season2のメインキャラだった結有の旅立ちです。
年も明けて2019年三月、全国では人事異動が発令されて、多忙の日々だ。
お正月は皆、帰省したりでそれぞれ出かけている。
恵奈ちゃんは、海軍の名家の大村の祖父母からと、牧場経営の神南の祖父母からと、娘に甘い両親から、たんまりお年玉を貰ったらしい。
但し、
「暁お姉ちゃんの目が黒い限りは、無駄遣いはダメ!」
と言っている。
……と言いつつ、最新鋭のゲーム機を買ってしまった。今は暁型のお部屋で、皆で遊んでいる。
もはや大村夫妻の官舎が
中部警備府でも、大小の異動が発令されたが、
大きな変更点は、四月より、
そのまま、中部警備府
通称はそのまま、『湊ちゃん艦隊』(三代目)となり、
総秘書艦直轄の艦隊となるのだ。
という訳で、湊の職責は『中部警備府司令官』
実質的には、総秘書艦の上は湊なので、
何が変わるかというと、湊と電の処理する書類の量、だけである。
今までも、それぞれ手伝いながらやっているので、
中部警備府からは、結有と吹雪、そして智紀が名古屋を離れる。
その他にも、離任者や着任者がいるが、主要幕僚は据え置きだ。
大垣海軍幕僚長の、「あそこには、現状でベストな人材を配置している。
他の艦娘系の部署でも、人事異動や組織変更が発令されている。
呉鎮守府でも、四月より、『呉鎮守府司令長官直卒独立艦隊』が廃止され、
『呉鎮守府
綾波は神通に旗艦を譲り、艦隊の主任務は、呉鎮守府管内の教導。綾波の主任務は、海賊対策の
舞鶴では一年足らずで、村井美代准将が離任した。
異動先は、呉鎮守府の幕僚長となる。形では栄転ということになる。
『ザ・デストロイヤーズ』の面々にとっては、『オカーチャンの帰還』だ。
舞鶴警備府司令官は、軍艦組の准将が、後釜になる。
そして呉に、『艦娘管理のできる軍艦組』として、村井准将が幕僚長としてお呼びがかかった、ということになる。
要するに日本海側は、艦娘は、各泊地の艦娘達だけで事足りる様になり、
軍艦と沿岸警備隊が舞い戻り、本来の任務に復帰できるようになった、ということだ。
初代『ザ・デストロイヤーズ』としては、終戦を迎えた、ということだ。
佐世保の体制は、変わらずである。
司令長官の我那覇少将は、相変わらず沖縄泊地に常駐している。南の防人『海人艦隊』の司令官兼任のため、沖縄から離れる訳にはいかない。
佐世保では、幕僚長が運営をしている。
幕僚長の新垣准将もまた、我那覇少将とは、幼馴染の同郷の盟友なのだ。
北の海は、米露海軍の艦娘が、日本海流入を抑えている。
東西冷戦終結直後の深海棲艦戦勃発で、米露は、主義を乗り越えて、連携するまでになっている。
この南北の、二つの防人のお陰で、深海棲艦流入を極小まで抑えた結果が、舞鶴の人事なのだ。
大湊は、変わらず大鳳が、司令官継続である。
横須賀もまた、高梨未来が司令長官継続であり、都内にある実家暮らしをしている。
そして、横須賀で主席監察官を務めていた安藤龍が中将となり、士官学校校長。
軍大学卒業後は、統合幕僚監部付きとなっていた、各務原裕二中佐が訓練課長となる。
『目的意識の鬼』と『訓練の鬼』が、タッグを組むことになったのだ。
さぞや訓練は厳しいものになるだろう。
そして監察部そのものが軍艦組の領分となり、不知火もお役御免となって、監察部員も東京に戻った。
不知火はそのまま中部警備府に
総務部と幕僚長が抱えていた『管理部門』を、彼女が引き受けることになり、二人の仕事量が減ることを意味している。
不知火は二職務兼任だが、彼女は、教導艦として
そんな中、一つの悲報が全国を駆け巡った。
プロレスラーの梶本真太が、試合中の事故で亡くなったのだ。
プロレス・空手界葬として営まれた葬儀・告別式には、結有や吹雪を始め、空手関係者やプロレス関係者、ファンが集まっていた。
結有は横須賀時代、良くしてもらった仲から、出棺時の棺を持つことが許された。
生前『名古屋のスーパーガール』の一件について梶本は、『いい弟子を持てて誇らしい。ちょっと
気丈に振る舞っていた彼女だったが、ホテルで吹雪と二人っきりになった時、ある意味で『師匠』の死に、朝方まで泣き続けた。
吹雪はそんな結有を、朝まで頭を撫で続け、すぐに湊に連絡して、もう一日滞在することにした。
告別式の会場で、結有と吹雪は別々だったが、吹雪は安藤龍と不知火夫妻と出会っていた。安藤は、「彼は私の同級生でね」と、短く答えた。
そして、結有と智紀、それに吹雪は、旅立ちの時を迎える。
今回も、「青ヶ島泊地方式」でのお別れ会となった。警備府埠頭での大バーベキュー大会だ。
鳳翔も清霜も、お店をそれぞれの従業員に任せて、参加する。
清霜は自前で、主要な酒を揃え、星空カクテルバーをする予定らしい。
そして、再び野外炊具1号(改)様の登場だ。今回は、名古屋の復興地で、定期的に炊き出しを行っていたので、
一年間、しっかり使い込まれている。
食料の買い出しと会場準備は、艦娘達(吹雪以外)で手分けして行った。
尚、バーベキューコンロは結局、溶かさずに持ってきたので、それを倉庫から出して、綺麗に磨いている。
規模が大きくなった為、足りなくなった分は、また夕張が作っている。
輸送は、防御隊の輸送トラックがある。
月が変われば、親子関係を凍結するということで、もちろん各務原裕二もやってくる。そのお供で妻に会いに、休暇を取って安藤龍もやってくる。MRE同好会の、同窓会でもあるのだ。
裕二にとっても、『
鈴木大尉は今月入籍を済ませ、各務原大尉となっている。
他の各務原さんが、四月から彼女以外誰も居なくなるので、皆、各務原大尉と呼ぶだろう。奇しくも、青ヶ島泊地着任時の裕二の階級は、
今回も、仕入れ部隊には湊のカードを預けている。
今回は、『十分な余裕を持って』予算を見積もっているし、母から『お年玉』とやらで、割と大きな金額を貰っている。
「うん、今回は全部私持ちでも大丈夫……多分……そまん……さりん……」
「湊、現実逃避したらダメなのです」
神経ガスの名前を言いだした湊に、電がツッコミを入れる執務室。
その頃市場では、
「その飛騨牛、一頭分買い付けたい。できれば分解もお願いしたい」
「その三元豚、丸っとくださいな。できれば焼肉用に切ってください」
「せっかくなら、その名古屋コーチンもごそっと仕入れましょう、同じく」
という、長門と赤城と陸奥の姿があったが、
食に関しては、
「肉ばっかじゃダメでしょ!野菜も」
「そうね、その玉ねぎ箱ごと」
瑞鶴と加賀も、何処かおかしい。
「ビール買ってきましたよ」
「サーバーも借りてきたわ」
天津風と曙が、台車を転がしながらやってくる。ビールの樽が数本積まれている。
「酒はこんなもんでいいか?」
天龍が、それ以外の酒を台車で持ってくる。
よく見ると、久保田萬寿や山崎15年を、
「予算超えてるけど、湊ちゃんお金持ちだし、行けるいける!」
これは、
「特上寿司、いっちゃいます?北上さん」
「どうしようか、恵海っち?」
「……特上100人前テイクオフ」
「気合!入れて!握ってください!」
此方は、市場の寿司屋の大井北上恵海に比叡である。
「おっかしー!おっかしー!」
遠慮なく、買い物かごにお菓子を投げ込む恵奈ちゃん。
同じく、ツマミの乾き物をかごに放り込む雷。
そして、ねるねるねるねを大量に紛れ込ませる、フリーダム響。
「うん、間違いなく予算オーバーだわ」
考えるのをやめた暁。
ツッコミ不在の中、買い物は進行中である。
湊は、そんなことは露知らず、職務に励んでいる。
そして、夜間訓練用に、初めから夜間照明が設置されている明るい埠頭に、
スーパー連装砲くん改二が、連装砲塔からしゅごー、しゅごーとバーナーで、バーベキューコンロに火をつけている。
どうも、明石にメンテナンスで預けたら、XN―1 LaWSを搭載されて、返却されたらしい。
「ただいまー!」
大量の物資と共に帰ってきた皆が到着した頃には、鳳翔がオードブルセットを運ぶ防御隊の面々と参上し、
清霜も、大量の酒瓶と共に防御隊の面々とやってくる。仮設バーカウンターは、夕張のお手製である。
その頃に定時のベルが鳴って、出てきた湊ちゃんに皆が、領収書を次々にカードと共に渡してくる。
「………えっ?」
ポケットに入れていたスマホの電卓で、合計を計算すると、『
「………うん、まあいいや」
湊は遠い目をして、考えるのをやめた。
実際問題、
借金をしながら、自腹で数ヶ月、旧第13泊地運営ができる規模の、お金は持っているのだ。
「湊、飲んで騒ぐのです」
「うん、飲むしかないね」
そんな二人に、安藤夫妻と智子の、MRE同好会の面々と智紀がやってくる。
「高梨くん、私も半分は出そう。そのくらいの余裕はある」
「旧室戸泊地の装備代の一件。結局また、『自腹など論外だ。受け取りなさい』と、大垣幕僚長に突き返されましたし」
「最初から、受け取ってればよかったのよ?」
安藤にしれっと突っ込む智子に、安藤はフンッと言いながら、
「私の与り知らぬところで、他人から施しは受けぬ主義なのでな」
「男は、そういう生き者っすよね?安藤校長」
「うむ。君は、男とはなんぞやを熟知している」
何故か、意気投合している二人である。
「はーい!皆さんごちゅうもくー!!!」
今回は、コンテナの上に乗って、マイクで大きな声を出す湊。
「今日は、各務原・高天原両伍長と駆逐艦吹雪の、士官学校での健康と活躍を祈って、乾杯したいと思います。今日は無礼講、階級とか年の差とかなしで行きましょー!それじゃあ皆さん、グラスを用意してください!!」
皆がグラスを手にとるのを見渡してから
「かんぱーい!!!」
『かんぱーい!!』
その声と共に、あちこちから、肉と野菜の焼けるいい匂いがしてくる。
「おう、吹雪。やってるか?」
「天龍さん……ってラッパ飲みですか?」
天龍の右手には久保田萬寿。
「まあ、飲め飲め」
持っていた吹雪のグラスに、波々と注ぐ。
「頂きます」
「あの13泊地から、もうだいぶ経つな?」
「
そう言いながら、手近な繋留柱に腰掛ける二人。
「オレは、お前達チビッコを守る為に、命賭けてきた。吹雪、今日で、天龍学校を卒業だな?」
「天龍さん……」
それ以上の言葉が出ない吹雪に、天龍が頭をポンと撫でる。
「いずれは、吹雪の下で、また戦いたいもんだ。頑張れよ。オレが言えるのは、それだけだ」
「……はい!」
その頃、もう三人、人影が埠頭に座っていた。裕二と結有と香菜である。
「はい、裕二さん。お肉持ってきましたよ」
「ああ、ありがとう」
「二人共、結婚おめでとうございます」
結有の言葉に、笑顔を向ける二人。
「しかし……父さんって
「ぶっ!!!」
その言葉に、飲んでいたビールを噴き出す。そして、その様子を見て、笑いを堪えている17歳年下の、30の誕生日を迎えた香菜。ちなみに裕二は、今年48になった。
「だってそうじゃん?最初のお嫁さんは、僕とそう変わらない時雨で、次の香菜さんは18下だよ?」
「ふふ、そうかもかもしれませんね。すぐに、妹か弟が出来ますよ。宮戸島の
ちらりと裕二を見る香菜。ギギギと結有を見る裕二。
「もしかしなくても、話したのかい?時雨の記憶」
「うん♪」
楽しそうな娘の答えに、がっくりと項垂れる。
「まあいいや。月が変われば、私と君は親子ではなく、
「体には気をつけるんですよ。私も名古屋の地で応援してますから。休暇には遊びに来てくださいね」
「はい!父さん、あと……
「よっしゃあ!頑張ってくるぜ!」
「智お兄ちゃん、がんばってね!」
「珍しい、既婚者の士官学校生ね」
恵奈ちゃんのエールに頭を撫でながら、智子の言葉に頷く智紀。
ちなみに、智子と吹雪の勉強会は合格後も続き、その後、智紀も加わった。
不知火が管理部に滑り込みで入って来てからは、主に恵一郎が、勉強の面倒を見ていた。
そして、総務部のお姉さんからもエールを受ける。
最初はひったくり被害者で敵視していた子達も、今や智紀の誠実さに、信頼をおいている。
そしてその後は、カオスになったことは、言うまでもない。
「やっぱりこうなったよ!」
「まあ、
「取り敢えず、智子をベッドに置いてきてから手伝うわ」
貧乏くじトリオと、ザルのカナさん、酒の強い裕二と他数名が、片付けに取り掛かった。
もちろんだが、防御隊と愉快な仲間達は、阿賀野等と、二次会の徹カラに向かった。
当然だが、奴等は明日も仕事だ。
その翌日、三人は一年と少しお世話になった、中部警備府を後にした。
主要幕僚が見送りに来ている。
「それでは各務原伍長、高天原伍長、駆逐艦吹雪の無事着校を祈ってお見送りをさせていただきたいと思います」
そう、湊が前置きしてから笑顔で、
「行ってらっしゃい!」
「「「行ってきます!」」」
こうして、彼等は旅立った。
四月一日、彼等は横須賀にある、士官学校の寮に入寮した。
吹雪と結有は、智紀とは途中で分けられ、
女子寮の前に立っていた。
「各務原結有さんと駆逐艦吹雪さんね?」
二人の女生徒が走ってやってくる。
「私が、各務原候補生の対番を務める、二年の村井杏奈」
「村井……先輩ですね、僕は、各務原結有って言います」
深々と頭を下げる。
「豊橋の一件は知ってるわよ。スーパーガールの対番になれて光栄だわ」
「なんでも、杏奈に聞きなさいよ。あ、この子の通称、
「千里、あんたも自己紹介しなさい」
「おー、忘れてた。私は二年の上坂千里。吹雪ちゃん、よろしくね!」
「はいっ!駆逐艦吹雪、精一杯頑張ります!」
その日から毎日、入学式の練習をするが、
寮長の先輩も優しく、なんでも教えてくれる。
皆いい人だ、そう思っていた……今の段階では。
その頃の中部警備府カフェでは、奈緒と湊、そして電と智子、不知火がお茶をしていた。
「明日ですね、入学式」
「そうね、お客様扱いはこの式までね。それでも毎日、何人か消えて行くわ」
「どういうことなのですか?」
湊が口を開き、智子が続けると、電が問いかける。
「龍から聞きました。着校日から入学式の間に辞めると、「入学辞退」扱いになるんです。それ以降は「中退」。お客様扱いと言うのは」
「その日までは、士官学校に慣れる日。先輩達も優しい。入学式からは、
それに不知火が答え、湊はふっと、笑みを浮かべるとそう語った。
翌日の入学式では、大垣幕僚長や山本幕僚監部副部長等の挨拶があり、最後に校長の安藤龍が登壇する。
「小官は、日本国防軍士官学校校長の安藤龍中将である。本年度は、
安藤龍が壇を降りる、そしてその入学式の最後だった。
閉会後に、訓練課長教官各務原裕二中佐が登壇する。
「諸君等は、本日より我が国防軍士官学校の一員となった、おめでとう。心より歓迎する」
各務原はそう言うと、演台に両手をついて入学生――入ったばかりの若者達――を見回す。その目は、獰猛な笑みを浮かべていた。
「さあ、諸君等……」
――――
その
その隣には吹雪。そして智紀も、自信に満ちた顔で、壇上の教官を見上げる。
――――覚悟の上で来たんだ。望むところだ、ねぇ……
Season2 名古屋復興編 End
次回からやっと第3期
Season3:蘇る名古屋~湊ちゃんと仲間たち~
が始まります。