ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第12話 「レーティングゲーム前日」

~駒王稲荷神社~

 

 

 

 

リアス・グレモリーとその眷族とのレーティングゲームを翌日に控えた日。

 

銀は神社の境内上空をまるで虚空を踏みしめるようにして、縦横無尽に跳び回っている。

怪我をしないように赤い勇者装束を纏い、その両足には濡れ羽色の翼が2枚生えた赤いブーツを生えている。

 

どんどんと高度を上げて、動きを複雑にしていく銀。

その真下にある拝殿では、ひなた、杏、珠子の転生者組が段差に腰かけて彼女が空中を走りまわる姿を見ている。

 

「なぁ、ひなた。銀の奴は何をしてるんだ?」

 

途中で合流した珠子は、銀が何をしているのか分からずひなたに尋ねる。

 

「飛行訓練ですよ。」

 

「リヴァイアサンの【複写】で空飛ぶ靴を作ったみたいだよ。」

 

「あ~……確か、イメージした物を自由自在に作れるんだっけか。」

 

「はい。ただ、物を複製するのと違って、一から作り上げるのは結構難しくて、あのブーツも結構前から試行錯誤してるんですよ?」

 

「そうなのか?」

 

 

リヴァイアサンが持つ能力の1つ、【複写】はモノの複製、変質など多岐に渡る。

この能力を行使するためには、力の源となる霊力の他にも“設計図”が必要になる。

但し、“設計図”と言っても、リヴァイアサンが便宜上そのように呼称しているだけで、図面などではない。どちらかというとプログラムコードに近い。

 

外観だけを真似るだけなら設計図も必要ないが、特殊な能力を宿している物を創造したり、複製するためには設計図が必要不可欠になる。

現物が存在する物は比較的簡単に設計図を入手することができるが、イメージから物質を創造する場合は設計図を一から作り上げる必要があるのでそれなりの手間がかかる。

 

以前、銀が使った透明マントも試行錯誤して設計図を完成させた一品である。

 

 

「名称は“鴉天狗の羽靴”。大気を足場にして、空を自由に走り回ることができるそうです。」

 

「それは便利だな!!」

 

「悪魔や天使、堕天使と違って妖怪は飛行手段を持ってる種は少ないからね。」

 

杏も珠子の意見に同意する。

 

この世界には多種多様な種族が存在しているが、有翼の種族は圧倒的に少ない。

特に、妖怪は有翼の種族が少なく、自由に大空を飛行することはできない。翼を持たない空狐族も同様で空を飛ぶことは不可能だ。

 

もちろん、何かしらの術で飛ぶことができる者も居るが…………

 

「そういえば、銀が今まで作った物ってどんなのがあるんだ?」

 

「うーん……私が知ってる限りだと、透明マントに勇者装束。他にも、弓や槍とかもあった筈ですよ。」

 

「あれ? 銀ちゃんの武器って、斧なんじゃ……」

 

「そうですね。メインは大きな斧ですが、弓も槍も扱えますよ? 銀ちゃん、1人で戦うことが多いですから、いろんな状況に対応できるように練習したそうです。」

 

「まさか銀にそんな一面があったとは………」

 

(あら? でも、銀ちゃん、里に居た頃から弓と槍の練習をしていたような…………)

 

「しかし、銀が羨ましいぞ。特に勇者装束!! タマと杏の勇者装束なんて、何の加護もない服だぞ!!」

 

「それは仕方ないよ、タマっち先輩」

 

 

 

杏と珠子が戦闘時、身に纏う勇者装束は銀のモノと違って何の変哲もない衣服である。

勇者システム起動時に纏う勇者装束ほどの防御力はないが、リヴァイアサンの能力で形成した銀の勇者装束は下級の堕天使や妖魔の攻撃なら、ビクともしない。

 

ちなみに、勇者システム起動時の勇者装束は中級の堕天使、妖魔の攻撃程度なら無力化できるらしい(開発者談)。

もちろん、衝撃等は貫通してしまうが……

 

 

 

「ふふ♪ そんな珠子さんと杏さんに朗報があります!! 実はですね――――」

 

 

ひなたが嬉しいお知らせを教えようとしたとき、広い神社の境内に紅蓮の炎が舞う。

 

杏と珠子は敵の襲撃だと判断し、金弓箭と神屋楯比売を構える。

一方、ひなたは何もせずに「あらあら、相変わらず派手な登場ですね~」と暢気に呟いている。

 

紅蓮の炎が鎮まると、そこには1人の少女が立っていた。

オレンジ色の髪は毛先の方が赤くなっており、燃え上がる炎を彷彿とさせる。

着ている服はブレザーに紺色のスカートと何処かの学生のように見える。

 

 

「誰だ、お前!?」

 

「私? 私はシャルナ・フェネクス。ひなたから聞いてると思ったんだけど……」

 

「シャルナ……確か、銀ちゃんの婚約者がそんな名前だったような……」

 

「そうそう。そのシャルナであってるよ。私が銀ちゃんの婚約者。」

 

「「…………ええええぇぇぇぇぇっ!?!?」」

 

駒王稲荷神社の境内に杏と珠子の絶叫が響き渡る。

 

「ぎ、銀に婚約者ぁぁ!?」

 

「お、女の子……? もしかして、同性愛者? でも、それはそれで……」

 

「杏!?」

 

「まあ、そんな反応になりますよね……」

 

「最近、この反応見るのが楽しくなってきたよ。」

 

「あんまりアタシの先輩方を驚かせんなよ、シャナ。」

 

「やっほー、銀。10日ぶり。」

 

空を飛ぶ練習をしていた銀が地上の騒ぎを聞き付けて降りてくる。

そして、自分の婚約者の格好を見て、ため息を溢す。

 

「お前、またそんな格好してるのか。」

 

「アルバイトでやってる間に癖になってね。やってみると楽しいもんだよ?」

 

「だから、女の子に間違われるんだろ……。ただでさえ、女の子っぽい顔立ちなのに」

 

「えっ? 間違われる……?」

 

「んん? 銀、そいつは女じゃないのか?」

 

「違いますよ、珠子さん。シャナ……シャルナは正真正銘の男です。」

 

銀から告げられた事実に、本日の2度目の絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「改めまして、私はシャルナ・フェネクス。銀の婚約者で、朱雀の後継者よ。」

 

珠子と杏が落ち着いた頃を見計らって、シャルナは自己紹介を始めた。

 

「こんな見た目だけど、性別は男。呼び名はシャナで良いよ。」

 

「捕捉しておくと、フェニックス家の三男坊でもあります。まあ、表向きは存在しないことになってますが。」

 

ひなたの捕捉に杏と珠子は首を傾げる。

 

「シャナは生まれながら神獣フェネクスの力を持ってたから、他の悪魔から命を狙われる可能性があったんだ。だから、厳重に秘匿されてるんだ。」

 

「私のことを知ってるのは、両親と兄弟。あとはその眷族たちだけ。かなり徹底していたから、あの魔王ですら私のことは知らないよ。」

 

「ん? そんな状態だったのに、どうやって銀と知り合ったんだ?」

 

「詳しく説明すると長くなるけど……簡単に言えば、私の妹と空狐族の子供が同じ悪魔に誘拐される事件が起こってね。その事件で銀と知り合ったんだよ。」

 

「一緒に解決して、しばらくするとシャナはアタシを探して、わざわざ人間界に来たんだ。それで、裏ルートで来たもんだから高天原に連行されたんだ。」

 

「いや~何せ、両親には内緒だったからね。今から考えれば、私もちょっと不注意だったわ。」

 

シャルナは当時のことを懐かしい思い出のように語る。

 

「何で、わざわざ銀ちゃんに会いに来たんですか?」

 

「私の妹、レイヴェルが事件の後、体調不良を起こしてね。それがずっと続くし、時間が経つにつれて症状が悪化するものだから、何か知ってるかと思ったのよ。」

 

「それでレイヴェルを治療する代わりに、シャナは朱雀の後継者に就任することになったんだ。」

 

 

ちなみに、レイヴェルの体調不良は誘拐犯の実験の影響で悪魔には存在しない霊力炉が形成されたことが原因だった。これがきっかけで八咫烏の後継者に選ばれるとはフェニックス家の人々は予想だにしなかっただろう。

 

 

「さて、思い出話はまた後日にして。シャルナさん、例の物を持ってきてくれたんですよね?」

 

「そうそう。はい、これ。」

 

シャルナは机の上に大きなバックを置き、それを開く。

 

バックの中に入っていたのは、外観がまったく同じ2台のスマートフォン。

それぞれのスマホには杏、球子の2人の名札が貼られている。

 

「これってもしかして……」

 

「そうだよ。銀ちゃんが使ってる勇者システムを内蔵したスマホ。」

 

「でも、なんでタマたちに勇者システムが支給されたんだ?」

 

「私から進言したんです。銀ちゃんだけでは手が足りなくなる可能性がありますから。」

 

実際に、アーシアの一件では人手不足が露見し、アーシアを守ることができなかった。

ひなたはそれを交渉材料にして、高天原の神々に勇者システムの増産を進言。同時に、球子、杏の2人を勇者に推薦したのだ。

〈浄玻璃の鏡〉を借り出し、2人の人格に問題はないことが証明されたので正式に勇者として高天原に登録されたのが2日前のことだったりする。

 

「それと、銀ちゃんのスマホ貸して。」

 

「? いいけど、何するんだ?」

 

「勇者システムのアップデートを、ね。」

 

そう言って。シャルナは銀のスマホにUSBメモリを接続し、勇者システムのアップデートを開始する。

 

「今回のアップデートで、勇者システムが龍脈の範囲外でも使えるようになったよ。まあ、使用者の霊力を使うから、そんなに長くは使えないけど。」

 

「ちなみに、銀ちゃんの場合だとどれくらいの時間使えるんですか?」

 

「開発部の試算だと、1時間が限度かな。機能を制限して使えば、長く維持できるよ。」

 

「アタシで1時間か……短いような長いような」

 

「精霊関係は結構な霊力を使うから、仕方ないと思うよ? ――――っと、終わったよ。」

 

会話している間にアップデートは完了し、銀の手元にスマホが戻ってきた。

試しにアプリを起動すると、いくつかのアイコンが追加されていた。

 

「アップデート内容はアプリの説明書に書いてあるから、目を通しておいてね。」

 

「分かった。ありがとうな、シャナ。」

 

「これくらいお安い御用さ。明日のレーティングゲーム、頑張ってね。」

 

「おう!!」

 

 

 




本来、神獣のフェニックスと悪魔のフェニックスが同時に出る際は区別する際に神獣の方をフェニックス、悪魔の方をフェネクスと呼称します。しかし、この作品では逆にしています。


ちなみに、勇者装束の防御性能ですが……
リヴァイアサンの能力で作った場合=のわゆ世代の性能
勇者システムを起動した場合=わすゆ世代の性能

―――という感じにしています。

ゆゆゆ世代だとチート性能すぎるので。
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