小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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小さな小さなの第1話のリメイクでもあります

電と湊の出会い……





出会い~第13泊地制圧戦~

青ヶ島泊地として、稼働を開始してから少し経過した。

 

といっても、何かが大きく変わるわけでもなく。

第1艦隊は周辺哨戒に出かけ、第2艦隊は今日は近くの漁船団の護衛で出払っている。

 

そんな昼下がり。

 

「提督、電さん、お茶入りました」

従卒見習いの各務原結有が、お盆に紅茶二つと緑茶、お茶請けのクッキーと羊羹を乗せて入ってくる。

本来なら中学三年生なのだが、軍属希望者で予めこうやって従軍することは、

珍しいものの、なくはなかった。

しかも、この青ヶ島――東京都青ヶ島村は人口が200人にも満たない数で、

その大半は軍関係者である。よって学校がない為、小中一貫校を開設している。

それも、軍敷地内の為、『登校』してることには変わりがない。

 

 

「「ありがとう」なのです」

二人が、書類仕事の手を休めて顔を上げる。

激戦ではなくなったとはいえ、今も()()()()()している深海棲艦の為に、軍が稼働している以上は、

司令官や秘書艦の仕事は減ったわけではなく、運営や補給計画、それを上に通す。

やることは毎日山ほどある。

 

結有は手を休めて顔を上げたところを見計らって、

湊のデスクには紅茶とクッキーを、電のデスクには緑茶と羊羹をさり気なく差し出すと、

用意されている隅の椅子に腰掛け、自分も紅茶を手にする。

 

 

「そういえば、提督はどういった経緯で、この泊地にいらしたんですか?」

紅茶を啜りながら結有が問うと、少し懐かしそうな顔をして湊が口を開いた。

 

 

「あれはですねぇ……一年くらい前ですか」

 

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一年ほど前 。

 

 

当時、湊の肩書は横須賀鎮守府作戦参謀という立場で少佐だった。

彼女は山本司令長官の随員の一人ということで、

横須賀鎮守府の艦娘達の練度確認の演習視察で、横須賀沖合にて16式指揮艇に乗り込んでいた。

 

一度演習が始まると、ただの作戦参謀にやることは少ない。

勉強の為に、演習をデッキに出て見ることは許されている為、

デッキに出て潮風に当たりながら眺めよう、と双眼鏡で沖合を眺めてた時だった。

 

何か浮かんでる……人っぽいものが……

「んー……あ!!」

デッキで大声を上げているものだから、彼女の上官たる参謀長石坂源一郎少将が出てきた。

「高梨少佐、何を騒いでいる?」

「閣下、アレをご覧ください!!」

普段真面目な彼女が慌てた顔をして言うことだ、なにかあるのだろうと双眼鏡を受け取ると目に当て……

「……閣下に報告する。ついてきなさい」

それだけいうと、石坂少将は彼女を従えて指揮室へと上がった。

 

彼等二人が見たものは、沈没寸前の艦娘だった……

 

 

山本司令長官は即座に訓練を中止、航空部隊に警戒を行わせながら、

総秘書官大和に曳航を命令した。

司令部に残留していた主席副官である大村恵一郎准将に連絡を取り、

工廠部での緊急入渠の手続きを依頼したり、湊も自分の職務に専念することにした。

 

救助されたのは駆逐艦電だった。

彼女はすぐに横須賀鎮守府の大工廠へ担ぎ込まれ、高速修復材での緊急入渠が行われた。

迅速な応急処置の甲斐あって、すぐに意識を取り戻すだろうという明石の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす湊。

 

その場に残っていたのは、司令長官の山本に副官の恵一郎、警護を兼ねている次席副官の奈緒だった。

目を覚ました電はガバッと起き上がり、目の前にいた湊の手をとり

「皆を……皆を助けてほしいのです……」

そう言うと涙を流す。

何のことかわからず戸惑う湊達に、電はぽつりぽつりと話し始める。

 

 

彼女の所属している第13泊地の司令官、片桐英治准将は人として最低であった。

捨て艦戦法はもちろんのこと、艦娘を強制解体し、海外の人買いに売り払い、不正に金銭を得る。

自身に従わぬ民間人を、艦娘という暴力で力づくで従わせ、殺傷する。

司令官の特権で命令に従わせるプロトコルを使い、性的な目的に使う……

行方不明になった艦娘も一人や二人ではないというのだ。

 

沈没寸前の駆逐艦が、管区司令部でもある鎮守府に命からがら駆け込んでくるからには、

何らかの大事があったのだろうと予想していたが、

予想より酷い事態に、一同唖然としていた……

 

 

「高梨くん、どう思うかね?」

全てを話し終え、錯乱状態になった電を鎮静剤で眠らせてから、傍に控えている山本が湊に声をかけた。

湊は軽く目を伏せる。 それは彼女が激怒しているか極度に不愉快というときの仕草で、親友の二人は、彼女の気持ちが痛いほどわかる。

声をかけられた彼女は顔を上げて、真面目な顔になり山本に向き直る。

「……閣下、助けてあげられませんか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。特に()()()()()()は。

 それが建前だったとしても、それを見失えばただの暴力集団です。

 それどころか、武力を……共に戦う艦娘を辱め、貶めた泊地司令官は、軍人としても女としても、私は到底許すことはできません」

 

それだけ言うと、ベッドに横たえられた電の頭を軽く撫でてシーツを掛け直した湊に、

「よろしい少佐。貴官に鎮守府陸戦隊を二個小隊預ける。大村奈緒を戦術顧問として付ける。

 『不敗の女神』高梨湊少佐に命ずる。速やかに第13泊地を制圧し治安を回復せよ。

 それ以後の管理運営は貴官に一任する」

「はっ、必ずや」

 

奈緒が陸戦隊と強襲揚陸艇の準備をしている間、

湊は、工廠と兵器庫を往復していた。

 

持っていたのは、ピアノ線に閃光音響手榴弾(スタングレネード)……

それを、船へとせっせと積み込んでいた。

 

そんな慌ただしい中、小さな影が強襲揚陸艇に潜り込むのに、誰も気づかなかった。

 

「出発します!」

湊の号令で鎮守府陸戦隊の精鋭ーー隊長の各務原は残念ながら非番で不在だったがーー

二個小隊と奈緒と湊が乗り込む強襲揚陸艇は、エンジン音を上げて青ヶ島へと向かった。

 

上陸まではすんなりと行えた。

艦娘達は、助けが来たと確信した途端、司令官の命令を無視した。

司令官のプロトコルで、無理やり言うことを聞かせようとするが、

弾薬も燃料もろくに補給してない艦娘では、操舵の専門家の操る船は沈められなかった。

 

「上陸後、速やかに司令部を制圧。可能な限り生かして捕らえてください!」

そう言いながら、自らも九ミリ自動拳銃を抜いて降りようとする湊を、奈緒は押しとどめる。

「湊、お願いだから残ってて。もし討ち漏らしがこっちに逃げてきたら、逃げるんだよ」

酷い言われようだが当然である。……湊は、士官学校で()()()()()を誇る程の、銃の下手な候補生だったのだ。

何かがあったらいけないと、奈緒は押しとどめると、

「よし、残らずひっ捕らえろ!抵抗が激しい奴は、二~三本骨折ってもいい!」

そう叫び、自ら90式自動小銃を持ちながら走っていき、陸戦隊もそれに続く。

 

陸戦隊が突入して大分経った……

 

「行っちゃいました……」

銃声と爆発音が響く島内を眺めながら、砂浜に降りてスコップ片手に何かを埋めていると、

救助浮き輪に、ちょこんと掴まっている電と、目が合った。

「……何してるんですか?」

「……電も、皆を助けに行きたかったのです」

そう言う、泣きそうな顔の電を抱き上げると、デッキに乗ってから降ろす。

「その気持だけ、大事にしますよ……」

その瞬間、ガサガサと物音がして……

 

 

その数分前、泊地司令部に突入した陸戦隊は、ほぼ全員を制圧していた。

高級将校は既に取り押さえられ、兵士達は降伏勧告に従い、武器を捨てていた。

捜索を行い、艦娘に性的暴行を行っていた士官を、やむなく射殺。

営倉に放り込まれていた艦娘を解放するなどしていた。

「中佐、片桐司令官が見当たりません……!」

「何ですって!?」

 

 

 

強襲揚陸艇が接舷している砂浜では、白い将官服を身に着け、九ミリ拳銃を持った男、片桐英治准将と、

青い海上迷彩服を身に着け、同じく九ミリ拳銃を()()()持った高梨湊と電が対峙していた。

 

「貴官が、片桐英治准将ですね?」

静かに、口を開く。

「いかにも。その船を渡してもらおうか」

「提督……何でなのですか!」

「うるさい!()()()()()が口を挟むな!」

泣きそうな電を軽く見下ろした湊は、片桐に向き直る。

「お断りします。貴官を()()()()()()()()()()()()()()許すことはできません」

そう言って拳銃を向けた。

「知っているぞ、高梨少佐、お前は士官学校で銃が下手で有名だったことを。撃てるか?当たるか?ん?先に撃ってみろ。そしたらお前の眉間を……いや、お前は俺の性奴隷に……」

そう言い、手に持った銃を湊に向け終わる前に、湊が右手を上げて、()()()()()()()()()()をした。

月夜に煌くキラキラとした何か……湊の小指に指輪のようなもの……そこから伸びる銀色の糸……

片桐は、一瞬呆気にとられて足元に目をやる……相手の銃の腕前に油断したのもあったが……

砂浜に半分埋められている何かを……知ってしまったのだ。

「貴様っ!」

叫ぶ片桐に、満面の笑みを浮かべる湊……

「知っていますか?私の同期は私のことを『不敗の女神』という他に……」

 

その後の言葉は、誰も聞こえなかった。閃光音響手榴弾(スタングレネード)が何個も起爆したからだ……

人間の耳や目には耐えられない爆音と閃光が、片桐を直撃することとなった。

 

======================

 

「すごい!さすが『不敗の女神様』ですね!」

その話を聞いた結有は、食いつくように司令官の机の前に立った。

目をキラキラさせている、目の前の少女に、湊は何故か困ったような笑みを浮かべる。

「それがですね~……」

と続けるが、それを遮って、

「片桐元准将と湊少佐の対決は、()()()()()()()()()だったのですよ」

と、電が結有に説明してあげる。

「……えっ?」

「いやあ。私も目と耳をやられて、気絶しちゃったんですよ。奈緒には笑われるし、男の人にはあまり見せたくない姿も晒してしまいましたし……」

少し顔を赤らめて、頬を掻いた。

「それで、電と共に私が残って、当地の治安を回復する事になったんです。まあ、そっちも色々大変でしたけど、そっちは追々。さあ、仕事しましょう」

 

湊はごちそうさまでしたと、空になったティーカップとお皿、電も湯呑みとお皿をそれぞれ脇にどけると、

それぞれ書類との戦いに戻る。終わらないとお家に帰れないのだ……

それを見ると、結有も司令官従卒の仕事に戻る。トレーに空の食器を載せてから、給湯室に向かうのだ。

「ところで、男の人にあまり見せたくない姿って、何だったんだろう……?」

廊下で、そう呟きながら。

 




小さな小さなでは省かれた第13泊地制圧戦を
結末を変えて書いてみました。

結有はエピソードの聞き役になりそうです。
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