ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第2章 銀とレーティングゲーム
第9話 「フェニックス家」


 

 

 

駒王町に侵入したはぐれ堕天使の討伐から数週間後。

 

人里離れた自然の中に佇む駒王稲荷神社は楽しそうな子供たちの声で埋め尽くされていた。

共用スペースとして設けられている大広間には、神社に住む空狐族の子供たちが大画面テレビに食いついている。

 

その中には族長である銀の姿もあった。

 

「ふわぁ~、おはようございますぅ。」

 

「あっ、おはようございます、杏さん。もうお昼前ですよ」

 

「すみません、昨日遅くまで本を読んでいたので……」

 

大広間に顔を出したのは寝間着姿の杏。

 

はぐれ堕天使討伐に協力してくれた伊予島 杏と土居 珠子の両名は今もこの神社に滞在している。

2人はそのまま旅を続けるのかと思いきや、しばらく駒王町に定住することを決定。

空狐族が担当している仕事を手伝う代わりに神社に住めるようになった。

 

「ふふ、季節外れのサンタさんからの贈り物に皆興奮してるんです。」

 

「季節外れのサンタ?」

 

杏は銀たちが夢中になっているモノを確認する。

 

子供たちが夢中になっているモノ―――その正体は最新のゲーム機だった。

つい1週間前に発売されたゲームで、世間ではブームを巻き起こしている。おまけにコントローラーも追加で購入されている。

現在は銀を含めた4人が楽しそうにプレイしている。よく見ると、珠子も子供たちの輪に交じって観戦している。

 

ちなみに、プレイしているゲームは古くから続くレーシングゲームの最新版だ。

 

「どうしたんですか、あのゲーム。昨日までなかったと思うけど……」

 

「銀ちゃんの婚約者が持って来たんですよ。」

 

「へぇ、婚約者が…………婚約者!?」

 

一拍の間の後、思わず杏は聞き返した。

 

「こ、婚約者ってアレですよね!? その、将来を誓い合ったとか言う!! そんな小説みたいな設定が存在しているんですか!?」

 

「お、落ち着いてください、杏さん」

 

興奮する杏をなだめるひなた。

 

「す、すみません。つい興奮してしまいました。」

 

「ビックリするのは仕方ないと思いますよ? さっき珠子さんも驚いていましたから。」

 

「そうですよね……あれ? でも、銀ちゃんってまだ小学生ですよね?」

 

「肉体年齢はそうですね。」

 

「その婚約者って、もしかして…………」

 

「大丈夫ですよ。私も何度かお会いしましたけど、人柄の良い方でしたよ。」

 

「へえ~……どんな方なんですか?」

 

「お名前はシャルナ・フェネクス。〈72柱〉の1つ、フェニックス家の一員ですよ。」

 

「え……?」

 

杏は自分の耳を疑った。

 

 

〈72柱〉とは、大戦以前に存在した純血の上級悪魔が連なる名門の家系のこと。

その多くは三つ巴の大戦において断絶してしまっているが、中には他種族との混血という形で存続している家系も存在している。

 

フェニックス家は大戦を生き延びた〈72柱〉の1家系であり、純血の上級悪魔の家系では珍しく子沢山の家系である。

 

 

「フェニックス家とは縁がありまして、懇意にさせてもらっているんです。冥界の情報とかもフェニックス家から入手しているんですよ?」

 

「初耳です……てっきり高天原経由で手に入れてると思ってました。」

 

「そこから仕入れてるモノもありますが、大部分はフェニックス家経由です。今日もそのフェニックス家の人が来るんですよ。」

 

その時、神社全体に透き通るような風鈴の音が聞こえてくる。

 

何者かが神社周辺に展開されている結界を越えた時に森の至るところに設置された風鈴が鳴るようになっており、来客や侵入者を報せるインターフォン代わりになっている。

ちなみに、来客と侵入者では風鈴の音が違うので、瞬時に見分けることができる。

 

今回は来客の方だ。

 

「銀ちゃん。お客さんですよ。」

 

「はいよー。」

 

銀はコントローラーを他の子に渡すと、子供たちの輪から外れる。

 

「じゃあ、行くか。」

 

「はい。皆さん、お客さんが来ますからゲームは静かにお願いします。」

 

子供たちが元気よく返事する。

そして、ひなたと銀は客人のお相手をするために応接間の方に向かうのだった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

~駒王稲荷神社 応接間~

 

 

「ふぅ……ここに来るのも久しぶりのような気がするな。」

 

「レイヴェルがヤタガラスさまの神格の一部を継承してからだから……5か月ぐらいか?」

 

「そうですね。レイヴェルさんとは高天原で何度かお会いしてますが。」

 

「その節はお世話になりましたわ。」

 

応接間には、フェニックス家からの来客が通された。

 

赤いスーツを身に纏い、野性的な雰囲気を醸し出す男性――ライザー・フェニックス。

アメジスト色のドレスに纏った金髪の少女――レイヴェル・フェニックス。

 

以上の2名が神社を訪れた来客である。

 

「天照大御神さまから聞いたぞ。修行、頑張ってるんだってな。」

 

「ええ。ようやく次の段階に進めるようになりましたわ。」

 

ふふん、と胸を張るレイヴェル。

 

彼女はフェニックス家の末っ子であるが、悪魔の中でも異色な存在である。

空狐族とフェニックス家が巻き込まれた〈ある事件〉の影響でその身に霊力を宿したレイヴェルは、その素養を見込まれて神鳥・ヤタガラスの後継者に選ばれた。

すでに現ヤタガラスの神格の一部を継承しており、悪魔の弱点が消失するという変化が生じている。

 

なお、兄であるライザーは普通の悪魔である。

 

「そういえば、シャルナの奴は元気か?」

 

「元気にしてるみたいだぞ? 今日も此処に来てたし。」

 

「そうか。今度会ったら、家に顔を出すように言っておいてくれ。父上も母上も心配しているからな。」

 

「りょーかい。今度会えるのはいつになるか分からないけどな。」

 

「お兄様。私もお会いしたら伝えておきますわ。シャルナお兄様と修行場所は違いますが、もしかしら会う機会があるかもしれません。」

 

「ああ、頼む。」

 

「それで、ライザー。今日はどういう要件なんだ?」

 

世間話に区切りを着けて、銀が本題に入るように促す。

 

「少し人間界に用事があったから会いに来ただけさ。ただ、少し2人に頼みたいことができた。」

 

「頼みたいこと?」

 

「今度行われるレーティングゲームに助っ人として参加して欲しい。」

 

「レーティングゲームに? アタシらは悪魔じゃねえぞ?」

 

 

 

レーティングゲームとは、悪魔の間で人気を博しているゲームである。

爵位持ちの上級悪魔が自身を「王」として眷族をチェスの駒に見立て、対戦相手の駒と戦う遊戯であり、仲間を減らすことなく実戦経験を積める場。

参加できるのは基本的に成人した悪魔とその眷族なので、ライザーの眷族ではない上に悪魔ですらない銀とひなたが参加することはできない。

 

 

 

「その点は大丈夫だ。今回のゲームは非公式なゲームでな。立会人にも対戦相手にも助っ人の承認は貰っている。」

 

「対戦相手は何方なんですか?」

 

「グレモリー家の令嬢、リアス・グレモリーだ。知っての通り、俺と彼女は婚約者なのだが、本人がそれを拒否していてな。解決法としてレーティングゲームが提案された。」

 

「ん? ライザーはフルメンバーだし、アタシら必要なくねえか?」

 

銀が疑問を口にする。

 

レーティングゲームに参加できるのは、基本的に『王』の上級悪魔とその眷族だけ。

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)はチェスをモチーフにしているので、作れる眷族の最大数は15人まで。そのため、ゲームに参加できるのも1チーム最大16人までになる。

 

ライザーはすでに14人の眷族を持ち、レイヴェルも対外的には15人目の眷族である。

なので、普通なら銀やひなたに助っ人を頼む必要はない。

 

「少し事情があってな。俺の眷族は14人中8人が戦闘に参加できない。レイヴェルは父上から戦闘を禁止されているからな。」

 

「事情、ですか?」

 

「お恥ずかしい話ですが、私から漏れ出た神気にやられてしまったみたいですわ。」

 

「「ああ、なるほど……」」

 

銀とひなたは納得した。

 

ヤタガラスの神格の一部を継承したことでレイヴェルは半神半魔に至った。

そのため、彼女からは『神気』と呼ばれる神々の力の波動が放出されている。普段は冥界に住んでいるのでソレを抑え込むイヤリングが支給されているのだが、完全に抑え込むことができなかったらしい。

神気は悪魔にとっては毒であり、力の弱い悪魔では遠くに居ても身体を蝕まれる。

そのため、量は多くなくても少しずつ漏れ出していたレイヴェルの神気はライザーの眷族に蝕み、先日倒れてしまったらしい。

 

「悪魔には神気を除去する術がなくてな。自然に抜けて行くのを待つしかない。その最中にゲームが開催されることになってしまった訳だ。」

 

「それで、私たちに白羽の矢が立った訳ですね。」

 

ひなたの言葉にライザーとレイヴェルは頷く。

 

「アタシは構わないぞ。困ってる奴はほっとけないからな。ひなたはどうする?」

 

「そうですね…………今回は私も参加しましょう。」

 

「あら、ひなたさんは参加しないと思ってましたわ。」

 

「偶には身体を動かしたい時もあります。最近、出不精気味になってますからね」

 

『ひなたに銀が参加……対戦相手の方が可哀そうね。』

 

(そうだな。下手すると、アタシが出なくても片付くじゃないか?)

 

リヴァイアサンと銀は脳内でそんな会話を繰り広げる。

 

今でこそ、ひなたは裏方に回っているが、空狐族の里を襲撃した悪魔の追撃を受けていた頃は銀とひなたの2人が応戦していた過去がある。

そのことはライザーとレイヴェルの2人も知っているので、銀だけではなくひなたにも助っ人を要請したのだ。

 

「ゲームの日程は決まってるのか?」

 

「10日後、駒王学園で行われる。それと、ゲームは関係者以外には非公開にされるように手を回しておいた。」

 

「あら、用意がいいですね。」

 

「公開すると面倒な連中が騒ぎだしかねんからな。それくらいはさせてもらうさ。

 これでお前たちも思う存分、力を振るえるだろう?」

 

ライザーはニヤリと笑った。

 

 

 

それは10日後に控えたゲームへの絶対的な自信を含んでいた。

 




2章突入。
そして、キャラ改変(魔改造)第一号はレイヴェル。
原作より大幅に強化されて、この時点のグレモリー眷族では相手になりません。という訳で、レーティングゲームには不参加。

あと、本文中に出て来たシャルナ・フェネックスは当然ながらオリキャラです。2章で正式に登場するので、詳細はその時に。
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