小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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第1期 青ヶ島泊地物語も最終話となります。

次回からは第二期です


旅立ち(4)―さらば青ヶ島―

青ヶ島泊地では、急ピッチで、司令部移動の準備が進められていた。

書類の片付けや、不要な書類の処分、運べる備品と残す備品の選別。

 

大村夫妻は、先行して、中部警備府の受け入れ準備の為に、泊地から一足早く旅立った。

向こうは向こうで、赴任してくる職員や士官の統括をしなくてはならない。

恵一郎も、奈緒も、もう高級将校であり、数百人の部下を統率せねばならない身だ。

 

泊地というのは上級士官少数+艦娘と守備隊、というセット――陸続きの泊地は守備隊は海兵旅団が兼ねるから付かない―ーだが

警備府となると、中部エリアの艦娘部隊の統括も兼ねている。

旧海上保安庁の、沿岸警備隊とも連携して、事にあたる時もあるだろう。

そうなると、勤務する職員も今まで以上となる。

自分が『やらねばならないこと』は減るが、『やらせて、承認する』ことへと変わるだけだ。

それが、部署の部門責任者の彼等の仕事だ。

 

「それじゃあ、先に行ってるね!」

「暁ちゃん、雷ちゃん、娘の面倒お願いね」

 

「ぱぱー!ままー!名古屋でねー!」

「私に恵奈ちゃんのことは任せて!」

「この雷さまに任せなさい」

 

という言葉で、彼らは青ヶ島泊地を後にした。

恵奈ちゃんは、お気に入りの暁と一緒に、少しの間暮らす予定だ。

 

清霜と鳳翔も、居酒屋鳳翔青ヶ島店の片付けを終えると、

土地賃貸契約書を湊に返却し、

青ヶ島を後にした。

民間人である彼女等は、八丈島まで定期ヘリで渡り、八丈島空港から羽田まで飛んで、東京駅から、復旧した東海道新幹線という手段で名古屋入りすることになるだろう。

 

第二陣は電を除く艦娘と、高天原、それに恵奈ちゃんと結有。

そして、守備隊が旅立って行く。

搬入資材を大型輸送艇に運び込むのを見送ると、泊地や工廠は空になり、

やがては、少数ながら民間人も帰ってくるだろう。

 

智子は、向こうに行ったら、仕事の山だ。

総務部長のデスクには、大量の決済待ち書類が鎮座している。

幕僚長である恵一郎も、できるだけ処理しているが、彼には彼の仕事もある。

「軍官僚とはこういうものね。まあ、権謀術数に塗れるよりは、精神衛生上()()ストレスね」

と、眼鏡をかけ直しながら、青ヶ島泊地を後にした。

 

 

「行ってしまったのですね、湊」

「そうですね。でも、ちょっとのお別れです」

彼女等の、官舎の荷物は、第二陣にて積み込んだ。

この翌朝、軍へ引き渡しになる。

今夜彼女等は、なにもなくなった司令室で寝袋生活だ。

食堂も閉鎖された為、夕飯は、スーパーあおがしまで買った、菓子パンと惣菜パン、ペットボトルのお茶だ。

今日で電気契約も解約したため、ランタンの明かりで食べる夕飯。

それでも、電となら、湊は楽しいものだろう。

 

「明日も朝早いし、もう寝ますよ」

「湊、そっちの寝袋に入りたいのです」

そういうと、湊の入った寝袋に潜り込む。

司令室の大きな窓からは後方支援艦が見え、横須賀鎮守府本隊の、哨戒警備をする艦娘達が見える。

もう―――この泊地は、島嶼部防衛隊としての役目を終えたのだ。

 

「新しい任地、ちょっと私、不安かもしれません……」

「でも、湊なら出来るのです。この電が、私が保証するのです」

「んぅ……」

そう言うと、深いキスをする電。「もぅ……」と、少し照れた顔をする湊。

 

 

それから少ししてから、二人の小さな寝息が、静かな静かな部屋に響いたのだった。

 

 

 

 

翌朝、安藤龍少将と不知火中佐、そして、多数の監察部員が乗り込む輸送艇が埠頭に接舷した。

先頭で降りてくる安藤龍、その傍らにいる不知火。そして、監察部員。

 

「それでは、引き渡しを始める。高梨湊准将、引き渡し報告書の提出をせよ」

背中に手を回し、背筋を伸ばし湊に告げる。

「はっ、引き渡し報告書及び、土地権利に関する書類です」

一歩前に出て差し出すと、横にいた不知火が受け取り、目を通すと、後ろの職員に渡す。

「では、監査を開始する」

 

監査は、一時間足らずで終了した。

再び、全員が埠頭に集まる。

「では、現時点をもって、横須賀鎮守府青ヶ島泊地は閉鎖となる。ご苦労だった」

「はっ」

お互い敬礼し合うと、休めの姿勢になる。

 

「高梨()()君の母上(三笠退役元帥)からの転属祝いだ。青ヶ島ヘリポートに、1130(ヒトヒトサンマル)に迎えが来る。行き先は東京ヘリポートだ。チケットを確かに渡したぞ」

「ありがとうございます」

チケットを龍から受け取る頃には、監察部員は気を利かせて、船に乗り込んでいく。

「ここから、両名には四日間の特別休暇を与える。この間に挨拶回りを済ませておくこと」

「はい」

湊の返事を聞くと、龍はふっと笑った。

「では、任地は離れるが、壮健で職務に励んでくれ」

「電さん、湊さんと末永く元気に、幸せにしていってください」

そう続ける不知火に、湊と電も笑顔で答える。

 

「「はい!ありがとうございます」」

 

その二人の言葉を背に、安藤龍達は去っていった。

遠ざかる輸送艇を、無言で見送って、その船の姿が小さくなっていった……

 

「さあ、行きましょう!湊」

「はい、電」

 

二人は仲良く手を繋いで、青ヶ島ヘリポートへと向かった。

二人の去った後の青ヶ島は、静かな、そして太陽と海が静かに時を刻む、

小さな小さな、そして、長閑な村へと戻っていった。

 

海が見える丘にある墓標が、飛び去るヘリコプターを見送っているようだった……

 

season1:青ヶ島泊地編  完

 

 

 

 

 

十数年後、とある元艦娘が無医村となっていたこの島に、”恩返し”として医師として赴任することになるのだが。

今はまだ、遠い未来の話である……

 

 




次回からは第二期 名古屋復興編 です


そう、ここで各務原パパとお別れです。《前作もそうだったけど》
でも生きてるからたまに顔をだす予定です。

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