魔改造のダークサイドから開放された夕張と恵海による
新装備開発計画談義回。
本日のゲストは日向師匠です。
綾波の無茶振りに応え『試製18式12.7mm対物自動拳銃』の制作を完了した明石。
彼女に新たな試練が降り注いでいた。
そんな中、有給休暇をとって名古屋でいま復興のために尽力している
退役艦娘伊勢に会いにやってきた日向師匠は、中部警備府に立ち寄った。
彼女から語られた明石の魔改造伝説とその裏の暗い過去。
そして現在奮闘中の『フルアーマー綾波計画』とは
そして、第三世代艤装計画の悪夢のような真実の一端
前半はカオスですが後半シリアスです。
外見モチーフはモチーフにすぎないんですが、
結有同様、実設定を持ってモチーフされたもう二人の真実。
新・夕張の装備開発計画①―フルアーマー綾波計画と明石の闇―
「頑張ってきます!」
11月中旬。吹雪が、国防軍士官学校の入試に向かった。
前日には壮行会が行われ、カオスにもならず早めに解散して、
吹雪も早く寝た……不安だからと、結有と同じベッドで。
そして、朝早く目覚めて、結有といつもの日課をこなし、
シャワーを浴びて、特型駆逐艦制服に身を包んだ彼女は、元気な声で出かけていった。
そんな日の午後、珍しいお客が、中部警備府に姿を見せた。
戦艦日向である。姉の伊勢が、村上建設で働いている為、有給消化がてら陣中見舞いに行って、
そのまま名古屋見物をしようと、立ち寄ったのだ。
「久しぶりね、日向」
「高天原……今は中佐か、久しぶりだ」
日向は佐世保から、明石のやらかしで、呉にやってきた時に、榛名と一緒についてきている。
明石とは、もう10年以上の付き合いの、古参艦である。
「榛名は元気してる?」
「ついこの間まで、トラウマを呼び起こされて寝込んでたけど、元気だな。あの綾波が訓練を担当すれば、まあ、そうなるな」
「そうね……申し訳ないけど、失礼するわね。総務部長は忙しいのよ」
肩を竦める智子に、日向も笑う。
「人を欺き、出し抜くのに明け暮れた情報部時代より、生き生きしていて、いいじゃないか?」
そう言ってから、小さい声で、
「なんでも、イケメン少年を
その言葉に、智子は赤面する。
「そ、それをどこで……?」
「湊ちゃんから聞いたよ。なんでも、『名古屋着任時のお礼』だ、そうだ」
その言葉を聞くと、溜め息を吐く。
「たまに出るのよね、
「まあ、彼女も、完全に過去を振り切っているわけじゃないのだろう。まだ、戦後は始まったばかりだ」
「そうね。それじゃあ、失礼するわ」
軽く手を上げて、早足で去っていく智子を見送ると、工廠に向かった。
工廠では、恵海と夕張が作業台を囲んで、討論中だった。
「夕張さん、Ju87C改(ルーデル隊)ですが、
「むむ……では、37㎜機関砲を外付けして……」
「ですけど、更に、遅く重くピーキーになりますよ。ここは、もっと近代的な……」
「GAU―8でも、後付けしますかね?」
「それじゃ、ほとんどA―10じゃあ……?」
そんな中、日向が入って来る。
「日向師匠、お久しぶりです!」
「あの……はじめまして、日向師匠……超大和型航空雷装戦艦の、恵海です」
その言葉に、日向は苦笑いしながら、
「なんだ。その『日向師匠』こっちでも、知れ渡ってしまったか?草加提督が、こっちに遊びに来たから、まあ、そうなるな。改めて、日向だ。宜しく、恵海」
そう言いながら、空いている椅子に腰掛ける。
「最近も飛んでるんですか?師匠は」
夕張の問いかけに、苦笑いのまま、首に横を降る。
「最近は飛んでないよ。明石も今は、『フルアーマー綾波』計画に、時間を取られてる」
「ふる……あーまー………」
あまりにも理解の枠を飛び越えた話に、恵海は、いつものオウム返しだ。
夕張は、大きく溜め息を吐いた。
「それじゃ、あの、『試製18式12.7㎜対物自動拳銃』は、完成したわけですね?その後の綾波さんの無茶振り、と」
「あの……『試製18式12.7㎜対物自動拳銃』って、なんですか?」
おずおずと手を上げる恵海に、日向は、リュックを降ろすと、ゴソゴソと探って、
アホみたいに大きなホルスターに入った、大きな拳銃を取り出す。
「これだ。.50BMG、つまりは12.7㎜NATO弾を使用した、
「オーダーメイドって……?」
夕張がツッコミを入れると、涼しい顔をして、答える日向。
「綾波が試射した時に、一部の、元海兵旅団の
「……撃ってみたいです……」
「一発だけ、入ってるから、やってみると良い」
恵海がポツリと言い、日向が頷くと、一同は立ち上がって、工廠を後にした。
という訳で、やってきた、防御隊本部のシューティングレンジ。
防御隊長の奈緒や、興味本位でやってきた、防御隊員らが見守る中、恵海が銃を構える。
「………行きます」
本来は、シューティングの的を狙うのだが、重機関銃弾ということで、
本来の的の
ぐっと腰を落として……両手でしっかり構える。静かに、丹田に力を入れて……大きく息を吸って、ゆっくり吐いた後に止め、リラックスして、狙いを定め、トリガーをひきつけ、狙いが合った瞬間、引き絞る。
ズッガァァン!!
爆発音がして、強烈な反動で、恵海の腕が、上に跳ね上がる。
かなり下を狙ったのに、コンクリートウォールの上部に着弾し、ぶち抜いてから……
炸裂して、燃え上がった……
「しまった!弾薬を間違えた。明石め、
日向の言葉に、奈緒が、
「消火器持ってきて!!早く!!」
と、手早く指示を出す。
射撃した恵海はそのまま、ぺたんと尻もちを付く形で、座り込む。
「……て……手が痺れます……」
「と、取り敢えず、ヤバイ代物なのはよくわかったので、戻りましょう?」
「は……はい……」
大騒ぎの、防御隊シューティングレンジを尻目に、工廠に戻っていく艦娘達。
そして、この一件で奈緒は、始末書の提出を求められた。
「なんでだー!?」
工廠に戻ってきた、艦娘三人。
「まだ手が、ビリビリします……」
「まあ、そうなるな」
「これ、装甲服を着た人間に当てたら、大惨事ですよ?」
各々が感想を言い合うと、日向は、『試製18式12.7㎜対物自動拳銃』を再び鞄に仕舞う。
「あのぉ……ってあれ?お久しぶりですね、日向さん」
やっぱり工廠に現れた、
「あとで、顔を出そうと思っていたよ。提督も、相変わらず元気そうで」
笑顔で、言葉を交わす二人に、夕張は、冷や汗タラリだ。
「司令官、始末書ですか?」
その言葉に、湊は、首を横に振る。
「なんか、
その言葉に、ほっとする夕張。心の中で、大村大佐カッコヨメに謝る恵海。
「ところで、さっきの『フルアーマー綾波』計画って、何なんですか?」
「なんだ?また、綾波さんの無茶振りですか?」
日向に問いかけると、湊も苦笑いしながら、空いている椅子に腰掛ける。
「まあ、そう言ってやるな。明石も、楽しそうに作っている」
そう日向が、湊に言うと、湊は頷く。
「汎用駆逐艦艤装あるだろ?あれに、クロスアームでアームベースを付けて、四連装ガトリングガンを付ける計画だ。綾波からの要求では、
「……………」
艦娘の通常艤装でも、通常目標に対しては、それなりの打撃は与えられる。ただ、
深海棲艦及び艦娘に対しては、霊子の力で、
パリ砲事件も、実物換算で降ってきたら、「お前のような駆逐艦がいるか」のいずも改だろうと、一撃爆沈である。隕石騒ぎで済んだのは、人間大サイズの、グレネードランチャー程度の砲弾が、運悪く、甲板に降ってきたからである。
逆に深海棲艦は、
軍艦が、勝てる訳がないのだ。目標が小さ過ぎて当てられない、此方が大き過ぎて避けられない、よしんば、深海棲艦に当たっても効かない、此方の装甲が薄過ぎて防げない。
但し、上陸すると、艤装は使えなくなる為、深海棲艦と言えども、海兵旅団等と、殴り合いで負ける可能性が出てくるのが、弱点といえば弱点ではあるが。
余談だが硫黄島の一件は、島そのものが深海棲艦化していた為、通用した打撃力である。
あの、でかい深海棲艦は、そのコアに過ぎなかった、ということだろう。
―――という事情があり、ザ・デストロイヤーズも、対海賊には、通常兵器も用いていた訳だが、
それにしては、発想が斜め上を行き過ぎて、唖然としている、日向以外の一同。
おそらくは、全弾Raufoss Mk 211を装填する、と言い出すのだろう……
当たったら、ソマリア沖の海賊さん達は、どうなってしまうんだろう。
想像すると、背筋が寒くなる。
取り敢えず、この計画はもう触れまい。と誓う一同だった。
「しかし、相変わらず明石さんの実験艦なんですか?」
夕張がそう問うと、
「まあ、そうなるな」
と答える日向。そして、更に続けた。
「良いじゃないか。明石が物づくりに集中している時は、
「……えっ……?」
絶句する夕張に、湊がぽつりと、口を開いた。
「第三世代艤装計画。貴方は、艤装の調整をしてましたが、明石さんは、『素体』の調整をしてたんです」
「………」
その言葉に、沈黙する夕張。己ですら、あれだけ塞ぎ込んだ、あの
「いいのか?提督。思い出すことになるぞ?」
「……私も、乗り越えないといけないことです」
心配そうな顔をする日向に、優しく笑みを向ける湊。
「結局、姉さんも私も、あの当時は、「
そういうと、ふっと、目を伏せる。彼女が、心を落ち着かせる時のおまじないだ。今、相当、心が乱れている、ということだ。
「―――
ふっと、自嘲気味に語る湊に、日向が静かに、ぽんと肩を叩く。
「もういいんだ……それ以上は、言わないで良い」
「……」
「ううっ……」
それを初めて知った夕張は、涙が止まらなかった。隣りにいた恵海も、その夕張を抱き寄せて、泣いている。
「ふう……だから、失敗してよかったんです、あれは。あんな悲しいこと、私達だけで十分です。それに、これは、関係者のみの胸の内だけに……それでいいんです」
湊は、溜め息を吐いて、そんな二人の頭を、優しく撫でると、冗談めかしてこう言う。
「私達姉妹の、おっぱいがちっちゃいのも多分、その影響ですかね?電は、ちっちゃくて可愛い良いおっぱいなのです。なんて、言ってくれますが」
その冗談に、恵海も夕張も、悲しみが少し和らいだ。
そして日向が続ける。
「だから、私は何度空を飛ぼうが、構わない。ケガをしたって、明石の心が保たれるなら、安いものだ。『まあ、そうなるな』といって、命ある限り、明石と共に生きるんだ」
そう言って、左手を上げると、薬指に、白銀色のリングが付けられている。
「何度か空を飛んで、必死に謝ってくる明石を抱き締めたら、現れたよ。私は、なんだかんだ言って、明石が好きなんだな。だから、明石といつまでも付き合うのさ。『フルアーマー綾波』計画が終わったら、今度は、『ネオ日向』計画が待っている。なんでも、超大和級を超えた、スーパー戦艦計画らしい。実に楽しそうじゃないか。煤と、機械油にまみれて笑っている明石が、私は大好きだ」
そう笑いながら語る、日向の言葉に、皆も少しずつ笑顔になる。
「私達の『戦後』は、まだこれからなんだ。失われた30年を取り戻す為に、歩き出したばかりだ。人間も、
日向が最後に付け加えた言葉に、一同は頷いた。
「さて、久しぶりに皆で飲むか。今日は、私がご馳走しよう。伊勢も呼んでくる」
その日向の言葉で、今夜の飲み会は決定した。
―――――――――――――
「吹雪いないし!!智くんは智子さんと先帰りやがった!!」
「これも運命よ、諦めなさい」
「まあ、そうなるな」
士官学校入試で、今夜は
ここで明らかになった妖精さん。
Tips『艦載機妖精さん』
作中で出てくる唯一の妖精さん
航空機には妖精さんが搭乗してくれています。それを母艦娘が、指揮統率する形です。
基本作中ではセリフは出ず、様子と感覚で艦娘に意思を伝えます。
加賀さんの『直感的な指示』は妖精さんと感覚を共有して効率的に指揮ができる、と思ってください。
なお、(○○隊)付きの艦載機のみ隊長妖精さんが出てきて喋る場合があります。
ただし、後述の都合上、艦娘が代弁する形です。
なお、目に見えるのは自分の艦載機妖精さんのみです。
あと、基本死にません。ちゃんと落とされても帰って復帰します(ボーキ食って)
Tips『試製18式12.7mm対物自動拳銃』
明石がコルトガバメントをベースにアップサイジングした『ワンオフモデルの』自動拳銃。
全長600mm 重量8.0kg 装弾数7発+1 ダブルアクションオンリー銃
使用弾薬は12.7mmNATO弾。
くどいようだがワンオフモデル……だったのだが、一部の元海兵旅団が噂を聞きつけ求めたためごく少数のみオーダーメイド生産してテスト配備している。
まともに使用できるのは綾波はじめ一部の霊子の高い艦娘と、筋肉もりもりマッチョマンの一部の元海兵旅団の人外だけです。
(そっち向けには減装弾化して初活力10000ft-lbs程度に抑えられた弾薬を配備している)
Tips『艤装の実艦換算及び攻撃耐性まとめ』
☆実艦換算
艦娘 →深海棲艦と艦娘に対し有効
深海棲艦→全ての目標に対し有効
☆攻撃耐性
艦娘 →霊子の篭ってない攻撃ダメージ軽減
深海棲艦→霊子の篭ってない攻撃ダメージ無効
☆補足事項
艦娘も深海棲艦も上陸など水上にいない時は艤装展開不可・艤装補正を失う。
艦娘側はメンテナンスモードで展開そのものは可能だが武装・艤装補正がない。
こぼれ話《F-2妖精さん》
F-2妖精さん? あいつは
F-2妖精さん「死んどらんわ!泳いで帰ってきたわ!ASMでぶっ飛ばすぞ!」
追記:
名古屋の悲劇で矛盾が生じますが、
艦娘航空機と通常爆撃も行い深海棲艦を足止めして
艦娘航空機の支援を行ったと解釈してください