そして、ほったらかされた魔装備が再利用されます。
小さな少女たちの純粋な願いが今奇跡を起こす。
日曜日、
「「「えーなーちゃーん、あーそーぼー」」」
艦娘寮のインターホンを鳴らす、遊びにやって来た、恵奈ちゃんのお友達トリオ。
右からおかっぱ頭の美雪ちゃん、元気一杯の女の子。
ツインテールでメガネの真由ちゃん、大人しい女の子。
三つ編みお下げの
ちなみに、去年のクリスマス、恵奈に響と共に、余計なことを吹き込んだ
「お、チビッコ達じゃねえか。開けてやるから、待ってな」
ちょうど買い物帰りの天龍が、ポケットからIDカードを取り出し、扉の端末に当てると、裏口の扉が開く。
これは、中部警備府艦娘寮の規定で、定められている。
『艦娘寮に入寮中の小・中学生の同級生は、艦娘寮ロビーと当該者の部屋まで立ち入り可。但し、出入りには、艦娘もしくは尉官以上の確認、寮長への報告が必要』
実質的には、恵奈ちゃんしか該当者が居ないため、恵奈専用規定となっている。
天龍とは、去年のクリスマスで出会って、
「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」
と、ビビらせようとしたところ、この三人は、
「「「かっこいいー!!!」」」
と懐いてしまったのだ。
恵奈ちゃんの友達の中でも、特に仲のいい三人娘だ。
裏口の扉には、既に恵奈ちゃんが、走ってやって来ていた。
「「「「おはよー!!!!」」」」
四人で挨拶を交してから、天龍の後に従いて、艦娘寮ロビーに向かうと、天龍の首に付いてたペンダントの鎖が切れて、ロケットが開いた。
中には、天龍と仲良く写ってる、女性の写真が入っている。
「天龍さん、落ちました」
真由ちゃんが拾うと、手渡した。
「お、ありがとな」
天龍はしゃがみ込むと、頭を優しく撫でる。
「天龍さん、この美人さんだれ?」
ほわーんとした雰囲気で杏子が問いかけると、天龍は、困ったような笑みを浮かべる。
「オレの妹。龍田ってんだ」
「どこにいるの?」
その美雪の問いに、
「んー……沈んじゃったからな」
「しずん…」
その言葉に、察した恵奈が振り向いて、更に聞こうとした美雪を遮って、首を振った。
「みゆちゃん、だめ」
「あ、ごめんなさい……」
申し訳なさそうに、シュンとなる美雪と恵奈の頭を、天龍が撫でると、
「良いってこと。いずれ、また会えるさ」
艦娘は、いつか浄化して、同じ型が現れる事がある。もちろん、同じ姿の別人だが、
艦娘にとっては、轟沈は覚悟していることなので、それでも救いだった。
暁型のお部屋で、四人はちゃぶ台を囲んで、ちょっと沈んでた。
暁と雷は、お出かけ中らしい。響は自由人なので、居ないほうが多い。
「ごめんね、恵奈ちゃん」
美雪が、しゅんとなったままでいると、恵奈が笑顔を向ける。
「大丈夫。天龍お姉ちゃんが言ってたよ、いずれ会えるって」
「…というと?」
真由ちゃんがメガネを掛け直すと、外から声がする。
「説明しよう」
いつの間にか座ってた、響が説明をする。
艦娘は、深海棲艦を倒して浄化すると、現れる可能性がある……と。
「「「「でたぁ!?」」」」
ちびっこ達は、びっくりして腰を抜かすが、
響は、ただ単にベッドで寝ていただけである。
響は、説明を終えると、出かける、と言い残して出ていった。
「……深海棲艦を倒すって、美雪達には無理だよ」
「……そうだね……無理だよね……」
「気持ち切り替えて、遊ぼう」
「そうだね」
美雪が言って真由が同意して、そして杏子が笑顔を皆に向けると、恵奈も頷いた。
「おもちゃ、見つけてきちゃった」
ごそごそと取り出したのは、飛行機のミニチュア……工廠から勝手に持ち出した、Fー2さんである。
恵奈は、持ち出したときには居なかった、妖精さんが翼に座ってるのを見つけた。
「あれ?なんか座ってる」
そんな恵奈の言葉に、三人は首を傾げる。
「居ないよ?」
「もしかしたら、先生が言ってたけど、恵奈ちゃんみたいに『れーし』が強くないと、見えないのかも?」
「ひょっとしたら、手を繋いだら、皆見えるかも?」
「まっさかぁ……」
美雪が突っ込んで、先生の霊子についての説明を、なんとなく覚えてた真由が、美雪に突っ込んで、杏子が何気無く言ってみた言葉に、恵奈がてしっとツッコミを入れながら、
四人全員で、ちゃぶ台を囲んで手を繋ぐと、全員の体が少し輝いた。
すると、妖精さんが、翼に座っているのが見えた。
「「「「見えた―!」」」」
――おう、チビ達。話は聞いてた。ちょっといい案があるんだぜ。
「「「「きえええええ!!!しゃべったああああああ!!!!」」」」
――いや、話を聞いてほしいんだが……
「「「「しゃべったあああああああああ!!!!!」」」」
――いや……話を
「「「「しゃべったあああああああああ!!!!!」」」」
――いや………
「「「「しゃべったあああああああああ!!!!!」」」」
――………
「「「「しゃべったあああああああああ!!!!!」」」」
――喋ってねえよ!?
そんな、漫才みたいな遣り取りを繰り返した、Fー2妖精さんが、ゲンナリした顔をする。
――話していいかな?
「「「「うん」」」」
手を離すと、恵奈しか見えないので、手を繋いだままFー2妖精さんを囲んで、お話している。
――俺は戦闘機の妖精さんだ。対艦番長って呼ばれてる、強い飛行機なんだぜ。でも、イロイロあって飛べないんだ。
「なんでー?」
杏子が、間延びした口調で問いかけると、Fー2妖精さんは、困った顔をする。
――空母に積めないからな。
その言葉に真由は、鞄からipadを取り出すと、「Fー2さん?」と、言いながら調べる。
「ええと。Fー2は、地上から飛ぶタイプの飛行機、なんだって?」
――そうそう、頭いいな。それでだ。どっか、長くて広い滑走路ねえか?
その言葉に、四人は、顔を見合わせてから叫んだ。
「「「「セントレア跡地!!!」」」」
「……それで、私が呼ばれた訳?」
恵奈は、ロビーでコーヒータイムをしていた、艤装メンテナンス中の、寮長加賀を連れてきて、『龍田掘り計画』を明かした。
加賀は、眉を顰めて、こめかみを押さえる。
「うんっ。どうしても天龍さんに、龍田さんを会わせてあげたいの」
その恵奈の言葉に、三人娘も、じっと加賀を見つめる。
「……ダメ?」
恵奈の言葉に対し、加賀は、恵奈達の予想外の反応を示した。
「わかったわ。Fー2を飛ばせるか、まだわからないし、引率するわ。セントレア跡地ね?準備してくるから、待ってなさい」
という訳で、仮設電車を乗り継いでやって来た、
セントレアは、まだ工事が後回しになっており、今は、色々な資材を置いたりしている。
本来、一般人は入れない筈だが、日曜日であることに加え、加賀の軍用パスで入れる。
今日は、工事もなく無人の、セントレア跡地。
守衛さんがいるが、加賀が一緒にいる為、特に咎められずに、滑走路まで行けた。
加賀は、大きなジュラルミンケースを持っている。
「さて。どうやって飛ばすのかしら……?」
腕を組んで、考える加賀さん。
Fー2ミニチュアを持っている、恵奈の肩に、Fー2妖精さんは、ちょこんと座ってる。
――霊子を送れば、飛べるんじゃね?
「よし!皆!加賀お姉ちゃん!恵奈の後ろにくっついて!」
「「「うん!」」」
「よくわからないけど、わかったわ」
恵奈を先頭に、美雪、真由、杏子、加賀の順で、後ろから電車のように抱き付いて、繋がる。
これで加賀も、Fー2妖精さんを、見ることができる。
――地面に置いとくれ。
「うん!」
恵奈は地面に置くと、両手をFー2に向ける。
「ぱわー!」
謎の掛け声と共に、霊子を送り込まれたFー2は、光り輝く。
「とべー!」
――ラジャー!ちょっくら飛んで来るぜ!!
Fー2妖精さんが乗り込むと、
「「「「行ってらっしゃーい!!!」」」」
未だにくっついたままの、恵奈+三人+加賀の霊子を受け、ジェット噴射をして、飛び立って行く。
飛び立ったFー2は、分身のように四機に分かれ、編隊を組んで、飛んで行った。
「ほ、ほんとに飛んだわ……」
加賀の驚きの呟きと共に……
少し経った後だった。未だに、くっついてる5人に、声が聞こえる。
――此方Fー2隊長。渥美半島南沖で姫発見、クラス軽巡。レーダーにて、志摩泊地・浜松泊地の艦娘部隊は、それぞれ別の深海棲艦と交戦中と確認。
「加賀お姉ちゃん、どうしよう……?」
「恵奈ちゃん、交戦命令。空対艦攻撃指示」
「うん。隊長さん、対艦攻撃ゴー!」
――ラジャー。ASM発射!93式空対艦誘導弾、着弾誘導、敵頭部!
Fー2隊長妖精さんが、赤外線画像誘導での
「「「「がんばれー!!!」」」」
――着弾確認。八発のASMの攻撃を受けても、撃沈せず。中破状態。残り各機ASM二発、どうする?
「
――ラジャー。ASM発射!93式空対艦誘導弾、着弾誘導、敵頭部!その後、JDAM誘導爆弾投下。くたばりやがれ!!
「「「「妖精さんがんばれー!!!」」」」
――敵艦撃沈確認。自然浄化現象開始を確認、すぐに来られたし。
「ちょっと、行ってくるわね」
ジュラルミンケースを開けると加賀は、駆逐艦型汎用艤装改で海に降りると、高速度で沖合に向かって行った。
「恵奈ちゃん、皆で祈ろうか?」
美雪が、三人に声をかける。
「なんて?」
真由が、美雪を見る。
「そりゃもちろん……」
杏子が笑う。
「せーの!」
「「「「龍田さんが『
四人で輪になって、大きな声で『
少し後、先行してFー2が帰ってくる。
「おかえりー」
一機に戻ったミニチュアを、恵奈がキャッチすると、妖精さんが、
同じく恵奈も、グーサインをする。
それから、も少ししてから加賀が、さっき写真で見た女性――龍田を抱きかかえて、戻ってきた。
龍田は、眠ったままのようだ。
「「「「龍田さんだ!!!!」」」」
喜びの声を上げる四人に、加賀の顔は冴えない。
「……二つ、懸念事項があるの」
「どうゆうこと?」
四人を代表して、恵奈が加賀に聞く。
「一つは。これは、全ての浄化に言えることなんだけど、昔の記憶が残るのは、『ほぼ』ないってこと。もう一つは、艤装がなかったわ……恵海と同じように、浄化が不完全で終わったか、あるいは……」
「あるいは?」
美雪が問いかける。
「ううん、あなた達は知らなくていいわ。残酷過ぎて、話せない」
「「「「………」」」」
悲しそうな顔をする四人に、一旦龍田を、予め用意してもらった毛布の上に寝かせると、四人の頭を撫でる。
「あなた達が、悲しむ必要はないの」
「片桐ってやつのしわざ?」
「………」
恵奈の言葉に、加賀は短く頷く。
恵奈も、片桐って悪い奴が居たことは、母から聞いていた。
「天龍を呼んでくるわ……」
数分後、近海を哨戒中の天龍が、加賀と共にやって来て、眠ったままの龍田を見て、フリーズしていた。
「これは……?」
「う……ううん……」
眠っていた龍田が、目を覚まして起き上がる。
「龍田!!」
でも、きっと別人だ。悲しそうな顔をしながら、天龍は声をかける。
「あら、天龍ちゃん。どうしたの?
「「!!」」
天龍と加賀が、言葉を失った。
今、『また片桐にいじめられたの?』と、言ったのだ。
「龍田!龍田なんだな!?
「そうよぉ?天龍ちゃん、なんでそんなに悲しい顔を……っ」
言い終わる前に抱きついて、天龍は、大きな声を上げて、泣き出した。
「「「「よかったよぉ……」」」」
恵奈ちゃんと愉快な仲間達も、ぺたんと座り込んで、わんわん泣いている。
「……」
加賀の目尻にも、涙が浮かんだが、それより先に、すべきことがあった。
「こちら、『汎用駆逐艦加賀』。本部、応答願います」
―――――
あのあと、中部警備府から、輸送船が派遣され、全員は、中部警備府に戻った。
その途中、恵奈が突然、「気持ち悪い」と言い出し、海に嘔吐を始めた。
そして、ふらっと倒れる。
「恵奈!?」
「「「恵奈ちゃん!!」」」
慌てて抱き止めると、体は熱いが顔は真っ青で、汗をかいてない。
似た症状を、加賀は知っていた。
「
恵奈は、ちっちゃな体に秘めた、全ての霊子を使い切ってしまったのだ。
Fー2という、超ハイスペック機を動かしたから、当然ではあるが……
もう、こうなってしまっては、休ませるしか、回復方法はない。
心配する友達には、「疲れ過ぎちゃって、倒れちゃったの」と、加賀は説明して、
中部警備府に到着するなり、美雪ちゃん達には、お家に帰ってもらった。
龍田は、医療部で検査を行い、深海棲艦の侵食がないことを確認して、病室に移した。
天龍は、龍田と二人っきりの医療部の病室で、ずっと話をしている。
加賀は恵奈を、暁型の部屋のベッドで眠らせると、司令官である湊に、報告に来たのだ。
「勝手に動いて、申し訳ありませんでした」
頭を下げて謝罪する加賀に、湊は笑みを向ける。
「いえ。あの、使い道の無かった、Fー2の活用法も見い出せましたし、『
「艤装がなく、転生されたのは……?」
加賀が、司令官に問いかけると、
「……龍田さんは、天龍を守る為に、片桐に歯向かって、艤装を破壊された挙句、海に沈められた。そう聞いています。医療部の山本先生から、メールが入ってましたが、海に錘付きの足枷をつけて、沈められたところから、記憶が無いそうです」
「………」
悲しそうな表情をする加賀に、湊は首を横に振る。
「龍田は差し当り、警備府スタッフとして、軍属二等兵に登録します。天龍の『
「はい。ご配慮感謝します」
加賀が、再び頭を下げると、湊はクルッと椅子を窓に向けて、空を見上げた。
「……きっと、子供達の『
「……そうですね」
再び、加賀の方に向いた湊も、加賀も、笑顔を浮かべていた。
恵奈ちゃんは、翌日も高熱が下がらず、学校を休んだが、その翌日から、学校に行った。
三人の友達と学校の教室で、龍田さんにまた会いに行こうね、って約束しながら。
キーンコーンカーンコーン
「はーい、朝の会始めますよ―!」
先生の言葉で、今日も学校生活が始まる。
―――――――――
「なんか、ボーキと弾薬と燃料と鋼材が、めっちゃ減ってるんだけど!?妖怪か!?妖怪の仕業か!?」
工廠で、担当士官の結衣の絶叫が、響き渡っていたとか。
恵奈ちゃんお友達トリオの性格モチーフは
美雪→奈緒+結衣
真由→恵海+湊
杏子→恵一郎
Tips《F-2使用》
現状何故か恵奈のみ運用可能。恵奈ちゃんの霊子量によって数が増える。
他の艦娘はF-2妖精さんが拒否してる。
なぜ恵奈が運用できるかは未解明である。
飛行には長い滑走路(今のところセントレア跡地)が必要。
主に対艦攻撃には93式空対艦誘導弾とJDAM500lb誘導爆弾を使用。
大量の全資材を消費する。
別名『史上最悪の資材イーター』