~駒王稲荷神社~
「久しぶりだな、ひなた。」
「はい。お久しぶりです、珠子さんに杏さん」
「まさか、もう一度会えるとは思ってもみませんでした。」
「………」
神社に戻った後、銀、ひなた、球子、杏の4人は居間に集まった。
4人の共通点は、全員が“バーテックス”と呼ばれる異形の生物が存在する世界から転生したこと。その中でも球子・杏・ひなたは互いに面識があるようだ。
「ひなた、そろそろ説明してくれないか?」
「ああ、そうでしたね。ごめんなさい、銀ちゃん。ついでに、銀ちゃんのことも話しておきましょうか。」
ひなたがコホンと咳払いしてから口を開く。
「まず、私たち3人と銀ちゃんは同じ世界からの転生者です。ですが、その時代に大きな開きがあります。銀ちゃんは確か神世紀298年ですよね?」
銀は頷くが、球子と杏の2人は頭の上に「?」を浮かべている。
「お2人が亡くなった後、紆余曲折がありまして、元号が西暦から神世紀に変わったんです。なので、銀ちゃんは私たちから300年ほど未来の勇者になります。」
「300年……バーテックスとの闘いはそんなに長く続いてるんですね。」
「私たち3人は神世紀元年……つまり、西暦の時代の勇者と巫女になります。」
「じゃあ、球子さんと杏さんはアタシの大先輩ってことですね!!」
「そうなりますね。それにしても、この現状を考えると他にも居そうですね。」
「私たちもそう思って、旅をしていたんです。でも、会えたのはひなたさんと銀ちゃんが初めてです。」
「まあ、砂場から砂金を見つけるようなモノですからね。仕方ありませんよ。
しかも、転生先がヒト以外の可能性もありますから、もっと確率は低いですね。」
ひなたと銀は善狐に転生し、球子と杏は猫又に転生している。
このことから、転生先が前世と同じヒトに絞られないのは確定であり、全世界のヒト以外の知能ある存在の合計数はかなり多いので、数少ない同胞を見つけるのは不可能に近い。
こうやって4人が一堂に会しているのは、奇跡的な状況だろう。
「おっと、話が脱線しましたね。西暦の時代にも銀ちゃんが使っていたシステムの元になった勇者システムが存在しました。」
「それをひなたが大国主様に頼んで、再現してもらったのか?」
「うーん……半分当たりで半分ハズレですね。西暦の勇者システムにはいくつかの問題点もありましたから、そのまま再現する訳にはいきません。」
「それは分かる。じゃあ、提案したのはその問題点を取っ払った改修版ってことか?」
「はい。私も大国主様があそこまで乗り気なるとは思いませんでしたが……」
「ちょ、ちょっと待て!! さっきから凄い名前が出ているが、どういうことなんだ?」
「大国主様って、国津神のトップですよね……?」
「私たち空狐族は高天原に保護されていますから。里が襲撃されて、皆で逃げてる時に大国主様の眷族を助けたことがあったんです。その縁で、保護されたんです。」
「あれはビックリしたなぁ。」
銀は当時のことを思い返した。
度重なる悪魔たちの追撃に全員が疲弊し、意見の対立が生じ始めた頃。
銀が怪我をした白兎を見つけたのが転機だった。ほっとけない性分の彼女は、そのウサギを手厚く治療し、自然に帰した。
その数日後、助けたウサギは一向の前に現れた。自分の主である大国主を連れて。
これが切っ掛けになって、空狐族は高天原の保護下に入ることとなったのだ。
ちなみに、この時助けたウサギから幸運のお守りを貰っており、それが銀の巻き込まれ体質に歯止めを掛けている。
「保護された後、いろんな神様に会ったよな。天照大御神さまとか」
「「っ!?」」
銀から天津神のトップの名前が出た瞬間、球子と杏の顔が強張った。
その反応に銀はキョトンとしているが、ひなたから見れば予想通りの反応だった。
「銀ちゃん。銀ちゃんの時代では、バーテックスはどのような扱いになってるんですか?」
「ん? アタシの時代だと、世界中の蔓延した死のウィルスから生まれた人類の天敵ってことになってるけど、それがどうかしたか?」
「………実は、バーテックスというのは天の神、つまりは天津神が人類を根絶するために遣わした存在なんです。」
「えっ………?」
今度は銀が驚愕する番だった。
「で、でも、天照大御神様がそんなことするようには………」
「それは私も同感です。あの神様は、本当にこの地に生きる者たちを大切にしています。これが世界の違いですかね。」
(ああ、ひなたが天照大御神様に素っ気ない態度だったのって……)
『心の整理ができてないからね。』
「さて、お話はここまでにしましょうか。もう遅いですし。」
ちなみに、現在の時刻はちょうど丑三つ時。
一緒に連れてきたアーシアは、すでに別室で睡眠に入っている。
「球子さんと杏さんはこの部屋を使ってください。今、布団を持ってきますね。」
「あ、私も手伝います。」
「大丈夫ですよ。お二人は客人なんですから、そのまま待っててください」
「そうですよ。それに、ここはアタシたちの家ですから。」
そう言って、銀とひなたは予備の布団を取りに向かうのだった。
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次の日。
「レイナーレさん……ご無事で何よりです。」
「身体はこんなになっちゃったけどね。アーシアもアイツらに何もされてない?」
「はい!! この通り、元気一杯です!!」
駒王稲荷神社の客間でアーシアとレイナーレは再会を喜んだ。
今日までダンジョンに潜り続けた彼女の翼は2枚から6枚まで増えて、下級堕天使から上級堕天使にクラスアップしたことを物語っている。
『1週間足らずで上級堕天使まで成長するって……』
(かなり無茶したいみたいだぞ。黒歌さん曰く、眠気を取り除く薬で四六時中ダンジョンに潜り続けたらしいからな。)
本来、下級堕天使が上級堕天使にクラスアップには9尾の善狐が空狐に至るまでに掛る時間よりは短いとは言え、それなりに長い時間が必要になる。
ダンジョンに潜って魔物を狩ることでその時間は短縮できるとは言え、数日程度まで縮めるには不可能に近い。レイナーレは、その不可能を精神力で可能にしてしまったのだ。
『とんでもない精神力ね。それだけ、あの子が大事ってことか。』
(そんな無茶して、後で変な弊害しないと良いけどな。)
「それで、お2人はこれからどうするおつもりですか?」
「アザゼル様の所に逃げ込むつもりです。そうすれば、安全ですから。」
『アザゼルか……彼なら確かに彼女らを無下にしないでしょうね。』
(どういう人……というか、どういう堕天使なんだ?)
『そうね……人間に恋をした元天使で堕天使たちの総督。かなり気さくな性格で命を大事する奴よ。』
(ふ~ん……そんな人の所なら、2人も大丈夫だな。)
「あの……レイナーレさん、実は出発する前に挨拶しておきたいヒトが居るんです。」
「私は構わないけど…………」
レイナーレがチラッと銀の反応を伺う。
「別に構わないよ。アタシの方も済ませておきたい用事があるからな。」
実は、事前の打ち合わせで2人は神足通で安全な場所まで送ることになっている。
徒歩で移動するよりも神足通を使って転移する方がアーシアを狙う堕天使たちに気付かれることなく、町を脱出することができる。
神足通は純血の空狐族に発現する6つの神通力の1つである。
しかし、神足通を発現したのは銀だけなので、2人を安全な場所まで送り届ける役目は彼女が請け負うことになった。
「そうですね……それでは、夕暮れまで自由に行動してください。
それくらいなら、銀ちゃんの方の用事も終わってると思いますので。」
「ごめんなさい。何から何まで貴女方の世話になってしまって……」
「気にすんな。せっかく助けたのに死なれる方が目覚めに悪い。
じゃあ、ひなた。アタシは先に出るから、町までの道案内は任せた。」
「はい。銀ちゃんもお役目をしっかり果たしてきてください。」
後のことをひなたに任せ、銀は目的のため、一足先に部屋を出る。
そして、神社を出ると、昨晩神社に泊まった客人――球子と杏が待ち構えていた。
「あれ? 球子さんに杏さん、朝早くからどうしたんですか?」
「ひなたから聞いたぞ。これから堕天使の巣窟にカチコミを仕掛けるのだろ?」
「私たちにもお手伝いをさせてください。」
「でも、これはアタシのお役目ですから、2人に手伝わせる訳には……」
「気にするな。銀やひなたには一宿の恩義があるからな。」
「それに、私もあんなことをする人たちをほっておけません。」
杏の脳裏の横切るのは、昨夜の悲惨な光景。
同じ人間の所業とは思えない残酷な方法で殺された男性の姿は杏の記憶に残っている。
かつて人々を守る立場に居た彼女にとって、そんな凶行を行う存在は放置しておけないのだろう。
「……分かりました。すみませんが、手伝ってもらえますか?」
「おう!! タマに任せタマえ!!」
「行きましょう。」
銀は杏、球子の先輩勇者たちと共に堕天使の拠点へと向かうのだった。
さそり座被害者の会会員集合。
勇者であるシリーズに登場していた勇者は、転生者という形で以降も登場します。(転生者多数のタグが付いているのはこのため)
但し、「結城友奈は勇者である」「楠芽吹は勇者である」のメンバーは登場しません(確定事項)。ゆゆゆいで登場した2名は保留中。