恵奈ちゃんに変態の魔の手が襲いかかる。
と言うか事件です!
そしてとうとう吹雪の合格発表のときが来た。
※今回はショートエピソードです
12月の半ばのことだった。
恵奈が、泣きながら帰ってきたのだ。
「おかえり。恵奈、どうしたの?」
ちょうど休憩がてら、コンビニに行こうとした高天原智子が、そんな恵奈を見つけて駆け寄った。
「智子おねえちゃん……さっきね……変なおじさんに、おっぱいとお股触られて、逃げてきたの……」
「えっ……?」
これは『痴漢事件発生』だ。さっと、智子の顔色が変わる。
「ちょっと、中に入ろうね」
恵奈の頭を撫でると、すぐさま警備府敷地に入り、奈緒を呼び出す。
すぐにやってきた奈緒は、厳しい表情を浮かべて、
「ちょっと見てくる。智子、恵奈を頼むわ」
そういって、足早に防御隊オフィスへ向かった。
「恵奈ちゃん、お姉ちゃんのお仕事部屋に行きましょう」
そう言うと、恵奈を抱っこして、総務部室に向かった。
――――――――
その頃、防御隊オフィスでは……
物々しい雰囲気の、防御隊員が集結していた。
防御隊は、練度も高い精鋭集団である、各務原隊が中心母体である。
そして、そんな精鋭集団が、奈緒の話を聞いて、
「なんだって!?恵奈ちゃんが!?」
「ファンクラブとしては、絶対に許しておけん!」
「徹底的に炙り出して、絶対に捕まえるぞ!」
「ミニガンで、蜂の巣にしてやる!!」
「いや!生きたまま、海に叩き込んでやる!!」
「いや、『試製12.7㎜対物自動拳銃(HEIAP弾)』で、焼き払ってやる!」
「よし!行くぞ、野郎共!私の娘にいたずらした、
「オー!!!」
そして次々と出撃していった……
隊長に似て皆、恵奈ちゃんを溺愛している、海の
なお、女性隊員
――――――――
そんな事になってるとは露知らず、総務部室では、
急いで駆けつけてきた暁と、総務部のお姉さん達が、代わる代わるお菓子をあげたり、
頭を撫でてやったりして、恵奈をあやしていた。
そんな中、智子の旦那である、高天原智紀がやってきた。
結局姓は、智子の姓を選択した。本人曰く、「高天原ってかっこいいじゃん」だ、そうだ。
「なー、智子。なんかあったの?お、恵奈オッス、元気ないけどどうした?」
「
「智お兄ちゃん、こんにちはー……」
結婚しても割とマイペースな、ダメンズ智紀に、一応は注意してから訊くと、
「ああ。なんかさ、防御隊員がフル武装で、ミニガン搭載型ジープ数台と装甲車で出撃してったんだけど、テロでもあった?めっちゃ、殺気立ってたんだけど?」
「防御隊員……フル武装……あのバカ……どういう法的根拠で……あっ」
奈緒の暴走に、頭を抱える智子は、はっと気づいた。
法的根拠は、きちんとある。深海棲艦との戦闘時に、警察力の喪失により無法地帯になった場所で、無法者が暴れる事態が発生した為、国防軍出動規定の近傍出動に、
『
が、加えられていたのだ。名古屋は復興途上とはいえ、一応警察はきちんとあるから、グレーゾーンではあるが。
「あったわ。『警察力維持のための近傍出動』、か……」
大きく溜め息を吐いた智子は、智紀にいきさつを話す。
「うわ、まじか?変態過ぎんだろ、小一の女の子に痴漢って。恵奈ちゃん、大丈夫?ってか、俺外す?」
一応男子の自分は、気を遣うも、
「智お兄ちゃんは大丈夫……」
という恵奈の言葉に、ちょうど持っていたコンビニ袋から、恵奈にジュースを出して渡す。
「よーし。無事、よく逃げたな。ジュース飲みな」
「うん……」
漸く、少し泣き止んだ恵奈は、ジュースを飲み始める。
二時間と少し経過した頃、ぐったりした表情の奈緒が、戻ってきた。
怒りに震えた防御隊が現場に向かったところ、顔面蒼白の男が、泡を噴きながら白目を剥いて、痙攣していたからだ。
「あ、これあかん奴だ」
奈緒は、即座に救急車を呼び、防御隊には帰還命令を出し、やってきた救急車に同乗した。
そして、病院で警察に連絡してから、徒歩で警備府まで帰ってきたのだ。
「あのさー、恵奈。お母さんに、
その頃には、泣き止んでた恵奈は、
「うん。変なおじさんが、後ろから抱きついてきてね、おっぱいとお股触ったから。
「……オウフ……あのねー。そのおじさん、救急車で運ばれたよ」
「………はい?」
「やっぱり……そうなったのね?」
「うわぁ、今俺、玉がヒュンってなったぜ……」
恵奈の答えに、奈緒はがっくり項垂れて、智子は絶句し、暁は大きな溜め息を吐き、智紀は顔が青ざめる。
智紀は男子として、変態のおじさんに襲うであろう、地獄の苦悶が想像できる。
「智子、一応事情を説明するとね。『近傍出動』の名目で、聞いた場所に行ったら、それらしき男が、泡を噴いて白目剥いてたから、救急車呼んだよ……ショック症状起こしてて、両方潰れてたって」
「そっちは正当防衛だし、変態に掛ける慈悲はないわ、自業自得よ。ていうか、あんた等、フル武装で行ったって?馬鹿なの?殺すの?痴漢事件発生だけで、ミニガンでミンチでも作るつもりだったの?」
「すみません、はい。勢いで……」
事情を聞いた智子は、
奈緒は正座して反省している。
そんな様子を、総務部員と暁と智紀は、生暖かい目で見守っている。恵奈だけキョトンとしている。
そのあと、奈緒は直ぐに警察に行って、事情説明だ。その後、通常業務に戻る。
父親でもある幕僚長の恵一郎も、その日のうちに警察に赴いて、治安向上の為の、打ち合わせを行った。
復興途上で、人の出入りも激しいこの名古屋。一層の治安維持は、軍と警察の連携で、当たらねばならない事態だ。
保護者として、奈緒から学校へ連絡が行き、翌日から、集団登下校も行われるようになった。
当然ながら、『変なおじさん』とやらは、治療後逮捕され、奈緒はじめ出動した防御隊員は、全員始末書の刑である。
その話を、暁から聞いた加賀は、
「綾波の教え通りね。
と、大きな溜め息を吐いた。
その事件から、一~二日学校を休んだ恵奈は、元気になった。やっぱり強い子である。
それから、数日経ったある日。吹雪が、湊に呼び出された。
「吹雪さん……落ち着いて、よーく聞いてください」
湊は、深刻そうな顔をして、真っ直ぐ見つめる。
吹雪はダメだったのかな?どう結有と智紀くんに説明しよう?そう思いながら直立不動。
「士官学校入試の結果は……」
「……」
沈黙が場を支配した。
ごくり、と吹雪が唾を飲み込んだ。
「………」
「………」
不合格なら、さっさと言って欲しい、と思いながら、吹雪は立っている。
吹雪にとっては、永遠に近いこの時間。
湊はにぱっと笑って、
「合格です!」
「やったぁぁぁぁぁぁ!!!!結有に報告してきますね!!」
精一杯の笑顔を浮かべ、勢い良く扉を開けて、出ていった。
開けたままの扉を見ながら、湊は、ちょっとやり過ぎたかなあ?と苦笑いをしていた。
ちょうど廊下を歩いて来た結有に、
「結有ぅぅぅぅ!!!!」
全力でダッシュして……抱き付いた。
「ぐふぅっ!?」
殆ど
「結有、受かった!!合格したよ!!!!」
「そ、それは良かったけど……もうちょっと、おとなしく抱きついてくれない?僕、死ぬかと思った……」
漸く息を吸ってから抱き返すと、苦笑いを浮かべる。
「ご、ごめん……」
二人して起き上がる。
「オッス、何してんの?」
ちょうどやってきたダメンズ旦那こと、智紀が声をかける。軍属の制服姿だ。襟章には伍長の階級章。結有も軍属制服だ。彼女も編入決定と同時に、伍長に昇進している。
「僕は、司令官に呼ばれて……」
「ああ、俺も。なんか用事だって?」
「ふぇ?」
キョトンとしていると、司令官執務室から、湊が顔を出している。
「あのぉ?吹雪。まだお話があるんですよ―?」
という訳で、三人揃って戻ってきた司令官執務室。
「さっきは、すみませんでした」
吹雪が謝ると、湊も、
「ちょっと、意地悪が過ぎましたね。すみません」
と言ってから、
「三人は年明けから、下士官待遇の士官学校入校予定者となります。それで、来年度着任の、士官学校の校長が決定しました。アンドリュー先輩が中将に昇進して、就任されます。そして訓練課長に、各務原裕二中佐が決まりました」
「………」
二人は結有の顔を見るが、結有は表情を変えない
「裕二さんから伝言です。『
「もちろんです。僕も、そんな気がしてました」
その答えに頷く。
「では、短い間ですけど、三月まで名古屋で英気を養うように。それでは下がってください」
「はい!」
三人は、敬礼すると部屋を後にした。
廊下を歩く三人は、四月から始まる士官学校生活に、胸を膨らませているだろう。
それを、司令官執務室の席に座って見送った湊は、敢えて、ひとつの事実を黙っている。
『着校日から入学式までは、
彼等は乗り切るだろう、という信頼感で、敢えて黙っている。
「大変で、きつくて、苦しいだろうけど、楽しくできれば、良いところですよ」
三人が退室した、静まり返った司令官執務室で、湊は小さく、呟くように言った。
自分を変えてくれたのは、士官学校の先輩達なのだから……と。
「青い空……白い雲……」
くるっと、窓へ振り返った湊は、空を見上げた。
冬の青い空が広がっている。 もうそろそろクリスマスだ。
Tips『会心の一撃』
今までのお話どおり、『純粋な意思』の篭った攻撃はこの世界は力を持ちます。
特に
『強烈な恐怖心』による全力攻撃なのです。
変態のおじさんも相手が悪すぎた。特に、艦娘かもしれない娘がいるこの名古屋で無謀すぎた。