ハイスクールD×D 駒王町の三ノ輪銀   作:玄武の使者

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第7話 「殴り込み」

駒王町にある児童公園。

学校が始まっている時間にも関わらず、駒王学園の男子制服に身を包んだ少年がベンチに座り、大きなため息を吐いていた。

 

何か頭の中で考えを巡らせているのか、視線は下を向いたまま。

ゆえに、近づいてくる人影にはまったく気付かない。

 

「よしっ!!」

 

考えがまとまったのか、顔を上げる少年。

そして、前を向いた視線がついさっき公園にやって来た少女と交差し、驚愕した。

 

「あ、アーシア!?」

 

「はい。また、お会い出来ましたね、イッセーさん。」

 

ニコッとほほ笑むアーシアに対して、少年――兵藤 一誠は戸惑っていた。

昨夜、自分の無力さのせいで助けることができなかった少女が目の前に居ることに彼の思考回路は一時停止状態に陥っている。

 

「どうして、此処に…………」

 

「ある方々が助けてくださったのです。それで、この町を出る前に最後にイッセーさんにお会いしておきたくて。」

 

「それって、俺と入れ違いに入って来た」

 

「はい。訳合って詳しくお話することはできませんが、私はこうして元気で居られています。」

 

「そっかぁ……ごめんな、アーシア。昨日は見捨てる形になっちまって」

 

謝罪する一誠に対して、アーシアは首を横に振る。

 

「私は見捨てられたなんて思ってませんよ。イッセーさんは精一杯助けようとしてくれていました。」

 

「だけど……」

 

「大丈夫です。私は何ともありませんし、レイナーレさんにも再会できました。」

 

「レイナーレ?」

 

「はい。私の後ろに居るんですけど……えっと、どうしてさっきから隠れてるんですか?」

 

「???」

 

アーシアが呼びかけると、その背中からレイナーレが顔を出す。

その姿を見た一誠の脳裏に初恋の少女の姿が浮かんだ。

 

「夕麻、ちゃん?」

 

思わず口から出た初恋の少女の名前に、レイナーレは頷いた。

そして、申し訳なさそうな表情を浮かべながら、こう言った。

 

「また会ったね、イッセーくん。」

 

この日、兵藤 一誠は死別したと思っていた初恋の少女――天野 夕麻に再会を果たしたのだった。

 

 

________________________________________

 

 

一方、その頃。

 

神社を発った3人は、駒王町の郊外の山中に放置された教会にやって来た。

数年前まできちんと機能していた教会だが、ある一件で〈教会〉勢力が撤退したことで放置され、現在では誰も近寄らない廃墟となっている。

それに目を付けた堕天使たちが拠点として利用しているらしい。

 

銀、杏、球子の3人は真昼間から襲撃を仕掛けようとしていた。

 

「ここが拠点か……」

 

「連中が場所を移してなかったら、ですけど。」

 

銀は勇者システムを起動し、勇者装束と得物を装備する。

球子も腕に旋刃盤を装着し、杏はケースからボウガンを取り出す。

 

「そういえば、お2人の武器ってどうやって手に入れたんですか?

 もの凄い霊力が宿ってるから、ただの武器じゃないように見えるんですけど……」

 

「愛媛にある神社で見つけたのさ。神屋楯比売っていう武器だ。」

 

「私もタマっち先輩と同じです。名前は金弓箭。」

 

西暦の勇者、土居 珠子と伊予島 杏が持つ武器は神話に由縁がある。

例えば、金弓箭は岩屋を撃ち抜いたという逸話が残る弓であり、神屋楯比売は古事記に名前が記されている神様である。

何の因果か、彼女らは前の世界で所有していた武器を再び手に入れている。

 

「銀のは何かないのか? 逸話とか」

 

「アタシのは何の変哲もない斧ですよ。その代わり、アタシにはこれがあります。」

 

そう言って、銀は自分の左目を指差す。

 

銀の右目は普通の瞳だが、左目はは虫類のように縦長の瞳孔をしている。

さらには薄らとだが、青いドラゴンの紋様が浮かび上がっている。

 

「不思議な目だね。」

 

「昔、聖書の神様に討伐されたドラゴンの左目なんです。名前は〈海龍帝〉リヴァイアサン。」

 

「〈海龍帝〉リヴァイアサン!? あの二天龍に並び立つ古のドラゴン!?」

 

博識な杏は銀の口から出た名前に驚いた。

 

悪魔、堕天使、天使の3勢力による大戦が勃発するよりも前に存在したと言われているドラゴンこと、〈海龍帝〉リヴァイアサン。

その実力はかの二天龍にも匹敵すると言われているが、詳細な記述は残っていない。そのため、かのドラゴンがどのような力を持っていたのかも不明だ。

最後は運命に従って聖書の神に討伐され、一説にはその魂は二天龍と同様に神器(セイクリッド・ギア)に封じられたとも考えられている。

 

「じゃあ、銀ちゃんの瞳は神器(セイクリッド・ギア)?」

 

「うーん……厳密には違うんですけど、その話は後にしましょう。」

 

そう言って、銀は廃教会の扉を切り裂く。

しかし、聖堂の中に人影はなく、壊された聖人の彫像と椅子が置かれているだけ。

 

「拠点の割には警備が薄いな」

 

「でも、拠点なのは間違いないみたい。地下からたくさんの気配がする。」

 

「不用心だな。地下の入り口をそのまま放置しておくなんて。」

 

地下への入り口はついさっき誰かが使ったのか、そのままになっていた。

本来なら教会の祭壇で地下への階段を隠していたのだろう。

 

一応、罠の可能性も考慮しながら3人は地下への階段を降りて行く。

地下は1本の大きな道が通って、その両側に扉が設けらている。彼女たちはそれらの扉に目もくれずに一番多くの気配する場所へ向かう。

そして、気配を辿った先にあったのは、他の扉に比べてひと際大きな扉だった。

 

「珠子さん、杏さん。準備はいいですか?」

 

「いつでも大丈夫だぞ。」

 

「私も大丈夫です。」

 

銀は空狐族の象徴である耳と尻尾を消したまま斧を振り下ろした。

切り裂かれた扉の向こう側には、大勢のはぐれエクソシストと金髪の堕天使が待ち構えていた。

 

「ん? 今日は来客の予定はなかった筈なんですがね……何か用ッスか?」

 

「悪いことをしてる堕天使のお仕置きさ。」

 

「きゃははは♪ 人間風情がアタシを? これはとんだ笑い話ッスね。」

 

「そうやって甘く見てると、痛い目をみるぞ。」

 

「その強気がどこまで続くッスかね!! お前たち、やるッスよ!!」

 

エクソシストたちは一斉に剣や銃を手に取り、3人に襲いかかってくる。

刹那、金弓箭に霊力の矢を装填した杏が飛び出し、エクソシストたちに向かって放った。

 

「ワザリングハイツ!!」

 

霊力の矢は空中で無数に分裂し、雨のように降り注ぐ。

命を奪わない程度に加減はされているが、二の足を踏ませるには十分だった。

 

「“雷は地を這い、翼なき者に襲いかかる!!”」

 

銀が地面に手を着けると、青い電が地面を這ってエクソシストたちに襲いかかる。

その電気を受けた者は全身が痺れ、力なく固い地面に崩れ落ちた。

しかし、杏と銀の攻撃を免れた神父が聖なる力を帯びた銃弾を放つ。

 

「タマが居る限り攻撃は通さんぞ。」

 

旋刃盤を装着した珠子が2人の前に立ち、銃弾を防いでいた。

そのお返しに金弓箭の矢が銃弾を放った神父の肩を撃ち抜いた。

 

「“雷は鎖となり、戒めとなる!!”」

 

さらに、地面から電気が鎖となって顕現し、神父たちを拘束する。

これで部下たちは全員無力化され、残ったのは中級堕天使だけになった。

 

(流石に龍脈の霊力で術を使うと、制限時間も短くなるな。)

 

『当然でしょ。制限時間は要するに使用できる霊力の量なんだから。

 まあ、減少量は微々たるものだから、あんまり気にすることは必要はないわ』

 

(それもそっか。)

 

「使えない奴ばかりッスね。1人くらい倒して欲しいものッス。」

 

部下が全員倒した所で金髪の中級堕天使が2対4枚の翼を広げて立ち塞がる。

 

「なあ、堕天使。今までも同じことをしてたのか?」

 

「同じこと? ああ、もしかして神器(セイクリッド・ギア)集めのことッスか?」

 

神器(セイクリッド・ギア)を抜かれたらどうなるか分かってやってるのか?」

 

「知ってるッスよ。」

 

「何とも思わないのか? 人が死ぬことに」

 

神器(セイクリッド・ギア)の特徴は、所有者の魂と密接に繋がっていること。

そのため、無理に抜き取ってしまうと所有者は死んでしまう。しかし、安全に抜き出す方法はどの勢力も編み出すことができていない。

 

人の命を奪うことに抵抗はないのか、という銀の問いに対し、金髪の堕天使はあっけらかんとした表情で答えた。

 

「思わないッスよ? 人間風情の命なんてどうでもいいもん。蟻んこと同じですッス」

 

「…………そうかい。」

 

銀の双斧が紅蓮の炎を纏う。

 

「じゃあ、お前を倒すのは勇者であるアタシの仕事だ。」

 

「何ほざいてやがるッスか!!」

 

両手に光力で編みあげた槍を握り、銀に襲いかかる敵堕天使。

それに対し、銀は炎を纏った双斧を槍にぶつける。

 

両者の得物の拮抗は一瞬で、堕天使の光の槍はあっさりと砕かれた。

それなりの力を込めて作った槍を簡単に砕かれて驚愕する堕天使だが、間一髪身を翻すことで斬撃の直撃を避ける。しかし、斧の炎が翼を焼く。

 

「あああぁぁぁぁ!?!?」

 

翼を焼かれて悶える堕天使。

 

「このっ……よくもアタシの翼を!!」

 

堕天使の周囲に光の槍が形成され、投擲される。

しかし、その全てがソードビットによって破壊される。

 

「な、何なんッスか!? 極東にこんな奴が居るなんて聞いてねえッスよ!!」

 

闇雲に光の槍を投擲する堕天使。

銀はそれらをすべて切り裂き、ゆっくりと堕天使に近づいて行く。

 

「ひっ、ひぃぃぃぃ!!」

 

自分の攻撃が通用しない銀に恐怖する堕天使。

 

「闘魂星砕き!!」

 

双斧が×の字に振るわれ、紅蓮の炎が堕天使を包み込んだ。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「さてと。これで後始末は終わりだな。」

 

数十分後。戦闘が行われた聖堂地下には何も残っていなかった。

戦闘が終了した後、捕縛された神父たちは高天原に引き渡され、堕天使たちが以前に抜き取ったと思われる神器(セイクリッド・ギア)も回収された。

 

「それで、杏さんは何をしてるんですか?」

 

「神器《セイクリッド・ギア》を抜き出す術式を写してるの。何かの役に立つかもしれないから。」

 

「うーん……タマにはまったく分からんぞ。」

 

「アタシも同じですよ。術式の解説とかはひなたに任せっきりだから」

 

「改良すれば、画期的な術になりそうだけど……今すぐは無理かな。」

 

そう呟きながら杏は術式を書き写し終わったのか、メモ帳を閉じる。

その時、銀のスマートフォンにひなたからの電話がかかってきた。

 

「ひなた? どうかしたのか?」

 

『銀ちゃん、そっちは終わりましたか?』

 

「ついさっき終わったよ。それがどうかしたか?」

 

『お2人の送迎は中止です。事態が変わりました。』

 

「何かあったのか?」

 

『実は――――――――』

 

 

 

 

 

 

 




フリードはどうなったかって?

彼は民家での遭遇以降、すぐさま逃亡しています。
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