最強の戦艦について議論して、夕張が、戦艦魔改造計画を展開する。
清霜の、一度は戦艦になりたい!というリクエストに、コストと重さの問題(浮くけど、陸上だと動けない)で、試作しただけで放棄されていた、海兵旅団の海上戦闘用――主に対海賊である――戦艦艤装を、
――実態は、グレネードランチャーとミニガン装備の、戦艦艤装
「コレジャナーイ!」
と叫んだり。
「実際、これ何の為に作ったんだよ?」
と天龍。
「いやー、深海棲艦の脅威が減ったら、ソマリア沖の海賊とか、また出てくるかもしれないから、海兵旅団に、海から乗り込んでもらう計画だったんですよ」
と、開発秘話を明かす夕張。
あの凶暴集団が、大挙して
恵一郎は、お酒が入っても、入らなくても変わらない。にこにこと、のんびりとしたほんわかな空気を作っている。
というか、ものすごく地味に、空気に溶け込んでいる。
その隣では、智子が結婚相手について、あーでもないこーでもないと言うのを、奈緒は「そっかー、そっかー」と聞いている。
冷徹な、血も涙も捨てた女が、見る影もなかった。
湊ちゃん司令官は……
「電ちゃーん!早く帰ってきて―!寂しいよ―!」
何故か泣いていた、埠頭で……当然ながら酔っ払ってる。
駆逐イ級を、三枚におろして帰ってきた電は、上陸した途端、泣きながら抱きついてくる最愛の人の頭を撫でて、
泣き止ませようとキスをする。ものすごいディープな……
「んぅ……」
「湊、寂しくさせて、ごめんなさいなのです」
「うん……」
「それじゃ、一緒にお酒の続きなのです」
「はーい」
仲良く手を繋いで、埠頭に腰掛ける。
「あー、何だ?このカオス」
結有は、そんな状況を、苦笑いして眺めていた。
「でも……僕は、こんな人間味のある楽しい人が大好きだよ」
そう呟いて、一番
「いい?結有ちゃん。オトコはねー、イケメンだけじゃ駄目なのよ。
「ヤリ……いや智子さん、年収二度言った」
「べつにさ、あんた高級将校じゃん、月収手取りで30ちょいあるっしょ。あたしもだけど。ニートでもよくね?好きなら」
くだを巻いてる智子に、冷静に突っ込む、シラフの結有、酔っ払ってるのか、滅茶苦茶な事を言う奈緒。
「ヒモを養うのはちょっとねぇ、あ、でもね、わがまま言った後の、「ありがとう」ってキュンっと来るわね」
「あー……」
「それ、ダメ男製造機じゃね?」
結有が言おうとしてやめたことを、奈緒が言うと、智子は、
「ちくしょー!奈緒め、恵一郎と結婚しやがって―!」
おいおい泣き出したので、恵一郎に助けを求めようとしたら……
奈緒にもたれかかって、既に寝ていた……
「あー!!!どうすんのこれ~~~~!!!」
結有は、頭を抱えながら、空を見上げて叫んだ。
結局、戦艦談義組に助けを求めて、手分けして、官舎にそれぞれ放り込み、
後片付けを行う結有だった。
……中に入れないラブラブオーラを見せていちゃついている
余談だが、湊と電は、チュッチュしながら、明け方まで埠頭でいちゃついていたのを、
片付けが終わった頃、港湾警備に出てきた駆逐艦達が生暖かく見守っていた。
「ブラックコーヒーが甘く感じるわ……」
暁が呟いた。
湊は、昨日の飲み会、途中から、記憶がなくなっていた。
昼過ぎになって起きた湊は、恐ろしい頭痛と、記憶が飛んだ事に悶絶していた。
「頭痛い………死ぬほど痛い……途中から何も覚えてない……」
隣では、電が、下着姿ですやすや寝ていた。
湊「昨日、なにがあったか覚えてますか」
電「湊!酷いのです!あんなに激しく愛し合ったのに!」
湊「ええっ!?」