第三世代艤装計画の遺産をもとに新装備開発に乗り出す。
やはり夕張も『失敗してよかった計画』を
ただ失敗させて終わりました、二人の少女の心に傷を追わせました。
何も成果がありませんでした、というのは自分を許せなかった。
……というシリアスな前書きですがやってることはいつもと変わりません。
夕張と、結衣と、今回から恵海に代わりレギュラーになる常識番長加賀の
ちょっと真面目な、でもおふざけもありな装備開発雑談回。
災害化した深海棲艦とオカルトとSFのお話もあるよ
第三艤装計画の失敗で、『現代兵器の艤装化』というオーバーテクノロジーを、
艤装を調整・開発した夕張は、自分の心に留めておいた。
だが、この平穏期でも、一向に深海棲艦の数が減らない事に、危機感を覚え、
新装備開発の手を、休めることはなかった。
「という訳で、恵海の装備開発が終わったので、新たなステージに進もうと思います」
「うんうん」
工廠には夕張と、そして結衣、それに、呼ばれた加賀が座っている。
結衣は最近、工房に入り浸っているが、仕事はきちんとこなしている。
さすがは『士官学校史上空前絶後の問題児次席卒業生』と、呼ばれるだけはある。
優秀な生徒だったが、素行が悪過ぎる。
自由奔放過ぎたのだ。起こした問題は、星の数ほどあり、対番の上級生であり、現在、舞鶴警備府幕僚長に配属されている、上原麻衣中佐は、連帯責任で一緒に
だが、彼女はほんわかな性格――中部警備府のほんわか王子の恵一郎よりも――なので、大きく包み込んで、この問題児と付き合っていた。
その結果が、結衣を湊を導く、自由奔放な上級生に成長させたのである。
今も、ぽやーんとしているが仕事はこなしている、不思議ちゃんである。
湊の対人態度改善には、彼女のアドバイスも大きかった、という。
「……それで、私が呼ばれた訳ね?」
加賀は、二人の顔を見て、頭痛を覚えていた。
今は五月の頭。結衣が着任して半月経つが、貧乏くじトリオが巣立った今、カオス収拾は、常識番長の彼女の役目なのだ。
特に、結衣と湊と電がタガを外すと、酷いことになる。
「いろいろプランを練ったんですけど、加賀さんは、どういう方向性が良いですか?」
頭を押さえている加賀に、夕張が問いかける。
「そうね。索敵を強化したいわ」
「そこです。五航戦の娘達は、ターボジェットエンジン対応型空母に改装しましたので、加賀さんにも、それに見合ったものを考えてます」
その言葉に、瑞鶴に一歩先んじられている、加賀の目が輝く。
「流石に、気分が高揚します」
その言葉に、結衣は満足そうな顔をした。
「よろしい。今より、加賀改二甲の、実装計画を承認します!」
この、結衣の宣言により、加賀は、『装甲空母加賀』に生まれ変わることになる。
「そもそも装備開発というのは、我々の船としての記憶と霊子で、素材を兵装に変える方法が主流です。だから、船の
夕張は、自らを責めるような口調で語ると、結衣が背中を軽く叩く。
「ううん、夕張が悪いんじゃない。艦娘ハーフの二人を、兵器利用しようとした上層部と政治家が、ふざけてたんだよ」
「そうね……夕張が悪い訳じゃないわ」
それに加賀も同意すると、夕張は、目に浮かんだ涙を擦って、笑顔に戻る。
「という訳で、試作したのが、
過日の、Fー2ミニチュアを取り出すと、加賀が手に取る。
「……妖精さん、めっちゃ怒ってるけど……うん、うん、ええ、……」
ミニチュアを、そっと作業台に置いた。
「早く、基地航空隊を作ってくれ。だそうよ」
「そっちは空軍の管轄で、結衣には、どうすることも出来ないかな」
「………」
夕張は、そっとFー2を片付けた。
「加賀さんの甲改装の方向性は、排水量拡張と頑丈な飛行甲板の搭載に、強化したいと思います」
「……というと?」
理解が追いついていない加賀に結衣が、
「加賀には、二種混成編成の、航空隊を搭載して貰う予定なんだよ」
と答える。
「二種……?」
更に、首を傾げる加賀に、結衣が続ける。
「簡単に言えば、ジェット艦載戦闘機に哨戒ヘリの組み合わせ。戦術的には、哨戒ヘリを先行して飛ばす。それの情報を元に、ジェット戦闘機で敵機を迎撃し、敵艦隊に爆撃を行う。哨戒ヘリは生存性特化、ジェット機には、空対空兵装と爆弾を積み込む。敵は、太平洋戦争の艦船の長所を極端に伸ばした存在だから、こっちも最新鋭のバ火力で対抗すればいいじゃん、って考え方」
結衣の説明に、加賀は腕を組んで考え込む。
「結衣は自慢じゃないけど、非常識な人間だからさぁ」
その言葉に、加賀は眉を顰めて、
「そうね」
とだけ答えた。結衣は、別に気にもせずに、言葉を続ける。
「本来の用途無視して、『性能諸元』を考えてセッティングすれば、第三世代艤装計画は、計画
「………」
その言葉に、加賀は意外そうな顔をすると、結衣はちょっと頬を膨らませる。
「あのね。結衣だって、真面目な時は真面目だよぉ?」
「……そうだったわね」
再び、こめかみを押さえながら答えると、夕張が続ける。
「私も、結衣さんも、『技術に罪はない』という結論を出しました。未来さんも、同じ思いで艤装解体、という決断をされたのだと思います。よって、『次世代装備計画』として、私達は、戦い続けることにしました」
夕張の、決意の籠った言葉に、加賀も笑みを浮かべる。
結衣は、その二人を見てうんうんと頷いてから、真面目な顔になる。
「陸軍の情報畑の結衣が、海軍に来た理由でもあるんだけど、災害化した深海棲艦は『
その言葉に、現在も現役で、交戦をしている加賀も頷く。
「統幕情報部で、一年かけて統計を取ったら、どう考えても『どっかで製造中』って、結論に至ったの。でなきゃ、もっと削減して、艦娘をばっさりリストラしてるよ。軍事費だって、タダじゃないしね」
「まあ、そうよね……」
加賀も、それには同意する。
「考えられたのは、ソロモンの『
そう言うと、いつもの結衣の、ふざけた笑顔に戻る。
「結論!もう太平洋戦争とは、
その、投げやりな言葉に、加賀も夕張も噴き出す。
「で、本題です。加賀さんには、改二甲改装と同時に、ハリアーⅡとSHー60Kの搭載を行います」
夕張の言葉に、加賀も頷く。
「ロクマルで索敵を行い、それには、自衛の装備しか積まない。ハリアーⅡには、重量の爆弾を積んで、艦爆として扱う」
加賀の言葉に立ち上がり、ぐっと親指を立てる結衣。
「さすがは常識番長!要は『
その結衣に、苦笑いを浮かべる加賀。
「前者は、オールマイティな馬鹿でか戦艦ね。レ級の発展型。後者は簡単。馬鹿装甲には、バカ火力をぶつけりゃ良いんだよ!って考え。あまり考えたくはないけど、もう一匹女王が居た場合には、今度こそ『
単純明快だが、極端で過激な言葉に、加賀はポカーンとしている。
「まあ、一年間探して見つからない以上、女王はいないか、指揮できるほど育ってないか、どっちかかな?まあ、そういうことで、本題に戻ろうか?」
その言葉の後、結衣も腰掛けて、二人も頷いた。
「ところで、ネオ日向計画って、日向の霊子は、その重装備に耐えられるの?」
その加賀の質問に、結衣があっけらかんと答える。
「霊子向上の為に、中東の紛争地帯に、カラシニコフ一本持たされて、放り込まれたみたいだよ?詳しくは、結衣も知らないけど、最終的には、徒歩で日本に帰るんだって」
「「………」」
要は、宮戸島方式だ。生と死の間に立たせて、霊子を純粋化させる。
加賀と夕張は、この話題は、触れない方が良いと思い、首を横に振った。
「というわけで、脱げ」
「は?」
「いや、艤装を。服も脱いでくれていいけど」
「お断りよ」
結衣のあまりの物言いに、唖然とするが、それに続く言葉に、溜め息を吐いて、
メンテナンスモードで、艤装を展開し外して、作業台の上に置いた。
「では、早速取り掛かりますね!」
艤装を持って、作業室に入っていく夕張を、二人で見送る。
「夕張も、ああやって作業していると、イキイキするわね」
夕張を見送ると、加賀も笑みが零れる。
「そうだね。加賀さんも工業系女子、好きな感じ?」
結衣の言葉に、ちょっと困った笑顔を浮かべる。
「なんか、そうじゃなくて。青ヶ島で初めて会ったんだけど、昔からずっと知ってる感覚があって」
その言葉に、うーむ……と考え込む結衣。
「人間ってさ、炭素化合物に霊子を詰めた存在。と考えると、前世の記憶とか、有ってもおかしくないよね。オカルトやSF論だけど、結衣そういうの大好きでね。もしかしたら、何万光年も向こうの宇宙にも、こういう地球みたいなのがあって、そんで、深海棲艦や艦娘も居て、何千年か先に、宇宙深海棲艦が攻めてくるの、巨大な『負の霊子』の存在として。そんで地球も、宇宙艦娘達が立ち向かうの」
面白くない?と笑いながら語ると、加賀も笑いが零れ出る。
「たしかに、そういう空想戦記は面白いわね」
「アンドリュー先輩が、士官学校時代そういうの書くのが好きで、結衣が呼ばれちゃ読んでね……本人は、『黒歴史』って言ってるんだけど、実は、士官学校の図書館の、一番奥の本棚の後ろに隠してあって……」
――――
その頃、士官学校図書館。
「なー、結有、吹雪。本棚の後ろに、ノート見つけたぜ。『幕末国防軍』って書いてあって、R.Andoって名前もある」
「中身見てみよっか……こっちは、平行世界物っぽいね」
「なんだろうね、面白そう」
智紀と結有と吹雪の三人は、「なんか、中二病な読み物だね」と言いながら、読み耽っている。
――――
「へぇ……」
加賀が意外そうな顔をしたところに、夕張が顔を出す。
「すみません。ちょっと時間がかかるので、今日の業務を先にやりますんで、解散ということで。加賀さんは艤装メンテナンス中で、運用から外すように、申請しときます」
「わかったわ。それなら休暇を取って、赤城さんと食べ歩きに行ってくるわ」
「結衣も、仕事に戻るよ。夕張ちゃん。必要な物資あったら、相談してね」
「はーい!」
今日のダベリ会は、解散の方向になり、三人は、それぞれのところに、戻っていった。
廊下を歩きながら、結衣は呟いた。
「『もしも』の世界……かぁ……平行世界があって、もしも『
その黒歴史が、既に掘り返されてる、とは知らない結衣は、今度不知火と見に行こうかな、と考えていた。
おまけ
不知火「結有から聞きましたが龍って架空戦記書くのが好きだったんですね」
龍 「ナズェソレヲ!」
不知火「士官学校の図書館で見つけたそうです」
龍 「ウソダドンドコドーン!」(ばたり)
不知火「龍!?傷は深いです!しっかりしてください!!」
龍 「やはり焚書しておくべきだった……」
その後校長権限でその黒歴史は没収、焚書され、処分されたという。
本人曰く、「すっかり忘れていた」そうである。