そして、誕生日とクリスマスを一緒に過ごしていた智紀へのサプライズとは
※この物語はフィクションです。未成年の飲酒、ダメゼッタイ※
「もうそんな時期か……」
あの、智子との出会いから、もう八ヶ月経ったなあ、と振り返りながら、智紀は買い物袋を両手に呟いた。
12月初めから、街は、復興途上にありながらも、クリスマス一色だ。
市長が率先して、「今年のクリスマスは、名古屋復興の願いを込めて、盛大にやろう」と、
名古屋市挙げてのプロジェクトとして行って、軍や艦娘達も、警備府を
子供達を招待しての、クリスマスパーティーを行う予定になっている。
「智くん、どうしたの?」
同じく、買い物袋を両手にした結有が、声をかける。
二人は、警備府のクリスマスパーティーの準備委員に任命されて、買い出しの帰りだ。
「俺さ、クリスマスって、あんまいい思い出ないのよね」
「なんで?」
首を傾げる、薄い海色のかかった黒い瞳の上官に、
「俺誕生日12月10日なのよ。それで、誕生日とクリスマス一緒にされて、12月生まれは損だなって」
「そっかー、智くんもとうとう18だね。誕生日は、やっぱ智子さんと?」
「何も話ししないし、いつもの如く、クリスマスと一緒じゃねーの?」
「……」
そう言うと、歩いていってしまう智紀に、
結有は、何かを考えながら、その後ろをついていくのだった。
智紀は、子供達のクリスマス会と並行して、総務部の業務を熟している。
智子も忙しいが、智紀も忙しい。
誕生日について、何の会話もなされぬまま、12月10日を迎えた。
そんな誕生日当日の夜。
智紀と智子は、二人して結有に呼び出され、居酒屋鳳翔に連れて来られた。
「誕生日おめでとう!!」
吹雪の声と共に、警備府の艦娘達や来れた幕僚達が勢揃い。
もちろん、総務部の女性達も共犯だ。
驚いた智紀だが、ちょっと浮かない顔の智子。
取り敢えずと、主役席まで吹雪に連れて行かれる二人。
皆賑やかにやってるのに、やっぱり浮かない顔の智子に、智紀も心配になる。
「なー、智子さん。今日はどうしたんだ?」
「……」
その問いにも応えない。そんな智子の態度に、結有がブチ切れた。
隣りにあった、吹雪のグラスを一気に飲み干し……
「あ、それ、私の泡盛」
ドンッとグラスを置いた。
「智子さん!せっかくの智くんの誕生日なのに、何なの!?」
その言葉に、智子もついにキレた。
「あのねえ!あんたら!智紀が、クリスマス会の準備で忙しいから、気を使ってたのに、何なのよ!!今日は、私だって大事に思って、色々考えてたんだから!」
どんっと、テーブルを叩いて言い返す智子。涙を浮かべている。
周囲はシーンとなり、智紀があわあわと慌てだす。
「あのさ、二人共、落ち着いて……」
そんな中、湊が静かに口を開く。
「結有。智子はね、
その言葉に、先に我に返った智子が、座り直しながら謝る。
「……結有、ごめん。私が悪かったわ……」
その言葉に、結有も申し訳なさそうになる。
「こっちこそ、ごめんなさい……」
そんな雰囲気を打ち砕くように、智紀が声をかける。
「なー、誕生日プレゼント?何くれんの?」
と呑気に言うと、智子は困ったような顔をして、助けを求めるように、湊を見る。
湊は、いたずらっぽい笑みを浮かべて、
「やっちゃえ」
と、智子に声をかける。
智子は、はぁぁぁぁ……と盛大な溜め息を吐いて、
「……あの、こんな大勢の前で、言う予定じゃなかったのよ。今日、18歳になった智紀に、聞いてほしいことがあるの」
「お……おぅ」
改まって言い出した智子に、智紀も正座し直して、智子を見る。
「私ね、戦争孤児なのよ。五歳の時に、家族皆死んでね、深海棲艦にやられて。貴方と一緒よ。施設で育って、高校までは行ったわ。その施設って、管理が悪くてね。まあ、こういうご時世だから、しょうがないけど、慈善事業も、お金がないと成り立たないの。だから、私は食べる為に軍に入ったわ」
その言葉に智紀は、
「そっか……」
と小さく呟くように、ぽつりと返した。
「その施設が最悪だったから、家族なんて要らない。士官学校で、誰にも負けたくないってね、必死に努力したわ。私は運動は不得手だったから、頭では絶対負けないって。施設出なんて理由で、同情なんて引かれたくないし、士官学校の同期の、誰にも言わなかったの。私の原動力は『反抗心』だけだったの。大人への……」
そう言ってから、大きく溜め息を吐いた。
「その施設は、酷いものよ。そんなのを経験すると、家族なんて、もう要らないって思ったのよ。士官学校で好きになった男は、とっくの昔に、
そう言って奈緒を見ると、奈緒は、わざとらしく恵一郎を抱き寄せ、Vサインをする。
更に溜め息を吐いてから、続ける。
「……もう、家族なんて要らない。一人で生きていくんだって。情報部に入って、『血も涙も棄てて』仕事をしたわ。汚れ仕事も、何度もしたこともある。家族をもらう資格も、もうないわって、でも今は……智紀、貴方を家族に迎えたいの。だから……これを受け取って」
そう言うと、手提げ鞄に大事にしまってあった、指輪ケースを取り出す。
「……智子さん……」
開けると、シンプルな銀色の、ペアの指輪。
「あっ……」
艦娘達や結有達が声を上げる。
「これはね、1.5世代のケッコンリング。
「……俺で良いのか?俺、ダメンズだぞ?」
「貴方が良いの。それに、当分は養ってあげる。ねえ、智紀。私の為に頑張ってくれる?」
そう、じっと見つめて言うと、
「俺、智子さん……いや、智子と一緒にいたい!だから俺も、いい男になれるように頑張る!」
「じゃあ、手を出して……」
皆が見つめる中、智紀が左手を差し出すと、智子は、リングを左薬指に填める。
リングは、智紀の指にサイズを変えて収まると、輝いた。
「この指輪はね、想いが強いと、填めた時輝くのよ……ありがと」
「それじゃ……智子も、填めるぞ……」
笑顔を浮かべた智子に、智紀は照れて顔を赤くしながら、智子の左手を取って、指輪を薬指に填めると、同じく輝いて、指に収まった……
「それで、もう一つなんだけど。貴方、私の為に頑張ってくれる気ある、って言ったわよね」
「おう」
そう智紀が答えると、ニコっと笑って、湊の方を向く智子。
「えー、皆さん、ご注目。年齢規定により、本日より廣瀬智紀くんを、伍長に任じます。また、
「………お、おう?」
キョトンとしてる智紀に、智子はニコニコと笑う。
「私の旦那様になるからには、最低でも中佐には、なってもらうわよ。頑張って士官学校出て、大尉になったら軍大学に行って、尉官を駆け抜けなさい」
「…………おう!」
少しの沈黙の後、決意を込めて答えると、智子は、「宜しい。頑張ってね、旦那様」と抱き締める。
周囲からは、祝福の声がかけられる。
「やったね!吹雪!同期が増えたね!」
その言葉に、ケラケラと笑いながら言う結有。どうやら、アルコールが回りだしたようだ。
「う、うん」
それを苦笑いで見る吹雪。吹雪は、まだ結果待ちである。そして、ばっと立ち上がる恵奈。
「ケッコンしたら!チューするんだよ!」
と言うと、悪乗りした一同が、キスの大コールだ。
「ちょ、ま……」
「智子、ここの連中の悪ノリには、勝てないから」
狼狽える智子に、貧乏くじトリオ新入りの智紀は、ポンと背中を叩く。
「はぁ……まあ、ここの連中らしいわね」
大きな溜め息を吐くと覚悟を決めて、智子は、静かに目を閉じる。今度は智紀が抱き寄せ、口づけを交わした……
「んっ……」
長い長いキスをして、ようやく離れる。
「さて。ちょっと店を一旦出ましょうか」
「お、おう」
「皆、すぐ戻るから、気にせずやっててちょうだい」
そう声をかけて、宴会と化した席を後にすると、二人は、総務部の部室に向かった。
総務部長のデスクの抽斗を開けると、茶色の書類が。婚姻届だ。
「これを書いて、一緒に市役所に行って提出。守衛さんが受理してくれるの。貴方の誕生日に入籍したいって思ったのよ。そしたら戻って、誕生日を改めてお祝いしましょう?」
「そうだな。なー、智子」
智子の席に座りながら、自分のところを記載しつつ、声をかける。
智子のところと、証人欄は記載済みだ。湊と恵一郎である。
「何よ?」
「ありがとう。俺、智子に出会えてよかった。これからも宜しく……そんで、士官学校頑張ってくるよ」
その言葉に、智子は一番の笑顔を浮かべた……
提出して、戻ってきた時には、カオスと化していた。
いつもの、中部警備府恒例の、飲み会の光景である。
元々酒が弱い上に、強い泡盛を飲んだ結有は、既に電池が切れて、吹雪の膝の上で寝ている。
「いつもの光景ね」
「そうだな」
ふふっと笑うと、智紀もまた笑った。
「あ、そうだ………」
智紀が耳元で何かを囁くと、智子の顔が耳まで真っ赤に染まる。
「そ……そうね……その、初めてだから……ごめんなさいね……年上なのに……」
「俺も初めてなんだ……だから……」
智紀も顔を赤らめると、智子が笑みを浮かべる。
「初めて同士ね」
「そうだな」
二人顔を見合わせると、手を繋いで、さっきの席に戻った。
そして二人は、割りと早目の時間に、宴会の席を中座した。
帰る時に湊から、
「明日は、二人共オフにしておきますね」
とにっこり笑顔で見送られると、二人顔を見合わせて、顔を赤らめる。
「さ、行こっか」
「ええ……」
二人は、お店を後にして、智子と智紀の官舎へと向かった。
その夜は、二人共、忘れ得ぬ夜になるだろう……
おまけ
戦後処理中の二人。
吹雪「結局こういう運命なのね……結有も呑気に寝てるし……」
加賀「人は運命には逆らえないわ」
翌朝
結有「ゆうべはおたのしみでしたね!」
智子「んなっ!?」(顔真っ赤)
智紀「!?」(顔真っ赤)
その後結有は吹雪にめちゃめちゃお仕置きされた。