小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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スーパーガールのもう一人結有と努力家本家主人公の吹雪のお話です。

今回はこっちの主人公(湊ちゃん)は殆ど出てきません。



結有と恵奈(3)―努力する意味Ⅰ《時雨の幻影》―

結有が、負傷から復帰して、少し経った。

恵奈のお付きという役目が、暁に移った為、未だに司令官付きということで、自由な時間も多い結有は、今日も、日が昇った頃から、吹雪と早朝ロードワークに、出かけている。

高低差の多い、青ヶ島とは違って、埋立地にある金城埠頭は、割と平坦な道路の為、結有も、自転車から走りに代わり、吹雪を追いかけながら、ついていく。

半年以上、青ヶ島で、毎朝走り込みを行っていた二人は、いつしか、名前で呼びあうほど、仲良くなっていた。

 

そして、途中の公園で、二人で組手をやる。それから、少し休憩して、警備府庁舎に戻り、シャワーを浴びてから、朝食を摂るのが、ここに来てからの、日課となっていた。

もちろん、恵奈のお世話をしている間も、朝に弱い恵奈は、ロードワークが終わって、シャワーを浴びて戻ってくる頃に、起きてくるので、吹雪とのロードワークは、欠かしてはいない。

 

数日前に、吹雪の日課の、ロードワークの同行に復帰した結有だったが、

復帰してからと言うもの、吹雪から見ても、オーバーワークに感じられて、吹雪は、不安を覚えていた。

途中の公園で、組手をこなした後、ベンチにふう、と息を整えながら座る結有に、吹雪は、自販機で買ってきた、スポーツドリンクを差し出してから、隣に座る。

「ねえ、結有ちゃん」

「あ、ありがと。どうしたの?吹雪」

スポーツドリンクを受け取りながら、吹雪の方を見る結有に、

「最近、無理してない?」

「あー……吹雪には隠せないか……」

お見通しだろうな、と言わんばかりの、苦笑いを浮かべて、スポーツドリンクを飲むと、前を……海の先の水平線を見て、ポツリと語り出す。

「僕はね……自分が何者だか、わからなくなる時があるんだ」

「えっ?」

キョトンとしている吹雪に、軽く笑うと、

「あのね、僕は、普通の人間だ……と思うんだけど、なんだろう。前に、僕は、沈んでいく、時雨の夢を見たんだ。その後から、僕は、自分が何者か、わからなくなる時があるんだ。あのレ級の時だって、なんというか、ハイになった。一瞬だけ、()()()()()()()()んじゃなくて、()()()()()()。奴は、僕を時雨と言った。僕は違うと言った。でも、やってることは――時雨(艦娘)なんだ」

「………」

その言葉に、吹雪はかけるべき言葉を、見つけられないでいた。

「でも、こうやって吹雪と走っていると、僕は僕なんだ、と思うことが出来るよ」

「うん、結有ちゃんは、私の友達だからね!」

その言葉に、優しい笑顔を向けた結有は、立ち上がる。

「よし、戻ろっか。目標は、昨日のタイム1秒短縮!」

「うん!それじゃあ、いくよ!」

立ち上がると、二人して公園を走って後にする。

 

 

警備府に帰り着くと、艦娘寮に立ち寄り、艦娘浴場で、シャワーを浴びる。

恵奈や結有は、慣例的に、こちらの方を利用しているのだ。

一応、警備府の規則は、国内法、艦娘基本法、国防軍基本法などの関連法規、部隊規則に反しない限り、司令官・湊麾下の警備府幕僚会議で、決定することが出来る。

こっそり、「女性は、艦娘寮長に申し出の上であれば、艦娘浴場も利用可」と、加えておいてあるのだ。

ただ、営内には、男女それぞれ浴場がある為、わざわざ寮長に申し出るのが、二人しか居ない、という訳である。

「痣になっちゃったなぁ……」

頭を洗いながら、鏡に写ったお腹の痣を見て、溜め息を吐く結有。

「強烈だったの?レ級の蹴り」

その結有を覗き込んで……一瞬、上に視線が移ってから、痣を見つめながら、問いかける吹雪。

「なんというか、交通事故に遭ったら、こんな感じなんだろうな、って衝撃だった。空手の道場でも、こんなケリは、滅多に無かった」

「滅多に………」

滅多に、ということは、あるのかなあ?と思っていると、

「うん、通ってた横須賀の道場って、全国にある、僕の流派の総本部で、プロレスラーの梶本真太選手も、よく顔を出していて、青ヶ島に来るちょっと前に、プロテクター完備、サンドバッグ越し、後ろで大人が支えてる、って状態で、ケリを受けさせてもらった時も、こんな感じだった……」

「うわぁ……」

梶本真太という選手は、真日本プロレスのトップレスラーで、強烈なケリで、外人レスラーを蹴り倒して行く、巨漢の選手だ。

中学生で、そんな無謀なことをする方も、やる方もどうなんだろう?と吹雪は思いながら、声を漏らす。

「次に、あんな奴が出て来たら、僕は、絶対負けないよ」

「ちょ、ちょちょ、あのですね、結有ちゃん?」

力強く言う結有に、慌てた口調で、ツッコミを入れる吹雪。

「ん?」

「結有ちゃんは、海兵旅団みたいになりたいの?半分()()()()()人達だよ?」

艦娘側からしても、上陸すると、砲雷撃が出来ないにせよ、陸上で、深海棲艦を駆逐してきた海兵旅団は、ある意味『人外』の存在という認識が、大多数なのだ。

「そういう訳じゃないんだけど、不要な争いを避ける為に、腕を磨くのが武道なら、避けられない戦いでは、()()()()()()()()()()()のも、武道だと思うんだ」

「武道…か……きっと結有ちゃんは、努力する目的と意味を知ってて、そこにまっすぐ向かってるんだね。でも、焦っちゃだめだよ?」

まっすぐ、真面目な顔をして語る結有に、吹雪は、優しい笑顔で、ぽんと背中を叩くと、自分の体をシャワーで流して、湯船に向かう。

「ん、ありがと」

小さく礼をいうと、自分も、シャワーで泡を流して、吹雪の後をついていく。

 

「ふぅ、いい湯だなぁ~」

「そうだねぇ~」

のんびりお湯に浸かってると、脱衣所から、賑やかな声が聞こえる。

扉が開くと、朝は弱いが、起きると元気娘である大村恵奈、後ろからやってくる暁。二人の左薬指には、白銀色のリングが輝いている。

「わー、やっぱり、結有お姉ちゃん達いたー!」

「恵奈、ちゃんと身体洗ってから、お湯に入るのよ」

 

結局、『寮長の特別な許可』の上で、恵奈は、電以外の暁型と同じ部屋で、寝泊まりすることになった。

艦娘の重要性を認識している艦娘本部は、寮内に限り、割りと寮長に権限を持たせて、自由にさせているのが普通である。

中部警備府艦娘寮長加賀は、規則違反には厳しいが、規則の範囲内で、融通を利かせることに関しては、気の利いた寮長である。

ケッコンカッコカリをしている相手と、艦娘の『同居』は問題ない。という、今までの前例を、うまく適用した形になる。

もちろん、軍人の家族とはいえ、民間人とケッコンカッコカリをする事は、ほぼ皆無であり、あったとしても、()()()()()()()()()()()()事は、()()()()()()()()ではあるが。

 

「おはよう、恵奈ちゃん、暁」

「おはよう!」

結有達は、そろそろ上がるところなので、お風呂から上がりながら、挨拶をする。

「おはようございます!」

「よく出来たわね、恵奈。おはよう」

恵奈を褒めながら、挨拶をする暁。

 

「今日はオフだけど、どこか行く?」

「んー……まだ、色々揃ってるのは、名駅くらいなんだよね」

二人共、ちょうど非番の為、吹雪は寮長、結有は司令官の湊―――は本日休暇で、電と()()()()()()中なので―――の代わりに幕僚長恵一郎に、外出を報告して、営内を出る。

艦娘も軍属も、その辺りは、きちんと報告すれば、外出は門限までに帰れば、問題はないのだ。

丁度、艦娘寮の、外に出られる出口から出た時、挙動不審の男が、警備府から出るのを目撃した。

「吹雪、あれ……」

「何だろ……?」

軍服は着ているが、辺りを窺って出て、駅に向かう男を、不審そうに見てから結有が、

「追いかけよう」

「ええっ」

その言葉で、追跡が始まった。

 





ちなみにその頃湊ちゃんは電と仲良くお菓子作りの真っ最中。
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