クリスマス会の準備は、思った以上に進んでいた。
というのも、「恵奈ちゃん痴漢事件」で、装甲車やジープで、フル武装で出動した防御隊も、
そんな、イヴイヴの夕方。
「ふぃぃ……やっと飾り付け終わったぜ」
「そうだね、防御隊の皆のおかげだよ」
準備委員の二人の伍長も、会場となる、埠頭に並べられたテントに置かれている、テーブルの横においてある椅子に腰掛ける。
「恵奈の話だと、この日は学校の授業お休みして、学校上げて来るみたいだぜ?」
「ふーん。まだ学校も、軍関係者や建設関係者の家族向けだから多くないし、それもいいかもね?」
智紀の言葉に、結有も答える。
「そういや、結有の学校時代ってどうだったんだ?」
その智紀の問いに、少し考えながら、
「んー、僕ってさ。女子小学校で、女子中学校だし。男の子っぽいところあって、ラブレターは貰ってたかな、女の子に」
「お、おう……そういう男の子の友達とかは?」
そう、若干戸惑いながら訊く智紀に、ふふっと笑う。
「一人も居なかったよ。父さんが、『男の子の友達は家に上げちゃダメ』って言ってて、女子校で送り迎えでしょ?できる要素がないよ」
「……お前の父ちゃん、どんだけ男から遠ざけたいんだよ?その結果が
恵海と新しい艦載機Ju87G改二+試製HEIAP弾(ルーデル隊)を、性能評価の為に模擬戦をしていた、吹雪を指差す。
恵海の艦載機は、隊長妖精さんと夕張と恵海の、一ヶ月以上に渡る討論の結果、
艦載できるギリギリの仕様に、Ju87Gを近づけた上で、『最初から、三式弾の子弾をばら撒くと思えばいい』と、いう隊長妖精さんの意見が加わって、37㎜ Flak 18機関砲の後付けと、その弾薬用の
メインは急降下爆撃だが、そこに炸裂焼夷弾の砲弾が加わる。
此方は、威力は実際に試してみないと、ということで、今吹雪相手に、模擬戦中である。
その結果を元に、再び会議が始まるらしい。
「結果って……僕は別に………好きになったのが、たまたま吹雪で……」
顔を赤らめる結有に、智紀は笑う。
「俺だって、智子だったから結婚した訳であって、14も年上だぜ?」
「あはは。で、どうだったの?」
顔を赤らめながら、いたずらっぽく訊く、年頃の女の子に照れながら、
「なんとか。二人共もたついたけどな。ゆっくりうまくなりゃ良いなって。子供は、士官学校出てからだな」
「あはは」
お互いの彼女がヤキモチを妬いて、それぞれ連れて行くまで、駄弁り続けている少年少女達であった。
クリスマスイヴ当日。
「メリークリスマス!」
今回、沿岸警備は警備府配下の、各泊地艦娘がやってくれる。
各泊地には、「間宮スイーツ引換券」という、
唯一、電は沖合で、海上警備である。
誰も出ないのは不味いが、艦娘達には、子供達と触れ合ってもらいたい。
結果、司令官の
彼女の気合は半端なく、一週間前くらいに、「三日で、艤装オーバーパーツ作るのです。こんな風に」と、アニメのスクリーンショット写真を見せ、GP03デンド○ビウムみたいな、艤装後付用オーバーパーツ制作を、夕張に要求した。
しかも、外堀を埋めるように、「全ての根回しは済んでいるのです」と言われれば、やるしかない。
結局、オーバーパーツには、試製61㎝六連装(酸素)魚雷複数基や51㎝単装砲、重過ぎて落ちる速力強化に、過日の緊急展開ブースター用のターボファンエンジン等を満載させ補った、
今夜のご褒美の為、戦意もやる気3000%で、
やる方もやる方だが、やらせる方もどうかしている。ホバークラフトを、ジェットエンジンでやるようなものだ。
「コストが……」
という、智子のボヤキが聞こえたとか聞こえなかったとか。
「
遠い目をしながら、智子の隣で語る不知火は、
予定の新幹線乗れなかったら、燃料代
これも、電の根回しである。片桐の秘書艦だった彼女である。やることが実にえげつない。
恵奈ちゃんの同級生のお友達は、自然と暁型姉妹の三人に集まる(電は今はフルアーマー化して海上だ)。
「恵奈ちゃん、恵奈ちゃんって暁さんのお嫁さんだよね。このお姉さん?」
「うんっ!」
「ふええっ!?」
一応学校では、取れない指輪の経緯を、先生が子供達にも説明したのだが、『ケッコンカッコカリ』という概念が、子供達もわからずに、
結局、『恵奈ちゃんは、駆逐艦暁の
そんなことは、露知らずにいた暁は赤面。
それを、二人の姉妹艦が弄り倒す。
そして、お姉ちゃんに中学生がいる、おませな子に、
「恵奈ちゃん、エッチとかしてるの?」
と聞かれると、恵奈は首を傾げ、暁は耳まで顔が真っ赤だ。
「エッチってなに?」
「説明しよう!」
「エッチとは!」
悪乗りした、おませな子と響による、詳細な説明を聞いている、恵奈ちゃんと仲間達。
「あわわわ…」
「………ちょ!暁!傷は深いわ!しっかりしなさい!」
気絶しかけている暁を抱きとめてる雷は、ツッコミできない。
恵奈は、それをちょっと顔を赤くして、
「おー……」
と、聞き入っていた。
漸く、それに気づいた担任の先生と加賀が、それぞれを叱って、収めることとなった。
子供の手前、ゲンコツは加賀も自重したが、お説教だ。
他の子達は、鳳翔提供のご飯に飛びつく子達や、艦娘と交流する子達と分かれていた。
軍に興味のある中学生の子は、士官達にお話を聞きに行ったが、150㎝ちょっとでAAカップの湊は、
「今の子達って大きいなあ……」
と、溜め息を吐いていたとか。
小学六年生にも、
そんな中、長門サンタさんは、子供達に大人気だった。
「皆ー、お菓子のプレゼントだぞぉ」
実は子供大好きの長門は、顔をデレデレさせながら、配っている。
その隣で、陸奥も一緒に配っている。
隅っこのテーブルでは、将来相撲取りを目指す、太い中学三年生の男の子と赤城による、わんこそば勝負が始まった。
もちろんだが、クインティプルスコア(五倍)の差をつけて、赤城の勝利だ。
男の子の名誉の為に言っておくが、それでも
赤城と男の子の、その凄まじい食べっぷりに、みんな喝采を送っていた。
その後、この少年と赤城は、たびたび休暇で加賀も交えて、食べ歩きに出かけるほど、仲が良くなるのである。
まさにフードトライアングル。
最後に、全員で大ビンゴ大会をやる。
景品は、この一年間、退役艦娘基金に預けてた利息と分配金を、13人の艦娘の好意で提供した資金で捻出している。
ただ、不公平感があるとトラブルの素なので、景品のランクは、割りと均一になっている。
ズラーッと並ぶ景品から、順番に選んでいく形だ。
これも大盛り上がりだ。『直前まで』伏せられていたが、湊が司会進行を務めた。
智子の仕返しであるが、その後は全く考えていない。
「結婚すりゃ、もう怖いもんなんてないわ」だ、そうだ。
「はーい!それじゃあ、次の数字を発表しまーす!」
といいつつ、ノリノリな舞台慣れしてる湊。もちろんサンタ服だ。
この日は、結有と智紀もお客さん側として、子供達と交流を深めている。
「一目惚れしました!付き合ってください!」
という女の子の告白を受けた結有は、やんわりと断る。「僕、彼女いるんだー」と。
残念そうに去っていく、女の子を見送りながら智紀は、その断った言葉に、
「こんな凶暴なでかパイついてる、男なんて居ねーだろ?」
と
「いでえ!!!!俺が悪かった!!指折れる!折れるから!」
自業自得である。
そして
不知火は、脱兎の如く執務室に駆けていく。彼女の
そして夕方には、居酒屋鳳翔でクリスマス会である。
出席できる艦娘と幕僚達が総結集だ。皆、中部警備府の湊ファミリーである。
当然、今夜は貸し切りとなった。
「皆さーん!今日は途中抜け自由!貧乏くじ同盟が、多分中抜けするので、
「「「ちょっと待て!」」」
湊の乾杯の音頭に、ツッコミを入れる、
「……カンパーイ!」
そのツッコミを、しれっと無視して、乾杯の宣言をした。
宴会は賑やかだったが、真っ先に中座したのは、恵一郎と奈緒だった。
「ほいじゃ、皆よろしくやってね~。あたし等、夫婦の営みしてくるわ~」
「あはは。もうちょっとオブラートに包んで言おうね?」
どストレートに言う奈緒に、それでもほんわかツッコミを入れる恵一郎がそう言い残すと、出ていった。
清純トリオは顔が赤い。
その次に、立ち上がったのは電だった。
「湊、ご褒美もらうのです!」
「わっ、ちょ!?」
湊を、お姫様抱っこして立ち上がると、ダダダッと出ていった。
それと入れ違いに、がらがらっと久しぶりのお客さんだ。
各務原――12月でカリキュラムを終え――中佐が、顔を出した。
「お父さん、こないだぶりだね。もしかして……?」
「結有も元気そうでよかった。香菜、迎えに来たよ?」
「はい、裕さん」
鈴木大尉も、各務原中佐と出ていってしまう。
「……あの場合、『
「さぁ……?」
首を傾げながら見送る結有に、吹雪は苦笑いだ。
「暁お姉ちゃん!お部屋行こう!」
「えっ?お姉ちゃんはもう少し……ああ、わかったわよ。行きましょう」
子供の純粋なキラキラした目で見る恵奈に、軽く溜め息を吐くと立ち上がって、一緒に外に向かう。
「パパとママはお出かけだから、お家使えるよ?」
「はっ……もしや……まさか……?」
そのまさかであった。
そんな様子を、ニヤニヤしながら見送る響に、遠い目をする雷。
「あれ?智子は今日、そんなに飲まねえの?」
「今日は、総務部が終戦処理をすることにしたのよ。ほら、ノンアルコールカクテル」
ふふっと笑う智子に、智紀も笑う。
「そいじゃあ、今日はしっかり食って、エネルギー蓄えるか?」
「もう……智紀……」
既に恵海は、大井と北上にお持ち帰りされていた。
「あれ?恵海も大井も北上も居ない……?」
ちなみに瑞鶴は、定時が終わったら、新幹線で広島に向かった。
姉妹でクリスマスのようだ。
いつも通り、阿賀野は防御隊の野郎共と、楽しく盛り上がっている。
「二次会、カラオケオールしようねー!」
「おー!」
「クソ兵士共、私の歌を聞きなさい!」
「気合!入れて!歌います!」
旧室戸艦隊の、天津風と曙と比叡も、そのノリに毒されている。
一部の陸戦隊員は、曙に罵られたいと言い出す始末。
「よし!今のうちだ!」
「うん!」
結有と吹雪は顔を見合わせると、一緒に店を出ていった。
二人の部屋で、残りのイヴを過ごすのだ。
カオス要素のある連中を、纏めて阿賀野と天津風と
残りは総務部員と少しの幕僚達や艦娘になった。
「はいはい、そろそろお開きよ~」
二階のお座敷にも声をかけると、皆今日は静かに帰っていく。
今日の幹事である智子が、お支払を済ませる。
今日は、
全員が帰ったのを見送ると、智紀と智子は、ふっと顔を見合わせる。
「
「ええ……」
二人して、手を繋いで何処かに向かって行った。
翌朝、艦娘と結有と恵奈の枕元に、それぞれ、クリスマスプレゼントが置いてあった。
嬉しそうな顔をしながら埠頭で、プレゼント開封の儀をする、艦娘と結有と恵奈の顔を、窓から眺めながら、
総務部員がお休みで、二人だけの総務部オフィスで笑みを零す、
そろそろSeason2も残り数話