ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第11話 「勇者と吸血鬼(後編)」

 

~駒王町 白鳥・藤森宅~

 

 

 

 

――――ズルズルズル……

 

 

 

 

「このお蕎麦美味しいです!!」

 

「ふふん♪ そうでしょそうでしょ。みーちゃんが作った蕎麦は世界一だもの!!」

 

「もう、うたのんたら……」

 

夜の帳が降りた頃。

歌野、水都の2人に加えてお客様のギャスパーの3人が水都特製の信州蕎麦を同じテーブルですすっていた。

 

「それより、うたのん。うたのんに言われた通りに作ったけど、いくらなんでも作り過ぎじゃないかな?」

 

まだ春先で夜は肌寒いため、作った蕎麦はかけ蕎麦という温かい蕎麦。

3人に対して、茹でた蕎麦はざっと5人前。昼食や夕食だったらまだしも、夜食として3人が食べるには少しばかり量が多い。

現に、水都のどんぶりを見てみると歌野、ギャスパーに比べて蕎麦の量が少ない。

 

「ノ―プログレムよ、みーちゃん。何故なら、私が2人前半食べるから!!

 ギャスパー君もまだまだ食べれるでしょ?」

 

「はい!! まだまだ食べられます!!」

 

そう言って、歌野とギャスパーは蕎麦をすする。

 

(この2人、すっかり仲良しだなぁ。ギャスパー君、人見知りみたいなのに……)

 

こうやって一緒に夜食を取る前、ギャスパーは水都と視線が合っただけで涙目になって、歌野の後ろに隠れたまま出て来ないという出来事が起こった。

歌野の存在に安心感を抱いているようで、ギャスパーの隣に歌野が座ることで水都とも普通に会話できるようになっている。

 

赤の他人のギャスパーがこうも簡単に心を許すのも歌野が高いカリスマ性を持つためだろう。

 

「ふぅ……ごちそうさま!!」

 

「ええっ!! うたのん、もう食べ終わったの!?」

 

どんぶりを覗いてみると、確かに歌野のどんぶりには蕎麦も薬味も残っていない。

ついさっき、宣言した通り、歌野は水都特製の信州蕎麦を2人半分完食していた。

 

「ふぅ……あっ、ギャスパー君も無理に合わせる必要ないわよ?」

 

「大丈夫です。無理はしてませんから。」

 

そう言って自分のペースでかけ蕎麦を食べ続けるギャスパー。

一方、歌野は箸を置いて、これまた自家製の蕎麦茶を手に食後の休憩に入る。

 

(それにしても、ギャスパー君ってこうして見ると女の子にしか見えないわね)

 

歌野はそば茶を飲みながらチラッと隣に座るギャスパーを見る。

 

薄い金髪は肩口ぐらいまでのセミロング、肌は色白で身体の線は細い。

おまけに女性服を着ているため、ギャスパーの見た目は10人中10人が「女の子」と答えてしまうような外見になっている。

 

しかしながら、ギャスパーはれっきとしたXY染色体の持ち主――つまり、男の子だ。

 

(うーん……みーちゃんの勘違いも解いておいた方がいいかなぁ? 私は仙術のおかげですぐに気づいたけど。)

 

水都は未だにギャスパーが女の子だと思っているが、歌野は初対面の段階で気づいていた。

 

歌野が気づいた理由は、ギャスパーが纏う陽の気である。

種族問わず男女はそれぞれ陰の気、陽の気を纏っており、それを誤魔化すのは非常に難しい。 通常、それを感じ取るのは不可能だが、仙術を会得した者は感じ取れる。

 

歌野も仙術を会得しており、気を感じ取ることができる。

 

「……? どうかしましたか?」

 

歌野の視線に気づいたのか、ギャスパーが箸を止めて尋ねる。

 

「いや、みーちゃんにギャスパー君が男だってこと、伝えておこうかどうか考えててね。」

 

「むぐっ!! けほっけほっ!! お、女の子じゃなかったの……?」

 

「私も最初はビックリしたわ。どうみても女の子にしか見えないもの。」

 

「な、何で女装してるの……?」

 

「だって、女の子の服の方が可愛いんだもん」

 

「それ、男の子としてどうなの…………?」

 

「良いじゃないの。個人の趣味嗜好なんて人それぞれだし。」

 

 

 

 

 

 

そんな一幕もあり、ギャスパーが蕎麦を食べ終えたのは、それから10分後。

食器の片付けを終えた3人はまた同じテーブルに着き、ギャスパーの身の上話を聞くことにした。

 

「「停止世界の邪眼(フォービドュン・バローンズ・ヴュー)?」」

 

「はい、それが僕の神器(セイクリッド・ギア)の名前です。えっと、能力は視界内の時間を止めることです。でも、うまく制御ができなくて…………」

 

「自分の意志とは関係なく発動する、って感じかしら?」

 

ギャスパーが頷く。

 

「強い力を持つ神器(セイクリッド・ギア)所有者には絶対に付きまとう問題ね。それが原因で命を落とす人も居るみたいだし。」

 

「そして、神器(セイクリッド・ギア)は大なり小なり所有者の運命を狂わせる。ギャスパーくんや私みたいに」

 

「僕は……こんな力なんて要らなかった!! この力のせいで、皆が止まっちゃう!! 怖がる!! 嫌がる!! 僕だって嫌だ!! 大切な友達が止まった姿なんて見たくない!!」

 

胸の奥に秘めていた心情を思いっきり吐露するギャスパー。その目尻には少し涙が溜まっている。

すると、水都がギャスパーを後ろから抱き締める。

 

「分かるよ、ギャスパーくんの気持ち。私も同じような経験があるから。」

 

「え……?」

 

そう言って、水都は右手のひらを広げる。

すると、彼女の手に黒いハードカバーの分厚い1冊の本が現れる。

 

「これは私の神器(セイクリッド・ギア)、【女神の魔導書(トリウィア・グリモワール)】。これを持ってたせいで私は腫れ物扱いされて、感情任せに村を焼け野原にしたこともあった。」

 

水都は前世の記憶を持っていたため、子供らしからぬ性格だった。

彼女の父親はそれだけでも気味悪がっていたのに、神器《セイクリッド・ギア》の存在がさらにそれを加速させた。

生まれた村はそれほど大きくない山村だったので、水都のことはあっという間に広まり、避けられるようになった。

 

それでも、彼女の母は自分の子を愛し、水都にとっても母親だけが唯一の陽だまりだった。

 

しかし、ある時。数年に渡って農作物の不作が続き、誰かが水都が原因だと言い始めた。それを否定する者は居らず、いつの間にか水都は不作の元凶とされてしまった。そして、村人は水都の排除に乗り出し、唯一の味方だった母親は娘を守るために命を落とした。

 

結果。水都の負の感情が爆発し、その感情に呼応した神器(セイクリッド・ギア)は村人丸ごと生まれ故郷である村を焼き払った。

 

「正気に戻った私が見たのは、焼け野原になった村。あの時ほど、自分の力に恐怖したことはなかったよ。」

 

当時のことを思い出しながら水都は語る。

 

「私もギャスパーくんみたいに制御ができなかったんだ。感情に反応して、神器(セイクリッド・ギア)が勝手に力を使う状況だった。だから、いつ私の感情が爆発して、同じことが起きるかと思うと怖かった。」

 

「水都さんは、どうやって乗り越えたんですか?」

 

「うたのんのおかげだよ。焼け野原になった村で1人閉じこもっていた私をうたのんが引っ張り出してくれた。」

 

「みーちゃんを説得するのはベリーディフィカルトだったわ。」

 

「それは謝ったでしょ? 」

 

「ふふ♪ まあ、それから一緒にトレーニングして、みーちゃんも無事に神器《セイクリッド・ギア》を操れるようになったの。だからね――――」

 

歌野はそこで一度言葉を区切って、ギャスパーに提案した。

 

「私たちと一緒に神器(セイクリッド・ギア)のトレーニングしない?」

 

「え……?」

 

「ほら、私たちってギャスパー君の力は効かないじゃない? こっちは1回経験してるし、いろいろアドバイスできると思うのよ。」

 

「でも、これ以上迷惑を掛ける訳には……」

 

「いいのいいの。困ってる人が居るなら、悪魔でも天使でも手を差し伸べる。それが私のポリシーだもの。むしろ、このまま放置する方が目覚めが悪いわ。」

 

「そうだよ、ギャスパーくん。それにね、この世界に迷惑を掛けることなく生きていける人は何処にも居ないよ。だから、頼ってくれても大丈夫だよ。」

 

「歌野さん、水都さん……」

 

すると、水都は【女神の魔導書(トリウィア・グリモワール)】のページを捲り、あるページに記されていた術を行使する。

 

「これでよし、と。これで勝手に発動することはない筈だよ。」

 

「え!? な、何をしたんですか!?」

 

「ギャスパーくんの神器(セイクリッド・ギア)に少し制限を掛けたの。ギャスパーくんの意志に反して、力が発揮されないようにしてあるよ。」

 

「い、今までどうやっても抑えつけられなかったのに…………」

 

「それがみーちゃんの魔導書の力なのよ。それがあれば、失われた神話時代の術を使えるようになるの。いや~、みーちゃんには色々手伝ってもらったよ。」

 

「ほとんど農作業関係だったけどね。いきなり雨降らせてって頼んできた時はビックリしたよ。他にも、雨続きだからしばらく天気を変えて、とか。」

 

「おかげで、去年はすくすく野菜が育ったわ。」

 

「せ、神器(セイクリッド・ギア)の力をそんなことに利用するなんて……」

 

「うたのんの頭の中は農業のことで一杯だからね。まあ、そんなうたのんのおかげで私も自分の力と前向きに向き合えるようになったんだけど」

 

「僕も…………そんな風になれるでしょうか。」

 

「オフコース!! 私たちと一緒にトレーニングすれば、絶対大丈夫よ!!」

 

「…………分かりました!! 歌野さん、僕に神器(セイクリッド・ギア)の制御法を教えてください!!」

 

「オーケイ。よろしくね。ギャスパー君!!」

 

「はい!!」

 

こうして、ギャスパー・ヴラディは歌野の下で神器(セイクリッド・ギア)のトレーニングをすることになった。

 

 

 

 

 

 

これがギャスパーの戦闘スタイルに大きな変革をもたらすことを歌野は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

 

「そういえば、どうして歌野さんには効かなかったんでしょ?」

 

「コレが守ってくれたのよ。」

 

歌野が見せたのは、藤のツルで作られた鞭。

表面は黒い皮でコーティングされているため、植物が原料だと分からなくなっている。外見は普通の鞭だが、強力な聖なる力が込められているのがギャスパーには分かった。

 

「これは“藤蔓之鞭”っていう神具なの。ある神様が鉄輪の操る神様との闘いで使った藤蔓と同じ力を持ってるわ。」

 

「神具…………?」

 

聞きなれない単語に首を傾げるギャスパー。

 

「神具はこの国のトップシークレットだから話せないわ。とりあえず、ギャスパー君の能力はこの鞭で無効化されたの。」

 

「世の中には、そんなものもあるんですね……」

 

 




時間がない……これからもっと忙しくなるのに……


なんか、みーちゃんの過去が暗くなっちゃった……。
うたのんとの接点をどうやってもたせるか思考してる間にかなり酷い経歴になっちゃったよ。いや、銀とひなたの場合も結構ひどいか。

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