ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第3章 銀と堕天使の幹部
第16話 「襲撃」


~高天原 日輪の社~

 

八百万の神々が住まう異空間――高天原。

 

無数に存在する社の中で、太陽に一番近い位置に〈日輪の社〉は浮かんでいる。

言わずもがな、天津神のトップである天照大神が住む社であるが、今日は彼女の社に少しばかり珍しい面々が顔を合わせていた。

 

「こうやって、顔を合わせるのは久しぶりですね。」

 

「ああ。アイツの葬式以来になるのか?」

 

「そうですね。ちなみに、彩花は根の国で楽しくやっているようですよ? 最近では、母君の補佐になられたそうです。」

 

「ほう、さすがは俺が惚れこんだ女だ。」

 

他の面々そっちのけで思い出話に花を咲かせる天照大神とくすんだ金髪に黒いメッシュが掛かった短髪の男性。

そのまま思い出話がヒートアップする前に天照大神に招かれた大国主命が口を挟んだ。

 

「思い出話なら後にしてくれ。それだけのために俺を呼んだ訳じゃないだろ。」

 

「せっかちだな、お前は。」

 

「そうですよ。久しぶりに会った旧友との交流を温めて何がダメなのですか。」

 

「ダメとは言わんが、時と場合を考えろ。何のために俺を呼んだんだ。」

 

「仕方ねえ。思い出話は後にして、本題に入るか。」

 

ゴホンと咳払いして、話題を変える男性。

ほんわかしたムードからシリアスな雰囲気に変わり、姿勢を崩していた天照大神も姿勢を正す。

 

「少し前のことだ。グレゴリの幹部、コカビエルが教会を襲撃し、エクスカリバー3本を奪取して行方を眩ませた。」

 

「コカビエル……確か、グレゴリ幹部随一の武闘派だったか?」

 

「ああ。同時に大の戦争好きで、休戦には大反対していた。今回の騒動もおそらくは大戦の再開が目的だろう。」

 

〈二天竜〉の乱入によって、休戦となった三つ巴の大戦。

しかし、休戦に全員が賛成した訳ではなく、どの勢力も大なり小なり戦争の再開を望む者が存在している。グレゴリの幹部であり、聖書に記された堕天使コカビエルもその1人だ。

 

「目的地は駒王町か? あそこには現魔王の妹2人が居たはずだ。」

 

「俺はそう睨んでいる。だから、こうやって秘蔵っ子も連れてきた。あともう1人、後から合流する手はずになっている。」

 

男性に紹介され、黒い長髪の少女は2柱の神に向かって軽く頭を下げる。

 

「今回の騒動は俺の責任だ。できれば俺たちの手で決着をつけたい。」

 

「なるほど……分かりました。今回の件、アザゼルに一任しましょう。大国主もそれでいいですね?」

 

「構わん。だが、被害が大きくなる場合は介入させてもらうぞ。」

 

「ああ。」

 

「それでは、餞別といってはなんですが、これを。」

 

天照大神が指を振ると、三方に乗せられたスマホが浮かび上がり、少女の手に収まる。

それを受け取った少女の表情が少し強張った。

 

「貴女にとっては良い思い出がない物かもしれません。使うも使わないのも貴女次第です。」

 

「そうね。確かに、あまり良い思い出がないのも事実だわ。」

 

終始無言だった少女が初めて口を開いた。

スマホのタッチパネルを操作し、彼岸花のアイコンをタップする。

 

システムが起動し、少女は深紅の衣装をその身に纏った。

 

「でも、この力があったからこそ、得られたものもあった。」

 

そう言って、新たな勇者は笑った。

 

「私は、勇者 郡 千景。」

 

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

高天原で新たな勇者が誕生している頃。

〈駒王稲荷神社〉では結界が構築され、内部では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「はぁ、はぁ……さすがに強いな。」

 

「くくく……それはこちらのセリフだ。まさか、極東の地にこれほどの強者たちが居るとは思わなかったぞ。」

 

駒王町とその周辺を流れる龍脈の制御施設〈駒王稲荷神社〉。

日本神話体系の管理下にあるその施設を襲撃したのは、12枚の漆黒の翼を生やした堕天使――コカビエル。

 

『エノク書』では、天使だった頃は全ての星や星座の配置・運行を司り、堕天した後は人類に占星術や星座について教えたとされている。

さらには、多くの〈神の子を見張る者(グリゴリ)〉幹部が亡くなった大戦を生き残った実力者であり、さすがの銀たちも苦戦を強いられていた。

 

さて、コカビエルがなぜ〈駒王稲荷神社〉を襲撃したかと言うと…………

 

「龍脈の占領など楽な仕事だと思ったが、こんな嬉しいことがあるとはな!!」

 

そう、彼の目的は龍脈を占領すること。

詳しい目的が分からないが、日本神話の神々から龍脈の管理を任されている以上、銀たちは引き下がる訳にはいかない。

 

「さぁ、もっと俺を楽しませろ!!」

 

コカビエルは光力で編んだ剣を両手に握り、突撃を仕掛ける。

 

「させない!!」

 

「この程度、片腹痛いわ!!」

 

杏は〈金弓箭〉から妖力の矢を幾重に放つ。

しかし、コカビエルはその全てを光剣を弾き、足止めにすらならない。

 

そこに銀が割込み、右手の斧で光剣を受け止める。

すぐさま左手の斧を振るうが、コカビエルは10枚の翼を広げて距離を取る。

 

「そこだ!!」

 

「そんな攻撃で俺を傷けられると思っているのか!!」

 

珠子の投げた旋刃盤とクロスボウガンから撃ち出された矢がほぼ同時に放たれる。

流れるような連携に対し、コカビエルが背中の翼を鋭利な刃物のように変化させて、2人の攻撃を無力化する。

 

「結!!」

 

「むっ、結界か。」

 

足を止めた瞬間を狙って、ひなたがコカビエルを結界の中に閉じ込める。

 

「なるほど、そこの娘は結界術師だったか。その年にして、これだけの結界を張れるか」

 

コカビエルは強度を確認するようにコンコンと結界を叩く。

結界は幾重にも重なっており、そうそう簡単には壊せそうにない。普通の上級堕天使なら出られないだろうが、歴戦の猛者であるコカビエルなら破壊することもできるだろう。

それでも、銀と杏が強者を倒すための大技を繰り出す準備を整えるには十分だ。

 

「結界を破壊した瞬間に一斉攻撃を仕掛けるつもりか……なら、その目論見ごと壊してやろう。」

 

コカビエルは両手を前に出し、光力を集束させる。

形成された光の槍は標準的なサイズだが、それに込められた光力が尋常ではない。

 

「さぁ、耐えれるか?」

 

「っ!!」

 

ひなたが更に結界の数を増やして、耐久力を上げる。

それでもコカビエルの一撃は結界を貫いて行き、地面に突き刺さる。

刹那、地面に刺さった光の槍は爆弾のように大爆発を起こして、爆心地周辺を薙ぎ払った。

 

「さすがに死んだか。 本気を出し過ぎたかもしれんな。」

 

爆発の影響で舞い上がった土煙で地上の様子が見えなくなってしまった。

 

 

先ほどの攻撃はコカビエルの全力の近い一撃だった。

かつての大戦では、幾度となく放った一撃であり、今のご時世では防げる者など片手で数える程しか居ない。それゆえに、彼は銀たちが死んだと考えた。

 

「さっさと龍脈を占拠するか。まあ、いい余興になった。」

 

そう呟いて、コカビエルは土煙が収まらない内に高度を下げる。

完全に臨戦態勢を解除し、戦闘はすでに終了していると考えているようだ。

 

 

 

――――来て、雪女郎!!――――

 

 

 

刹那、土煙を貫いて冷気と吹雪が一条のレーザーが放たれる。

 

「ぐおっ!!」

 

不意打ちに近い攻撃に反応したものの、完全に油断していたコカビエルはその攻撃を避けきることはできず、左腕を掠めてしまった。

しかし、掠めただけでコカビエルの左腕全体と左側に生えている5枚の翼が氷漬けにされ、強制的に地面にたたき落とされる。

 

「な、何だ今の攻撃は……この俺の一部を氷漬けにするなど魔王級でもないと不可能だぞ!?」

 

今まで余裕に満ちた態度を崩さなかったコカビエルが初めて動揺を見せた。

 

彼の分析では、彼女らの実力は最上級悪魔にも匹敵する程度。

1対4という人数的に不利な状況であっても苦戦することはあっても負けることはないと思っていた。しかし、そんな相手から放たれた一撃は最上級悪魔の上、魔王級に匹敵する。

 

その事実は彼の余裕と自信を崩すには十分だった。

そして、冷気を帯びた風が吹くと土煙が晴れて、4人の姿が露わになった。

 

「くくく……くはははは!!!! 本当にお前たちは俺を楽しませてくれるな!! そんな隠し玉があるとは予想だにしなかったぞ!!」

 

コカビエルは龍脈の制御機関でもある〈駒王稲荷神社〉も吹き飛ばすつもりで攻撃を放った。

 

その証拠に神社の鳥居や周囲の木々は吹き飛ばされ、爆心地には大きな穴が開いている。

しかし、本体である社は無傷で守り手である4人の少女も傷1つなく健在。

 

そして、〈金弓箭〉を携えた伊予島 杏の衣装に少しばかり変化が生じていた。

猫又の特徴である猫耳と二股に分かれた尻尾が生えているのはもちろん、白を基調にした勇者装束の上に白い頭巾と白い振りのある袖が追加されている。

 

「さぁ、第2ラウンド開始と行こうか!!」

 

コカビエルは左腕の氷を砕き、両手に槍を形成する。

 

「っ!!」

 

杏はクロスボウガンの照準をコカビエルに向けて、引き金を引く。

妖力の矢の代わりに、冷気と吹雪が一条のレーザーのように再度放たれた。

 

「やはり、さっきの攻撃は貴様だったか!!」

 

杏の攻撃を避けた後、光の槍を投擲するコカビエル。

 

「杏には指一本触れさせない!!」

 

すぐさま珠子が杏の前に立ち、旋刃盤で光の槍を防ぐ。

その間に、杏は再度コカビエルに向かって、冷気と吹雪を放つ。

妖力の矢よりも速度は遅いため、動き回るコカビエルには簡単には当たらない。

 

「さっきは不意をつかれたが、2度目はないぞ!!」

 

「いいえ、当たらなくても良いんです。」

 

「負け惜しみか!!」

 

再度コカビエルが光の槍を投擲する。

 

「珠子さん、私も手伝います!!」

 

ひなたが加勢し、珠子の〈神屋楯比売〉と結界の【霊術】の力で凌ぐ。

 

「さぁ、それで何時まで耐えられるかな!!」

 

同じ攻撃をひたすら繰り返すコカビエルだが、その単調な攻撃の威力は絶大。

気を抜いて当たったりすれば、無事では済まないのは間違いない。

 

「後ろの建物ごと貫いてやろう。」

 

再び光力を集中させて、自身の最大火力をぶつけようとするコカビエル。

しかし、彼女たちはその瞬間を待っていたかのように勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

「「「銀(ちゃん)!!!!」」」

 

「待ってたぜ、この瞬間を!!」

 

いつの間にか銀はコカビエルの左側面に居た。

両手に握りしめた二振りの斧はすでに振り下ろされようとしており、光力の制御に集中していたコカビエルはその攻撃を甘んじて受け入れるしかなかった。

 

「貴様は…………!?」

 

「タイラント・ブレイク!!」

 

銀の斧がコカビエルの体に初めて傷を入れた。

コカビエルの胴体には×字型の傷が刻まれ、血が噴き出す。

やっとの思いで与えたダメージは大きいらしく、さすがのコカビエルもたたらを踏んで後ずさる。

 

「ここまでの傷を負わされるとはな……」

 

「アンタ、途中から杏さんの方にばかり視線が行ってたからな。不意打ちするのは簡単だったぜ。」

 

「確かに……どうやら俺も腕がすっかりさび付いていたようだな。危険人物に集中しすぎて、足元を掬われるなど大戦ではやらかさなかったヘマだ。」

 

コカビエルは自嘲的な笑みを浮かべた。

 

銀の奇襲が成功したのは、彼が杏の存在に意識を持っていかれたからだ。

魔王クラスの一撃を放てる彼女を警戒する余り、他のメンバーのことまで警戒が行かず、視界外に移動していた銀に気付かなかった。

 

結果、それが自分の首を絞めることになった。

 

「俺はお前たちを過小評価していたようだ。お前たちは―――――」

 

コカビエルの認識が切り替わる。

 

 

 

 

 

「俺が本気を出して、相手をするのに値する『敵』だ。」

 

 

 

 

 

銀たちが単なる『余興』から『敵』に変わる。

それなりに深いダメージを与えられたにも関わらず、戦意は衰えず、むしろ薪をくべた炎のように燃え上がる。

 

(アタシのはまだ調整が済んでないけど、使うしかないか!!)

 

コカビエルの全身から放たれるオーラに耐えながら、銀も覚悟を決める。

 

先ほど、杏が使った勇者システムの『切り札』。

当然ながら銀の勇者システムにも同様のモノが搭載されているが、彼女の場合には少しばかり念入りな調整が必要なため、〈高天原〉からなるべく使用しないように厳命されている。

 

しかし、本気を出したコカビエル相手に温存している余裕はない。

 

「来い、鈴鹿―――――」

 

 

 

――――――そこまでよ、コカビエル――――――

 

 

 

 

銀が『切り札』を発動させようとしたその時。

ひなたが張った結界の一部に穴が開き、そこから新たな堕天使が舞い降りた。

 

翼の数はコカビエルと同じ2対10枚。

彼岸花を彷彿させる深紅の衣装に身を包み、頭頂部にはヒガンバナの花飾り。

さらに後ろ腰には日本刀と思われる1本の剣が装備されている。

 

「郡 千景……!! アザゼルの差し金か!?」

 

「ええ、そうよ。貴方を無理やりにでも連れ戻すように言われたわ。」

 

「くっ……この状況で貴様とやり合うのは愚策か……ここは引かせてもらうぞ!!」

 

コカビエルは光の槍を地面に叩きつけ、土煙を起こす。

濃い土煙は5人の視界を塞ぎ、コカビエルが逃走する時間を作るには十分だった。

 

「逃げられたわね。まあ、あの傷ならしばらく動かないでしょ。」

 

千景はそう呟いて、すっかり荒れてしまった地面に降り立つ。

そして、銀たちの方を向いて、少しだけ笑みを浮かべて言葉を発した。

 

「久しぶりね。伊予島さん、土居さん、上里さん。」

 

この日、かつて勇者の力をはく奪された少女は再び勇者の力を手に入れ、かつての仲間たちと再会した。

 




ストックを溜めていたら、いつの間にか一か月。
(待っていた人はそんなに居ないと思いますが)お待たせしました。

宣言した通り、今回からあとがきで原作から変更が加えられたキャラクターの紹介をしていこうと思います。一応、登場した順番で掲載していく予定。


――――――――――――――――――――――――――――

三ノ輪 銀
種族:空狐(6本尾)
所属:高天原
武器:斧、槍、弓、霊術【放射】、空狐族の能力、リヴァイアサンの能力

空狐族の族長を務める12歳の少女。ひなたとは幼馴染の関係。
神世紀の世界から転生した元勇者であり、現在は駒王町を拠点に活動している。
性格は前世と変わらないが、ひなたや相棒の影響で頭が良くなっている。また、不幸体質も相変わらずであるものの、因幡の白兎から貰ったお守りのおかげで軽減されている。

前世と同じく、三ノ輪 銀と名乗っているが、今世での名前はまた別にある。
基本的な戦闘スタイルは双斧を使った近接格闘戦。他にも、槍や弓を使える。
相棒は〈蒼海の覇龍〉と呼ばれたリヴァイアサンで、彼女の能力を使うことができる。

勇者システムのサポート精霊は鈴鹿御前。
六神通の1つ、神足通を保有。
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