原作はあまり好みではありませんが、キャラは魅力的なので大好きです!
では、どうぞ。
依存する日々
「おはよう、目は覚めた?」
彼女の声はまるで天使のようだ。いや、彼女自身が天使のようだ。その声も、そして今、俺の目の前で見せてくれる優しい笑顔も。
ここに来るまでは、彼女が来るまではずっと目覚まし時計が俺の目を覚まさせてくれていたのだが………これを知ってしまってはもう、使う気になれない。
早起きが苦手な俺を、彼女はいつも必ず起こしてくれるのだ。
おはよう、といつものように挨拶をしながら起き上がる。そんな俺を見て、彼女は満足したように微笑む。
「朝のコーヒー入ったよ。一緒に飲もう」
ベッドから降り、彼女と一緒にテーブルへと向かう。いつものことだが、もう既に制服に着替えており、髪型も整えている。コーヒーをカップに入れ、俺の目の前に置いてくれる。コーヒーの温かく、癖になる良い香りが、俺の脳を刺激する。
「モカコーヒーでミルクと砂糖はいらないんだよね?『コーヒーに甘いものは邪道だ!』て力説していたから、すぐに覚えちゃったよ」
そんな事を言ったな、と思い出し、彼女は可笑しそうにクスクス笑う。そんなに面白いものだっただろうか?
いつもありがとう、と礼を言う。
「気にしなくていいよ。僕が好きでやってることなんだから!」
そう言う彼女はとても幸せそうだ。太陽に照らされる草花の様な金髪。雪の様な白い肌。そして、見る人を惹きつけるその紫の瞳。
出てるところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる、抜群のプロモーション。
そんな魅力溢れる女の子、シャルロット・デュノアとの同じ部屋での生活はもう一ヶ月を経とうとしている。
朝のコーヒーを飲み、俺の身支度が整うと、食事をするために食堂へと向かう。先に行ってくれて構わない、と一度シャルロットに伝えた事があるのだが。
「僕と一緒に食事をするのは、めいわくかな?」
と涙目で悲しげに言われてしまってはとてもそんな気にはなれなくなった。俺の準備が終わるまで、シャルロットはにこにこ笑いながら俺を見つめている。
俺を見るのがそんなに楽しいのか?
「うん、楽しいというか、嬉しいというか。胸がぽかぽかするんだ」
そう言って胸に手を持っていくのはいいが、うめるのはやめていただきたい。健全な男子高校生には刺激が強すぎるのだ。
「今日はなにを頼むの?」
などと思い返しているとどうやら食堂に到着していたようだ。俺はいつものを頼むつもりだと伝える。
「あははっ。君は本当に鮭が好きなんだね」
もちろん、と俺は力強く頷く。朝は白米、味噌汁、野菜、そして鮭。これら全てが揃う鮭定食は正に俺の好物であり、毎朝必ず食べているものだ。
「じゃあ、僕もそれにするよ」
シャルロットはいつも、俺が食べるものと同じものを食べる。俺に合わせているのだろうか、と考えた事もあるが『和食に興味があるが、何から食べたら良いのかわからないから、同じものを食べてみたい』と言っていたので納得した。
しかし、毎朝鮭定食を頼むとはシャルロットも鮭が好きになったのか?
「うん、大好きだよ。………君の好きなものだからね」
そうか、と俺は鮭定食愛好家が新たに一人増えたことに感動する。食券を買い、二人で並ぶ。並んでる間にシャルロットから今日の授業の範囲を教えてもらう。
いやー。それにしても授業の予定表を失くすとは………山田先生なら新しいものをくれるだろうが、織斑先生にバレたら何をされるかわかったものじゃない。出席簿アタックは痛いし、トレーニングは拷問を表していると言っても過言ではない。
「もう。仕方ないなぁ〜」
そんなチキンハートの俺のために、シャルロットが前の晩に範囲を教えてもらい、予習の手伝いをしてもらっている。
流石代表候補生だけあって、シャルロットの解説はとてもわかりやすい。元々は勉強嫌いな俺だが、シャルロットのおかげでなんとか毎日続けられている。
「わからないところがあったら何でも聞いてね。大丈夫!僕勉強は結構得意なんだ!」
そう言っていつも張り切って教えてくれるのは本当に助かる。お陰で授業にもなんとかついていけるし、テストでは苦手な理数系も平均点を超えられるし、得意の国語と社会に至っては紙に貼り出される様な順位を取れるようになったのだ。
ただ、距離感が近いせいで。いかんせん、シャルロットの豊満なお胸が背中や腕に当たるのだ。心地よい感触と形を変える魔物に目がいきそうになるが、理性をフルスロットルにしなんとか堪えている。
………ただ、女の子と同室なので処理が大変苦労するのが難点だ。
食堂の順番が回ってくる。食欲を刺激する良い匂いがする。
おばちゃん、いつもの。
「あいよ!相変わらず鮭が好きなんだねぇ、ご飯大盛りサービスしといてあげるよ!」
ありがとうございます。よし、じゃあ行こうか。
「うん、席は取っといてあるんだ。ついてきて」
うん?席は取っとある?おかしいな、シャルロットはここに来てから俺と一緒にいたはずだ。席を取る暇なんてなかったはずだが。
……………まっ、そんなことはどうでもいいか。シャルロットに連れられた席に着き、シャルロットは俺の隣に座る。
「むっ!嫁、ここにいたか!」
そう言って近づいてくる小柄な銀髪の女の子。なんか尻尾がブンブン振っている幻覚が見えるのは気のせいだろうか?
彼女はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの代表候補生だ。そして俺を嫁にする!と宣言した子でもある。なんか紹介文がすごいな。
おはようラウラ。そして嫁言うな。
「うむ、おはようだ嫁!一緒に食事をしてもいいか?」
うん、相変わらず訂正発言は無視なのね。慣れたからいいけど。
別に食事の同席は全然構わない。俺は友達とワイワイするのは好きだからな。
シャルロットもいいよな?
「………うん、君が構わないなら」
あれ?なんだか元気が無くなったように感じるのだが。笑顔が引きつったものに変化している、ような気がする。
「嫁よ。箸はどうしたのだ?」
えっ?箸ならここに………って、あれ?な、ないぞ?まさか入れ忘れてしまったのか?
「もう、おっちょこちょいなんだから。はい、箸」
あぁ、ありがとう。しかしなんで俺の分まで持ってきてくれてたんだ?
「君は真面目だけど、ちょっとしたミスをよくするからね。持ってきておいて正解だったよ」
おふぅ、見破られておる………しかし、中学までは別にこんなことなかったんだけどなぁ。高校に入ってから急にポカしでかすようになったんだよな。
………ボケが始まったのか?
「大丈夫だ!私は嫁の慌てる顔も大好きだからな!」
それは果たしてフォローのつもりなのだろうか?
しかし今のラウラは人を小馬鹿にするような子ではない。むしろ純粋無垢な少女である。フォローしてくれたのだろう。
感謝に意を込めて、頭を撫でる。ラウラの髪がさらさらしていて、こちらも気持ちが良い。
「むふぅ〜………嫁の撫で撫では最高だなぁ〜」
どうしよう、今度はぴこぴこ動く獣耳が見えてきた。しかし本当に嬉しそうにするのでラウラの気がすむまで頭を撫でてあげる。
「……………C'est dérangeant, petite fille」
この時、シャルロットは何か呟いたような気がするが、俺には聞こえなかった。
「はい、どうぞ」
本日の授業が半分以上終わり、お昼時間となった。まさか筆箱を開けた時に、消しゴムが入ってない時は焦った。
シャルロットが「仕方ないなぁ」とあきれながら消しゴムを貸してくれたので、なんとかなった。
ちなみに俺とシャルロットは席も隣同士だ。シャルロットが隣じゃなかったら、どうなっていたことやら。
そういえば、シャルロットが今日使っていた消しゴム。あれは前に俺が無くした消しゴムと実にそっくりだった。少しびっくりしてしまった。
まぁ、そんなことはどうでもよく。お昼時間はいつも屋上で食事を取っている。基本俺についてくるラウラは、今日は同級生たちと食堂で食べてくるそうだ。クラスメイトと仲良くなるのは良いことだ。
「今日も自信作ばかりだよ。もちろん、栄養バランスもバッチリだよ!」
そう、俺はいつもシャルロットにお弁当を作ってもらっているのだ!羨ましいか!!
………あっ、すみません。調子乗りすぎました。でもね、上手いんですよこれが!ご飯にどんどん手が伸びて止まらんのよ!
「どうかな?」
毎日食べられて幸せな味です。
「えへへっ。そう言ってくれると嬉しいな」
照れたように笑うシャルロット。あまりの可愛さに思わず見惚れてしまう。こんなに可愛い女の子にお弁当作ってもらえるなんて………。
あれ?俺さりげなくリア充してるな。
さて、食事を終えたのだがまだ30分以上時間がある。そして満腹感と屋上の心地よい気温と風のお陰で眠気に襲われる。
思わずあくびが出てしまう。
「眠そうだね、少し眠ったら?起こしてあげるからさ」
そう言ってシャルロットは自分の膝をポンポンと叩く。
何してるの?
「膝枕してあげる。床じゃ固くて眠りにくいでしょ?」
なん………だと!い、いいんですかそれ!許されるんですかそれ!!
「うん、君なら全然構わないよ。ほら」
で、では失礼します。
シャルロットな膝の上に頭を置く。とても柔らかく、しかし張りのある膝枕はとても気持ちがよく、こんなに近いのでシャルロットのいい匂いに更に眠気が増す。
「ふふっ、ゆっくり休んでね………」
シャルロットに頭を撫でられる。とても優しい。まるで母親が我が子を愛するかのような、温もりのある手。
おやすみ………。
それだけ最後に伝え、俺は夢の中へと意識を落としていく。
「はわぁぁ〜。やっぱり可愛いすぎる寝顔だよ〜♡」
シャルロットは先程はまるで違う惚けた表情が浮かんでいた。周りのオーラはまさにピンク色。
彼を見るだけで胸の鼓動が速くなる。
彼の匂いを嗅ぐたびに下腹部が熱くなる。
本当なら今すぐに彼の匂いを嗅ぎながらしたいのだが、それで万が一彼が起きてしまってはかわいそうなので、シャルロットは残り少ない理性でなんとか堪える。
「………ねぇ。君のおかげで僕の毎日は光輝いたものになったよ」
最初は男として学園に入れられた。自分と母を捨てたあの男の言いなりになり、笑顔で迎え入れてくれた彼から情報を奪おうとした。
「でも、君は僕が男装してるってことすぐに見破ったよね」
男装が見破られた時、『あぁ、もう終わりだ』と絶望していた。自分はフランスの代表候補生から降ろされ、監獄に入ることになるんだと。
「でも、君はそんなことはしなかった。むしろ、僕を心配して助けてくれたよね」
彼はシャルロットを責めるどころか、自分を励まし、話を聞いてくれた。そして話を聞いた彼は普段の温厚で優しそうな顔が般若の如く、怒りに染まっていった。
そして、ISの指導をしてもらっているという楯無生徒会長に土下座をして、彼女を助けてあげてほしいとお願いしたのだ。
何度も、何度も彼は『お願いします。俺には何もできないんです。友達を助けてください』と頭を下げ続けた。
そのおかげで、シャルロットは念願の自由の身となったのだ。フランスの代表候補生から降りることなく、女として自由に生きることを許されたのだ。
彼は『結局、何もしてあげられなくてごめん』と申し訳なさそうに謝った。しかしそんなこと言って欲しくなかった。
「僕を助けてくれたのは君だよ。君のおかげで、僕は今こうして君と一緒にいられるんだから」
彼の優しさに救われたのは自分だけではない。ラウラと楯無生徒会長、そしてその妹の簪も彼を狙っている。
「全く、お呼びじゃないんだよ。僕と彼の間に入ってくるなんて」
彼が自分を助けてくれたように、今度は自分が彼を助けてあげるんだ。彼の身の回りの世話は自分がしてあげるんだ。
朝起こしてあげるのも、コーヒーを入れてあげるのも、お弁当を渡すのも、物を貸してあげるのも、勉強を教えるのも、ISの乗り方を教えるのも、テレビを見るのも、ゲームをするのも、寝かしつけてあげるのも、隣でずっと一緒にいるのも。
「そうだよ。彼はずっと僕と一緒にいるんだよ。僕が面倒見てあげないといけないんだよ」
そう言って微笑む彼女はそっと自分の顔を彼に近づけ、軽く口づけをする。
「ふふっ。今は僕からだけど………いつか君からして欲しいな」
幸せを確かに感じる彼女は、無意識のうちに彼のポケットからハンカチを落とす。
「………あっ。またこんな所に落として。君は本当におっちょこちょいだなぁ♪」
そう言って彼女は、ごく自然に落ちたハンカチを自分のポケットにしまった。
さて、依存をしているのはどちらやら。
………あれっすね。ヤンデレって難しいですね。
力不足をつくづく感じさせられました。