アタシ、三ノ輪 銀の意識がはっきりしたのはこの世界で2歳になった頃。
それまでも意識があったんだけど、夢見てるような、まどろんでるような感じだった。
2歳になってようやく意識がはっきりしたんだけど、それからは驚きの連続。
鏡を見たらアタシの頭には耳が生えてるし、おまけに尻尾も生えてる。
しかも、神樹さまは居なくて、未知のウィルスも蔓延していない。だから、バーテックスも居ない。その代わりにアタシのような空狐な存在がいっぱい居る。
本当に衝撃の事実ばかりでビックリしたね。
でも、一番驚いたのは父ちゃんがアタシが転生者だというのを知ってたこと。
何でも、父ちゃんは六神通の1つ、天眼通を持ってるから分かったらしい。
天眼通はヒトの前世を見ることができるから、生まれた時からアタシが異世界からの転生者だということを知っていたらしい。
何とか隠し通そうとしていたアタシがバカみたい思えたね。
まあ、そのおかげで色々自由に動き回れるようになったのはラッキーかな?
最初の頃は色々苦労したな~。
この身体、ものすごくハイスペックだから前世と同じ感覚で動けないんだ。簡単に言えば、常時勇者システムを起動させてるような感じでさ。他にも聴覚とか視覚とかも強化されてるから、慣れるまで大変だったよ。
身体に慣れた後は、父ちゃんから秘術を教えて貰って……あの日がやって来た。
世界が変わってもアタシは戦う運命からは逃れられないみたいだ。
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~駒王稲荷神社~
「う~……リヴァイアサン、そろそろ終わりにしないか?」
『まだよ。ほら、あとは確認だけだから、頑張りなさい。』
「は~い……」
駒王町の森の中にひっそりと佇む駒王稲荷神社。
銀を筆頭とする空狐族の生き残りは、管理者不在のその神社を自宅にしている。
そして、その一室では族長である銀が相棒のリヴァイアサン監視の許に勉学に励んでいた。
『では、聖書に記された3大勢力は?』
「悪魔、堕天使、天使の3種族だろ? 最初は悪魔と堕天使が冥界の覇権を争ってて、そこに天使が介入したんだよな?」
『正解。じゃあ、その三つ巴の大戦に乱入して3勢力共闘のきっかけを作ったのは?』
「ドライグとアルビオン。通称、二天龍。」
『またまた正解。ちなみに、私も〈外典の天龍〉って呼ばれてたよ?』
「何回も聞いたよ、それ。」
実体があったら、胸を張っているだろう相棒の言葉に銀は苦笑い。
銀の相棒――リヴァイアサンは、彼女の身体に精神を相乗りしている。
かつて聖書に記される最強の怪物であり、〈海龍帝〉と称された彼女は生みの親である神様によって殺された。しかし、彼女は己の魂を左目に移し、生きながらえていた。
銀の左目はそのリヴァイアサンの瞳であり、空狐族の間で秘匿されていた秘宝でもある。秘宝が里の襲撃者の手に渡ることを恐れた銀の父親は、精神が共存する可能性に賭けて、娘に託した。結果、三ノ輪銀という肉体に二つの精神が存在する形になったのだ。
ちなみに、彼女らの仲は極めて良好である。
「あっ。そういえば、リヴァイアサン。」
『ん?』
「リヴァイアサンと二天龍って知り合いなんだよな?」
『ええ、そうよ。』
「二天龍が三つ巴の戦いに乱入したのは、ケンカの邪魔されたからって言ってたけど、そもそもケンカの理由って何なんだ?」
『さあね。昔からあの2匹はケンカばかりしてたから、何が理由なのかよく分からないわ。ああ、でも……乱入してきた時、あの2人はいつも以上に怒ってたわね。』
「そのケンカが今も尚、続いてるって本当に何があったんだろうな。」
『本人に会った時に聞いてみれば? 空狐の寿命は長いんだから、出会うこともあるでしょう』
空狐族の寿命は長く、少なくても3000年以上は生きることができる。
もっとも、この世界では長命な種族が多数存在するため、特段長い訳ではないが。
「お二人とも、ちょっといいですか?」
銀が勉学に励んでいると、襖を開けて1人の少女が入って来た。
黒い髪をストレートに伸ばし、赤と白の巫女装束の上に千早。
身長は銀よりも高く、年上に見える。頭頂部には黒い狐耳が生えており、7本の尻尾が顔を覗かせていることから、彼女も銀の同類であることが窺える。
彼女の名前は上里 ひなた。
類い稀ない霊媒資質を有する空狐族の一員であり、銀のサポートをしている少女である。
「おっ、ひなた。どうかしたのか?」
「高天原からの呼び出しです。至急来て欲しいそうです。」
「高天原から? 何かあったのか?」
「そこまでは聞かされていません。直接、伝えたいそうです。」
「オッケー、分かった。じゃあ、勉強はここまでにして……ひなた。」
「はい。」
勉強道具を片付け、銀はひなたの手を握る。
銀が持つ神通力――【神足通】は、直接触れている相手と一緒に転移することができる。
しかし、無制限という訳ではなく、一度に転移できる人数は限られている。ちなみに、銀の力量で一緒に転移できる人数は2人までだ。
「神足通・日輪の社!!」
風景が一変して、屋内から屋外になる。
2人の目の前には大きな神社の本殿が威風堂々と聳え立っている。
ここ、高天原はいくつもの島が浮遊している。
無数にある島1つ1つに社が建てられ、それぞれ日本神話体系に所属する神霊が住んでいる。そして、2人が居る〈日輪の社〉には高天原の指導者――天照大御神が住んでいる。
「空狐族、三ノ輪銀及び上里ひなた、参りました。」
「ご苦労様です。突然お呼びして申し訳ありません。」
本殿から現れたのは、白と赤の豪奢な着物に身を包んだ黒髪の女性。
頭には太陽をモチーフにしたヘッドアクセサリーを身に付けており、首飾りとして勾玉を掛けている。
彼女こそ、高天原の最高指導者にして太陽を司る主神、天照大神その人。
銀たち空狐族を保護してくれた恩人であり、生活の援助してくれている後援者である。
「元気そうでなりよりですね。」
「この度の召喚の理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
「ひなたは相変わらず素っ気ないですね~」
素っ気ないひなたの態度に天照大御神は苦笑いを浮かべる。
「では、さっそくですが、本題に入りましょう。実は先日、事代主神から託宣がありました。」
「どんな内容なんですか?」
「駒王の地にて、赤き龍覚醒の兆しあり。つまり、駒王町に赤き龍の力を宿した者が居ることが判明しました。」
「「!!」」
事代主神から齎された託宣の内容に2人は驚愕する。
〈赤き龍〉という称号を冠する生き物はこの世界において一匹のみ。
ウェールズの伝承に登場し、国旗にもその姿が描かれる赤いドラゴン――〈赤龍帝〉ドライグ。
つまり、大戦時に聖書の3勢力共闘のきっかけを作った二天龍の片割れだ。
「さらに言えば、駒王町に堕天使の集団が侵入したという報告もあります。」
「……あれ? でも、駒王町って悪魔の土地でしたよね?」
「はい。ですが、管理者であるリアス・グレモリーはまったく動いていません。」
天照大御神はため息を溢した。
駒王町は表向きリアス・グレモリーという悪魔の少女が管理者を務めている。
管理者は領土への不法侵入者の対処を担当するのだが、堕天使の一団が不法侵入しているにも関わらず、動く気配を見せていない。
「おそらくですが、堕天使も赤き龍の存在に気付いたと思われます。」
「……それで、私たちはどうすればいいのでしょうか?」
「特に何も? 今回、呼び出したのは注意喚起だけですから。
但し、侵入した堕天使の行動次第ではお二人に討伐をお願いするかもしれません。」
態度を変えないひなたに対しても、天照大御神は笑顔を向ける。
「あっ、天照様!! 子供たちは元気ですか?」
「はい。お預かりした子供は咲耶姫がしっかり面倒見ています。すくすく成長してますから、安心してください。」
「それなら良かったです。」
あの惨劇の日を生き延びた空狐族全員が神社で暮らしてる訳ではない。
駒王稲荷神社に住んでいるのは、銀やひなたを含めて総勢10人。俗に年長組と言われる子供たちだけが駒王町に住んでいる。
それより年下の子供については、子育ての神様――木花咲耶姫が自分の領土で育てている。時折、年長組も育児所を訪れて木花咲耶姫の手伝いをしている。
「それでは、私はこれで。良かったら子供たちに会ってきてくださいね。」
そう言い残すと、天照大御神は社の中へと戻っていった。
「ひなた~、まだ心の整理はつかないのか~?」
「ごめんなさい、銀ちゃん。」
「まあ、あの人も気にしてる様子はないし、別に良いけどさ……その過去についてはまだ話してくれないのか?」
ひなたが恩人である天照大御神に対して、素っ気ない態度をとる理由は彼女の過去に生じた因縁が関係しているらしい。
ただし、彼女はその過去の因縁を幼馴染の銀にすら話そうとしない。
「ごめんなさい。心の整理がついたら、話しますから。」
「ん~……わかった。ひなたを信じて待つよ。」
銀とひなたは再び神足通を使い、人間界に戻るのだった。
プロローグを読んでいただいて、ありがとうございます。
しばらく小説執筆から離れていたため、リハビリとして書きました。
完全な自己満足作品なので、正直のところクオリティは今一だと思いますが、これからも読んで頂けると嬉しいです。
リアルでどれだけ時間を確保できるか分からないので、不定期更新になります。何とかエタらないようにしたい(とか言いつつエタってる作品がいくつもあるのは気にしない方向で)
ちなみに、銀ちゃんを主人公にしたのは私の好きなキャラだからです。
(他には、郡ちゃんと歌野ちゃん、園子ちゃん)