実装で疲れ切った夕張に魔の手が襲いかかる。
今日は変わり種で恵奈と夕張がお送りするリペア大作戦
夕張は、多種多様の報告書を書いていた。
加賀の実装報告書、瑞鶴のJDAM弾の実装報告書。
それに伴う、試験性能評価等。
更には、飛んできたハープーンや、第三世代艤装計画プロトタイプ艤装の、諸元の解析。
いつもは、改造や趣味に精を出しているが、今夜ばかりは完徹である。
終わった頃には、朝になっていた。
「くぁー……今日は
「ゆーばりさーん!龍田さんの艤装、修理に来ました―!!」
ツナギ姿で、両親に買ってもらった工具の詰まった工具箱を持った、恵奈withFー2隊長妖精さんが現れた。
この時、夕張の命運は尽きた。
「オウフ………」
工廠の作業台には、コアだけになった艤装と、錆び錆びの龍田の兵装。そして、完全破壊された木曾と最上の艤装の部品が積まれている。
「正直、これで組上がるかは、やってみないとわからないんですよね?」
「ホームセンターの部品じゃ、ダメなの?」
取りあえず、暁とのお買い物で購入した、金属部品やボルトやナット類を見せる。
「うーむ……確かに艤装はメカニカルなものだし……ただ、動力部がないんですよ」
その夕張の答えに、考え込む仕草をする恵奈。
(ねえ、動力部ってなんなの?)
――エンジンみたいなもんだよ。重油や石炭でお湯を沸かして、蒸気で動力に変えるんだ。蒸気機関車みたいな奴な。
(
――船は、やるとしたらガスタービンか、ディーゼルエンジンだなあ。
(タービン?あの中華料理の)
――それはピータンだ。
(M4とか?)
――それはカービン銃だ。最新の船の動力源で……もしかしたら、呉にあるかもしれないな?バラしたDDG
(うん、聞いてみる)
「夕張さん、呉の明石さんに、『未来お姉ちゃんの艤装の動力、余ってませんか?』って聞いてみて?」
「!?恵奈ちゃんさすが!その手は考え付けませんでした!すぐに確認して手配します!」
――やったな、恵奈。
(ありがとう、妖精さん!)
笑顔を向けると、妖精さんもサムズアップする。
その日のうちに、ガスタービンユニットが届くと、夕張と恵奈ちゃんが、組立作業を始めた。
組み立てるにも、それなりに霊子が要る。
Fー2妖精と、常に一緒にいる恵奈もまた、霊子の高い子なのだ。
余剰部品と、余剰武装のツギハギの兵装。
武装は14㎝単装砲、 12.7㎝連装高角砲と、恵海と同経緯の
見た目の悪さは、溶接と研磨を繰り返して、恵奈ちゃんが塗装する。
作業は夜遅くまでかかった。恵奈が遅いと、迎えに来た暁型トリオも加わって、
賑やかに作業をやって、完成した。
艤装の名前は、『龍田改
翌朝まで、工廠の仮眠室のベッドで、五人で寝て(夕張はちびっこに乗っかられて、魘されてた)、
翌朝一番に、龍田を連れてきた。もちろん、同室の天龍も一緒だ。
「龍田お姉ちゃん!出来たよ!『龍田改
恵奈の言葉に、作業台を見ると、リファインされている、自身の艤装。
かつての艤装や、天龍のものとは違うが、皆の努力の結晶が刻み込まれた……
艤装側面には、中部警備府の部隊章に龍が絡まってるデザインの、パーソナルマーク。
「……恵奈ちゃん……皆……」
泣きそうになる龍田を、天龍が後ろから抱き締める。
「とにかく、試運転だな?」
艤装を装備して、暖機運転を始めて………
ものすごい勢いで、洋上を走って行った。
「うきゃあああああああああああ!!!????」
「龍田ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
(あれ、どうしたの?)
――多分、出力過剰じゃねえか?
何とか、速力を落として戻って来た。
「ぜえはあ……」
「妖精さんが、ゆっくり慣熟運転をさせないと、ダメだって……?」
「だな……」
「あとは、もう少し装甲を積んでも、良いかもしれませんね?」
埠頭でぜえぜえ言っている龍田に、恵奈ちゃんが冷静に言って、天龍が同意する。
そして、そのデータを元に、夕張が調整プランを練り上げる。
朝ご飯を食べ終わった頃には、恵奈ちゃんはお友達トリオと遊びに行き、代わりに結衣がやって来た。
「モッス、作業はどうだい?」
「色々あって、ああなりました」
メンテナンスモードで、展開してみた龍田を見た結衣は、渋い顔に変わる。
「ダメだね。この龍田は出来損ないだ」
「何だと!?」
天龍が噛み付く。
「武器もなければ、輪っかもない。明日の午後、結衣につき合ってもらおう。皆に、本物の龍田がどんなものか、教えてやる」
そう言うと、立ち去って行ってしまった。
全員ポカーンである。
翌日午後、結衣が布を巻いた棒状の物と、新聞紙に巻かれた円形状の物を持ってやって来た。
「まずは、頭の上の輪っか。きちんとリファインして作ったよ」
取り出して、龍田の頭の上に乗っけると、宙に浮いて、くるくると回り出す。
嘗ての、龍田の頭の上に浮いてた輪っかだ。ただ、縁がちょっと鋭角化している。
「投げつければ、ブーメランとして使えるし、ちゃんと、頭上に戻ってくるよ」
「おお!かっこいいな!」
「そうかしらぁ?」
その謎機能に、興奮する天龍と、首を傾げる龍田。
「これ、どうしたんですか?」
問いかける夕張に、
「明石を脅して作らせた。明石って、減給処分の常連で、創作系の趣味も多いから、500万ほど貸してるんだよね。チャラにしてやるから、
満面の笑みを浮かべる結衣に、全員は苦笑いだ。質の悪い
「こっちは、いつも持ってる武器ね」
しゅるっと包みを外すと、いつも持っていた、バルディッシュ風のブレードである。
「これ、武器としても、
借金のカタに、とはいえ滅茶苦茶な無茶振りを、徹夜でやらされたと思うと、三人は明石に、心の中で謝った。
「というわけで、龍田改
結衣の笑顔に、全員笑顔になる。
「此方も、装甲強化と耐弾性能強化で、軽巡並みに速力を落として、低燃費で運用できるように、調整しました」
「うんうん。これで、遠征はまた天龍・龍田に第六トリオに雪風。朧は第3に戻り、恵海と
「なのですよ」
現れた、総秘書艦の電が同意する。
「早速、天龍、龍田を加えた第2艦隊で、近海演習航海を命じるのです」
「了解だ!」
天龍達は伊勢湾で、艦隊陣形の練習等をしに、航行していった。
それを見送った三人は、埠頭に残っている。
「結衣さん。色々有り難うございましたなのです」
「結衣は、できることをしただけだよ?」
そう言って、笑みを向ける。
「結衣はね、
『………』
沈黙する二人に、結衣はにへらっと、笑みを浮かべる。
「結衣はさ、神経が
その言葉に、二人共クスッと笑った。
「何れにせよ、龍田も少し変わったとはいえ、海に出れたし、めでたしめでたしだね?」
「そうですね」
「なのです」
海を眺めながら答える二人に、ふと結衣が尋ねた。
「電ちゃんは、
その言葉に、驚いた表情を浮かべてから、あぁ…と声を漏らして、
「湊が話したのですね?電は、むっちゃんともラブラブなのですよ。むっちゃんも湊も二人で、電の『
「よかよか。いずれは
「むっちゃんは、恥ずかしがり屋さんなのです。ちょっと難しいかも?なのです」
その遣り取りを、微笑ましく眺めている夕張は、ふと思い出したように、問い掛けた。
「結衣さん。頭の輪っか、なんか変な機能、付けてませんか?」
「あ、ばれた?あれね、ブーメランで投げなくても、霊子コントロールできるの。霊子結晶の応用ね。流石に、輪っかから出るレーザー兵器搭載は断念したけど、内側は、ダイソン的な送風機能付きで涼しいし、縁には、超音波カッター付けてあるよ」
「…………」
「やると思ったのです。電も、一度は考えたのです」
やはり、無茶振りに応える羽目になった、