小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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沖縄でDSキラー対策会議が開かれる。

とうとう、現れた南の守り手『海人艦隊』の司令官我那覇陽三少将。
その実態は


おっさんだった。

そしてDSキラーの対策が話され
その会議の場で出てきた『伝説への挑戦者』とは?


※我那覇少将は沖縄弁を喋ってますが表記は標準語です


めんそーれ沖縄!―おっさん現る―

DSキラー対策の、緊急幕僚会議が沖縄で開かれる。

中部警備府からは、司令官の湊、艦隊司令官の電、技術担当の結衣と夕張が参加する。

警備府司令官代理(留守番部隊)は、幕僚長の大村恵一郎が務める。

 

海人艦隊(うみんちゅかんたい)の司令官である我那覇陽三少将は、任務の性質上、幕僚会議に出る事は、殆どなかった。

前回名古屋での会議も不参加であり、最南端の最前線で戦い続けていた、彼の姿はあまり知られていない。

今回のDSキラー対策は、彼の参加も必要な為に、沖縄での開催となったのだ。

那覇に向かう航空機の中で、電が湊に聞いてみる。

「そういえば、湊は我那覇司令長官に会ったことあるのですか?」

「んー、ないですね。でも、最前線の沖縄戦線を守り続けてきた人ですから、さぞお強い方かと」

(睦月ちゃんも楽しみ?)

―うん、楽しみだよ。

そう答えてから、軽く目を伏せる湊に結衣は、「いやあ……」と、苦笑いを浮かべる。

結衣は任務の性質上、何度も我那覇少将と会っているのだ。

結衣は心の中で、ただのおっさんだよ。と呟いた。

 

ちなみに、夕張は爆睡中である。

あの艤装リペアの一件以来、恵奈ちゃんの工作好きがマッハで加速してしまい、

小学生なのに、鉱石ラジオ等も作るほどの、工作好き女子になっていた。

その付き合いをしている夕張は、昨日も夜遅くまで付き合って、その後仕事を片付けた為、

飛行機の中で、涎を垂らして寝ている。

そんな叔母予定者カッコカリの姿を見ながら、取り敢えずサインペン(水性)で、ほっぺに()()()を描く結衣だった。

湊も電も、(そして()()すら)止めない所が、割といじられキャラの夕張、である。

 

その後夕張は、めちゃめちゃ恥を掻いた。

 

 

那覇空港に到着すると、アロハシャツに海軍の白いズボンを身に着けた、恰幅のいい()()()()がいた。

「あれが、佐世保鎮守府司令長官兼『海人艦隊』司令官の我那覇陽三少将だよ」

その結衣の言葉に、二人と幽霊一人(睦月)が絶句する。

「「えっ?」」

――えっ?アロハのおっさんだよ。

夕張は、ゲートでめちゃめちゃ恥を掻いて、どんより中である。

「ただの、アロハのおっさんなのです」

「むっちゃんも、同じこと言ってます」

割と酷いことを言い出す電に、全く気にせず、やってくる我那覇少将。

「はいさい。高梨准将。私が海人艦隊司令官兼佐世保鎮守府司令長官の、我那覇少将だ」

「は、初めまして。中部警備府司令官の、高梨湊准将です」

「総秘書艦兼艦隊司令官の、電なのです!」

暴言が聞こえたかもしれない、とびしっと敬礼する二人に、笑いながら、

「お久しぶりです。おっさん」

フランクに声をかける結衣。

「結衣ちゃんは去年の酒盛り以来だね。元気にしてたかい?」

「はい、めっさ元気ですよ」

仲良さそうに話をしている二人に、首を傾げる電。

「ところで、このおっさんと結衣さんは、知り合いなのですか?」

「ちょっ!?電!?」

慌てる湊に、我那覇は、「はっはっは」と笑っている。陽気なおっさんだ。

「んー。パパの友達で、パパの()()()()()()に、色々協力してくれた人だって。晋太郎叔父さんから聞いたよ?」

「それが縁でね、室戸泊地にいた安藤くんに、廃棄物(MRE)の有料引取をお願いしたり、毎年、直樹くんの命日に、酒を呑むようになったんだよ。歳の離れた友達だね?そうだ、直樹くんの昇進と記念章受章、おめでとう」

陽気に笑いかける我那覇の言葉に、湊は察した。

この先輩、色々な()()だった……と。

「次の命日は、ちょっとランクの良い酒で飲みますかね?そうだ、ママの香典、ありがとうございました」

ふっと笑みを零す結衣の肩を、ポンポンと叩く我那覇。

「そのくらいしか、出来なくて済まないね。直樹くん達も夫婦水入らずになって、あっちで楽しくやってるだろうよ」

「いえ、充分ですよぅ。ありがとうございます」

そう我那覇が笑いながら言うと、結衣も笑顔で頷いた。

それに満足した我那覇は、三人に向き直る。

「さて。会議まで時間もあることだし、()()()()()でもご馳走しよう。美味しいところを知っていてね」

「奢りですか?奢りですよね?もちろん奢りですよね!?コーラも付きますよね!?」

割とがめつい結衣に、我那覇ははっはっはと笑う。

 

 

タコライスとコーラを出された電は、開口一番こう言った。

「タコが入ってないのです」

 「「「………」」」

「はっはっは」

――みなちゃん、タコ入ってないの?

電の言葉に、沈黙する三人と、笑っている我那覇少将。

そして、()で、湊の脳内で、ボケをかましている睦月。

「あのね?タコライスというのは、メキシコのタコスをご飯に乗っけた沖縄料理で、『タコスを乗せたご飯』から、タコライス(taco-rice)になったの。タコスは複数形だから、タコになるの。タコの入ってるライス(たこ飯)はむしろ、広島とか瀬戸内地域かな?」

思わず説明をする結衣に、電は首を傾げる。

「でも、何で沖縄で、メキシコなのですか?」

その言葉に、我那覇が答える。

「1984年に、沖縄の金武町の飲食店の経営者が、考案したとされてるんだね。ほら、沖縄は、米軍基地もあるからね。米海兵隊(マリーン)向けに作ったメニュー、とされているんだ。まあ食べてご覧よ」

「ここのタコライスは、沖縄で一番、美味しいからね」

二人の言葉に、湊達が食べてみる。

ちょっとピリ辛で美味しい。三人の頬が緩むのを、結衣も我那覇も満足そうに見ながら、食べ始める。

 

食事が終わると、那覇泊地に向かう。

DSキラーの対策について協議する為に、司令長官級が集まる。

幕僚達は幕僚達で、今頃対策会議中だろう。

北から大湊の大鳳に、横須賀の未来、中部の湊に呉の拓哉、そして、現在病気療養中の司令官の代理として、大佐に昇進した舞鶴の幕僚長麻衣に、佐世保の我那覇だ。

そこで、湊は推測できる限りの情報を告げた。DSキラーは、第三世代艤装計画の()()だと。

その言葉に、未来は苦い顔をする。他の一同も沈んだ顔をしている。

ただ一人、麻衣は普段通りの表情をしている。

「放っておけば良い、のではないでしょうか?」

「……と、言いますと?」

その意図が解らず、問いかける大鳳に、麻衣は穏やかな顔を向ける。

「勝ち目のない喧嘩は、しないほうが良い、ということです。私は、高菜大佐より一足先に、耳に入れさせていただいてましたが、高菜大佐は、『持ち越すほか無い』と言っていました。私も同意見です」

その言葉に、草加も同意する。

「だな。綾波が言っていたが、『あれは、避けられる戦いだった。殺気に過剰に反応した自分が、喧嘩を売ってしまった、未熟な己の撒いた種だ』ってな。そして『あとで冷静に考えると、自分へ向けられた殺気では、なかったのではないか?』とな」

その言葉に、暫し考え込んでいた我那覇が口を開く。

「海人艦隊で何度か遭遇したことがあるが、相手にされず、逃げられたと言っていた。確かに、禍々しい雰囲気だ。とは聞いていたが、綾波の言うように、『()()』あるいは『()()()()()()()』と、いうべきだろうか?」

その言葉に未来が、

「善悪以前ですか?」

と、問いかけると我那覇は頷く。

「そう。子供の時、蛙に爆竹を詰めたり、虫に花火を向けたりしただろう?平然と。そういう感じだろうねえ。やはり、高梨准将の言うとおり、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』つまりは、子供の残酷さを突き詰めた存在、なんだろうねぇ。子供は加減を知らないから、下手に手を出すと大やけどさ。子供だって、叩かれたら怒るだろう?」

『………』

全員が沈黙する。

「DSキラーの行動指針として判明していることは、『私あるいは、私とつながっている四人(電・姉さん・金剛・結衣さん)』及び、深海棲艦に攻撃を加える。日本近海には近づいてこない。先制攻撃をしなければ、何もしない。そして、綾波さんで勝ち目がないなら、現状対処する場合、最終兵器(核弾頭トマホーク搭載の榛名)を持ち出しての総力戦覚悟」

湊の総括に全員が頷き、それに麻衣が付け加える。

「何れにせよ、我那覇少将の仰る通り、下手に手を出すと、大やけどですねー。今できることは、()()()()()()()を一体でも多く、減らすことしかない、のではないでしょうか?この復興期にまた、戦中に戻すような戦略(総力戦なんて真似)は不可能です。核弾頭なんて以ての外ですねぇ。今、責任を取って上層部が総辞職したら、艦娘本部にとって致命傷ですよ。倒した後も、まだゼロにしないといけないんですからね?それに、深海棲艦の自然発生がゼロだ、という確証もないですねー。それに、彼女が本気で日本を攻める気なら今頃日本は焼け野原ですから、まだ大丈夫と考えていい、と思います」

その、ゆっくりとした口調の言葉に、一同は同意した。結局は持ち越しだ。

拓哉が、努めて明るく発言する。

「まあ、あれは、今までの深海棲艦とは一線を画する存在だ。俺達にできるのは、注意深く観察してから、相手を深く知った上で、その特性に対応した、『DSキラーハンター』部隊を作る。また、『移動泊地(いずも改)』が必要になる時が来るかもしれねえな?」

麻衣も、のんびりした口調で、拓哉に同意する。

「皆、三十余年間の戦いで、疲れ切ってるんです。それは、艦娘も私達も。今は充電期間で、名古屋や東北、北海道の復興を、守っていく方針を続けましょう。艦娘本部が、戦中より規模も縮小された今、各拠点の連携が、今まで以上に大事だと思います」

「そうね……いずれにせよ、『()()()()()()()()』なんて、とんでもないことをしてくれたもんだわね」

「全くです」

その二人の大きな溜め息。ただ二人共、過去を乗り越えた表情に、麻衣が、

「……よく頑張りました。()()()()です」

と、のんびり言うと、笑いに包まれる。二人にとっては、()()()みたいな存在だ。

「そう言えば、結有さんに、()()が付いたそうですね?」

「らしいですね。私も、不知火からの又聞き、ですけど」

大鳳が、ふっと笑いながら湊に告げると、湊もふふっと笑う。

「宮戸島で結有さんに倒された駆逐水鬼が、中途半端に浄化して、私達大湊警備府に降伏したんですが、彼女の処遇について、希望を尋ねたら、『結有さんに仕えたい』と言い出して。皆、困った挙句に大淀大臣達と相談して、とりあえず士官学校に移送して様子を見よう、と」

「まじか?おもしれぇな」

大鳳の説明に、拓哉が笑い出す。

「それでですね。守さんが一応、現状確認で士官学校に行ったら、『ファンクラブはできてるわ、二人の対番と駆逐水鬼こと瑞希を巻き込んで恋仲(ハーレム)化してるわ、()()()()()()()()()』と言っていました。一応、『安藤校長が心配ない、と言っておられるなら大丈夫でしょう』と、助言しましたが」

その言葉に麻衣もふふっと笑い、未来は、

「あれだけ()()()()()()()()()()()、そうなるわね」

コーヒーを飲みながら、冷静に言うと、拓哉も、

「百合ハーレムか。羨ましいな!」

と言っているが、ハーレムを囲ってるこの男が言っても、と言う感じが漂う。

「うん、草加中将。ザ・デストロイヤーズ全員とラブラブだと公言している貴方が言っても、()()()ありませんなぁ」

代表して我那覇少将が、陽気に突っ込んでくれる。

「おう、今も共同生活してるしな。最近は綾波がデレ期に入ってきてな……ぎこちない笑顔がまた可愛くてだな……」

 

その後数十分間、綾波ののろけ話が続いた。

皆生暖かい目で、その拓哉の力説を眺めている。

 

「ところで」

その話を、湊は、無理矢理ぶった切った。

「我那覇少将は、ご結婚されてるんですか?」

「そりゃあ、もう六十前だからねえ。娘が一人いて、軍にいるよ。陽子って子だけど。この子だね」

その言葉と共に、写真を見せられて、湊はキョトンとしている。

「我那覇陽子さん……それ、私の()()()()じゃないですか?陽気な女の子」

「そうだねぇ、『()()()()()()()()()()』にして、「MT-AI(不敗の女神像)」の製作者」

その言葉に、懐かしそうに笑う湊。

「いやあ、手のかからない、いい子でした。そうですか、我那覇少将のお嬢さんでしたか」

色々、突っ込みどころをぐっと飲み込んだ大鳳が、

「今何をされてるんですか?」

と訊くと、我那覇はにこにこと答える。

「士官学校を出て、日米士官交流でアメリカ軍に出向してからずっとアメリカ暮らしで、今中佐で、艦娘部隊指揮官の指導を、担当してるよ。一緒に行った島風と、ケッコンカッコカリをして、米艦娘達と仲良くしてる、と便りが来たよ」

その言葉で、卒業後ぱったりと連絡の途絶えた後輩の、理由がわかった。

「そりゃあ誰も、アメリカにずっといる、なんて思いませんもんね?」

父親を前にして、「てっきり、早々と戦死したと思ってた」とは言えずに、苦笑いを浮かべる。

「ところで『()()()()』って、何ですか?」

大鳳が、ふと思い出したように訊くと、湊が苦笑いを浮かべて口を開く。

「私の、四年間のシミュレーションデータを、卒業時に纏めて、AIにしてくれたんです。通称『不敗の女神像』。『()()()()()()()』らしいです。いい加減、『不敗の女神』伝説から、誰か解放してくれませんかね?」

その言葉に拓哉が、

「高梨がやれば良いんじゃね?」

その言葉に、湊は首を振る。

「青ヶ島泊地で、陽子の卒業時に託されたデータを、定期的にアップデートしながら対戦してたんですが、全敗です。駄目です、士官学校時代の『()()()()()()()()』が薄れてるんですよね、私」

「それ、自分で不敗の女神に縛られてないかね?」

その我那覇の最もなツッコミに、全員がどっと笑う。

そして、大鳳が湊に、笑みを向ける。

「今一名、『MT-AI』に挑んでる学生が、いるらしいんですよ。守さんが、例の瑞希の定期査察に行った時、安藤校長から、『伝説に挑んでいる()鹿()がいる』という話を、聞いたらしいです」

それに興味津々なのは、拓哉だ。

「おお、そんな熱いヤツがいるのか?でも、結有や吹雪じゃなさそうだな……あいつら、フィーリング派だしな」

その言葉に、麻衣はピンときた。

「……そういうことですかぁ。大鳳准将、当てていいですか~?彼は、()()()()を、士官学校で完膚無きまでに叩きのめして、暴言まで吐いた()()()()()』を、終わらせようとしているんですねぇ?」

その言葉に、大鳳もにっと笑う。

「お見事。その候補生は、『()()()()()』さん」

その言葉に、湊は苦い笑いに変わる。

「いやあ、まさか()()()を狙われてるとは、思いませんでしたよ。だったら、戦術の手ほどきなんて、するんじゃなかった」

入学までの間に、熱心に聞いていた智紀の真意に、漸く気づいた、湊だった。

 

彼のその執念が実るかは、今はまだ、誰も解らない。




智紀はハーレム事件などの裏で必死に努力中です。
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