小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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1話完結のいつもの夕張回です。

本日の被害艦(ゲスト)は長門さんと陸奥さんです。

今回のお題はナチス・ドイツが誇る迷砲 もとい名砲の
80cm列車砲《ドーラ・グスタフ》がお題です。

恵海ちゃんの艤装が完成して主砲について検討をするユウバリン
その、試作した主砲はとんでもないものだった……。




夕張の魔改造・魔装備計画Ⅱー超大和級戦艦ー

「というわけで、只今より、第1回チキチキ恵海ちゃんの艤装を作ろう会議を始めます」

 

という夕張の元、中部警備府の大工廠に集められたのは、

休暇中の長門と陸奥だ。

ちゃんと恵海ちゃんは、ちょこんと、その隣りに座っている。

左手の義手は、新しいものになっている。

この、新しい義手は二代目で、初代は、夕張が勝手に、()()()()()()()()()を付けて、

誤動作して、恵奈ちゃんの横を掠めて、割りと強心臓の恵奈ちゃんが、恐怖のあまりお漏らしをして、

盛大に泣き出して、泣き止むまで大分かかったという、トラブルがあった為、今回は普通の義手である。

 

なお、恵奈の横を掠めたロケットパンチは、亜音速で新築の庁舎の壁に大穴を開け、

せっかく前回は、電の温情で許された減給期間延長が、()()()()一ヶ月延長となった。

 

 

「艤装を作ろう会議って……私はオフだったんだが」

「あらあら、良いじゃない。夕張ちゃんもオフでしょ?」

せっかく広い本州にきたので、ドライブをしたい長門が憮然としているのを、陸奥が宥める。

「というわけで、せっかくなので、(スーパー)大和級戦艦にしようと思います」

(スーパー)……大和級……」

「その、スーパーなんとか人的なネーミングは、よしなさいよ」

夕張の言葉に、オウム返しをするだけの恵海。流石に陸奥がツッコミを入れる。

 

「艤装のベースは、実は、既に出来てるんです」

「出来てるのかよ!?」

「はい。ご本人の許可をもらって、退役した武蔵さんの艤装を、拡張改造して、基準排水量(実艦換算)八万トンの、超大和級計画に基づいた、艦体ベースにしてみました」

ばばーんと、パッケージングされた艤装を、作業台に置く。

 

ベースは武蔵のものなので、武蔵の艤装デザインに近いが、でかくなっている。

「ところで、武蔵は今何してるんだ?」

「なんでも、退役した後、都内で警察官やってるみたいですよ?」

 

わりと、艦娘から警察官、という流れの娘も多い。

長門はうんうんと、同僚の進路の、これからの活躍を祈りながら聞いている。

「というわけで、お二人に、主砲について、ご意見をいただきたい、と」

 

毎度のことながら、恵海は、人格的な自己主張が希薄なので、黙っているが、

ちゃんと長門の横に座っている。

「私が今回ご用意した、試作主砲は、80cm連装砲です!」

 

その言葉に、全員が沈黙した。

 

ひゅるりら~……まだ寒い風が舞い込む二月下旬。

 

 

「……すまない、ちょっと耳の調子が悪い。もう一度、言ってくれないか?」

「ですから、()()()()c()m()()()()です」

 

長門は、聞き間違いかと思い、もう一度聞き直すが、やっぱり聞き間違いではない。

「夕張。今、()()()()()が装備している主砲は、()()()()c()m()()()()だ」

「はい。知ってますよ」

さも当たり前のように言う夕張に、長門は頭痛を覚える。

「その、80cmという言葉、どこから……?」

「もしかして、夕張ちゃん。それ、()()()()()()?」

80という言葉に、なにか取っ掛かりを覚えていた陸奥が、夕張に問いかける。

「はい!ナチス・ドイツの誇るスーパー兵器、80cm列車砲《ドーラ》をコンセプトにして、作りました!」

「………凄いな、私も―――」

「残念ながら、超大和級の1番艦、(スーパー)武蔵(仮)だけにしか、搭載は無理です」

「……残念だ」

無念がるビッグセブンを他所に、夕張は立ち上がる。

「早速、試射と行きましょう!この(スーパー)武蔵の装着試験も兼ねて」

「……スーパー武蔵はやめてやれ。なんかスーパーマーケットみたいだ」

 

 

という訳で、埠頭にやってきた。

今日も、第2艦隊(標的艦)が、沖合いのところで、訓練の最中である。

メンテナンスモードで艤装を背負った恵海は、海に降り立つ。

「行きます……艤装展開!」

かつてのレ級のような、鋭い目の真剣な表情になると、艤装を一度仕舞い、展開する。

大和級より、二回りほど大きい、その艤装の両サイドには、ものすごくでかい、連装砲身が見える。

「おお、圧巻だな。超大和級」

長門が、その重厚さに、驚嘆の声を上げる。

「榴弾だと、嫌な予感しかしないんで、ベトン弾――所謂、対要塞徹甲弾ですね――で、いきましょう」

と言いながら、夕張は耳を抑える。

長門と陸奥も、嫌な予感がしたので、耳を抑える。

 

「てー!」

「はいっ!!」

 

ズッガァァァァンン!!

ズッガァァァァンン!!

 

 

庁舎のガラスを、大きく揺らす、大音量が鳴り響く。

「………」

 

恵海は、あまりの反動に、しりもちをついて、呆然としている。

 

砲弾は、大きく放物線を描き……

狙いは大きく逸れて、楽しく厳しく訓練中の、第2艦隊の方へ、ぐんぐん高度を下げて迫っていく……

 

「おい!なんか飛んできたぞ!?」

「何ですかぁ!?あのでかいのぉ!?」

「こっちに飛んで来るんですけど―!?」

「実にハラショーだ」

「そんなこと、言ってる場合じゃないでしょ!全員退避ぃぃ!!」

「また夕張かぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 

ざっぼぉぉぉぉん!!!

ざっぼぉぉぉぉん!!!

 

実艦換算約七トンの質量を誇るベトン弾が、蜘蛛の子を散らすように逃げていく、第2艦隊のいたところに二発着弾し、

大きな水柱を立てていく……

ちなみに、超大和砲(51㎝連装砲)の砲弾重量は、約2トンである。

 

ちなみに、恵海は、もうちょっと、左に撃ってる筈である。

 

「すごいな……恐ろしい威力だ」

「そうね………」

「さて、工廠に帰りましょうか?」

「……はい」

 

恐ろしい威力に、戦慄を覚える長門に、遠い目をする陸奥、

そして、しれっと帰還を宣言すると、さっさと工廠へ引き上げる夕張。

それを見ながら、恵海は、艤装を収納して、陸に上がると、三人は、夕張のあとに続き、工廠に戻っていった。

 

 

 

工廠に戻った四人は、試射の感想を語り出す。

「うむ。これが敵艦に当たれば、ダイソンだろうが戦艦水鬼だろうが、敵ではないな」

()()()()、だけどもね、あの子達大丈夫かしら……?」

長門は、超巨砲の威力に満足し、陸奥は、逃げ散った第2艦隊の方を心配する。

彼女達は、今頃仲良くびしょ濡れだ。

 

 

「あのぉ……こんにちはー」

やってきたのは、中部警備府の司令官(ちっちゃい子)、高梨湊准将である。

「おお、提督か。どうした?」

「あー……」

「嫌な予感……」

やってきた湊を、長門は立ち上がり出迎え、陸奥は苦笑いを浮かべ、夕張は頭を抱える。恵海はちょこんと、物静かに座ったままだ。

「第2艦隊から、『陸から砲撃を受けて、皆びしょ濡れになった』と報告があったのと、複数の部署から、『窓ガラスにヒビが入った』と報告が来て、事情聴取に……」

「やっぱり……」

そんな湊に対し、がっくり項垂れる夕張。

 

 

「なるほど……なんとも、コアなものを、引っ張ってきましたね?」

事情を、一通り聞いた湊は、苦笑いを浮かべる。

「そうだろうそうだろう」

「『艦砲』としては、極めて用途の限られた、使いにくいものになりますが?」

満足げの長門に、湊は、バッサリはっきり切り捨てる。

「どういうことだ?」

長門が、納得できないと言わんばかりに、問うと、

「まず、大和さんの超大和砲は、艤装のオーバーロードと、大和さん自身の血の滲むような訓練による技量で、漸く撃てる、()()()()()なんですよ?」

「確かにそうだが……」

ううむと唸る長門、恵海は椅子を、湊の横に移動させて、座る。

「そもそも、この列車砲なる代物は、『陸上の固定された場所から、陸上の逃げも隠れもしない、固定された場所』への()()()()だ、ということを、忘れてはいけない、ということです」

「むぅ……」

その湊の指摘に、長門は腕を組んで唸る。

「あら?でも、()()()()()()()のではないの?」

「あれは、移動後、地面に固定させて使うんです。使用には、約5000人の兵員や技術者が必要で、砲撃指揮官が将官クラスという、まさに()()()()()です」

湊の言葉に、ちょっと興味の沸いた恵海が、おずおずと手を挙げる。

「あのぉ。威力はどうだったんでしょうか?」

その言葉に、ちょっと自己主張出来るようになったな、と湊は、ニコリと笑みを浮かべると、タブレットを取り出す。

「ええと。資料によると、ベトン弾は七メートルの要塞コンクリートを貫通」

「おぉぉ!!」

その、ものすごい威力に、長門は、興奮の声を上げる。

夕張は、既に、始末書の用意を始めているようだ。

「榴弾に至っては、直径10m、深さ10mのクレーターを穿って、数十発発射したら、都市区画をミニチュアのプラモデルのように粉砕し、地下深くに設けられていた、火薬庫を破壊した。という、ばかみたいな威力を持ちます」

「おおお、それなら……!」

長門の期待に、陸奥はふと気づいていた。

「ねえ、長門。この砲弾、お互い動いてる艦船に当てるの、無理じゃないかしら?恵海が第2艦隊を避けて撃ったのに、狙いは大きく逸れて、第2艦隊に飛び込んでいったのよ?」

「それを観測して……提督、80㎝列車砲の発射速度は、毎分何発だ!?」

己もそれに気づいた長門は、目の前の、小さな司令官に訊く。

湊は、ニッコリと笑みを浮かべる。

「ええと。毎()二発弱です。一発に30~45分かかるそうです。艦船に積んで、下から装填したとしても、10分は必要だと思います。艦娘艤装でパッケージングしても、それなりに、発射速度は遅いと思います」

 

「毎時………」

「二発弱……」

絶句する戦艦組。

 

「というわけで、この、試製80㎝連装砲という代物は、錨固定モードで位置固定して、港湾棲姫や飛行場姫のような動かない、陸上施設系の姫等を、周辺の区画ごと、木っ端微塵に吹き飛ばすか、それこそ、湾岸で立てこもってるテロリストを、周辺の区画ごと、ミンチにするくらいしか、用途はないです」

 

「……………」

「……………」

「……違う主砲が良いです」

恵海が、この主砲の拒否を告げると、収納した艤装から、装備が外れ、装備カードになって、作業台に置かれる。

 

それを見て、ふっと、目を伏せながら、立ち上がる湊。

「さて、長門に陸奥、それに恵海。そろそろお昼ですから、ランチに行きましょうか?」

「おお、もちろん」

「久しぶりの、湊ちゃんとのランチね」

「……ごちそうになります」

食事の誘いに喜ぶ長門に、なかなか都合が合わない、陸奥も嬉しそうだ。

ハナから奢ってもらう気でいる、割りと神経の太い恵海に、「皆ごちそうしますよ。さぁ先に行っててください」と応える。

 

先に出ていった、三人の後ろで、湊は振り向いた。()()だが、()()()()()()だ。ものすごく怖い。

夕張の顔は、さぁぁぁっと青くなる。笑顔で冷たい目、というアンバランスは、かなり恐ろしいのである。

「ええと、夕張さん」

「は、はい…………」

「本日の始末書は、総秘書艦、幕僚長、総務部長、陸戦隊長、艦娘寮長、あと私に、それぞれ提出をお願いします。今日はオフみたいなので、明日の2400(フタヨンマルマル)までに、それぞれのデスクに、提出願います。割れたガラスの修理代は、あとでガラス屋さんに、見積もり取ってもらって、明日総務に持ってこさせますね」

「もうだめだぁ………おしまいだぁ………」

完全に崩れ落ちた夕張を尻目に、湊も出ていった。

 

 

その直後、工廠に第2艦隊の殴り込みを受け、優しい吹雪以外の五人から、お叱りと、()()()()()()()()()()を命じられることとなる。

「もうだめだぁ………おしまいだぁ………」




Tips《演習中の保護機能》

仮に第2艦隊は直撃を受けても、演習中の保護機能で大破にとどまります。
ものごっつ痛いと思うけど。
多分服だけ吹き飛んでしまいそうですが。
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