小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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結有と恵奈(5)―努力する意味Ⅲ《吹雪と海色の瞳》―

その頃、豊橋沖では……

 

「くっ!!」

第2艦隊一の練度の、吹雪とは言え、大量のル級を相手の迎撃戦は、燃料と弾薬を消耗していた。

不幸なことに、この周辺の泊地は、みな廃止されており、深海棲艦に対抗できる手段が、失われていた。

まさか――――廃棄された泊地で、深海棲艦の増殖を試みてるなんて、思う筈もなく、

半包囲を受けていた…… 一番後ろの、ル級FS(フラッグシップ)が手を上げる……振り下ろされたら、己は海の藻屑となるだろう……

「ごめん……結有ちゃん……」

 

――――諦めるな……!

 

「!?」

その、一番大事な友人に、()()()()()()()()に、ハッとする。

背中が………熱い……

「はぁぁぁっぁぁぁぁぁっ!!」

その熱さに乗っかるように、大きな叫び声を上げると、吹雪の身体は、光り輝いた。

輝きが収まると、いつの間にか、改二艤装が展開されていた……背中はまだ熱いままだ……

「吹雪……抜錨します!!」

ル級の砲撃を、くぐり抜けるように、駆け抜ける。

とても……熱い……熱すぎる……

バチッ……背中の熱さと共に、スパークが走り出す……

「艤装暴走………死なば諸共!!!ごめんね……結有ちゃん!」

特攻しようと、向きを、ル級に向けようとした時、

「吹雪ぃぃぃぃぃ!!!!」

ル級FSの後ろに、Uターンして滑り込むモーターボートから、結有が叫び声を上げた……

「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

モーターボートの手摺りを左手で摑んで……ル級FSの側頭部に、全身全霊の、回し蹴りを叩き込んだ。

その回し蹴りは、光り輝く霊子の軌跡を描いて、振り抜かれた。ゴキッ……鈍い音が響いて、そのまま、ル級FSは海面に叩きつけられ……浮かび上がることは、なかった。

結有の左薬指には、白銀色のリング、そして鋭い目つきの瞳は、海色(時雨の瞳の色)に染まっていた……

「うおっ!?マジかよ!水飛沫で、注意逸らすんじゃなかったのかよ!?」

深海棲艦を、海上で蹴り倒した結有を見て、驚愕の声を上げる木曾。

「吹雪ぃぃぃ!!!諦めるなぁぁぁぁ!!!」

「結有ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

その時、吹雪の艤装が、光り輝いた……

 

光が収まった吹雪は、自分の艤装が、正常に戻ってることに気づいた。

両手を見ると、左薬指に白銀色のリング……

その時、陸地の方で、大きな爆発音が響いた。

ハッとして、陸地を見ると、泊地の建物だった場所で、爆発が起こっていた。

「最上ぃぃっ!?」

木曾が叫ぶと、吹雪が結有に叫ぶ。

「結有ちゃん!戻ろう!」

「え?でも、ル級の群れは……あ、うん。行こう!」

結有は、遠くから、強い霊子が、高速で近づいてくることを、感じ取っていた。

おそらく、吹雪も……感じているだろう……

「急ぐぞ!吹雪も摑まれ!」

木曾が、急激なUターンをかけて、ル級に背を向け、旧豊橋泊地跡に向かう。

吹雪は、オーバーロードの、目にも留まらぬ速度で、ル級を擦り抜け、モーターボートに追いつくと、そこに摑まって、曳航される形になる。

 

それを追いかける、ル級の群れの背後から、現れたのは……中部警備府の駆逐艦部隊、暁型四姉妹だった。

そう、湊は()高速部隊を、先陣として差し向けていた。電が雷を、暁が響の手を摑んで、オーバーロードで、一気に豊橋まで、かっ飛ばしてきたのだ。

暁は、恵奈からの、霊子補給(行ってらっしゃいのチュー)で、オーバーロード出来るくらいに、霊子を身体に漲らせている。一人でオーバーロードが出来るには、もう少し訓練が必要なのだ。

「あんた等の相手は、この雷様達よ!」

「間に合ったわ!恵奈ちゃんの大好きな、結有達をやらせないわ」

「ウラー!」

「三枚にフ゛チ゛お゛ろ゛す゛の゛て゛す゛!」

電は、日本刀を背負っていた……そして、()()()()()()()()いた。

そして、電だけがオーバーロード状態で、日本刀を抜いて、ル級に突っ込んでいった……

「あ、ちょ」

呼び止めようとする雷。

「うん、デートの邪魔されたから、仕方ないね」

完全に他人事のように、肩を竦める響。

「ああもう知らないわ!砲雷撃戦開始!」

通常状態に艤装を戻しながら、半ばやけっぱちのように叫ぶ暁。

 

もちろん、その後方からは、中部警備府の主力艦隊が、向かってきている。

ル級達の命運は、ここに、尽きたのだ。

多分、主力艦隊到着前にはだいたい……

 

 

旧豊橋泊地跡に向かうと、見たこともない、巨大深海棲艦が、建物を破壊している。

最上は、なんとか埠頭に脱出している。

「アレ、何……?」

「見たことのない、深海棲艦……」

「最上!何があった!」

その言葉に、最上が、戻ってきた面々を見て、安堵する。

「ボクもわかんないよ!突然、壊れた機械が融合し出して、深海棲艦化したんだ。倒れてる人間も、取り込んで溶かして……」

「ここで倒さないと……街に被害が及ぶ!」

結有は、モーターボートから、埠頭に飛び降りる。

「結有ちゃん!なんとか、海に叩き落として!」

「わかった!最上さん、木曾さん!」

「うん、ボクは、生存者の救助に行ってくる!!木曾!これがあったよ!」

結有の言葉に、軍刀を持っている最上は、木曾に投げ渡す。

受け取った木曾は、スラリと刀を抜き放つと、声を上げた。

「よっしゃ!ラストダンスだ!」

 

三mを越す、巨大深海棲艦だ。

パンチをする度に、埠頭のコンクリートが抉れる。

「うわっ!これ食らったら……?」

結有が、引きつりながら、攻撃を躱す。

「オレ達も、ヤバイかもな」

軍刀で、背後から切りつけ、ダメージを与えながらも、木曾も、戦慄を覚える。

最上は、崩落している瓦礫を、高練度の元艦娘の強靭な力で退けながら、生きてる人間を運び出す。

「結有ちゃん、後ろ回って!」

「うん!」

吹雪の声に、結有は、深海棲艦の背後に回る。吹雪は、高角砲を向けようとして……

深海棲艦は、吹雪の方に向くと、口を開き、超巨砲を展開させる……()()()()()()()()()()()()()

「え゛!?」

ズドォォォォン!!ズドォォォォン!!

「キャアアアっ!?」

全速で、後ろに避けるも、()()()()で、()().()()()()()()()()という、冗談としか思えない砲弾の衝撃波で、水面に転がり飛ばされる。

当然ながら、深海棲艦自体も、反動でズズズ……と後ろに下がる。

結有は、その瞬間を、見逃していなかった。

「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

発射の直前、バックステップして、発射と同時に、全力で飛び込んで、巨大深海棲艦の背中に、全力での胴回し回転蹴りを叩き込んだ。殆ど、浴びせ蹴りに近い体勢で……

「ガアアアアアアアアア!!!!!」

砲撃の反動も加わった、強烈な衝撃が、背中から全身に及んだ巨大深海棲艦は、ヨタヨタと、海に向かっていく。

「うおあああああああああ!!!!」

「おちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

地面に叩きつけられながらも、立ち上がる結有と、同じく後ろに回り込んだ木曾が、再び、巨大深海棲艦の背中に、タックルを喰らわせる。

「ガアアアアアアアア!!!!」

ドッボォォン!!

バランスを崩し、海面に倒れ込んだ、巨大深海棲艦を、待ち受けていた吹雪。

「吹雪、いまだぁぁぁっ!!」

「魚雷発射ぁぁぁ!!!沈めぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

真っ赤に燃えた艤装から放たれた、真っ赤な酸素魚雷が、立ち上がろうとする、巨大深海棲艦に命中し……

カッ!!と巨大深海棲艦から、強烈な光が放たれた。

「え゛!?うわああああああ!?」

慌てて、防御態勢を取る吹雪。

 

ズドォォォォォォン!!

 

巨大深海棲艦の中に、内蔵されていた、弾薬諸共、木っ端微塵に吹き飛んだ……埠頭や建物ごと……

空には大きなきのこ雲…… きっと豊橋市は、大パニックだろう。

 

「はぁ……はぁ……あ、あれ……ゆ、結有ちゃん!?結有ちゃぁぁぁん!?」

「こ、こっちだよー………」

「はー……死ぬかと思ったぜ……」

 

爆炎が晴れた先に、結有の姿がなく、結有の名を叫ぶと、後ろから、弱々しく声が聞こえる。

はっと後ろを見ると、モーターボートの残骸に摑まってる、結有と木曾の姿があった。

 

あの瞬間、木曾が

「やべえ!あのバケモンの中にある、砲弾の弾薬が誘爆したらやべえ!海に飛び込め!」

「はいっ!」

と、木曾が、結有を庇うように抱きかかえながら、巨大深海棲艦を飛び越え、海に飛び込もうとしたのは良いものの、大爆発の衝撃で吹き飛ばされ、吹雪を飛び越えて、海へと真っ逆さまに、ダイブしていた……

「「ぎゃあああああああ!!!!!」」

という、二人の悲鳴は、爆音と衝撃に、防御姿勢を取った吹雪には、聞こえなかった……

ダイブした先に丁度、モーターボートの残骸が浮かんでいたため、仲良く摑まっていたのだ。

二人共、かなりボロボロである……

 

沖の方からは、主力艦隊と暁型姉妹が向かってくる、()()()

完全に、瓦礫と化した建物から、最上が這い出て来る。

「し、死ぬかと思った……」

こちらも、ボロボロである。

 

最上は、横澤元少将を含め、何人か救助していた。

ナイフで刺されたのに、しぶとく生きている、横澤元少将はじめ生存者は、駆けつけた陸軍警務隊(憲兵隊)によって、逮捕されるだろう。

 

吹雪は、木曾達を曳航して、豊橋港の埠頭に降り立った。

もちろん、結有を()()()()()()して……木曾は、吹雪の足に摑まっている。

「おい、扱い違うぞ」

という、木曾の文句を受けながら……

 

「しかし、派手にやっちまったなあ。オレたちの休暇、どうしてくれるんだよ?」

「全くだよ、明日からまた、名古屋で工事だよ」

爆発した、旧豊橋泊地跡地の残骸を眺めながら、愚痴を零す、村上建設の社員である、木曾と最上。

港周辺は大混乱だ。救急車や消防車、パトカーのサイレン音が、至るところで、聞こえている。

「あはは。そっちは、司令官に掛け合ってみます」

苦笑いをしながら、結有を降ろして、一旦横たわらせる吹雪に、起き上がろうとする結有だが……緊張が解けたのか、右足から走る激痛に悶絶する。

「―――――っ!!!」

「結有ちゃん!?」

「あー、言わんこっちゃない」

「救急車呼ぶね、あ……画面割れてる。」

声すら上げられず、右足を押さえて唸る結有に、吹雪は、心配そうな声を上げ、

木曾は、大きな溜め息を吐き、最上は、画面が割れても安心の、ガラケー派だったので、さっと119番通報する。

木曾と結有のスマホは、当然ながら、液晶もグシャグシャの上、水没である。

 

結局結有は、再び救急搬送されたのだった。

吹雪以外は、大小の負傷を負っているため、全員、病院で治療を受け―――軍人ではなくなった木曾達には、軍用品である、高速修復材は使えないので―――

結有は、全身の擦り傷、軽いやけどの他に、右足首靭帯損傷に、亀裂骨折複数、骨折が治りかけてた肋骨に、再びヒビ。

 

電を除いた、中部警備府の艦娘達は、旧豊橋泊地跡の残骸を、陸軍警務隊に引き継ぐと、即日、帰還の途についた。

電は、ル級を片付けたら、光の速さで帰還した。とは、長門の談である。それを見送りながら、艦娘寮長加賀は、「困ったものね」と呟いたとか。

 




電「只今なのです」
湊「帰ってくるの早すぎない!?」
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