小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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新型潜水艦という脅威のもとに晒されているなか、
夕張は急ぐ、新実装の空母の艤装制作に。

そして実装試験が始まった
そこに襲い来る謎の潜水艦深海棲艦。

深海棲艦とは一体なんなのか
そして、第三世代艤装開発計画の呪いとは


今回は夕張回に珍しいかなりシリアスな回です。

※少々残酷な表現がありますのでご注意ください


新・夕張の装備開発計画③―ヘリ搭載型空母《実装編》―

警戒態勢が解かれた、初夏の七月頃。

夕張は通常業務と並行して、急ピッチで艤装の開発を行っている。

その間結衣は、空母の諸元を纏めた資料を収集していた。

「んーむ……」

当初想定してた、対水上戦闘とは異なる事態に、結衣は結衣で、色々調べているのだ。

「ハリアーⅡやホーネットで、爆弾を落として沈める戦術は、Fー2のJDAM弾と赤外線画像誘導AAMの運用で、有効なのは判明したけど、対潜となるとなあ……」

「どうしたの?高菜大佐」

ちょうどやって来た加賀に、笑みを浮かべ、エスプレッソマシンでコーヒーを淹れると、「そこの椅子出しといで」と言いながら、二人分のカップを執務机に置く。

「対潜をどういう風に考えるか、悩みどころでね。深海棲艦の性質上、長所を引き伸ばされてるとなると、『硬い・早い・静か』だから、どうしたもんかな、と」

「そうね……」

「取り敢えず、一つは近接防空セット『RIMー116近SAM+ファランクスCIWS』なのは確定として、艤装の艦載機に、ヘリを多めに積むか、固定翼機を多めに積むかで悩んでてね。いっその事、ASROC(対潜ロケット)でも積み込もうかと思ったんだけど、それも空母としてはどうよ?ってさ」

「そうよね…」

結衣が、頭をボリボリ掻いて考え込んでいると、ふっと思い浮かんだ。

「任務によって、載せ替えるしか無いか?対潜警戒では、SH60K50機、固定翼機25機。ほいで、対水上戦ではその逆」

「そうなるわね」

「問題は、あの『未確認潜水艦』そのものなんだよね?今までのように、『()()()()()()()()()』攻めてくる敵とは、一線を画してるんだよね。後、未だに複数の深海棲艦が統率されて攻撃してくる気配もない。他の深海棲艦は、ただの害獣状態だからねえ。まるで、異世界から来たみたいな印象だね」

結衣が、エスプレッソを飲みながら溜め息を吐くと、加賀も考え込む。

「異世界……湊提督の艤装は、木っ端微塵のはずだけど、アレは……?」

「あれはねー、弾道ミサイル搭載型(原子力)潜水艦だからハープーンは積めないの。積んでるのは、核弾頭搭載型トライデント弾道ミサイル(SLBM)。飛んでくるとしたら、長魚雷の方かな?」

ふと思いついた、加賀の言葉を、即座に否定する。

「一発撃って逃げ出してから、隠れ続けてる行動も謎やね。挑発してるのか?『試しに一発撃ってみました』、なのか?」

「何れにせよ、未解明な部分が多いから、私達にできることは、少ないわね?」

「『次世代装備計画』だって現段階では、全ての艦娘に配備出来ないし、今できることを、やるしかないよね」

「そうね……」

二人は頷くと、工廠へ向かった。

 

 

工廠に、結衣と加賀がやって来ると、夕張と湊が、出来上がった艤装を、一緒に作業台に載せていた。

「夕張ちゃん、艤装は出来た?」

「はい。現段階でも、ネ式の墳式艦爆とSHー60Kの運用は可能です。近接防御セットも、組み込んであります。ですが……」

夕張は、複雑な表情を浮かべる。

「どったの?」

「それで、戦闘機なんですけど。ハリアーⅡは一旦中止ということで、SHー60搭載で加賀の許容霊子量が……現段階では、SHー6015機、橘花改50機が限界です」

首を傾げる結衣は、湊の言葉に、軽く溜め息を吐いた。

「そっかぁ……ここで、第三艤装開発計画の失敗に行き着いたかぁ……」

「そ・こ・で、なんですが」

湊が、意味ありげな笑みを浮かべる。

「既存兵装の、改修を行おうと思います。名付けて、『橘花改+JDAM Mk84爆弾』」

湊の言葉に、結衣はにいっと、笑みを浮かべる。

「それな。ミサイルよりも、デカくて重たいもんを誘導性付けるのが、一番よな」

結衣の笑みに、夕張も続く。

「この改装は加賀さんだけでなく、瑞鶴さんや呉の翔鶴さんにも、実装可能です」

「恵奈ちゃんの、Fー2の戦闘データから、思いついたんです。フル現代化という、霊子も物資も大量消費する方法以外に、底上げできるものはないか?その一つの回答が、JDAM弾なんです。慣性航法装置だけでも、無誘導爆弾より、精度は格段に上昇します。そして今は、大戦時にはない、GPS(全地球無線測位システム)があります。こっちは、簡単な改装で組み込めることを、恵海改二潜で証明できてます」

湊の説明に、結衣も頷いた。

「結衣は、それに賛成だよ。それで実装しよう」

 

こうして、加賀改二甲は実装された。

三人目の、墳式艦爆搭載型装甲空母である。更に、個艦防御システムも備えている、防空型空母でもある。

当分の間、加賀は慣らし運転が必要であり、恵海改二航のエスコートにより、近海をぐるぐる回る予定だ。

今日の慣らし運転には、瑞鶴も参加している。JDAM弾橘花改の、実装試験である。

 

結衣が、後方支援艦に乗って指揮する、と言い張っていたが、

前回の、龍田艤装捜索作戦の負傷が、まだ癒えていない為、全員の反対で、

湊が、久しぶりに、艦隊指揮を取ることになった。

後方支援艦には、夕張も同乗している。

「うん。青い空、白い雲」

久々に海に出た湊は、いい顔をしている。専任の司令官になってから、海に出る機会がなかったのだ。

 

「なんか、湊ちゃん楽しそうね?」

「良いじゃないの、加賀。この一ヶ月の警戒態勢で、皆、ストレス溜まってたんだし」

「……そろそろ、予定の海域に到着します」

一人生真面目な恵海が二人に告げると、二人は軽く肩を竦めて、笑みを零す。

「それじゃあ、予定通り、SHー60Kを出撃。哨戒させるわ」

『了解、どうぞー!』

湊の返信を聞くと加賀は、腰に身に着けていたダーツを引き抜き、空に投げ放つ。

「哨戒隊、発進!」

加賀の新しい子達に念を送ると、ダーツが15機のヘリへと姿を変え、周辺に散らばり、索敵を始める。

「おお、飛んだわね」

そのヘリコプターの勇姿を見送りながら、ちょっとの悔しい想いを、心の奥にしまい込む瑞鶴。

加賀は、ヘリ部隊との意思疎通をしていたが、突然眉を顰める。

「……湊ちゃん、南の方向に駆逐古鬼・ル級改FS・ヲ級改FS。先行策敵と共に、空対空戦闘態勢に移行します」

その加賀の報告に、湊も表情を引き締めると、

「では、墳式爆撃隊出撃!続いて、恵海のスツーカ部隊出撃!」

『『『はい!!』』』

その返事と共に、湊は敵のいるであろう、南方を見据えるが……

ドクン……心臓の高鳴りと共に、指輪が鈍く光る。

「えっ……?」

湊は、何か重くて深い、『()()』を感じて、背筋がゾクッとする。

次に異変に気づいたのは、恵海だった。

「電探に反応。ハープーン3です!スツーカ隊出撃中止、ミサイル迎撃態勢に入ります!」

橘花改を出撃させた加賀は、思いがけない報告を、ヘリ隊から受ける。

「……嘘でしょ……?」

口に出てしまい、瑞鶴が訝しげな顔で見てるのに気づくと、通信を入れる。

「湊ちゃん。深海棲艦艦隊にハープーン4、順次着弾……ヲ級改FS撃沈、古鬼小破、ル級改FS大破、とのこと。出撃した艦載機は、ヘリ隊で始末……」

「……深海棲艦が深海棲艦に攻撃……」

瑞鶴は、その言葉に絶句するも、恵海が叫ぶ。

「こっちのハープーンに集中してください!来ます!」

「近SAM発射用意……サルボー(斉射)!」

加賀の脚部に搭載している、近距離防空ミサイルと、恵海の腕の速射砲の連射によりひとつ、また一つと撃ち落とされる。

「後一発!」

撃ち漏らしたハープーンミサイルが、後方支援艦に向かっていく。

「ファランクス!AAWオート!」

加賀の背部に背負ったユニットから、ガトリングガンが顔を出し、ミサイルに向けて弾幕を張ると、最後のミサイルも爆発した。

向こう側では、橘花改隊の落す、高精度のJDAM弾の爆撃によって、駆逐古鬼も大破、ル級改FSも海の藻屑となっている。

対空攻撃を行おうとした駆逐古鬼は、水面下に襲い来る何かに気づいて……

「!?」

大爆発を起こして沈んでいった……

 

その後、ヘリ部隊の哨戒を行うも、潜水艦らしき相手は発見できず、

撤退することとなった。

 

工廠に戻った面々と、戻って来て話を聞いた結衣は、椅子に座っていた。

「まさか、深海棲艦が深海棲艦を襲うなんて?」

加賀が最初に口を開いた。

「仲間割れ?でも、それなら、なんで深海棲艦が減らないの?」

瑞鶴の疑問に、結衣が口を開いた。

「これは結衣の仮説なんだけど、いいかな?」

その問いに、全員が頷く。

「深海棲艦を艦娘が倒すと、浄化される。そして、時には艦娘となる。人間や深海棲艦に殺された艦娘は、深海棲艦になり得る。ここまではOK?」

「そうですね」

結衣の言葉に、湊が代表して同意する。

「深海棲艦は、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』から生み出されていた。だから、日米を中心的に襲ってた。じゃあ、ハワイ戦後、倒していけばゼロになるわけじゃん?別口で『()()()()()()』がいたんだよ。この潜水艦。仮に、『ディープシーキラー(深海の殺し屋)』とでも呼ぶよ?」

結衣は、暫しの逡巡の後続ける。

DS(ディープシー)キラーは、深海棲艦にも刃を向けてるわけじゃん。同族に殺された恨みって強いよね。だから、そのまま深海棲艦になる。もしかしたら複数に増えるかもしれない。ただ、総指揮をする存在がいないから、単艦のはぐれや、精々艦隊単位で纏まってる深海棲艦が、害獣になってる……そう考えれば、辻褄が合わなくない?」

全員は沈黙する。結衣はさらに続ける。

「結衣は情報畑だから、物事を俯瞰的に見るように心がけてたつもりだよ。DSキラーの目的が何かはわからないけど、奴を止めない限り、深海棲艦は減らない。そして、全てを敵に回しているDSキラーは、今積極的に日本に攻撃しているわけじゃない」

その言葉に、湊は頷いたが、何か迷っている様子だった。

「そうですね……一つ気になる点があるんです。前回は結衣さん、今回は私を狙ってきました。DSキラーが近づいた時、ぼんやりと私の指輪が光ったんです」

「………」

夕張の表情は暗い。湊の言わんとしていることを、大凡気づいているようだ。

「『第三世代艤装計画』で、私はやはり、『()()()()()』んだと思います。残ったのは、真っ白から刷り込みを受けた今の『()』と()()()()()……ほら、私が目を伏せる時あるでしょ?あの時だけ、睦月ちゃんとお話ができるんです、()()()()。士官学校に入って、先輩達や同期と仲良くなるまでは、()()()()()()()()

『………』

悲惨すぎる幼少期と思春期を、そして自分に眠る()()とも言える、睦月の存在を、初めて語られた一同は涙ぐんでいた。

恵海に至っては、ボロボロ泣き出している。結衣だけは、涙を堪えて恵海を抱き締め、背中を擦っている。

「……殺された()()()()()()は、強い憎しみとなって、プロトタイプの私の艤装を模倣して、海に生まれたんだと思います。二十数年という長い年月をかけて、恨みの塊となって。夕張、攻撃型潜水艦からハワイで爆破した、今の艤装にプラン変更したのはいつですか?」

「……同調実験()です……」

絞り出すような夕張の言葉に、湊は頷いた。

「電には、睦月ちゃんの存在も伝えてあります。というより、あの結婚初夜に、『()()()()()()()』んです。そして電は、私が話すまで内緒にしてくれる、と約束してくれました」

「すると、電は二人の嫁さんを手に入れたわけか……えろいな」

真顔で話すも、言ってることがどこかずれた結衣の発言に、少しだけ空気が和らいだ。

「結衣さんの変態には、誰も勝てないと思うわ」

「カラオケボックスの王様ゲームで、冗談で阿賀野が命令した、『()()()()()』を躊躇なく実行した結衣さんは、変態ね」

装甲空母の二人に突っ込まれた結衣は、てへーっと笑う。

「……あの……背中は良いですけど……胸はダメです……」

その恵海の言葉に、全員が恵海に目を向けると、結衣は、すっと手を引っ込める。

「先輩は、変態だ変態だと常々思ってましたけど、やっぱり変態でした」

湊の大きな溜め息混じりの言葉に、全員がジト目で見るも、湊はふっと笑みを浮かべる。

「ちょっと深刻になりすぎたので、場を緩めてもらって助かります。それで、結衣先輩。私も読む勇気はなかったので、第三世代艤装計画の霊子同調試験レポート、話してください?」

その言葉に、結衣は真顔になって頷いた。

「……残酷過ぎるから、それに耐えられない人は、今すぐここを、出ていってもらえるかな?」

その言葉に、全員が首を横に振った。

「まず。湊は元々、負けん気が強く反抗的な子。未来は元々、人見知りの強い子。湊は、同調実験前に気を失うほどの暴行を受け、そのまま試験実行。彼女の霊子を『()()()()』形で同調成功。刷り込みと記憶操作を行った。未来は、意識のある状態で同調開始。同調の霊子混濁で、未来は霊子(精神)が『()()()()()』同調成功。初雪の主人格が強く影響した為、彼女をベースに、刷り込みと記憶操作を行った」

「ううっ……ひっく……」

恵海がやはり泣き出してしまったので、結衣は背中を擦ってやる。

「やっぱり、こんな計画、失敗してよかったんだよ。結衣が………結衣が、本当に湊ちゃんの家族だったり、親だったら……耐えられないよ……」

結衣が涙を流して泣き出す。今まで、『神経がワイヤーロープで出来ている』と言っていた彼女が、()()()

それにつられて、二人の装甲空母や夕張も泣き出す。

一番最初に泣き止んだのは、結衣だった。

「ごめんね、本題に戻るね。もう、科学もへったくれもない話。指輪が反応したり、湊ちゃんに関係する相手を優先的に狙ったのは、()()()()()霊子を持った存在を狙ってるから。深海棲艦を狙ってるのは、ほぼ逆恨み。『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』……五歳のまま、憎しみだけを育てた存在だから、日本とか軍部とか、そういう難しい話は理解してない……結衣の仮説は以上。もしかしたら違うかもしれないけど、今はそう考えるしかない」

涙ぐんだまま、全員が頷いた。

「だから。この後始末はやっぱり、艦娘と()()で付けないと、いけないんだよ。何年、何十年かけても」

結衣が珍しく、『私』という言葉を使った。それだけ、強い気持ちが込められている言葉だった。

「でも、時間はまだある。もしかしたら、説得もできるかもしれない。今はやれることをやろう。それだけじゃない。結衣達は、希望の街にいるんだ。その希望を守り、育てていかないと」

全員が、窓から見える建設途中の名古屋タワーを見上げる。

「そうですね。ここは希望の街。泣くのはやめて笑顔でいましょう」

湊が力強く続けると、全員の顔には、涙が浮かんたままだが、笑顔が灯った。

「久々に飲みに行って、騒ぎますか!?」

「えっ?」

湊の言葉に、加賀の顔が引き攣った。

「よっしゃ!全員引き連れて、居酒屋鳳翔から~のカラオケコースやね!?」

結衣が賛同する。その言葉に、とうとう加賀が切れた。

「もう知らないわ。こうなりゃ私も飲むわ!歌うわ!」

「ちょ!?加賀!?」

ついに、常識番長が、()()という枠から、飛び出した瞬間だった。

 

だが、結衣の巧い所は、スレスレのところで、カラオケボックスの出入り禁止を、免れる辺りだ。

実際に謝るのは、ストッパーの曙と比叡と、新たに連れてこられた朧と、嫌な予感がして、酒を控えた電である。

他のまともな連中は、()()()()カラオケボックスには、来ないからだ。

新たな貧乏くじ同盟が、結成された瞬間だった。

「クソ酔っ払いどもめ!!早くタクシーに乗れ!クソ結衣脱ぐな!」

「ヒエー!暴れないでください!タクシーにおとなしく乗ってください!」

「なんでアタシまで……?ってか、湊ちゃんそこで寝ちゃダメ!」

「湊!ここで寝たら死ぬのです!お家で寝るのです!」

 

やはりカオスである。

 

 

 

 

 




シリアスがシリアスで終わらないのが中部警備府である。

次回は軽いノリのお話の予定です
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