ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第2話 「はぐれ悪魔討伐」

~駒王稲荷神社 裏庭~

 

レイナーレが銀に保護されてから数日後。

 

駒王町に住む空狐族の拠点である神社の裏庭に銀たちは集結していた。

裏庭には、木々を切り拓いて作られた畑が一面に広がっており、一族総出で育てた春の野菜が収穫の時を迎えていた。

 

「収穫の時間だー!!」

 

――――おおーッ!!!

 

銀の号令に一族の皆が鎌やスコップを掲げて答える。

そして、全員一斉に丹精込めて育てた野菜を収穫に取り掛かる。

 

小さい頃から農作業をしていた彼らにとって、収穫作業は慣れたモノだ。

ある者はスコップを持って土の下にある野菜を掘り起こし、ある者は鎌を持って野菜を一つ一つ丁寧に刈り取っていく。

 

「今年も豊作ですね、銀ちゃん。」

 

「高天原特製の肥料使ってるからな。毎年豊作な上に味も良し。

 その代わり、虫が付きやすいのが欠点だけどな。」

 

ひなたと銀は話しながら自分の作業を続ける。

 

ひなたは収穫された野菜を段ボールに詰め、銀はスコップを手に野菜を掘り起こす。

他の子どもたちもわいわい騒ぎながらも自分の作業を着々と進めていく。

そして、収穫作業が終わったのは正午を少し過ぎた所だった。

 

「じゃあ、アタシはこの野菜を届けてくるよ。」

 

お昼ご飯を済ませ、数時間程休憩した後、銀はリアカーに段ボールを積んである場所に向かおうとしていた。

 

「お願いします。彼女のことは任せてください。」

 

「任せた。」

 

ひなたの言う『彼女』とは、先日保護したレイナーレのことだ。

銀が冥界のダンジョンより持ち帰った秘薬のおかげで、瀕死状態を抜け出した彼女はいまだに目を覚ましていない。

 

「あっ、銀ちゃん。そろそろお米がなくなりそうなので、買ってきてもらえませんか?」

 

「ん、分かった。」

 

銀は段ボールが一杯積まれたリアカーを引いて、町の方に向かう。

神足通を使えば一瞬で到着するのだが、今回の目的地は一般の人が出入りする場所。

そのため、自分の足で向かうしかない。

 

「~♪~♪~♪」

 

鼻歌を歌いながら、森の中を進む銀。

人一人ぐらいしか通れない道を進み続け、森を抜けると栄えた街並みが彼女を出迎える。

尻尾と耳を見えなくして街の中を更に進むと、ようやく目的地が目に見えた。

 

古風な民家を思わせる外観の建物。その前に並ぶのは色とりどりの野菜や果物。

『現在、準備中』の立て札の向こう側では、2人の少女がせっせと商品の陳列を行っている。

瓦屋根には大きく〈白鳥農園〉という文字が掛かれた看板が取り付けられている。

 

銀は作業中の少女2人に声を掛けた。

 

「歌野さーん、藤森さーん!! 持ってきましたよー」

 

「おっ、ジャストタイミング!! こんにちは、銀ちゃん。」

 

「こんにちは。」

 

作業の手を止めて、出てきたのはこのお店―〈白鳥農園〉を経営する2人組の少女。

黒髪ショートヘアーの少女――白鳥 歌野と茶髪のショートヘアーの少女――藤森水都。

 

「今日も持ってきましたよ。ウチで採れた新鮮な野菜!!」

 

「グレイト!! 相変わらず、良い野菜ね。前に持ってきてくれた野菜もあっという間に売り切れたし、今回も期待大ね。」

 

「うたのん、あんまり時間がないから手短にね。」

 

「あっ、ソーリー、みーちゃん。」

 

「何かあったんですか?」

 

「うん。今日売りに出す商品の到着が遅れてね。それで今、うたのんと大慌てで準備してるの。」

 

銀の質問に水都が答える。

 

彼女らが営む〈白鳥農園〉は、駒王町ではそれなりに名が知られている青果店だ。

店主である歌野が育てた野菜や他の農家から委託された農作物を取り扱っている店で、銀も神社の裏庭で育てた野菜や果物を卸している。

 

予定なら他の農家から販売を委託された農作物がもっと早く到着する筈が、交通渋滞の影響で予定より遅刻。搬入物の受け取りを終えたのがついさっきらしい。

 

「なんてハプニング。今日は特に売りに出す商品が多いのに……」

 

「歌野さん。アタシで良ければ手伝いますよ!!」

 

「本当!?」

 

「はい!! 歌野さんにはお世話になってますから!!」

 

「それは助かるわ!! みーちゃん、頼もしい援軍よ!!」

 

「うん!! 急ごう!!」

 

3人は開店時間に向けて、一致団結するのだった。

 

 

・・・

 

 

・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「いや~、銀ちゃんのおかげで間に合ったよ。」

 

「本当。一時はどうなるかと思ったよ。」

 

数時間後。銀は歌野と水都の2人と夕飯のご同伴に預かっていた。

品出しの手伝いの後、そのままお店の手伝いをしていたため、帰る時間が遅くなってしまった。そして、帰ろうとした時、夕飯を一緒に食べようと誘われて今に至る。

 

「んー♪ この蕎麦おいしい♪」

 

「そうでしょそうでしょ。何せ、本場の製法をきちんと学んできた上に使ってる素材はわたしが天塩掛けて育てた逸品よ。」

 

「でも、アタシはやっぱりうどんの方が好きだなー」

 

「おっと。蕎麦派のわたしにケンカを売るとはいい度胸ね。」

 

「負けませんよ?」

 

「二人とも、ご飯の時は落ち着いて食べないとダメだよ。」

 

「「はーい」」

 

水都に注意されて、2人は大人しく歌野特製の信州そばをすする。

 

「…………そういえば、昔うどん派の友達と蕎麦とうどん、どちらが優れてるかで争ったわね。」

 

蕎麦をすすっていた歌野がふと思い出したように呟いた。

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。結局、決着は付かなかったけどね。もう一度、語り合いたいわね」

 

そう言って、歌野はそばをすする手を再開させる。

 

「あっ、そうだ。これ、渡しておくね。」

 

話題を変える材料として、水都が取りだしたのは茶色の封筒。

中身はお金。しかも、少額ではなく、それなりに纏まったお金が入っている。

 

「ありがとございます、水都さん!!」

 

箸を止めて、中身の金額を確認する銀。

そして、入っていた金額に彼女は驚愕した。

 

「み、水都さん……こんなに貰っちゃっていいんですか!?」

 

「うん。ちゃんと貰うべき分は貰ってるから安心して良いよ?」

 

銀が貰ったお金は、白鳥農園に代理販売を頼んだ農作物の売上金。

空狐族は一番年上の銀で12歳なので、独力で農作物を売り捌くのは難しい。そこで、民間経営の白鳥農園に代理販売をお願いしている。もちろん、手数料などは支払っている。

 

「安心して。身内贔屓で高めに値段設定してるとかじゃないから。」

 

「うたのん、そこら辺は平等だからね。」

 

「美味しい野菜を適切な価格で売る。それがわたしのモットーですから。」

 

歌野がふふんと自慢げに笑う。

 

「うーん、歌野さんがそう言うなら…………」

 

思わぬ収入に戸惑いながら金一封を鞄に入れる銀。

その時、食卓に軽快な音楽が鳴り響いた。音の発生源は高天原より支給されている銀のスマートフォン。

 

「ひなた、どうかしたのか?」

 

『先ほど、結界に転移反応がありました。場所を送りますから、見てきてもらえませんか?』

 

「ん、分かった。帰りに寄っていくよ。」

 

『お願いします。それから、あまり遅くならないように。』

 

「分かってるよ。じゃあ、切るぞ。」

 

通話を切り、銀は再び食事に戻った。

 

 

________________________________________

 

 

白鳥家で晩御飯を終えた銀は、ひなたに言われた通り町はずれの廃屋を訪れた。

周囲を森に囲まれた廃屋は住民の記憶からも忘れ去られ、手つかずの状態で放置されている。ひなたの結界は、この廃屋に何者かが転移したことを感知した。

 

「さぁて、この街に侵入してきた不届き者は誰かねぇ。」

 

『はぐれ悪魔に1票。』

 

「それはそれで有難いな。臨時収入ゲットだ。」

 

敵が居るかもしれないのに、無警戒で廃屋に入っていく。

建物の中に入った彼女を待っていたのは、異形の怪物だった。

 

上半身は裸の女性そのものだが、下半身は異形の姿をしていた。

足は4本あり、その全てが太い。さらに伸びる爪も鋭く、尾は蛇のようになっている。

その巨体は5m以上あり、尻尾は独立しているのか、うねうねと動いている。

 

「はぐれ悪魔、だな。相変わらず、気味の悪い外見だ。」

 

「ケタケタケタ、上手そうな餌が来てくれるとはな。」

 

『コイツ、典型的なはぐれ悪魔ね。』

 

(だな。さっさと倒して帰るか。)

 

はぐれ悪魔とは、主である爵位持ちの悪魔に逆らった眷族のことである。

反逆する理由は様々だが、一番多いのが自分の力に溺れて理性のタカが外れること。

そう言ったはぐれ悪魔に理性の欠片もなく、自分の欲求を満たすために行動する。

 

目の前に居る異形の姿をしたはぐれ悪魔も、その典型的な例のようだ。

 

(リヴァイアサン、アタシの勇者装束を)

 

『了解。』

 

「お前の血肉を喰わせろぉ!!」

 

その手に握られた槍の先端が銀の目前に迫る。

しかし、その先端が彼女の身体を貫くことはなく、空中に縫い止められていた。

よく見ると渦巻いた風が盾となって、槍を食い止めているのだ。

 

「“疾風は我が剣となり、我が眼前の敵を切り裂く”」

 

銀が詠唱すると、盾なった風が破裂して、はぐれ悪魔を切り裂く。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

風は銀のイメージに従って、はぐれ悪魔の両腕を切り落とす。

敵が痛みに悶えている間に銀は地面を蹴り、両手の斧で足を切り落としていく。

さらに、攻撃できそうな蛇の尾っぽも排除して抵抗する手段を奪い去る。

 

「き、貴様ぁ!! 普通の人間ではないのか!?」

 

「誰が普通の人間だって言ったよ?」

 

手足を切り落とされ、抵抗することができなくなったはぐれ悪魔。

銀はその首筋に斧の刃を当てる。

 

「あの世でエンマさまの裁きを受けるんだな!!」

 

躊躇なく振り下ろされる刃によって、とうとう胴体と首が分かれる。

いくら悪魔の生命力が強くても首と胴体が離れてしまうと、再生は不可能だ。

 

「討伐完了、と。証拠は頭だけ持って帰ればいいか。」

 

銀ははぐれ悪魔の頭部だけを回収すると、胴体は燃やしてしまった。

燃え盛る炎が真っ暗な廃屋の中を照らす中、炎が鎮火するまで待っていると廃屋の扉が勢いよく開け放たれた。

 

「はぐれ悪魔バイザー!! あなたを討伐しに……来た……わ……」

 

(あっちゃぁ……自称管理者が来ちゃったかぁ)

 

この日、運悪く駒王町の実質の管理者と表向きの管理者が邂逅を果たした。

 




銀は神社の外では耳と尻尾は隠しています。
戦闘中も基本的に隠していますが、全力を出す場合は隠匿を解除します。

あと、「そんな時間に市場やってねえだろ」というツッコミは受け付けません。こうしないと、上手く展開を作れなかったんです。
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