恵海のトリオ。
ただ単に二人のカップルだとありきたりなので、
恵海を添えてみました。
トライアングル”L”とは。
「北上さん!逃げてください!!」
「だめ、大井っちが逃げて」
彼女達は、深海棲艦に取り囲まれていた。
「クックック、どうやら、抵抗も、終わりのようだな」
「片桐ぃぃぃぃ!!!!!」
深海棲艦の後ろに停まっている、指揮艇に乗っているのは、
それに対して、睨みつけるように叫ぶ大井。
――――――
その前日。
大井と北上は、幕僚長大村恵一郎の呼び出しを受けていた。湊は、緊急案件で、電を連れて、朝から東京に向かっていた。
「大井、入ります」
「北上入りまーす」
「どうぞー」
中に入ると、恵一郎が、にこやかに仕事をしている。
この部屋は、入ると、ほんわかな空気に包まれる。
「どうしたの?
「ちょ、北上さん!」
同じくマイペースの北上に、大井は慌てて窘めようとするが、恵一郎が手を上げて、それを制する。
「ええとね。ちょっと遠征なんだけど、いいかな?」
「遠征ですか?」
首を傾げる北上に、デスクの前に設置してある、椅子を勧める。
北上はそのまま、大井は頭を下げて、腰をおろす。
「そうなんだ。アンドリュー先輩からの依頼で、硫黄島周辺に生息している、潜水艦の、威力偵察をお願いしたいんだ。あっちには、重雷装巡洋艦がいないからね、対潜能力も高い二人に、お願いしたいんだ」
「うん、わかったー。行ってくるね」
「北上さん!まだ、説明終わってないです!」
のほほんと、立ち上がろうとする北上を押しとどめる大井。
「はぐれ深海棲艦だから、どういう意図で、集まってるかわからないけど……やばかったら、逃げていいからね。資料は、端末に送っておくね」
「了解しました」
二人は、医療部に立ち寄った。
とある病室には、元レ級の艦娘、恵海がベッドに座って、タブレットを弄っていた。
恵海は、警備府敷地内では、自由行動が許され、軍人や艦娘同伴なら、外出も許されているが、軍人でも、民間人でも、現役の艦娘でもない彼女は、
取り敢えず、医療部の病室を、居室としていたのだ。
「やっほー、めぐみっち」
「あ……北上……さん…大井さん…」
目を覚ました彼女に、一番最初に声をかけ、そして、奈緒の安直すぎるネーミングの、恵海の名前も、
「それいいじゃん、めぐみっち」
という言葉で、彼女が、その名前を受け入れるきっかけを作ったのも、北上だった。
それ以来、北上は恵海に目をかけ、大井は、北上のことを好いているので、セットでやってくる。
そして、恵海も、二人には少し親しくなっているという、
「今日もタブレット?なんか面白いものでもある?」
大井も、声をかけながら、自分と北上の椅子を用意する。
「ニュースで……片桐……栄治……という元准将が……司令官デバイス……というのを盗んで、逃亡中だって……山井っていう泊地司令が、殺されたって……」
その言葉に、二人は、ぎょっとして、顔を見合わせた。
二人の顔が、険しくなったのを見て、恵海は、
「どうした……の?」
と、心配そうに声をかけると、二人して、恵海には、優しい笑顔を浮かべる。
「ううん、大丈夫よ」
「めぐみっち、ちょっとあたし等、遠征に行ってくるから、帰ったら一緒に、ご飯食べに行こうね」
「……はいっ!」
立ち上がり、北上が恵海の頭を撫でると、ぱあっと笑顔になる。恵海のその笑顔は、今のところ、彼女達の独占状態である。
という訳で、翌早朝、二人して、燃料満タンにして、硫黄島海域まできていた。
硫黄島は、深海棲艦の大量発生時に、残っていた自衛官達が、最後の一兵まで戦い、果てた、名古屋大侵攻に次ぐ、悲劇の地とされている。
彼等の犠牲の元に、『近接武器で深海棲艦に致命傷を与えられる』ということが判明して、彼等は、全員二階級昇進し、当時の首相が、公の場で、人目も憚らず涙した、と言うのは有名な話だ。
ひとまずの平穏期が訪れたあと、横須賀鎮守府本隊艦娘の護衛の元、30年間放置されていた、遺骨・遺品回収が行われ、そのあとは、一時放棄の、無人島となっている。
やってきた二人だったが、生息しているとされている、深海棲艦も、対潜電探に反応しない。
「うーん、どう思う?」
「もうちょっと、近づいてみましょう」
近づいてみると、物資揚陸場跡地に、軍用ボートが停泊しているのを見つけた。
「何あれ……」
その時だった……
「北上さん!電探に深海棲艦の反応!」
「大井っち!あれ!」
大井が、電探の反応をキャッチすると同時に、軍用ボートに乗り込んだ人物を、指差す北上。
大井が、双眼鏡で覗くと、その姿は……片桐栄治元准将だった。
「片桐……何で!?」
「大井っち、深海棲艦が、左右に分かれて回り込んでる……」
それは、何かの指揮を受けていることを、意味していた。
「まずいです!北上さん、
中部警備府にも横須賀鎮守府にも、通信を送れない大井は、青い顔をしている。
「不味いね……大井っち……」
無数に現れる深海棲艦に、大井と北上は、魚雷と砲撃で応戦するも、取り囲まれてしまった……
「北上さん!逃げてください!!一隻だけなら、私が囮になれば……!」
「だめ、大井っちが逃げて」
彼女たちは、深海棲艦に取り囲まれていた。
「クックック、どうやら抵抗も、終わりのようだな」
「片桐ぃぃぃ!!!!」
深海棲艦の後ろに停まっている、指揮艇に乗っているのは、片桐栄治元准将だ。
それに対して、睨みつけるように叫ぶ大井。
「今なら、また二人仲良く汚し………」
下品な笑みを浮かべながら口にした、その言葉。かつては、その言葉で心を折られ、傷つきながら汚され、二人で、傷を舐め合うことしかできなかったが、
第13泊地、そして、中部警備府を経て、鬼教官不知火の地獄の鍛錬で、心も強くなった大井の心に、逆に火を点けた。
「片桐ぃぃぃ!!!!!!!これ以上、北上さんに、指一本触れさせないわ!!!」
そして、その炎が、北上に覚悟を決めさせた。 彼女も、不知火の地獄から、強くなったのだ。
「大井っち、私も逃げない。沈むとしたら、ここで大井っちと沈む」
二人は覚悟を決めた。 弾薬も燃料も、もう多くはない……
だが、その、二人の覚悟と、絆が、二人の左薬指に、奇跡という名の、贈り物を与えた……
「だから、片桐。大井っちを傷つけさせない」
静かに睨みつける、北上の氷のようなその瞳は、まっすぐ、片桐を射抜いていた。
大井は激しく睨みつけ、炎のような瞳は、まっすぐに、片桐を焼き尽くさんばかりの、炎を燃やしている。
二人の左手薬指には、白銀色のリング……
「くはははは!!深海棲艦にも、指揮プロトコルが通用したんだよ。
もはや、片桐は、狂気に血走った眼をしている。
「絶対に、どっちも!!」
「嫌!」
二人の声と同時に、艤装を再展開し、改二艤装となる。
「はっはっは!此方には、ヲ級もいるんだぞ!」
物資揚陸場跡にいた、空母ヲ級改
「流石に……対空は……」
「北上さん!何かが、高速で突っ込んできます!」
「あれは……」
ザザーッっと、汎用駆逐艦艤装で、突っ込んできたのは、恵海だった。
「間に合いました……」
「めぐみっち!」
「恵海!?」
「あれは、私が引き受けます!……今見たことは、忘れてください!」
決心を決めた目で、加速し、空母ヲ級の方に、向かっていく。
「艤装パージ!再展開!!Type-ReModF!」
艤装をパージすると、艤装が、バラバラと海に沈む……本来、艤装パージは、自沈と同じで、艦娘の死を意味している。
だが、この汎用駆逐艦艤装は、人間でも装着可能な、パワードスーツの類である。
駆逐艦艤装は、軽量で脆いが、速度は早いので、駆逐艦以外の艦娘向けの、ジェットスキー気分の、レジャー用品と化している。
そして、艤装を展開させる……そう、戦艦レ級の……身体は恵海だが、艤装はレ級のものだった。
彼女の身体は、黄色いオーラを纒い、彼女の瞳は、炎が揺らめいている……
「飛び魚艦爆出撃!」
尻尾の滑走路から、飛び魚艦爆が出現する。
対する、ヲ級改FSも、たこ焼き艦載機を出現させる。空では、大量の艦載機による、空戦が始まっていた。
航空戦は、ヲ級不利のまま、どんどん押されていく……
「くそっ!!」
不利を悟った片桐は、一旦、島の方に、ボートを走らせていく。
「片桐!!」
「大井っち、今は、こいつ等を……!」
大井は、追いかけようとするが、その肩を北上が摑む。
周囲には、まだ数十体もの、深海棲艦が存在するのだ。
「……私、熱くなりすぎました」
申し訳無さそうな顔をする大井に、北上は笑う。
「ううん、熱いのは、嫌いじゃない」
そして、目を見つめ合うと、頷きあった。覚悟は決めた……と。
「いくよ!!」
「はいっ!!」
二人は、指輪のつけた左手を、強く握りしめて、その場で回転し始める。
その回転は、次第に早くなり……艤装が真っ赤に焼け付く……
「「魚雷……発射!!」」
360度全方位に乱射される、真っ赤に燃えた魚雷によって、次々と、電探から消えていく敵艦。
次々と、上がっていく水柱……包囲していたのが、却って仇となった。
包囲を狭めながら迫ってきた、深海棲艦達は、海の藻屑となった……
その頃、レ級改
「ふぅ……」
「めぐみっち!」
「恵海!」
艤装を滑らせて、駆け寄ると、恵海は、悲しそうな顔をする。
「この姿だけは……二人に見せたく……無かったです」
深海棲艦の艤装だ。これが明るみに出れば、自分は処分されるだろう。
「めぐみっちはめぐみっち。私は、何も見てない」
「そうですよ!湊ちゃん提督は、分かる人です!」
ぎゅっと、両側から抱きしめる二人に、恵海は、涙を零す。
「ありがとう……」
今まで未定だった恵海の外見モチーフはヲ級の艤装なしの黒色の髪の毛青色の瞳な感じです。
とうとう、旧第13泊地の最大の敵片桐元准将が現れます。