神様転生…○○主!? 作:七級フラグ建築士
『オキナサイ!オキナサイ、オ、オキナイナラ、キ、キススルワヨ……』
「……うーん」
ツンデレボイスで起こしてくれる目覚まし時計で目を覚ます。
……どうしよう。凄く馴染み深いんだけど。う、うん。とりあえず目を開けよう。判断はそれからだ。
「すげー見たことある部屋なんだけど……はぁ、夢だったか」
ハーレムなんてそんな都合のいい話なんてあるわけないか。おかしな夢を見てしまったな。
「起きなさい!イッセー!」
階段からお袋の声。もちろん馴染み深い。……はぁ。
「わーってるよ!いま起きる!」
そんな返事をして、俺はベッドから起き上がった。
今日もいつも通りの朝だ。期待していた分気が滅入る……。
制服の袖に腕を通しながら俺は大きくため息をついた。
……あれ、そういえば昨日ってどうやって帰ってきたっけ?
―○●○―
今の時間は21:00。
一日の中では遅い部類だが、高校生としては、寝るにはまだ早い時間帯だ。だが、俺は今ベッドの中にいる。
……はぁ。
弁解するが、いまだにマキナさんの夢を引きずっているわけではない。あんな突飛な夢をいつまでも引きずるほど俺は夢見がちじゃない。
もっと大きな問題だ。
俺の彼女である夕麻ちゃんがいなくなっていたんだ。痕跡すらも。
まず、ケータイ番号もメールアドレスも俺のケータイのメモリから消えていた。
それだけでなく、夕麻ちゃんを紹介したはずの松田や元浜(俺の友達)に聞いても覚えていない、いや最初から知らないような反応を返されたんだ。
最初は俺をからかってるのだと思った。
けど、一度真剣に話し合うと、そうではないと痛感した。
彼女は他校の生徒だった。だから、夕麻ちゃんが着ていた制服の学校を訪ねてみた。
けど、そんな生徒はいなかった。
じゃあ、俺は誰と付き合った?
誰とデートした?
彼女との日々は夢だったのか?
夢の話を松田と元浜に話したのか?
まるで俺は異常者じゃないか?
彼女の顔はいまでも鮮明に思い出せるんだぜ?
……どうしても解せない。
だが、どうすることもできない。
そんな俺がとった行動は、幻想の世界に逃げ込むこと。つまり、ふて寝だ。
つーか夢だったら、最後まで見せろよな。
なんで途中からマキナさんのわけわからない夢に変わるんだよ!
もうちょいでキスだったじゃん!
凄くいい雰囲気だったじゃん!
……はぁ。寝よ。
『ふはははは!よくぞ来た、我が依り代よ!』
赤いドレスを来た金髪の外人風の美女が目の前で高笑いしていた。
何処だよここ!?誰だよこの人!?
てか、似たようなシチュエーションがちょっと前にあったな!
『余はネr……じゃなくて、ブリテンの赤き竜ア・ドライグ・ゴッホである!うむ、よくぞ余を選んだ!マキナは違いの分かる神よな!やはり時代は青よりも赤!ローマでなくブリテンというのがちと気になるが、「すべての道はローマに通ず」の至言から考えるとブリテンもまたローマである!』
って、この人、いろいろと透けててなんと言いますか……すごく、眼福です。触りたい。
『依り代よ、何を呆けておるのだ?』
「い、いえ……触ってもいいですか?」
やべ、何言ってんだ俺!?無意識に口がすべっちまった!
煩悩溜まりすぎだろ!絶対に引かれる!
「なんと、余に触れたいと申すか。至高の芸術品たる余に』
ヤバいよ。やっぱり怒ってるよ。
『良い!余が許す!やはり余ほどの美しき存在を前にすれば触れたくなるのが道理よな!今の余は皇帝にあらず、存分に触れるがよい!」
マジっすか!?いいんすか!?
……いや、たぶん勘違いしてるな。だって、頭差し出していますもの。
まあ、せっかくだし撫でようか。美人の頭を撫でるなんて、よく考えたら夢みたいなシチュエーションだし。
……うおー!髪サラサラだ!すげー!なんだこれ!?いつまでも撫でてられる!すげー!
『……ほにゃあ』
か、可愛い!何ですかこのほにゃっとした笑顔は!
荒んだ心が癒されていくぅぅぅ!
……
『うむ、我が依り代は撫で上手であるな!良い!実に良いぞ!これからも撫でるが良い!』
あれからかなりの時間撫で続けてしまった。満足。
ハマってしまいそうで怖い。
「……あれ?それで、ドライグさんでしたっけ?結局どちら様で?」
『む?マキナから聞いているのではないのか?余が貴様の相棒である!あんまり呼びにこないから、余自らが赴いたのだ。感謝するがいい!』
マキナって……アレって夢じゃなかったのか!?
『異形蔓延る異世界、力を持たぬ依り代が生き抜くためには余の力が必要だと気を利かせたのだ。貴様の周りにも悪魔や堕天使がいたであろう』
マジで!?俺の住んでる町ってそんなファンタジーな存在がいたの!?
というか、それが本当だったらつまり……
マキナさんはまたミスったのか!?
たぶんアレだろ?ドライグさんがいるってことは、転生特典とかいうのはちゃんと俺にくれた。
だけど、ハーレムのための世界に転生させようとしたら、またミスってうっかり俺の元の世界に戻してしまった。
残念美人のマキナさんらしいな!
『うむ。それでは貴様に戦い方を教えるとしようか。まずは余を発現させるが良い。なに、難しい事ではない。貴様が強いと思うものを思い浮かべ真似れば良い。やってみよ!』
よく分からないけど、このドライグさんが戦闘の仕方を教えてくれるらしい。面白そうだしやってみるか!
……強いもの、強いもの。よし、やってみよう!
集中して、集中して……、よし!これぞ兵藤一誠渾身のッ、
「ドラゴン波!」
俺の左腕が光だす。
うぉぉぉぉ!?マジでか!?
俺、ドラゴン波出せるの!?
光は左腕を包み、形を作り、止んだ時には赤色の籠手のようなものになっていた。
手の甲には宝玉のようなものがはめ込まれている。
「な、なんじゃ、こりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
『ふふふ、美しいであろう?それこそが余である!さあ、余の美しさを存分に讃えるが良い!』
叫ぶ俺。チョー驚いてます。
当たり前だ!ドラゴン波が出ると思ったら突然変身ヒーローのアイテムみたいなのになっていた!
驚かないわけがない!なにこれ!?
『なんだ、照れておるのか?ういやつめ。それでは、本格的に始めるとしようか!』
―○●○―
次の瞬間、俺はベッドの中にいた。
「……夢か」
時間を見ると深夜2時。起きるには早すぎる時間だ。
寝直そう。
それにしても、どうして俺の夢は毎回いいところで覚めるのだろうか?
まあ、今回は頭を撫でれたしいい方なのか?
『何をしているのだ依り代よ!』
なんか、左腕の辺りから声が……ええ!?
左腕がさっきまでと同じ籠手になっていた!
夢じゃなかったのか!?
『早く行くぞ、依り代よ!まずは外に出るのだ!』
「ちょっ!?このまま外に出るのか!?」
この左腕ってたぶん一般人に見せちゃいけないヤツだろ!?
『気にする事などない!さあ、行くぞ!』
「せめて着替えくらいはさせてくれ!」
俺は急いでパジャマから制服に着替えて外へ出た。
どうしてこんな時間に……あれ?こんなに時間なのに眠くない?
昼とほとんど変わらない感覚だ。
これもマキナさんの影響なのか?
あと、さっきからドライグさんが唐突にに『ぶーすと!』とか叫んでるけどなんなのこれ?
「あのー、俺ってどこに向かってるんですか?」
『なに、もうすぐ分かる!もう目と鼻の先であるぞ!』
ドライグさんの言葉の意味はすぐに分かることになった。
肌がピりついた。今まで感じたことなんかないが、濃密な敵意や殺意のようなものが感じられたからだ。
何かが、何かが俺たちに近づいている!
「これって――」
「――美味そうな臭いがするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」
地の底から聞こえるような低い声音。
何よりも不気味さがハンパじゃない。声を聞くだけで不快感が湧いてくる。
ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ……。
人間のものとは思えない、異様なわらいごえと共に暗がりから何かがゆっくりと姿を現した。
それは、上半身裸の女性、しかも体は宙に浮いて……いや、違う!
下半身が巨大な獣の体だ!
女性の上半身とバケモノの下半身を持った形容しがたい異形がそこにいた。
大きさはゆうに五メートルを越えている。できるかは分からないが、前足で立ち上がったらもっといくんじゃないだろうか。
バケモノだ。なんなんだコイツは?
『其奴は「はぐれ悪魔」である』
悪魔!?悪魔ってこんな恐ろしい外見してるのか!?
上半身の女性の裸に性欲の権現とまで呼ばれた俺が興奮しないってそうとうだぞ!
『なんとも醜き姿であるな。はぐれ悪魔とは主を失った悪魔だ。依り代よ、獣と成り果てた其奴に引導を渡そうぞ!』
「引導って、俺は戦い方なんて知らないぞ!」
『それを今から学ぶのであろう?まずは、思うままやってみるが良い。心配するな、余がついているのだから早々負けぬ!』
思うままって……まあ、やってみるか。
俺は両手を上下に合わせて前へ突き出した。
「ドラゴン波!」
『えくすぷろーじょん!』
手にとんでもない密度のエネルギーが収束し、前方へ放出された。
凄まじい音が鳴り響く。
それが止んだとき、既に悪魔は跡形も無くなっていた。
スゲー!俺、今、ドラゴン波を撃ったのか!?マジでか!?
『うむ。余の依り代に相応しき美しい一撃であったぞ!余は満足だ!』
ドライグさん的にもOKみたいだ。
でも、あっさり終わりすぎて何がなんだか分からなかったんだけど……。
『細かいことはこれから説明する。今は疾く帰ろうぞ』
腕時計に目を落とすと時刻はもう三時前。
俺はこんな時間なのにやっぱりまったく疲れていない自分の体を不思議に思いながら家へ帰った。
マキナ「カタログによると、Fateという作品のキャラクターが定番なのですね。ブリテンの赤き竜、ブリテンの赤き竜……あっ、この方ですか。いえ、違いますね。赤くないですもの。むしろ青いですもの。……あ、こちらの方ですね!赤いですし間違いありません!まったく、顔が似てて紛らわしいですね」