本日の
今回のお題はナチス・ドイツが誇る迷砲 もとい名砲の
80cm列車砲《ドーラ・グスタフ》がお題です。
恵海ちゃんの艤装が完成して主砲について検討をするユウバリン
その、試作した主砲はとんでもないものだった……。
「というわけで、只今より、第1回チキチキ恵海ちゃんの艤装を作ろう会議を始めます」
という夕張の元、中部警備府の大工廠に集められたのは、
休暇中の長門と陸奥だ。
ちゃんと恵海ちゃんは、ちょこんと、その隣りに座っている。
左手の義手は、新しいものになっている。
この、新しい義手は二代目で、初代は、夕張が勝手に、
誤動作して、恵奈ちゃんの横を掠めて、割りと強心臓の恵奈ちゃんが、恐怖のあまりお漏らしをして、
盛大に泣き出して、泣き止むまで大分かかったという、トラブルがあった為、今回は普通の義手である。
なお、恵奈の横を掠めたロケットパンチは、亜音速で新築の庁舎の壁に大穴を開け、
せっかく前回は、電の温情で許された減給期間延長が、
「艤装を作ろう会議って……私はオフだったんだが」
「あらあら、良いじゃない。夕張ちゃんもオフでしょ?」
せっかく広い本州にきたので、ドライブをしたい長門が憮然としているのを、陸奥が宥める。
「というわけで、せっかくなので、
「
「その、スーパーなんとか人的なネーミングは、よしなさいよ」
夕張の言葉に、オウム返しをするだけの恵海。流石に陸奥がツッコミを入れる。
「艤装のベースは、実は、既に出来てるんです」
「出来てるのかよ!?」
「はい。ご本人の許可をもらって、退役した武蔵さんの艤装を、拡張改造して、
ばばーんと、パッケージングされた艤装を、作業台に置く。
ベースは武蔵のものなので、武蔵の艤装デザインに近いが、でかくなっている。
「ところで、武蔵は今何してるんだ?」
「なんでも、退役した後、都内で警察官やってるみたいですよ?」
わりと、艦娘から警察官、という流れの娘も多い。
長門はうんうんと、同僚の進路の、これからの活躍を祈りながら聞いている。
「というわけで、お二人に、主砲について、ご意見をいただきたい、と」
毎度のことながら、恵海は、人格的な自己主張が希薄なので、黙っているが、
ちゃんと長門の横に座っている。
「私が今回ご用意した、試作主砲は、80cm連装砲です!」
その言葉に、全員が沈黙した。
ひゅるりら~……まだ寒い風が舞い込む二月下旬。
「……すまない、ちょっと耳の調子が悪い。もう一度、言ってくれないか?」
「ですから、
長門は、聞き間違いかと思い、もう一度聞き直すが、やっぱり聞き間違いではない。
「夕張。今、
「はい。知ってますよ」
さも当たり前のように言う夕張に、長門は頭痛を覚える。
「その、80cmという言葉、どこから……?」
「もしかして、夕張ちゃん。それ、
80という言葉に、なにか取っ掛かりを覚えていた陸奥が、夕張に問いかける。
「はい!ナチス・ドイツの誇るスーパー兵器、80cm列車砲《ドーラ》をコンセプトにして、作りました!」
「………凄いな、私も―――」
「残念ながら、超大和級の1番艦、
「……残念だ」
無念がるビッグセブンを他所に、夕張は立ち上がる。
「早速、試射と行きましょう!この
「……スーパー武蔵はやめてやれ。なんかスーパーマーケットみたいだ」
という訳で、埠頭にやってきた。
今日も、
メンテナンスモードで艤装を背負った恵海は、海に降り立つ。
「行きます……艤装展開!」
かつてのレ級のような、鋭い目の真剣な表情になると、艤装を一度仕舞い、展開する。
大和級より、二回りほど大きい、その艤装の両サイドには、ものすごくでかい、連装砲身が見える。
「おお、圧巻だな。超大和級」
長門が、その重厚さに、驚嘆の声を上げる。
「榴弾だと、嫌な予感しかしないんで、ベトン弾――所謂、対要塞徹甲弾ですね――で、いきましょう」
と言いながら、夕張は耳を抑える。
長門と陸奥も、嫌な予感がしたので、耳を抑える。
「てー!」
「はいっ!!」
ズッガァァァァンン!!
ズッガァァァァンン!!
庁舎のガラスを、大きく揺らす、大音量が鳴り響く。
「………」
恵海は、あまりの反動に、しりもちをついて、呆然としている。
砲弾は、大きく放物線を描き……
狙いは大きく逸れて、楽しく厳しく訓練中の、第2艦隊の方へ、ぐんぐん高度を下げて迫っていく……
「おい!なんか飛んできたぞ!?」
「何ですかぁ!?あのでかいのぉ!?」
「こっちに飛んで来るんですけど―!?」
「実にハラショーだ」
「そんなこと、言ってる場合じゃないでしょ!全員退避ぃぃ!!」
「また夕張かぁぁぁぁぁ!?!?」
ざっぼぉぉぉぉん!!!
ざっぼぉぉぉぉん!!!
実艦換算約七トンの質量を誇るベトン弾が、蜘蛛の子を散らすように逃げていく、第2艦隊のいたところに二発着弾し、
大きな水柱を立てていく……
ちなみに、
ちなみに、恵海は、もうちょっと、左に撃ってる筈である。
「すごいな……恐ろしい威力だ」
「そうね………」
「さて、工廠に帰りましょうか?」
「……はい」
恐ろしい威力に、戦慄を覚える長門に、遠い目をする陸奥、
そして、しれっと帰還を宣言すると、さっさと工廠へ引き上げる夕張。
それを見ながら、恵海は、艤装を収納して、陸に上がると、三人は、夕張のあとに続き、工廠に戻っていった。
工廠に戻った四人は、試射の感想を語り出す。
「うむ。これが敵艦に当たれば、ダイソンだろうが戦艦水鬼だろうが、敵ではないな」
「
長門は、超巨砲の威力に満足し、陸奥は、逃げ散った第2艦隊の方を心配する。
彼女達は、今頃仲良くびしょ濡れだ。
「あのぉ……こんにちはー」
やってきたのは、中部警備府の
「おお、提督か。どうした?」
「あー……」
「嫌な予感……」
やってきた湊を、長門は立ち上がり出迎え、陸奥は苦笑いを浮かべ、夕張は頭を抱える。恵海はちょこんと、物静かに座ったままだ。
「第2艦隊から、『陸から砲撃を受けて、皆びしょ濡れになった』と報告があったのと、複数の部署から、『窓ガラスにヒビが入った』と報告が来て、事情聴取に……」
「やっぱり……」
そんな湊に対し、がっくり項垂れる夕張。
「なるほど……なんとも、コアなものを、引っ張ってきましたね?」
事情を、一通り聞いた湊は、苦笑いを浮かべる。
「そうだろうそうだろう」
「『艦砲』としては、極めて用途の限られた、使いにくいものになりますが?」
満足げの長門に、湊は、バッサリはっきり切り捨てる。
「どういうことだ?」
長門が、納得できないと言わんばかりに、問うと、
「まず、大和さんの超大和砲は、艤装のオーバーロードと、大和さん自身の血の滲むような訓練による技量で、漸く撃てる、
「確かにそうだが……」
ううむと唸る長門、恵海は椅子を、湊の横に移動させて、座る。
「そもそも、この列車砲なる代物は、『陸上の固定された場所から、陸上の逃げも隠れもしない、固定された場所』への
「むぅ……」
その湊の指摘に、長門は腕を組んで唸る。
「あら?でも、
「あれは、移動後、地面に固定させて使うんです。使用には、約5000人の兵員や技術者が必要で、砲撃指揮官が将官クラスという、まさに
湊の言葉に、ちょっと興味の沸いた恵海が、おずおずと手を挙げる。
「あのぉ。威力はどうだったんでしょうか?」
その言葉に、ちょっと自己主張出来るようになったな、と湊は、ニコリと笑みを浮かべると、タブレットを取り出す。
「ええと。資料によると、ベトン弾は七メートルの要塞コンクリートを貫通」
「おぉぉ!!」
その、ものすごい威力に、長門は、興奮の声を上げる。
夕張は、既に、始末書の用意を始めているようだ。
「榴弾に至っては、直径10m、深さ10mのクレーターを穿って、数十発発射したら、都市区画をミニチュアのプラモデルのように粉砕し、地下深くに設けられていた、火薬庫を破壊した。という、ばかみたいな威力を持ちます」
「おおお、それなら……!」
長門の期待に、陸奥はふと気づいていた。
「ねえ、長門。この砲弾、お互い動いてる艦船に当てるの、無理じゃないかしら?恵海が第2艦隊を避けて撃ったのに、狙いは大きく逸れて、第2艦隊に飛び込んでいったのよ?」
「それを観測して……提督、80㎝列車砲の発射速度は、毎分何発だ!?」
己もそれに気づいた長門は、目の前の、小さな司令官に訊く。
湊は、ニッコリと笑みを浮かべる。
「ええと。毎
「毎時………」
「二発弱……」
絶句する戦艦組。
「というわけで、この、試製80㎝連装砲という代物は、錨固定モードで位置固定して、港湾棲姫や飛行場姫のような動かない、陸上施設系の姫等を、周辺の区画ごと、木っ端微塵に吹き飛ばすか、それこそ、湾岸で立てこもってるテロリストを、周辺の区画ごと、ミンチにするくらいしか、用途はないです」
「……………」
「……………」
「……違う主砲が良いです」
恵海が、この主砲の拒否を告げると、収納した艤装から、装備が外れ、装備カードになって、作業台に置かれる。
それを見て、ふっと、目を伏せながら、立ち上がる湊。
「さて、長門に陸奥、それに恵海。そろそろお昼ですから、ランチに行きましょうか?」
「おお、もちろん」
「久しぶりの、湊ちゃんとのランチね」
「……ごちそうになります」
食事の誘いに喜ぶ長門に、なかなか都合が合わない、陸奥も嬉しそうだ。
ハナから奢ってもらう気でいる、割りと神経の太い恵海に、「皆ごちそうしますよ。さぁ先に行っててください」と応える。
先に出ていった、三人の後ろで、湊は振り向いた。
夕張の顔は、さぁぁぁっと青くなる。笑顔で冷たい目、というアンバランスは、かなり恐ろしいのである。
「ええと、夕張さん」
「は、はい…………」
「本日の始末書は、総秘書艦、幕僚長、総務部長、陸戦隊長、艦娘寮長、あと私に、それぞれ提出をお願いします。今日はオフみたいなので、明日の
「もうだめだぁ………おしまいだぁ………」
完全に崩れ落ちた夕張を尻目に、湊も出ていった。
その直後、工廠に第2艦隊の殴り込みを受け、優しい吹雪以外の五人から、お叱りと、
「もうだめだぁ………おしまいだぁ………」
Tips《演習中の保護機能》
仮に第2艦隊は直撃を受けても、演習中の保護機能で大破にとどまります。
ものごっつ痛いと思うけど。
多分服だけ吹き飛んでしまいそうですが。